クレジット
タイトル: SCP-9010 - オオカミのいゑ
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2025
著作権者: Animal Hospital
原題: Lycanhaus
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 9
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-9010
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(1) SCP-9010の外観レイアウト図; (2) 異常性活性後のSCP-9010内で発見されたコンクリートサンプル分析; (3) 初期収容時にSCP-9010内部で発見された2匹の犬
アイテム番号: SCP-9010
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-9010は発見場所から移送され、サイト-19に収容されています。Safeクラス収容棟の専用格納庫に保管されています。
説明: SCP-9010はコンクリート製の立方体であり、その一方から6本の長方形のシャフトが伸びています。スライド窓と丸いノブの付いた鋳鉄製の扉が立方体の正面側に蝶番で取り付けられており、立方体内部への入口を覆っています。この扉にはプラスチック製の黄色い額が設置されており、"ANIMAL HOSPITAL(動物病院)"と書かれています。1
立方体の内部は完全に横断可能ですが、各シャフトはコンクリートで埋め尽くされています。各シャフトを塞ぐ壁には、機動部隊ゼータ-9("メクラネズミ")2が使用するフィールドコード3の固有の組み合わせが記されています。フィールドコードは油性マーカーで描かれており、SCP-9010の異常性が活性化すると消失します。
右端のシャフトから順に、以下のフィールドコードが描かれています。
- Oの上に水平線で区切られてXがあり、4続いてドレスを着た棒人間の上にXがある。5
- 2本の水平線とその間にXがあり、6続いて三日月型の中に棒人間がいる。7
- 直線とその隣に曲線があり、8続いて2体の棒人間が腕で繋がっている。9
- 頭にXが書かれた棒人間と、10続いて水平線で繋がれた2つの円がある。11
- 頭にXが書かれた棒人間と、続いて頭に水平線が書かれた棒人間がいる。12
- 尖った歯が多数ある口を様式化した絵。13
観察されていない人物がSCP-9010に入り扉を閉じると、各シャフトの壁は消失します。その位置に、SCP-9010の外寸を越えて延びている非ユークリッドトンネルが形成されます。
これらのトンネルは、通過時に直線に沿って移動しているように見えます。移動時間と距離はそれぞれ異なるものの、トンネルは必ず巨大なアトリウムに通じています。アトリウムはSCP-9010の他の場所と同じようにコンクリートで構成されていますが、高さと幅は人間の目や記録装置で視認可能な範囲を超えて延びています。見えない天井から光の筋が下りてくるのがしばしば観察されます。
探査ログ: 以下に添付された任務において、ゼータ9エージェントのアルファ-5はライブ映像ボディカメラを装備しています。機動部隊ゼータ-9はSCP-9010外部の格納庫に駐留し、司令端末を通してアルファ-5の進行を観察しています。
[記録開始]
<SCP-9010内部でカメラ映像が起動する。入口の反対側を向いている。外の格納庫からの光と、アルファ-5の影が見えている。彼が手動でカメラを調整してズームを下げると、アルファ-5の手がフレームに入る。>
アルファ-5: 音声チェック。
デルタ-3: 聞こえている、ファイブ。
アルファ-5: どうも。
<アルファ-5はカメラを再調整し、更にズームを下げる。>
ガンマ-4: 何してんの、ファイブ?
アルファ-5: ちょっと…… 再調整を少し。(ため息。) 映像チェックは?
ガンマ-4: ちゃんとあんた見えてるよ。
デルタ-3: すごいくっきり、心配もいらん。
アルファ-5: そりゃよかった。
<彼はSCP-9010の入口を振り返る。外には、デルタ-3、ガンマ-4、ベータ-4、司令端末が見える。デルタ-3は端末の前に立ち、他2人は背後に立っている。>
ガンマ-4: ほら、シアーシャがいる。
<ガンマ-4は端末の画面を指さす。デルタ-3はアルファ-5の方向に手を振る。それが画面上に入り、ガンマ-4は手を振り返す。>
ガンマ-4: やあシアーシャ。
デルタ-3: やあヴァーン。
アルファ-5: どうも。
<デルタ-3は司令端末の背後に身を引き、2人に加わる。>
ガンマ-4: こちら側は問題なし。ファイブ、行ってOK。
<アルファ-5は入口に背を向け、前に踏み出す。彼の前の壁に新たにベータ-4の影が現れる。ベータ-4は腕を上げる。>
ベータ-4: 閉じるよ。
<光が消える。アルファ-5は振り返って閉じた扉を向き、カメラを手で覆う。カサカサと音がする。彼はカメラから手を放す。6個のシャフトに向かい立つ。シャフトは闇へと延びている。>
アルファ-5: (息を呑む。) よし。
デルタ-3: よーし相棒、今回はどれに行くかわかってるよな。
アルファ-5: 歯の描かれてるやつ。
デルタ-3: 歯の描かれてるやつ。
<アルファ-5は左端のシャフトに向かい、入口に立つ。彼は手を左の壁に置いてから前進し始め、カメラを前に向ける。記録では、急坂を上り始めているように見える。床にひび割れが見えるようになる。背後に塵が舞い上がる。カメラの上に手を置き、手動で調整してズームインする。カメラを持ち上げると、一本の光の筋が見える。>
ガンマ-4: おっ、これこれ。早かったな。
デルタ-3: よし。
<アルファ-5は動かない。>
デルタ-3: ファイブ、何してる?
アルファ-5: あんまり行きたくないな。
<無線に集団の笑い声。>
デルタ-3: 最低でもアトリウムは行ってくれよ。俺のためにも、それくらいは、さあ?
<アルファ-5は足を踏み出す。>
ガンマ-4: 行け行け、ファイブ! あとちょっと。
デルタ-3: アバソヴァ隊長なら行ったぞ。
<アルファ-5は苛立ち、ガンマ-4は笑う。彼女は笑い続けるが、笑いは一時的に弱まる。アルファ-5は光の筋を避けながら、アトリウムに足早に入る。更に光の筋が見える。彼が見回すと、既にSCP-9010のアトリウムに入っている。>
デルタ-3: よくやった! 偉い!
ガンマ-4: おめでとう。
<アルファ-5は息を吐き、前進する。>
デルタ-3: あぁ畜生、アバソヴァが恋しい。
ガンマ-4: アルファ-1。クソッ。
デルタ-3: あの人が恋しい。
ガンマ-4: あたしも。
<アルファ-5の吐息は大きくなる。彼は光の筋が降りかかってくるたびにそれを避ける。背後に塵が舞い上がる。>
デルタ-3: これがどうやって見つかる (原文ママ) か聞いたことはあるか?
ベータ-4: いや、どうしたの?
ガンマ-4: 聞かせて。
デルタ-3: よし。じゃあ。
話は最初にこれが見つかったときのことだ。今とは違ってたらしい。当時は財団も草創期で、なんにもわかっちゃいなかった。こういうのを説明する用語すらまだ思いついてなかった。話だと、最初にこれを発見したときは、元々SCP-910として分類してたらしい。
ガンマ-4: へえ。
デルタ-3: サイト-19も稼働し始めたとこだった。中西部で最大のサイト。何千というアノマリーを維持するために建造された。ゼータ-9もちょうど結成された。アルファ-1、ベータ-1、オリジナルのグループ全体が。
ゼータ-9はサイト外、アパラチャ (原文ママ) あたりの辺鄙でちっちゃな田舎の村に派遣された。村の住民は行方不明になってたんだが、また現れた — 頭、腕、指、脚が引き裂かれてな。死んでた! そんでチームが派遣されて、FBI捜査官に変装した。このちっさい村に入ると住民が言うわけだ、「狼男だ。この場所は20年間狼男の繁殖地だった」って。それでアバソヴァ隊長はベスタ — ベータ-1 — を連れて村の端っこの鉱山に向かう。というのも、この鉱山のどこかにサタンの祭壇があって、狼男は狩りをしてないときは一日中そこで祈ってるからだと。アバソヴァとベスタだけが出てった。
<ベータ-4はうなる。>
デルタ-3: 偶然にも、ここは最悪の殺人発生地帯だった。そこで、両手をきれいに噛み切られた十代の少女が見つかった。その父親は数日後に頭を引き裂かれて、その頭を数フィート向こうに転がされて発見された。たくさんの犬も噛み切られて脚とかいろいろ失くしてた。最悪も最悪の話だと、赤ちゃんが半分食べられて見つかったとか。ひでぇ話だ。
それで、チームの残りは何か新しく起きた場合に備えて村に留まり、アバソヴァとベスタは森で野営した。ホントそいつらは命知らずだから、鉱山の一つのすぐ外に拠点を構えた。暫定的にそこをSCP-910にすることにした。自分がどこまで正しいかはちっともわかってなかったけど。
ベータ-4: なんとまた。
デルタ-3: ホントにな! で、ベスタと隊長はそこで数週間野営した。気が狂いかけてた。まるで全部止まったみたいだけど、それでもあの殺人は明らかに異常だ。噛み跡を分析したところ、犬の歯型にヒトの歯型が混ざった感じだった。引っ掻き傷は指の捩れた結び目でできてた。人間じゃない! 動物でもない。それで全部。ただ。止まって。
そこでベスタは隊長に言う、「鉱山に入ってきます。何かあるか確認してきます。何もなければ荷物をまとめましょう」って。隊長はその計画を嫌がって、「やめろ」って何度も言う。でもベスタはどうしたか? まっすぐ行っちゃった。
隊長は彼女を追って暫定SCP-910 (原文ママ) に入る。2人は埃まみれで古いコンクリの鉱山を下る。下って下って突き進む。ベスタは隊長から2分ほど先行してるから、隊長は視線をハンター気げに (原文ママ) 地面の痕跡に突き刺す。機動部隊のアルファがリーダーだった頃の話だから、ベスタの行動はヤバいな。
隊長はベスタの痕跡を見失った。
彼女は鉱山の地下深く、全部がコンクリのとこに降り立った。ぜーんぶ。大きなひび割れた石板が四方の壁を覆ってる。土埃が舞うこともない。ベスタならこうしてるだろうと思って隊長はまっすぐ進みつつも、GPSをチェックして何が起きてるか、本当に自分がいつもの世界にいるかを見てった。
<アルファ-5は一瞬振り返って、塵の痕跡を見る。>
デルタ-3: そしたら、彼女は何度も何度も同じところにループしてたんだ。前に進んでるのに、検出してる廊下からは全く出てないみたいだった。パニックになった。怖がった。誰だってそうなるだろ。
それで、彼女は前に走って、走り続けて、重荷になるものは全部投げ捨てる。オーバーコートも、銃も、ブーツさえも。ただ走る。息を切らし、汗だくになって。壁が迫ってくる。
そして叫ぶ。「ベスタ!」
<アルファ-5は身体をビクッとさせて躓く。>
デルタ-3: おっと。ファイブ悪い。
<アルファ-5を除いてチームは笑う。しばらくして、彼はまた歩き始める。>
デルタ-3: 一瞬お前のことを忘れてた。とにかく。彼女がベスタに向かって叫ぶと、壁は変形し始めたようだった。背後で壁が閉じて、それで彼女は横にぶっ走って、目を閉じて、神に祈る。ただ走り続けて、走って、止まらない。そしたら丘を登ってる感覚になる。それから光があって、そんで……
<デルタ-3は、アルファ-3の通信機にも聞こえるほど大きな音で手を叩く。>
デルタ-3: ……外に出たんだ。
<アルファ-5はため息をつく。>
デルタ-3: もちろん、気はまともじゃない。ベータはもういない。悲劇だ。彼女は彼らに — 財団、私らに — これを掘り起こさせて、そうしてみたら、これはちっちゃなコンクリのキューブで、小高くなってるとこの草に半分埋もれてたから鉱山の入口みたいに見えてたんだな。彼女はこれが殺人事件の原因だって断定して、財団はそれを空輸した。試験をした。何人かDクラスを中に放り込んで、いなくなって、いろいろやった結果この小さなキューブが空間異常だとわかった。これは変形して自分を再構成できる。
で、こっからおかしなところなんだが。
ベータ-4: 何?
デルタ-3: 彼女は正しかったっぽい。あのちっちゃな村ではもう何も異常なことは起きなかった。狼男はいなくなった。
<デルタ-3は含み笑いする。>
デルタ-3: でもそれで終わりじゃない。財団はサイトのここに、これみたいなアノマリーを保管するための特別な格納庫を建てた。
<アルファ-5は苛立つ。カメラは下を、床の方を向いている。彼は歩き続ける。>
デルタ-3: この格納庫には、トレーラーとか簡易トイレとかの、持ち上げて移動できる悪しき小型空間アノマリーが保管されてる。でもその多くはほんの少しも研究の余地がない。人肉をくれてやらない限り、ほとんど使い物にならないんだ。だから、この格納庫は封鎖して、全部閉じ込めて、各アノマリー用の特別収容プロトコルは一時停止されることになった。
ある日までは。
ある日、科学者が通りかかると、格納庫の中で石と石がこすれ合う音がすると証言した。ごりりりりりききししししいぐぐぐぎぎぐぎいい (音声転写)。
ドアをドカンと開けると、SCP-910がすっかり成長した姿を目にした。裏側から6本の長方形のシャフトが飛び出してて、格納庫の中の他のものは全部…… なくなってた。
格納庫の近くに長くいると、時々それが引きずるようにして少しずつウドいてる音が聞こえるっていうんだ。ある人は、このキューブはただのキューブじゃなくて、生物だっていう。生きてると。またある人は…… これはベスタだという。まだ隊長を探してると。
ガンマ-4: ひえー。本当なの?
デルタ-3: プシュウウ (音声転写)。みんなが知ってる限りはね、ハ。
ベータ-4: ヤバい話だ。
デルタ-3: 全くだ。
<アルファ-5のカメラは足元を向いている。気付かない様子で、彼は光の筋を通り抜ける。突然立ち止まる。>
デルタ-3: おぉ、ファイブ。大丈夫になったみたいだな。別に光は何もせんよ。
<アルファ-5はカメラを上方に再調整する。暗闇の中で何かが動く。>
デルタ-3: ヤベッ! 逃げろ!
<アルファ-5は素早く回転し、転倒しかける。彼は手で自分を押して全力疾走する。複数の光の筋を駆け抜ける。振り返りも、カメラの再調整もしない。この映像の部分で何が起きているかは確認が困難。彼はアトリウム出口の廊下まで駆け戻る。注目すべき点として、退出時の距離は入場時の距離よりも短く見える。突然、彼はSCP-9010の扉にぶつかる。>
<アルファ-5は、ボディカメラを扉の反対側の隅に投げ捨てる。扉は外から開かれ、ベータ-5とガンマ-5が彼を掴んで格納庫へと引っ張り出すのが見える。全員が同時に発言し、それぞれの発話内容が聞き取れない。>
<ボディカメラは遠隔で停止される。>
[記録終了]
任務終了後、カメラはSCP-9010から回収され、部隊が目撃したものを確かめるため映像が分析されました。映像を拡大・スロー再生したところ、他の実体は存在せず、アルファ-5は単に塵の粒子を舞い上げていただけのようでした。
発見ログ: SCP-9010は当初未解明領域UE-009として記録された、未解明領域記録にアーカイブされた最初期のアノマリーでした。
UE-009は2x2x2 mのコンクリート製の立方体であり、付近に鋳鉄製の扉が蝶番で取り付けられ、UE-009内部の切れ込みに重ねられていました。"ANIMAL HOSPITAL"と書かれたプラスチック製の黄色の額が扉に貼り付けられていました。UE-009の内装は外寸を遥かに超えており、大きさは20x20x20 mと示唆されます。内部の奥には、外側手前にあるものと同じ扉が設置されており、両方の扉が外部の単一の扉に通じていました。
米国イリノイ州スパークスヒル村で獣人の発生に関する通報を傍受したことを受け、機動部隊ゼータ-9が派遣されました。
複数の緊急通報によると、スパークスヒルとエリザベスタウンをつなぐ橋の下に広大なトンネルネットワークが存在し、そこが"狼男のコロニー"としてその巣となっていたことが示されました。しかしこれらの通報は大きく誇張されたもので、財団の調査で、村の外れにある橋の下に存在したUE-009内部に野良犬とオオカミの集団が住み着いていたことが判明しました。この動物たちは、寸法の差異を隠れ家として利用していました。
構造内のオオカミ1頭が狂犬病に感染していました。UE-009内の複数の動物や、構造物付近の人間(最初の通報の原因となった)を攻撃していたにも拘らず、攻撃された相手の誰も狂犬病に感染していませんでした。
このオオカミは殺処分され、他の動物は財団の仮収容施設に移送されました。機動部隊ゼータ-9はUE-009に関して更なる特性を報告しませんでした。UE-009はコンクリートで覆い橋の下に封印されることが決定され、以降の修理は必要に応じて財団のダミー会社に委託することとなりました。
UE-009がいつどのようにしてSCP-9010へと変形したのかは不明です。
6年半後、橋の修理中に、現在の形態のSCP-9010が瓦礫の中から掘り出されました。調査が進行している間に、現在の収容プロトコルが直ちに施行されました。機動部隊ゼータ-9は、UE-009の異常性の持続または変異を示す詳細を一切思い出せず、構造内で発見されたシンボルを作成したことを否定しました。
探査任務中、機動部隊ゼータ-9のアルファ-1は以下を述べました。
物事を実際よりもずっと大きく記憶している。
アルファ-1は自身が言及した内容についての説明を拒否しましたが、Safeクラスの低優先度オブジェクトへの分類を勧告する際には自身の発言に言及しました。収容委員会による監査の後、勧告書は提出され、委員会はこれを承認しました。



