Info
タイトル: SCP-9000 - 塹壕
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: J Dune
原題: The Trench
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 11
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-9000
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by J Dune

SCP-9000
特別収容プロトコル: SCP-9000への出入りは財団が認可したアクセスコードを有する船舶に限定されます。SCP-9000はその他の点では適切に隠蔽されています。
SCP-9000の運営は、SCP財団内部の情報評価を担当する部門である内務部門の管轄下に置かれています。
SCP-9000に駐留する職員1は、拘置されている全人員の完全な制御を維持します。
マウグ諸島
説明: SCP-9000は異次元空間及びその主目的として内部に建造された施設 — 拘禁センターTri-1、SCP財団の管理する刑務複合施設 — の総称です。
SCP-9000はマリアナ群島内、マウグ諸島沖に位置しています。この施設は、SCP財団と米国の囚人を収容する超法規的施設として機能するという合意の下、1983年にアメリカ合衆国連邦政府と連携して構築されました。
SCP-9000を人工的に構築するため、数百のプレロマ級自給遷移海中ノードが海底に設置されました。この異次元空間は周囲の海洋環境に類似していますが、外部からは視覚的に不明瞭です。特別に作られた航行コンソールと承認された物質的シグネチャを備えた船舶のみがSCP-9000の現存空間にアクセス可能です。
SCP-9000の内部構造
SCP-9000は5層から構成され、うち4層は水中に沈んでいます。2搬入口と財団職員の現場居住施設を擁する第1層を除き、SCP-9000の全層はSCP財団の囚人の収監と維持に利用されています。1994/4/24に実施された人口調査では、SCP-9000の最大収容人数3000人に対し、2521人が収監されていたことが記録されています。
米国政府は頻繁に強化尋問戦術や反対派の投獄にSCP-9000を使用していますが、監獄の主目的は、非異常の人間をSCP財団の管理下に置き、"Dクラス"プログラムに登録することです。
財団は様々な手段を通して囚人を獲得しています。これは主に、連邦政府が施設を利用することと引き換えに、アメリカ合衆国内の"マキシマム"もしくは"スーパーマックス"警備レベルの刑務所からの選択的移送という形で行われます。3
SCP-9000に駐留する全Dクラス職員は、財団の機能を維持する上で不可欠と考えられています。
歴史
我々は常に監獄を建ててきました。博士方は否定するかもしれませんが、あの美しい三本の矢印の記章の下で最初に建築された施設は監獄であり、最後もやはりそうなるでしょう。
リチャード・アキノ副部門長。
我々は、世界から切り離されている。そして、その孤独の中で観察することが責務である。我々はこれまで、そう信じ込まされていました。しかし今この部屋にいる皆さんは、学者が片手間にやる研究など遥かに超越した責務が財団にはあるのだと信じている、それゆえにここにいるのです。その責務を果たすために、資金集めのロビー活動をしたり、許可を得るために胡麻をすったりする必要はありません。だからこそ、収容イニシアチブの終焉期に生まれた小さな連合は、いずれ権威となる運命にあったのです。果てはこの下賤な身でそれに立ち会うことができたことを、本当に栄誉に思います。
こう表現しましょう。Triセンタープロジェクトは財団の理想を体現しています。清潔感のある研究室やキャビネットで満たされたアーカイブと同じくらいに。ですが、これは世界への錨であり、窓ではありません。
このプロジェクトは、ワシントンをはじめ同盟の皆様からの我々の使命への継続的なご支援があるからこそ実現されました。財団からも、私個人からも感謝申し上げます。そして何より、我々を世界というステージに押し上げてくださった方々に報いることができ、誇りに思います。
財団の収容史において、これは劇的な変化というわけではありません。また監獄が一つ増えたというだけです。
-内務副部門長リチャード・アキノ、サイト-01でのSCP-9000建設承認祝賀イベントにおける財団・米国連邦政府運営陣への演説、1982年。
財団は創設以来、組織構造への刑務所的要素の導入の必要性を認識してきました。1958年、一部の施設で"Dクラス"プログラムが開始されました。米国内の州立刑務所から貸し出された囚人をDクラス職員とし、彼らは有価値職員による実施が承認されていない試験を、指示を受けて代行しました。試験の成功後、Dクラス職員は直ちに記憶処理され、当初の収監施設に戻されました。
Dクラス職員現地収容エリア、サイト-19
このプログラムは評判を得たものの、その不安定かつ分散的な性質のため、組織全体での実行は許可されませんでした。1960年代から1970年代にかけて、財団は規模と世界的重要性の両方で成長を続けました。その結果、Dクラス職員の使用申請数も増加し、申請者の求める期間内に検討と承認を完了することが不可能な量に達しました。可能性は浮上したものの、Dクラスの全施設への恒久的な構造への組み込み(食費や維持費を含む)は扱いづらく、財政的にも管理不可能で、最終的に高価値職員を危険にさらすことになります。
SCP-9000はこうした需要に応えるため、内務部門により考案されました。刑務所権力の集約は財団の将来的な成長に不可欠な要素と見做されました。Dクラス計画の修正は未だ行われていませんが(1994年現在)、人材供給源としてのSCP-9000を前提としたプログラムの構造的見直しは積極的に進行中です。
Dクラス計画の将来は、SCP-9000の継続的運営に依存しています。
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運用上欠陥警告
ID: 9000/TOTEM
SCP-9000が元の状態に復帰するまで、残りの囚人全員は所在を確認され、Tri-2-6及びその他の収容施設に移送されています。
SCP-9000の拘置下に配属されたDクラス職員の調達または移送を希望する場合は、自身のサイトの拘禁責任者に更新版プロトコルの実行可否を相談してください。
インシデント・トーテムと、SCP-9000が一時的に侵害されるに至った周辺状況に関する調査が現在進行中です。
以下の審問は、内務部門と倫理委員会の主導する合同審議会により実施されました。
以下に含まれる文書とファイルは、理解しやすい順に並べられています。
インシデント・トーテム インタビュー #053
対象: オーデイ・チェンバース
ID #: D-1098
割り当て施設: 拘禁センターTri-3 (現在)、SCP-9000 (旧)
出身地: アメリカ、ペンシルベニア州、フィラデルフィア
年齢: 21
州立矯正施設 - グリーン
囚人経歴: D-1098はペンシルベニア州フランクリン郡区に位置する州立矯正施設 — グリーンから調達された。対象はケンジントン/アレゲニー地域における路上暴力の教唆者として記録され、著名な"F.I.8"ギャングの構成員と繋がりがあった。
1993/2/4、対象は過失致死、銃器の無謀な発砲、車両内銃器の不法所持の罪で懲役10年の判決を受けた。1993/9/29、対象は他の受刑者との頻繁な騒動及び複数回の暴力的口論のため、通常の受刑者収容所から隔離された独居房に移された。
1993年に財団が実施した、Dクラス職員として理想的な基準を満たす州刑務所受刑者を探す全国規模の調査の結果、再犯の可能性、外部の家族的繋がりの欠如、受刑者間でも社会的に疎外されていたことなどから、D-1098が潜在的な交換材料として注目された。1994/5/12、D-1098のSCP-9000への移送が承認された。
SCP-9000に割り当てられた残りの132人の囚人の中で、D-1098のインシデント・トーテムに関する証言は現在まで最も包括的で認識の深いものであり、このために関連文書と共に添付されている。
以下のインタビューは、1995/7/01に倫理委員会委員であるロンダ・ピアソン博士によって行われました。
«記録開始»
ピアソン: オーデイさん、始めますよ。
ピアソン博士
D-1098は返答せず、腕のかさぶたをめくり続ける。
ピアソン: チェンバースさん?
D-1098: あんたら俺用の名前くれただろ。
ピアソン: そちらが良ければ—
D-1098: それ使えよ。ダチでもねぇんだし。
ピアソン: あなたの要求でしたら。D-1098、DCT-1に10ヶ月収監、現在はDCT-3に1ヶ月。前にお話しした通り、私はピアソン博士です。あなたがTri-1で経験したことについてお尋ねしたく、財団倫理委員会を代表しています。
D-1098: 入って、クソ喰らって、出た。
ピアソン: なるほど。念のため確認しますが、協力は双方にとって有益です、D-1098。これを言って安心できるようなら言いますが、当委員会はあなたと同じクラスの職員を擁護できるよう積極的に交渉します。この証言はシステム再構築に大きな役目を果たすかもしれません。ですから、真剣にお願いします。
D-1098は微笑み、押し殺した笑いへと変わる。
D-1098: 嘘つけ。
ピアソン: 本気です。あなたのことを助けたいのです。
D-1098: あんた、人事の博士号でも持ってんのか?クソ、マジでその見下し様っつうか、スゲェな。余程自分に自信がお有りなんだな、あんた。
ピアソン: 繰り返しの収監でどれほど感情的ダメージを受けたかは想像もつきませんが、どうかやらせてください。そしてインタビュー終了後に、定期的な心理療法に本気で興味があるようでしたら、私が話—
D-1098: (首を振る) そういうのはいい。
ピアソン: わかりました。ではそちらから、お願いします。
D-1098: そもそも— あんたら何が知りたいんだ? ファイルならそこにあるだろ。
ピアソン: あなたの言葉で聞きたいのです。あなたにとって始めやすい箇所から始めてください。あなたがSCP-9000で過ごした時間は他の人よりだいぶ短かったことは理解しています。
D-1098: クソ長かったよ。
ピアソンは進めるよう身振りで促す。
D-1098: わかった。ある夜フェニックスで寝て、起きたら頭にバッグかぶされてた。手と足は椅子にがっちり結ばれてた。トラックか何か— 乗り物の後ろにいるらしかった。もうちょっとスキップするか?
ピアソン: お好きなように。
D-1098: あぁ、じゃ一晩中ここに閉じ込めてやるよ。それで出ようともがいてたら鼻に何かがぶつかった。めっちゃ血が出てひでぇ味がした。トラックは止まって、ボートに投げ込まれた。まだずっと何も見えなかったけど、あんたが冷たくて硬いモンを俺の顔に突きつけてるのはわかった。
ピアソン: 私がやったとお思いなのですか?
D-1098: バッグかぶされてたんだ。知るわきゃねえだろ。
ピアソン: 続けてください。
D-1098: 数時間ボートに揺られて、口の中の血もすっかり乾いた。降りて、あんたらに建物に連れてかれたけど、眩しすぎて吐きそうになった。バッグを裂かれた瞬間、実際吐いた。
最初は病院か何かかと思った。それから別の刑務所だと思った。でもサツは一人も見当たらなかった。いたのはあんたらだけ。顔にはマスクしてて、バイザーが鏡になってるから自分の顔見るのには困らないな。気が利いてら。
ピアソン: どうして警察ではないとわかったのですか?
D-1098: 経験済みだからよ。こいつらは誰も俺の顔を見るや否や顔に叫んできたり、ケツの上にのしかかってきたりしなかった。どころか、なーんにも言わなかった。
全部ブランドイメージに合ってたぜ、おめでとさん。全部すごいイメージ通り。ボディチェックして。ホースで洗い流して。ジャンプスーツ寄越して、あんたが言いたくなさげだった名前をくれた。多分5分10分で記録とられた — 効率的だ。全部効率的。ずうっと無言。
ピアソン: ご自身の生活環境を見てどう思いましたか?
D-1098: 独房か? ケッ、独房と言えるかも怪しかったな。あれに比べりゃ、グリーンの物置部屋でもアパートの一室みたいなもんだ。トイレに、洗面台、寝っ転がる用の板切れ。それと椅子は床に固定されてて、スクリーン端末がその前にあった。こりゃ初めてだったな。
部屋に入って10分もしてないのに、もう頭がガンガン痛くなってきた。そしたらスクリーンがブザー鳴らし始めた。俺に向かって叫ぶんだ、「報告」「報告」「報告」ってな。座ってみたら、これの使い方もわかってなかったけど、あんたらはことごとく効率的なわけで、そこは考慮されてた。勝手に「報告」が始まった。
ピアソン: オリエンテーションでしょうか。
D-1098: あの夜に見たのはあの野郎だけだったな。あいつの顔見たことあるだろ?
ピアソン: アキノ刑務所長でしたら、はい。
D-1098: とんでもねぇ顔だぜ。映像のあいつ見てみるといい。スーツにネクタイ着けて、死ぬほどハキハキしてやがる。あいつはここが馬鹿みたいに好きだったんだな。あの目を見れば、あいつがここを大好きだってことが一目でわかる。
アキノシステム
お前は出来損ないだ。
それを証明する犯罪歴もあるし、そいつは墓までついていく。お前がしたことの全てを、お前が何者かの全てを、全員が知っている。お前は自身の失敗そのものだ。
善悪の区別くらいはつくだろう。今ではちゃんと教えられるからな。だがどれだけ強くハンマーが振り下ろされようとも、お前は突き出た釘のままだった。仮にハンマーが当たったとて、お前は曲がっていたんだ。はっきり言って、お前のような奴に希望などない — ここの外ではな。世界にとっては、お前は出来損ないだ。だが我々は世界ではない。我々が世界を動かしている。
本日をもって、お前はお前のような人間が得られる最高の栄誉を得た。今や、お前はSCP財団の職員に名を連ねている。地位は最低だが、特権は特権だ。
まず間違いなく疑問があることだろう。時間が経てば、答えを得られるはずだ。重要なのは、ここは政府ではないということだ。だが権威ではある。そして2度目3度目のチャンスが欲しいなら — あるいはそれ以上を望むなら、完全赦免が得られると聞けば喜ぶだろう。だがそれは今ではない。
今のところ、あいつらは正しい。お前は出来損ないだ。だがこれは社会復帰だ。あいつらが向こうで与えられるどんなものよりもいい。約束しよう。頭を切り替えて、生活費を稼ぎ、努力すれば、お前が向こうに出たとき、社会の背骨に一つくらい刻めるものがあるだろう。そうじゃなければ、お前は沈み、あいつらがお前について言ったことを全て立証してしまうことになる。
お前は今から、Dクラス職員だ。お前が何者か見せてみろ。
-SCP-9000監督官リチャード・アキノ所長、全囚人に閲覧させる事前に記録されたメッセージにおける、新たに処理されたDクラス職員への演説。
SCP-9000内に駐留するDクラス職員は、データ入力業務に貢献する能力から、財団の存続に不可欠な構成要素と見做されます。
当刑務所は、当初は純粋な収監施設として構想されていましたが、財団の容易ながら不可欠な労働を囚人に外注することでDクラスプログラムを再活性化させるという、アキノ所長の試みの実験場となりました。
アキノの要請により、財団倫理委員会の代表者と刑務所研究を専門とするヴェール内心理学者の一団が協同して、SCP-9000内での生産的活動に見返りを与える最適なシステムを構築しました。
アキノシステムはSCP-9000内で利用される実力主義的モデルであり、各Dクラス職員を適切な仕事に配属し、パフォーマンスと能力に応じて潜在的な上昇志向を引き出すことを意図しています。
システムは3つのレベルで組織されています。
- 審査ユニット: このグループに属するDクラス職員は、他のDクラス職員及び彼らの生成したデータの事務的監督を担当します。主な職務は、データユニットの作成した文書の審査と、SCP財団の内部標準と様式に合致する成果物を生成できるようにするための職員の指導です。この階級の職員はデータユニットにおける努力実績によってその地位を獲得しており、庭への一時解放ヤードタイム、上級の食事、SCP財団での昇進の可能性など、娯楽的特権が与えられます。
- データユニット: SCP-9000の全Dクラス職員は、事務処理後このユニットに配属されます。財団が新たに開発したボディカメラや監視カメラなどの監視技術によって膨大な量の視覚データが生成されているため、文書を補完するための可読性の高い書き起こしに対し需要が高まっています。このような作業は財団の研究部門にとって時間がかかる場合が多いため、視聴覚転写の大部分はSCP-9000に外注されています。
- 生産ユニット: 財団の文書作成基準を遵守不可能なことが明らかなDクラス職員は、生産ユニットに移されます。生産ユニットはSCP-9000の第4層と第5層に位置し、財団の物理的必需品の製造を中心業務とします。上質衣料品、通信機器、標準装備の野外用具は全て生産ユニットが製造を担当します。
アキノシステムは懲罰的措置の撤廃と元受刑者の社会復帰を追求しており、生産ユニットのDクラス職員にも各々の階級における昇進の機会が残されています。生産ユニットで成果を挙げたメンバーには、チーム主任、生産マネージャー、更に外部の、特定の施設での現場試験といった希望的可能性の道が広がっています。
ピアソン: アキノシステムについてどう感じていますか?
D-1098: 賢い。それは認める。賢いよ。
ピアソン: どうしてですか?
D-1098: あんたらは人を動かす方法を知ってる。どのボタンを押せばいいかをな。自分が何かの一部なんだ、これはチャンスなんだって感じさせる。俺たちには他に何もないから、こんな仕事が自分を証明する唯一の方法になる。それが上手くいってるから、賢いのさ。
ピアソン: システムのどの要素が印象的でしたか?
D-1098: ボードだな。
ピアソン: えぇ。リーダーボードですね。あなたは私たちが特に忙しい時期に来られました。ボードは効果的なモチベーターと考えられていましたが—
D-1098: だがあんたは反対してた。そう言おうとしてたな?
ピアソン: はい、実は使用に反対しています。社会復帰を競争に変えてしまっているように感じて。
D-1098: でも機能してはいただろ。さっきの映像を見終えるとすぐにボードが出てきて、そこに俺がいた。数字ゼロ。ファイルもゼロ、ランクもゼロ、なんもない。それでそのほんのちょっと上に、ファイルが1つとか2つとかそんなんが全部あって、それで「俺ならこいつらよりもやれる。こいつらよりもできる」って思う。仕事させるにゃいい方法だよ。
ピアソン: やりがいを感じましたか?
D-1098: やりがいを感じさせたいんだろうなとは感じた。
ピアソンは沈黙する。
ピアソン: 審査ユニットからの報告によると、あなたの初期研修は上手くいったようですね。ある報告書には「財団の書き言葉の語調と標準を本質的に理解していた」とあります。
D-1098: 英語の授業は好きじゃなかった。手を使った作業も好きじゃなかった。でも俺に許されることが一日中画面の前に座ってることだけだって言われたら…… やるべき時にやるべきことをやっただけだ。
ピアソン: 何が好きだったんですか? 学校では、です。
D-1098: 外行くこと。
ピアソン: 運動?
D-1098: (薄ら笑い) あぁ。「運動」が好きだったからな。
文書続き
多すぎる。出鱈目に多すぎる。ロジスティクスの報告によると、やって来るログは週に50から100件。サイト1つあたりで。あー、監視カメラは放っとこう、アーカイブ用だ。そうじゃなくて、何だったか— そうだ、転写が必要なやつ。ボディカメラに— これ全部か? あいつらは絶対やらない。この阿呆博士どもは、絶対に自分ではやろうとしないんだ。記録部も糞溜めだからやはりやらない。それに、あいつらは俺を嫌ってる、から。
[…]
あいつらには時間がない。それはわかってるんだ、ないことは。ここ10年で、最初の30年よりも多くのオブジェクトを記録した。だがこれは馬鹿みたいに単純労働で— 俺たちが何かしないとならん。何故なら、博士どもが座ってそれをやろうものなら、こう言い出すからだ。「こんなの見てる場合じゃない」「あぁ、何でまたこれを見せられてるんだ」ってな。カスどもめ。 (不明なカチャカチャという音)
[…]
俺たちが— あー、引っ張ってきてるこいつらは。こいつらは一生懸命な馬鹿野郎どもだ、そう思うだろ? ゲームを用意してやって、タフさを競わせて、誰が一番チンポコ振れるか競争させれば— やり遂げるんだよ。ちゃんと働かせてやれば、あいつら— 学位持ちよりもいい仕事をしてくれるんだ。
[…]
そもそもこいつらに選択肢なんてあるか? (部屋中に笑い声)
— アキノ刑務所長、財団内務部門会議議事録/29242, 1987年。セキュリティのため一部削除。
データユニットの職員は、公式文書の作成とフォーマットにおいて適切で一貫した表現を展開するために、財団の様式マニュアルのコースを修了し、同時に自身の作業の相互評価を受ける必要があります。このユニットが作成する全ての文書は審査ユニットによって承認されなければなりません。高品質のデータを高頻度で提出することで、Dクラス職員は審査ユニットへの昇進の機会を得られます。
D-1098能力・準備状況評価
過敏性
長時間露骨な内容を閲覧する能力。
評価: 98%
コメント: 躊躇や不安はほぼ全く見られなかった。
構文
財団公式文書の記述方法の慣例に従う能力。
評価: 81%
コメント: 頻繁に改訂を必要とするが、改善を示す。
適応性
データへのフィードバックに対応し、組み込む能力。
評価: 充足。
コメント: 審査ユニット報告書の呑み込みが早く、大きな成長を示す。
概観
D-192 | 審査ユニット責任者: D-1098は最初の2週間の必須教材を、焦点となる特性において平均以上の能力で完了した。更に重要なのは、それを数日でやり遂げたことだ。あのバックログをどうにかしたいのであれば、こいつみたいなやつが唯一の希望だろう。迅速な対応をお願いしたい。今すぐ。
ピアソン: 暴力的なものについて話しましょう。
D-1098: ん?
ピアソン: あなたの暴力的なものへの耐性は、通常から逸脱していると思われたことがあるでしょう。その話について興味があるのですが。
D-1098: そうか? あんま暴力とかの話したいわけじゃないんだが。俺のセンターでの経歴は持ってるだろ。外でこの目で見たのより、ここで見せられたののほうがよっぽど多いな。
ピアソン: Triセンターでですか? インシデント・トーテムの前は、これといって暴力的な—
D-1098: いや。映像だよ。全部あんたらの。透かしとかいろいろ付いてた。
ピアソン: 審査ユニットは、あなたは内臓を見ることに耐性があると記録していますが。
D-1098は肩をすくめる。
D-1098: 映像だから。あっちで起きてるの見るのと、こっちで起きてるの見るのの違いだよ。 俺は昇進したかったから、昇進に集中した。
ピアソン: ふむ。
D-1098: 俺に付き纏ってくる死体は知ってるやつだけだ。知らないやつのことまで気にしてられない。
ピアソン: あなたの過去のおかげで、映像に映っているものを処理するのが楽になったとは思いますか?
D-1098: さあな。どう思うよ。
ピアソン: あなたの考えを訊いています。
D-1098: 一方は生なまで、もう一方は画面。捕まってなかったらこんなの見るこたぁ絶対なかった。だからこれは俺の世界とは違う。映画だ。
ピアソン: エンタメとして観ていたということですか?
D-1098: 俺の世界じゃないって言ったんだ。それで充分だろ?
文書続き
先日、RAISAから手紙が来た。転写の停止を求める内容だった。何でだと思う?
[…]
向こうがお怒りだからだよ。バックログについて激怒してるんだ、なんだ、もう8、9ヶ月分だったか? それと受け取る転写に怒ってる。どの何よりも、お前たちのクソみたいなミスを直さなければならんことに憤慨してるんだ。 (書類を読む) 「不正確なフォーマット」、「支離滅裂な構文」、「タイムスタンプがない」。お前たち、ここで何やってるんだ? 本当に何やってるんだ?
[…]
もう勘弁してもらいたいな。さっき連れてきた蛮人の半分は生産に回さなければならなかった。奴らは読むこともできないし、書くこともできないし、学ぶこともできない。もう一度聞くが、俺たちはここで何をやってる? それでお前たちはこのゴミを承認してると? いい加減にしろよ。
(アキノはプラスチック製の整理ケースを部屋の向こうに投げる。)
もう手紙は受け取りたくない。いいか? 完全赦免以外ならそいつらの頭の上に何ちらつかせておこうが俺は気にしない。データユニットにいい仕事するやつがいたら — いい仕事な — そいつを粉になるまで使い潰せ。粉になってもまだ潰せ。
せめてそういういいやつを見つけてくれ。
— アキノ刑務所長、審査ユニット責任者へのSCP-9000内部演説、1992年。
以下は、D-1098の書いた、選択された全文転写の要約です。
作成日: 1994/5/25
作成番号: 1098-015
データ源: カナダ、オンタリオ州、シルバーセンチュリーケア
転写概要: 機動部隊デルタ-1の撮影した8時間23分のボディカメラ映像。映像には、SCP-████実体の影響を受けた長期介護施設に動員された部隊が映っている。影響の結果、居住者は建物の内側表面と永久的に融合しながらも意識を保った状態になっている。負傷を避けた除去を何度か試みたが失敗し、残りの映像は、機動部隊が影響を受けた居住者を安楽死させ、拘束された場所から強制的に引きずり出す様子を中心に展開する。
作成日: 1994/5/26
作成番号: 1098-039
データ源: ノースダコタ州、ファーゴ
転写概要: プライベートファイル共有トラッカーから回収した、プロによって製作された2時間5分の映像。ファーゴ住民であるSCP-████が自身の顎を切り離して、自身の性的パートナーである身元不明な男性を丸ごと捕食している。消化と、その後に排出が続く。
作成日: 1994/5/30
作成番号: 1098-043
データ源: 南スーダン、アビエイ
転写概要: 暫定サイト-291から入手した12時間のインタビュー映像。財団職員が、スーダン人民解放軍(SPLA)に協調する6~12歳の少年兵にインタビューしている。子供たちは、指揮官が与えたパフォーマンスを向上させる異常な興奮剤によって自身のベースキャンプが完全に壊滅し、SPLA兵43名が死亡した経験を語る。興奮剤を乱用した結果、全ての対象の足及び脚下部に、足指の間の注射点を起点として大きな膿疱が発生していた。事件とインタビューは財団の文書とは無関係と判断され、破棄された。
データユニットリーダーボード - 5/30
| 順位 | 職員番号 | 日別提出数 | 総提出数 |
|---|---|---|---|
| 284 | D-1098 | 4 | 43 |
| 285 | D-223 | 0 | 48 |
| 286 | D-4922 | 2 | 38 |
| 287 | D-031 | 0 | 32 |
概観
D-192 | 審査ユニット責任者: D-1098は難解な資料の作成において並外れた能力を示した。他の職員が視聴に認知的な困難を抱えた映像において卓越している。フィードバックもすぐに反映する。今後三週間、数回の"プレミアム"クラスの食事と引き換えに、仕事量の増加を熱心に志願している。
ピアソン: Tri-1が財団施設の中で最も記憶処理を大量に消費していたことは知っていましたか?
D-1098: 平方インチあたりの腰抜けが一番多いってことか。
ピアソン: 何故そんなことを言うのです?
D-1098: なんで俺が他のやつらより早くリーダーボードを駆けあがったか分かるか?
ピアソン: 薬を断ったために成功したと考えているのですか?
D-1098: ちょっとでも考えてみりゃわかるもんなんだけどな。
ピアソン: 繰り返しますが、教えてください。
D-1098: 順位はパフォーマンスに基づく。パフォーマンスは経験に基づく。そもそもどこを間違えたか覚えてない状態で何をどうやって改善しろって?
ピアソン: 意図的にトラウマを抱えることを順位の適切な代償と見做しているのですか?
D-1098: トラウマになんかなってねぇよ。報酬が欲しかった、俺はそのために働いた。箱から抜け出せるチャンスがあるだなんて言われたら、一日中だって人が死ぬのを見る。問題は、実際に出られたやつが一人もいないってことだ。映像の中でDクラスを見るのは、そいつが滅茶苦茶にされてるときだけだ。実験されたり、殺されたり、いろいろ。
ピアソン: 私たちは少しでも安全性を—
D-1098: わかった、もういい。マジで。
文書続き
SCP-9000支給の自己記憶処理キット
とても真剣な話をしよう — 記憶処理について。さて、Tri-1と財団はお前たちの健康を他の何よりも大事にしている。なんて言ったって、お前たちも財団の一員だからな。お前たちもここで我々と同じくらい一生懸命に働いている。カーテンの裏側を覗けるという特権は、時々手に負えなくなることがある。
忘れたくなるようなものを見ることもあるだろう。そこで朗報、忘れることは可能だ。覚えておいてほしいが、記憶処理は恥ずかしいことではない。心に引っかかってるものをすぐに取り除ければ、人類が未知と戦う最前線でより活躍できる。
処置が必要? 端末で注文するだけでいい。実に簡単。
— アキノ刑務所長、Dクラス職員オリエンテーション映像 - 「記憶処理」より抜粋。SCP-9000に配属された全ての新規職員が閲覧する。
以下は、D-1098の書いた、選択された更なる全文転写の要約です。
作成日: 1994/8/3
作成番号: 1098-329
データ源: ニューヨーク州ニューヨーク市
転写概要: アメリカ・オンライン社のシニアソフトウェアマネージャーでニューヨーク市民のアンドリュー・マコが、SCP-████に叱責される様子をデスクの背後から記録した4時間の編集された映像。映像を通して、マコ氏は妻や子供たちを含む近親者の死を繰り返し伝えられる。マコ氏の反応が弱まると、映像はほぼ同一の画面に切り替わるが、別の家族のメンバーに関するものになる。映像を通して、マコ氏は以前伝えられたことの知識を保持していないようである。SCP-████は映像全体を通して自慰行為をしている。
作成日: 1994/8/15
作成番号: 1098-432
データ源: ロシア、ノヴォシビルスク州
転写概要: GoI-299("コマロフ運動")から入手した54分間の編集された映像。未知の都市環境にて、過激派がGoI-298("キー・アーミー")の将校をSCP-████実例を使用して拷問する。SCP-████は多数の昆虫種から構成された大きなキューブの形状をとっている。将校は裸でキューブの中に押し込まれ、将来の軍事作戦について尋問を受ける。彼は意識喪失と回復を繰り返し、突然映像が終了する。最後に将校の頭部を捉えた静止画では、その顔の開口部から昆虫が現れている様子を映している。
作成日: 1994/8/19
作成番号: 1098-444
データ源: シナロア州、マサトラン
転写概要: シナロア州の地下教区にて、聖痕カトリックのミサを映した1時間45分の記録。この祭儀は「傷つきし秘跡」の授与と呼ばれ、伝統的な「盲目の司教」がSCP-████を実行する。SCP-████は、小さな尖った物体と指を使用して、痛みを伴わずに眼球を視神経から切除する自傷型超常外科行為である。儀式の終了時点で、この手順は7名の若者によって自主的に実行され、彼らの片眼は部分的に視力を喪失する。
データユニットリーダーボード - 8/25
| 順位 | 職員番号 | 日別提出数 | 総提出数 |
|---|---|---|---|
| 086 | D-120 | 6 | 400 |
| 087 | D-1118 | 4 | 388 |
| 088 | D-1098 | 7 | 462 |
| 089 | D-200 | 2 | 882 |
概観
D-192 | 審査ユニット責任者: D-1098は、報酬要求を妥当なもの、主に食事を基本としたものに抑えながらも、最高レベルの生産性を示し続けている。ヤードタイムを求めたが、それは審査ユニットの特権だと説明された。順調にいけば、将来的な審査ユニットへの昇格候補となりうる。議論のために委員会を呼ぼうか?
ピアソン: 何かがおかしいことに気付いたのはいつですか?
D-1098: フォルダー見てみろ。
ピアソン: おかしいことにあなたが気付いたのはいつですか?
D-1098: 知らね。
ピアソン: 認知的衰弱らしきものがあったと聞きました。ストレス性の。
D-1098: なるほど。
ピアソン: それについてお話しください。
D-1098: 書類は持ってんだろ。何が何だか— 少しも覚えてないんだよ。
ピアソン: ある転写があなたに強い反応を引き起こしました。それと、トーテム異常の影響を受けたのはあなただけではありません。何を見たのですか? 思い出せますか?
D-1098は首を横に振る。
D-1098: なあ、ホント— 知らねぇんだよ。あんたが知ってんだろ?
文書続き
SCP-9000副管理官兼刑務所長リチャード・アキノへの考慮事項
内部部門が実施したSCP-9000の現存空間の最近の調査において、構造物内にある使用中のエリアにおいて複数の異常な懸念要因が挙げられました。具体的には以下の通りです。
- 工学的欠陥の可能性— 具体的には鉄筋の腐食、コンクリートのひび割れ、全層における床の傾き— に一般に起因する構造的完全性の悪化
- 多数の修繕にもかかわらず、SCP-9000構造内の欠陥点を永続的に修復することができなくなっていること
- 地中レーダースキャンにより、SCP-9000の物理法則に反する"底面"の下に不明な物質の腫瘍が溜まっているのが検出されたこと
これらの懸念点は、SCP-9000とそこに駐留する職員への潜在的な危険を示唆しています。これらの問題について議論するため、財団の工学・建築マネージャーからなる委員会が招集され、これらは異次元空間内に施設を建造したこととは一切無関係と判断されました。
これらの問題は、超感覚レベルにおけるSCP-9000の総合的環境に起因するものではないかと懸念しています。そこで、財団認定のゲシュタルト専門家数名の紹介を添付しました。彼らなら、そちらの環境の非物質的健全性の欠陥を修復するための評価と適切なコース修正モデルを提供してくれるはずです。
上記の提案をどうかご考慮ください。
ヴァリ博士
SCPF内務部門
以下は、D-1098の書いた、選択された更なる全文転写の要約です。
作成日: 1994/11/19
作成番号: 1098-902
データ源: プライベートクルーズ定期船"セイント・オブ・ザ・シー"
転写概要: 不明な手段で秘密裏に記録され、動物愛護団体に売却された3時間の未編集映像。金融、法律、政治の各界の富裕層がプライベート海洋船での社交イベントに集合している。スタッフチームが巨大な水槽を公開すると、そこには毛深く角のあるクジラに似た、未知の巨大な海洋哺乳類がいる。当該生物は鎮静され、水槽が持ち上げられる。映像全体を通して、ゲストは特別な道具を誇示し、生物の内臓を抜き取り、少量ずつ消費する。その間、スタッフは生物が意識を失わないよう、未知の鎮静剤や興奮剤を大量に注入する。財団のボディカメラ技術の盗難に関わる進行中の事件に関連すると思われる転写。
コメント: D-1098は、船上のゲストの身元について繰り返し情報提出を要求した。彼は、背景にいた一団が、Dクラス職員としてのオリエンテーションを受ける前から知っていたフィラデルフィアの知人らだと考えた。身元は特定できなかったが、財団はこの報告を単なる混乱によるものとしている。
作成日: 1994/11/19
作成番号: 1098-903
データ源: バイエルン州、ミュンヘン
転写概要: 不明な倉庫で撮影された15分の未編集映像。オラフ・ヘンドル — 東ドイツのネオファシスト犯罪組織"盗まれた国家"のアクティブな構成員で、PoI-████として知られる — が仲間の前で、自身の異常性を披露している。明らかに白人ではない5人のフードを被った男性が一列に並んでいる。ヘンドルは順番に各人の額を叩く。これにより彼らは互いに引き寄せられ、次第に筋肉群の制御を失って完全に軟化する。ヘンドルは各人を物理的に操作し、彼らの身体で集合的に球状の構造を形成する。ヘンドルの仲間は犠牲者を喝采し、殴打し、ライターやタバコで軽く焼く。
コメント: D-1098はその後、フードを被った犠牲者の声と体格から彼らを知っていると主張して、4件の情報提供要求を行った。財団の事件記録がD-1098の主張と一致しないため、要求は同様に却下された。D-1098は作業量増加による精神不全の可能性があるとしてフラグ付けされたが、評価はまだ実施されていない。
作成日: 1994/11/19
作成番号: 1098-904
データ源: 取得経緯不明
転写概要: 子供の8歳の誕生日パーティーを映した25分間のアマチュア録画。恐らく親戚が撮影したものと思われる。子供は友人や家族と遊び、プレゼントを開封し、様々なパーティーフードを食べる。映像の人物はジェイソン・デイビスと特定された。録画内に顕著な異常は一切発見されなかった。既存の財団文書との関連が不十分。取得経緯、起源、関連は不明。
コメント: D-1098は3分以降の転写を拒否した。監視映像には、D-1098が端末の録画再生を何度も停止しようとして失敗し、最終的に物理的破壊に訴えて稼働を停止させる様子が映っている。D-1098はモニターの破壊を試みて右手を骨折した。武装警備員に連れ戻された際、対象は取り乱し、苦痛を感じていた。彼は警備員に対し、自身の不利益となる管理上の不正行為を行ったとの虚偽の口実で暴行を試みた。
D-1098はその後SCP-9000の精神科棟に移送され、審査ユニット管理部がインシデントの調査を行った。
データユニットリーダーボード - 11/19
| 順位 | 職員番号 | 日別提出数 | 総提出数 |
|---|---|---|---|
| 015 | D-004 | 10 | 1499 |
| 016 | D-129 | 10 | 1456 |
| 017 | D-1098 | 10 | 1400 |
| 018 | D-891 | 8 | 1430 |
概観
D-192 | 審査ユニット責任者: またおかしくなったのが一人。ポジションは据え置いとこうか? 数日で精神科から戻ってくるだろうから。
D-029 | 審査ユニット司令官: それはもう許されてない。完全に除くってのがアキノ直々の政策だ。調査はもうされてて、どうやら逃がした魚分の生産性が落ちりゃもっと働かせるってさ。
D-192 | 審査ユニット責任者: ログを見て苦情を言ってくるやつは今週だけでもう8人か。
D-029 | 審査ユニット司令官: 12人だろ。管理部も知ってる。そっちもここ担当してるからな。ご存じだろ。
D-192 | 審査ユニット責任者: 言いたいのは、これが警告サインだって互いに気付いてるってことだ。ダムはいつか決壊する。もうすぐに俺らのこと書かれるぞ。
D-029 | 審査ユニット司令官: 余計なこと言うんじゃねえよ。
ピアソン: データユニットの職員は、資料の中に見覚えのある画像や顔を見たと報告しました。はっきりした原因はありませんでした…… 当時は。あなたはとりわけ激しく反応しました。ジェイソン・デイビスに。
D-1098は頷く。
ピアソン: インタビューより前にあったことは読みました。走行中の発砲について。
D-1098: で?
ピアソン: 悲しい出来事でしたね。
D-1098: 何考えてんのか言ってみろ。
ピアソン: 説教する気はありません。あれは悲劇でした。あなたが受けるべきと社会が既に決めた結論に私の個人的な不満をぶつける必要性は感じません。
D-1098: 俺は自分の命で、あの子の命を償ってる。
ピアソン: それがあなたにとってのモチベーションなのですか? 改悛ということですか?
D-1098は首を横に振る。
D-1098: 何のためのだ? 子供は死んだ、その後俺が何しようがどうにもならない。一日中許してくれって願って、自分のために働くなりいろいろ下らねぇことして。それであの子の親に、叔父や叔母に何をしてやれてる? 既にあの子に最後の誕生日プレゼントを、最後の食事を、最後の登校日を、何もかもを与えちまってんだぞ。俺は知りもしない。俺が死んだ子供よりも上手くやってるなんて聞いたとして、あの人たちがちょっとでも気分良くなると思ってんのか? 糞くらえ。
ピアソン: 行動の重みは自分で決めるものです。率直に言ってしまうと、あなたにとっての優先順位がわかりません。
D-1098: どういう?
ピアソン: D-1098、あなたが健康で充実した人生を奪ったのはデイビスくんだけでは到底ありません。あなたの犯罪歴は読みました。それでも特別彼に執着しているようですね。
D-1098: あの子は子供だった。俺は子供を殺した。あの弾はあの子に向けたものじゃなかったが、関係ないな。結局、俺はあの子を殺した。それが俺の背負う重みだ。そしてあの子は幸せな子供で、家族が一緒にいた。俺の知り合いの中で、たったそれだけで殺されるようなやつが何人いたか知ってるか?
ピアソン: トーテム異常は、感情を揺さぶるイメージが意図的に選択される事象でした。他の人にも、いろいろな状況で起きていました。
D-1098: あんたらみたいなやつにとっちゃ命を奪うことなんざ大したことでもないなんて言い出すんじゃねぇぞ。
ピアソン: D-1098、あなたの状況に対しては友好的態度を続けています。私たちは異なる場所から来て、異なる価値観を持っています。それはよくわかっています。
D-1098: ホントかよ。あんたらの何がむかつくかわかるか?
ピアソン: お願いします。
D-1098: あんたらは簡単にやり過ぎてんだよ。どの重荷を選んで持ち上げるかとかそういう話したいのか? 収容所を運営することについてはどうだ? このトーテムとかいうやつのせいで何人死んだ? 俺のせいで死んだやつら全員を悼んでないって責めてるけどさ、あんたこそどうなんだよ。
ピアソン: 断言しますが、私はこの施設で起きる全ての死に強くショックを受けています。しかし今話しているのは私たちの道徳ではなく、あなたの道徳です。
D-1098は沈黙している。
ピアソン: ではチェンバースさん、犯罪歴を引用します。ダーネル・ホワイト。アレクサンダー・オーム。"セブン・オー"。改めて、あなたは自身や友人が関わった全ての殺人に祈りを捧げますか? それともあなたが後悔しているものにのみ捧げますか?
D-1098: あいつらは兵士で、あれは戦争だった。何のために参加してるかは知ってるだろ、それが戦争だ。兵士は死ぬ。民間人は殺さない。
ピアソン: しかし我々は現にここにいます。
D-1098は突然立ち上がり、歩き回り始める。
ピアソン: 座ってください。
D-1098: その名前を持ち出すんじゃねえ。あんたらもここで同じことしてんだから。否定しようともすんなよ、あんたらが何してるか、あんたすら見るの許されないこと見てきてんだ。殺して、ブツを運んで、どこにでも旗掲げて、サツよりもたくさん囚人連れて。何が違うんだよ?
ピアソン: 座ってください、D-1098。繰り返しませんよ。
D-1098: 何が違うのか教えてくれよ。
ピアソンは背後の扉に立っている警備員に身振りをする。2人の男性が、財団製のアサルトライフルを抱えて前に出る。
D-1098は着席する。
ピアソン: 我々はもっと大きな集団です。
文書続き
ゴミが。また調査だって? 俺の家を? クリップボードを血が出るまでケツに突っ込んでやる、この糞博士どもが。 (アキノは書類の束を机から床に投げ捨てる。) 糞博士ども。
[…]
誰も管理者様本人の命令がなきゃここには来ない。お前らは全員警備員だ。構造の欠陥は見てないか? 司令官、生産の。そっちは全部大丈夫だよな?
[…]
大丈夫に決まってるよな。あいつらは嘘ついてるんだから。俺の首を狙ってるんだ。記録部はバックログが嫌いで、倫理委はシステムが嫌いで、ロジスティクスはぜーんぶ嫌い。それでやって来て、嘘の数字並べて、何だか占い始めて、外からの介入が必要な見えない問題が突然出てくるだって? 嘘もいいとこだろ。
あいつらは、自分がコントロールできてなくて、俺がそうしてるからこの場所が嫌いなんだ。そして俺たちが数字を高速処理して仮説だかなんだかを立てる貧弱な糞食らいの書類係じゃないから、俺たちを嫌ってるんだ。こいつらはラボの外で起きることなんざ微塵もリスペクトしやしない。その中で俺たちが組織の中核を担ってて、財団と世界最強の国との窓口になってるってことだから、俺たちを妨害したいんだ。そうに決まってる。
[…]
こう考えてみろ。ログにミームエージェントを忍び込ませやがったせいで精神科に入るやつが増えてると。もう1ヶ月も言ってるけどな。内務が調査中だ。餌には釣られるなよ。
[…]
よく聞け、もし奴らが野郎どもをここに送り込んでくるとしたら考え直すべきだ。こっちにだって野郎どもはいるからな。あぁ、殺人鬼だっている。こいつらはもう何年も血と内臓を糧にして生きてきた。目を見てやれば、そいつが殺人鬼だと、けだものだと、肉を欲してるとわかる。その糞野郎どもに、俺たちは準備万端だって伝えておけ。俺たちだけじゃない。連邦の中にも俺のヤマで喜んで犠牲になるってやつはいる。白衣のやつらを全員屋上から吊るしてやるよ。
(アキノは立ち上がり、個人助手のD-004の頭を机に叩きつけ、一瞬床にぶつける。D-004は立ち上がり、すぐに平静を取り戻す。)
一人残さず、だ。
— アキノ刑務所長、SCP-9000内務局会議、1994年12月、セキュリティのため一部削除
精神科ケア概観: D-1098
D-1098は入院以来急速に回復しているものの、測定可能な生産性の顕著な低下が見られる。この症例は最近入院したDクラス職員と同様であり、ストレスや神経過敏による精神衰弱を原因とする反応が見られる。職員にこれらの反応を引き起こすことを意図する異常な映像が施設のアーカイブ内に存在する可能性が、現在SCP-9000内務部隊により調査されている。
D-1098のデータユニット業務における能力と適応度の再試験が行われた。患者は生産時間の著しい悪化と機械的・言語的構成の不十分が見られた。データユニットのリーダーボードにおける以前の地位喪失は、D-1098にとって顕著な懸念事項であった。これに、感情を呼び起こす映像を閲覧したことによるストレス関連要因が加わったことが、D-1098の現在の不全の最も可能性の高い要因である。
D-1098は一貫して記憶処理を拒否している。患者への0.25 mgのアルプラゾラムの定期投与が承認されている。
データユニットリーダーボード - 12/3
| 順位 | 職員番号 | 日別提出数 | 総提出数 |
|---|---|---|---|
| 001 | D-002 | 11 | 2122 |
| 002 | D-224 | 10 | 2110 |
| 003 | D-010 | 8 | 2111 |
| 004 | D-300 | 9 | 2100 |
概観
D-192 | 審査ユニット責任者: トップ10のうち半分が脱落した。何が起きてるんだ?
D-029 | 審査ユニット司令官: 何か意味してると思ってるのか?
D-192 | 審査ユニット責任者: わからない。色々とまあ入ってくるが。妨害だかどうとか。いい大人が喧嘩してるんだろう。
D-029 | 審査ユニット司令官: うちの生産ユニットのやつは違うって言ってたぞ。妙なことが起きてる。マジで妙だ。警備員すら心配してる。報告を待とう。
ピアソン: 入院後、あなたの生産は著しく遅くなりました。
D-1098: ああ、入院してたな。
ピアソン: 回復後も、あなたは以前と同じ数字を出せませんでした。審査ユニットは、あなたが不注意になったと書いています。
D-1098: それ以来、無意味に感じたんだ。一週間も外れさせられて、リーダーボードも最下位転落。頑張ってどうなる?
ピアソン: これはトーテム異常によりSCP-9000内で異常活動が大きく増加した時期と一致します。最初に入院して以降、何か気付きましたか?
D-1098: わかんね。そん時はただ観て、書いた。あちこちでいろいろ起きてた。声とか、場所とか、時々それ以外もあったけど、無視した。全部無視されるから、注意を引こうとするのもやめた。
ピアソン: この異常はデイビスくんに関するイメージを表示し続けましたか?
D-1098: ちょっとだけ。フレームの隅に子供がいたり。誰かのラストネームがそれだったり。背景に俺の車があったり。無視した。やってみれば画面を無視するのは簡単だ。
ピアソン: トーテム異常について心配はしていましたか? あなたは異常存在のもたらす不幸や危険についてよく知っているはずですが、これが将来的に書き残されねばならないおぞましい転写の対象になるかもしれない、などとは考えましたか?
D-1098: 何かが起きてんのは知ってた。それがどんどん悪くなってんのも知ってた。でも関係なかった。ここの全部がそれで無茶苦茶になってくれるなら、それでいいってな。
ピアソン: なるほど。
D-1098: 何でトーテムって呼んでんだ?
ピアソン: まさにそういうものだったからです。人々の集団を象徴するもの。この場合は、施設とその中の人たちによって形を与えられた、渦巻き、脈打つ生々しい意識の塊。皆さんが日々考え、感じ、身をさらしてきたもの。
D-1098: バカ怖ぇな。
ピアソン: 予想外でしたか?
累積レポート: SCP-9000
アキノ刑務所長の考慮のためSCP-9000内務局により編集
以下は、前四半期にSCP-9000内で観測された多岐にわたる異常現象の一覧です。

1994年11月
- SCP-9000精神科棟に入院したDクラス職員は、主にデータユニットから、54名に上った。転写作成中の神経衰弱、認知の停滞、幻聴が報告された。
- 明らかな出所や組織間の情報源のない視聴覚映像が17件に上った。分析により、関連映像の内容とそれを閲覧したデータユニット職員との間に軽微な個人的連関が認められた。
- 生産ユニット作業場において、主に度重なる機械の故障を原因とする軽度から重度の負傷が102件に上った。修理は決まって失敗に終わった。
- 独房内の視聴端末に不具合があり、映像が再生され続けるという報告があった。手動で停止した場合、端末は自動で起動して再生を再開した。
- SCP-9000全層において幻聴の報告があった。具体的には壁、床、天井からの激しい呼吸音である。
1994年12月
- SCP-9000精神科棟に入院したDクラス職員は103名に上った。症状は8月4のものと一致した。
- 明らかな出所や組織間の情報源のない視聴覚映像が80件に上った。性質は8月のものと一致した。
- 生産ユニットの作業場から排出される産業廃棄物量が著しく増加した。視界の霞み、悪臭、呼吸器系への影響により、作業環境は激しい影響を受けた。汚染物質の化学分析により、これは死体の焼却によって生成されるものと一致することが判明した。
- 配管システムが上皮組織の巨大な塊により影響を受けた。
- データユニットにおいて、主に生産性順位の低い職員に対して麻痺が蔓延。職員は完全に意思疎通や動作が不可能となった。終了命令を検討中である。
- 生産ユニットのDクラス職員25名の集団が、業務時間中に互いに融合した。製造ラインで隣り合っていた際、足後部に沿って、靴を貫くようにして網状の結合膜が形成されていた。分離は深刻な負傷を引き起こした。
- 82名のデータユニット職員の独房に、連結されたチェーンと、高さの等しいフック掛け器具が出現した。37名の職員が失われた。
- 転写担当職員の独房のリアルタイム記録を映した多数の視聴覚映像が発生した。不明な発生源から現れた組織液と内臓の貯留を除けば、現実と描写は一致する。
- SCP-9000の照明器具が操作不可能となった。独房内照明は常時最大光度で点灯していた。
- アキノ刑務所長とSCP-9000内務局に無断で外部組織による介入を試みた職員は、SCP-9000の最高高度からの自由落下により処刑された。死体は8時間以上にわたり転落と衝突を繰り返し、深刻な損傷を与えた。
1995年1月
- SCP-9000精神科棟に入院したDクラス職員は304名に上った。症状は以前までの月のものと一致した。
- 明らかな出所や組織間の情報源のない視聴覚映像が242件に上った。性質は以前までの月のものと一致した。
- SCP-9000へのアクセスが強く影響を受けた。構造への出入りは不可能と考えられた。
- 審査・データユニットの人のいる独房も同様の影響を受けた。いかなる階級の職員も扉を開くことができない。食料や医薬品の配給が不可能なため、28人が死亡した。
- SCP-9000の配管システムが完全に汚染された。トイレ、シャワー、蛇口を濾した水から、大量の排泄物、血液、化学排出物、下水が発見された。
- 職員及び警備員による非異常性の自殺後、自傷した負傷を維持したまま身体が蘇生した。接触可能な場合は、職員は安楽死させられた。
- 3つの独房内部が0.09 mの層に圧縮され、天井、設備、職員、床からなる平板な表面が形成された。
- 生産性を維持しているデータユニットの職員は、生産量があり得ないほどに向上した。高順位の職員は、一日に58件の転写を完成させているのが観察された。
- 終了されたDクラス職員の端末から数千件のデータユニット作業が提出され、異常に高い生産量が得られた。成果物は妥当なものと判断され、財団の文書に組み込まれた。
- アキノ刑務所長は長期間、最大数日間姿を消すことが確認された。内務調査により、SCP-9000の生産層への不可解な訪問が数回記録されていた。
1995年2月
- SCP-9000の精神科棟が消失した。
- SCP-9000のバックログに残っている全ての視聴覚映像は異常な起源を有すると判断された。
- SCP-9000内部構造のレーダー計測値は第6層の存在を示した。この層へのアクセスの試みは、職員の損失と失敗に終わった。
- SCP-9000の生産ユニット作業場にて、人体組織と体液の腫瘍塊が自発的に成長していた。Dクラス職員は決まってこの組織を認知していると主張し、財団加入以前に関係のあった人物のものと認識した。
- SCP-9000の全独房が、以前異常に封鎖されていたものも含め、開放されていた。
- 結果として大規模な暴力行為が発生したが、警備員はSCP-9000の内部構造に組み込まれた超音波兵器と化学安全装置によってSCP-9000のDクラス職員を再度統制することに成功した。推定450名のDクラス職員が残っており、各独房に再配置された。
- アキノ刑務所長が失踪した。調査が進行中である。
- SCP-9000-Bが出現した。
以下は、D-1098の書いた、選択された全文転写の更なる要約です。注意点として、D-1098は上記の暴動に参加していませんでした。D-1098は入院以降、一貫して自己満足しており、生産的でした。
作成日: 1995/2/22
作成番号: 1098-1545
データ源: SCP-9000-Bの異常な副産物
転写概要: 身元不明の財団職員と、D-1098の母親であるマーシャ・チェンバースとのインタビューと思われる、36時間の未編集音声。マーシャ氏はD-1098の人生に関わる些末で漠然とした逸話を長時間にわたり語る。インタビューを通して、彼女は繰り返しD-1098を厳しく叱責し、彼の行動の原因として、親としての自分の失敗を挙げた。音声の最後の4時間では、ジェイソン・デイビスの死に繋がった走行中発砲の路上カメラ映像を、チェンバース氏が繰り返し見せられる。
コメント: D-1098は47時間休むことなく完全な音声を書き起こした。転写は著しい文法的・構文的ミスを含む。
作成日: 1995/2/25
作成番号: 1098-1546
データ源: SCP-9000-Bの異常な副産物
転写概要: ██████████O5評議会██████████████ ███████████████狩猟小屋███████████████ ████████████ ███████████ █████████████████████ ████████████ ████████████████ ████████████████ ████████████████ ██████████████████はその後、包装・加工され、SCP-9000の既成の食事に含められた。
コメント: 転写は監督評議会要求の下、内務部門により削除済。
D-1098は転写後に記憶処理を求めたが、SCP-9000の記憶処理供給が完全に枯渇していたため、補償を受けることができなかった。これはD-1098がDクラス職員として雇用されて以降、唯一行った記憶処理要求である。
作成日: 1995/2/26
作成番号: 1098-1547
データ源: SCP-9000-Bの異常な副産物
転写概要: 長さ不明。財団法医学部門の犯罪現場データベースから収集された数万枚の静止画のスライドショー。画像は10秒ごとに切り替わる。
コメント: D-1098は映像を25時間分転写し、端末の前で眠りに落ちた。D-1098は繰り返し特定のスライドを一時停止・再生しており、その内容に固執しているようであった。スライドショーの累計時間を特定しようとしたところ、停止することなく続いていることが判明した。
概観
自動 | TO:D-1098: 以下は自動メッセージです。データユニットでの活動の継続的な低下のため、あなたは拘禁センターTri-1の生産ユニットに異動となります。付近の財団警備員に、直ちに生産フロアへ移送するようお知らせください。
おりろ| TO:D-1098: 降りてこい
ピアソン: 何故暴動に加わらなかったのですか? あなたも財団への憤りはあったはずです。
D-1098: どうせ鎮圧されるから。実際された。こっちの数がどんだけいようが、向こうは銃とかガスとかアーマーとか持ってる。あんたが言ったように、デカい集団だ。ただ観るのを続けたかった。
ピアソン: 異常な映像に没頭していたのですか?
D-1098: あぁ。あれは俺の窓だ。キモくて、反吐が出て、血まみれのが画面の向こうにあった。それが個人的な内容になってくると、話しかけてきた。母さんの声聞いたり、あの子見たり、好きなだけ全部観れた。
ピアソン: 不快には感じなかったのですか?
D-1098: 俺を映す窓だから、見なきゃいけなかった。
ピアソン: 生産ユニットに異動させられましたね。それについてお話しください。
D-1098: そこで、あれ見た。
ピアソン: 理解はできましたか?
D-1098: いや。あんたら全員合わせたよりも権威があることだけわかった。あれを、あのトーテムを作ったのは俺たちの思考だって言ったよな。だがあんたらも毎日そこにいた。あんたらも関与したんだ。
ピアソン: 確かに。このような無意識物質は単一体です。我々はそれを類魂エグレゴアと呼びます。そしてこれは、それを形成したもの同士を区別しません。端末の前で過ごした苦悩の夜、怒りや不満の鬱積した瞬間、施設中で起きる不可解なインシデント、その全てが意図せずしてそのようなものをこの世界にもたらしたのです。感情が多量に集中する場所、特に異常存在と重なる場所で起きることが知られています。嬉しくもない話ですが。
D-1098は沈黙している。
D-1098: それを見せるなよ。
ピアソン: 誰も見ることは許されていません。
D-1098: いいから二度と見せるな。
文書続き
SCP-9000-B
SCP-9000-Bは、現在SCP-9000の第5層の直下に顕現している類魂です。直接観察の試みは失敗に終わりました。基底現実からのSCP-9000へのアクセスが回復し、専門的な調査が実施されるまで、SCP-9000-Bに関する情報はSCP-9000内務チームの残存メンバーの実施する調査に限定されます。
SCP-9000-Bの起源は、SCP-9000内の人物の集合意識に直接関連するものと推測されています。実体はSCP-9000の視聴覚端末とインターフェース接続する能力を有し、これは刑務所が自然な及び異常なバイオエネルギーを主な動力源として使用しているためと考えられています。SCP-9000は異次元空間に存在するため、従来の電力網の使用は不可能と判断されました。SCP-9000-Bは大量の体肢を所内のケーブルや関連機器に融合させており、既存の映像の操作や新たな映像の作成を可能としています。それ以上の性質はまだ特定されていません。
SCP-9000-Bは成長を続けており、1ヶ月以内にSCP-9000の第5層に侵入すると予想されています。
— SCP-9000-Bに関わる予備文書、SCP-9000内務局より。
(アキノ刑務所長は、SCP-9000の生産フロアのボイラー室と思われる工業的な背景の前に立っている。)
(彼の外見は乱れている。制服はほとんど身体に合っておらず、生産フロアの気温状況により汗が衣類に染みている。このログは、2月初旬にアキノが失踪して以来3週間ぶりに彼が記録されたものである。)
(SCP-9000支給のジャンプスーツを着た身元不明の死体が、彼の背後の床に横たわっている。頭部はフレームの外にあるが、付近の壁や配管に飛び散った残骸から、頭部に致命的な銃撃を受けたことが示唆される。)
(アキノが発言する。)
やつらは欲しいものを手に入れた。全部やった。全部やりやがったんだ。
この下に何かあるが俺は— どうやってそこに置いたのかはわからん。奴らはこの監獄に地獄を作った。
糞どもが。
俺たちは良い行いをしていた。奴らはそう思っていないが、間違いなく。
現場で撮影した1秒1秒を、記録部から要求される転写という転写を、今度は全部自分でやらなければならなくなる。
だがやる気はないだろう。今のこれに慣れてしまったのだから。他の誰かにこれを丸ごと放り投げてしまうのは実に簡単だから。それを俺が見せつけてしまったから、あいつらはもう止まれない。ログなんか過去にも書いたことないし、これから書き始めることもない。それはDクラスの仕事だから。
誰が道を示してたのか知ることになる。誰がずっと正しかったのか。思い知らされ続けることになる。アキノこそが正しい考えを持っていたと。彼が塹壕を掘り、そこでやつらを戦わせていたと。
勝手にすればいい。どうでもいい。二度とこんなのを自分でやるのはごめんだって気付いて、もっともっと監獄を建て、塹壕を掘り、永遠に止まらない。認めたくなかろうが何だろうが、いい仕事を続ける。誇りでもなんでも持たせてやれ。心の奥底では、これが間違いだったと知ることになる。全員くたばれ。
今に見ていろ。
(アキノは拳銃を口の中に入れ、引き金を引く。)
— SCP-9000のバックログアーカイブ内で発見されたログの転写、SCP-9000データユニットのメンバーであるD-428が作成。アキノの死体は回収されなかった。
以下の転写は、インシデント・トーテム解決後にSCP-9000審査ユニットデータベースから取得されました。作成はD-1098の端末によるものとされていましたが、そのようなことはあり得ません。映像はそれと異なる手段で発生したものと判断されています。
«記録開始»
D-1098は独房から、深刻に損傷した不完全な財団支給アーマーを着用した警備員1名に護送されている。SCP-9000は荒廃した状態にある。多くの独房は空になっており、警備員や囚人の死体が床、廊下、天井に散乱している。生存しているDクラス職員が独房の中から、施設の第2層収容ブロックを移動している2人に向かって叫ぶ。
D-1098はエレベーターに連れてこられる。警備員は前に進むよう促す。D-1098は見つめる。警備員は彼を置いて歩き去る。
D-1098はエレベーターに乗り、SCP-9000生産ユニット1階に向かう。D-1683の死体がエレベーターの隅に倒れている。D-1098は気付かない。
エレベーターが開き、産業廃棄物の毒気が入ってくる。
生産ユニット作業場は荒廃している。以前は財団の自作機器を製造していた大型機械は動作を停止している。D-1098が前進すると、機械の隙間に挟まったり外部固定具に絡まったりしたDクラス職員の死体が並んでいる。そのほとんどが工業的手段で切断されている。
生産ユニット作業長のD-319はD-291の死体を移動させる。彼女の死体は四肢が原形をとどめないほど損傷しており、ジャンプスーツの番号だけが無事である。D-319はその死体をDクラス職員の死体の山の上に放り投げる。
D-1098: 生産に連れてってほしい。
D-319はジャンプスーツで手を拭い、付近の容器に入ったガソリンを死体に注ぐ。
D-1098: 生産に連れてってください。
D-319は容器を投げ捨て、ジャンプスーツのポケットを探る。何も見つからず、彼は死体の山付近の隅に崩れ落ちる。D-319は手を顔に当て、すすり泣き始める。
D-1098は前進する。
D-1098は完全な静寂の中、1時間15分にわたり生産フロアを移動する。景色は変化しない。生産層のフロアプラン分析で、SCP-9000-Bがこの層のフロアプランを著しく拡張していたことが示された。探査中、機械・死体・建築器具が、繰り返し再構築・再配置される。
D-1098は広大なエリアにたどり着く。機械は機能を超えて改造されており、各部分が非論理的な配置と向きになっている。床から天井まで、蔓のようなねじれたパターンで伸びている。スモッグは以前のエリアよりも濃くなっている。D-1098は前進に苦労しつつも、領域の中心から現れる光源に向かって必死で進む。
D-1098はエリア中心の、機械の間に位置する開けた穴にたどり着く。深さは生産ユニットの床を遥かにしのぎ、発光する赤い液体で満たされている。穴の中心にはSCP-9000-Bがある。この巨大な類魂は、穴の底から生産ユニットの天井を貫いて伸びている。後の調査により、SCP-9000-BはSCP-9000の第1層を貫通して、刑務所の最高地点を突破していたことが判明した。
SCP-9000-Bは絶えず脈動し、蠢動し、分泌し、叫んでいる。
D-1098は見ない。
彼の言葉はSCP-9000-Bの悲しげな声により聞き取れない。
D-1098はすすり泣き、膝をつく。
SCP-9000-Bは小さな結合組織をD-1098に向かって伸ばす。彼は見ない。
塊は形を成し、フィラデルフィア在住のジェイソン・デイビス、8歳の顔を形成する。SCP-9000の「口」からの様々な分泌物がD-1098を覆う。
D-1098は頭を上げる。涙と体液で瞳孔が血走っている。
D-1098は言葉を発そうとするが、すぐに意識を失う。
SCP-9000-B、第1層の監視映像より。礼法上の理由から検閲済。
ピアソン: 言葉を選ばずに言うと、あなたがまだ生きていることに驚いています。あなたと同様にトーテムに近付いた職員の報告は多数ありますが、ここでそれについて話せる人はあなたしかいません。
D-1098: 多分、それじゃ甘すぎるって思ったんだろな。アレは悪意に満ちてた。アレは憎しみそのものだ。人を穴に放り込んで一生そこで過ごさせておきながら、それを“更生”だなんて言わせるようなクソみてぇな代物だ。こいつは人の苦痛が好きなんだ。
ピアソン: あなたは本心で我々が苦痛を楽しんでいると感じているのですか? 何千もの人命と施設丸々一つを失うことを。もっともな懸念があることはわかりますが、これは全て、あなたを拒絶した社会の中で、あなたに目的を与えるためなんですよ。あなたがここでなさった仕事は、あなたの思っている以上に財団が世界を守る力に貢献しているんです。
D-1098: ここがどんだけ滅茶苦茶になってるか見えねぇってなら、節穴もいいとこだな。どうかしやがってるよ。
ピアソン: 不調和や矛盾には気付いています。今もこのシステムには取り組んでいます。やがて、皆にとって有効な解決策が見つかるでしょう。心から信じています。
D-1098: そんなんに関わらせんなよ。
ピアソン: それも選択肢の一つとなることも願っています。もしあなたが惨めな残りの人生を、州立施設で朽ち果てるのに使いたいなら、その手段を与えられることを心から願います。私の同情は、私たちに反する人たちにではなく、共に活動する意志のある人たちのためにとっておきたいので。社会復帰は安くありませんし、我々の船はごく潰しを乗せている余裕もありません。
文書続き
D-1098は崩れ落ちる。実体は靱帯を使用して強制的に彼を持ち上げる。
D-1098は自由になる。彼は前に走り、SCP-9000-B塊に自らを投げ込む。組織は彼を吸収する。続く1時間、D-1098はSCP-9000-Bの原始的な消化器系に分解され続ける。
{4:03} SCP-9000-BはD-1098の残骸を吐き戻す。彼はその後完全に蘇生し、消費前の状態に戻る。
{4:17} D-1098はSCP-9000-Bから突出した軟骨に自らを突き刺す。トーテムは組織を成長させ、D-1098の胴体腔を貫く。D-1098はSCP-9000-Bに消費される。
{4:44} D-1098は蘇生する。彼は即座に自らをSCP-9000-Bの脚の一つに成長した口腔に投げ込む。
{5:22} D-1098は蘇生する。彼は付近の機械から飛び降り、首を折る。その後窒息死する。
{5:43} D-1098は蘇生する。彼は意識を失うまで床に頭部を打ち付ける。
{5:48} D-1098は蘇生する。彼はSCP-9000-Bにしがみつき、離そうとしない。実体の腫瘍部がジェイソン・デイビスの顔を再形成する。D-1098は口を通して頭部を切断される。
{6:01} D-1098は蘇生する。
このプロセスは財団が介入するまで継続する。簡潔化のため7時間分の転写を省略。
事後レポート: インシデント・トーテム
1995/3/3、機動部隊専門家と異次元物理学者のグループは、平面掘削ドリルの使用とSCP-9000中央ノードの再起動により、SCP-9000の外部バリアの貫通に成功しました。
12の機動部隊と3の航空部隊からなるグループが建造物を包囲し、24時間以内にSCP-9000を制圧、構造の制御の再取得に成功しました。SCP-9000-Bは、SCP-9000の内部構造の大部分と共に空爆で破壊されました。
その後の救助で、Dクラス43名を含む108名の生存職員が発見されました。
SCP-9000、その職員、及びインシデント・トーテムを引き起こすに至った出来事の調査及び評価が現在進行中です。内務部門がSCP-9000駐在スタッフによる組織的虐待を主張しているため、倫理委員会が招集されました。
D-1098: やっとこれも終わりか?
ピアソン: 証言は終わりましたか?
D-1098: これ以上何を聞きたいんだか。
ピアソン: でしたら終わりです。お時間をいただきありがとうございました、D-1098。
D-1098: わかった。
D-1098は退出しようと立ち上がる。
ピアソン: 一つだけ。座ってください。
D-1098は席に戻る。
ピアソン: 訊きたいのですが、救出任務後のあなたの医療記録を見ました。記憶を植え付けられたと話していましたね。
D-1098: 別に大丈夫だって言われたけど。
ピアソン: あぁ、そうだとは思います。残留物ですね。あなたの身体の内部システムをなんとかすり抜けて何にでもしがみつく、辛うじて生きている精神組織です。
D-1098: うん。
ピアソン: どのようなことを考えさせられるのですか?
D-1098: あれが感じたやつだよ。わっかんねぇけど。
ピアソン: 苦痛を煮詰めたようなものでしたね。そんなものを抱えて苦しくはないのですか?
D-1098: わからん。他の痛み全部と混ざっちまって。感じるには集中しないと。さっき言ったけど、これは俺の世界じゃない。全部分けられる。現実があって、それからここで起きるいろいろがある。
ピアソン: なるほど。退出して構いません。
D-1098は座り続ける。
D-1098: 誰が出んだ?
ピアソン: 何ですか?
D-1098: 支援活動って話は? いろいろ良くするってのは? 報酬か何かで、知らんけど、俺たちを送り返すって話はどうなった?
ピアソン: 可能性の話です。今日の会話でたくさん得るものがあるでしょう。
D-1098: ごく潰しだかなんだかは取り除くとか言ってたよな。それはどうなんだ?
ピアソン: やはりそれも、可能性の話です。
D-1098: これまでにプログラムから卒業したやつはいるのか?
ピアソン: チェンバースさん、誰も成功した人はいません。奉仕に人生を捧げるというのが、残念な現実です。でも希望を捨てないでください。あなたが最初の一人になるかもしれません。
«記録終了»
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倫理委員会概観
内部メモ: 1996/10/2

SCP-9000及びインシデント・トーテムの調査の後、構造的観点からSCP財団のDクラスシステムを改善する取り組みがなされました。
過去1年間、倫理委員会と内務部門は繰り返し会議を行い、既存のプログラムに複数の重要な見直しを確立しました。
以下は組織全体にわたる特に重大な変更であり、いずれも積極的な実施段階にあります。
- 世界中の財団施設において、主要なサイトごとに15~35名のDクラス職員の小規模な長期拘禁を支援する適切なインフラを備えたDクラスプログラムを復活させる。
- 共同体意識と帰属意識を育成するため、オブジェクトの実験や研究におけるDクラス職員の使用を奨励する。
- 各サイトの拘禁区域に位置する、承認されたDクラスレクリエーションゾーンにて、Dクラス職員の娯楽時間を増加させる。
- 義務的な記憶処理を含む、Dクラスを使用した転写作成における充分なリソースの使用。
内務部門と倫理委員会はTriクラス拘禁センターを監督する管理組織を直接選定し、管理上の過失を軽減しようと努めています。
SCP-9000は運用可能な状態に復旧されました。









D-029 | 審査ユニット司令官: いや。1098は現在のDクラス集団の中で数少ない有能製作者だ。できる限り長くとどめておけ。優先バックログの4~7ヶ月分の大部分をやり終えたら、昇進を考えよう。今のところは、絞り続けろ。