SCP-921-JP
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SCP-921-JP

発見時のSCP-921-JP。上下が逆転していることに注意

アイテム番号: SCP-921-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-921-JPは30kg以上の鉄球が結びつけられた状態で、専用の水槽に1個体ずつ沈めて収容されます。水槽は内壁と底面を全て擦りガラス加工とし、電動スクリューにより水面の攪拌を常時行います。水槽の移送時は水槽全体を遮光性の箱に収めた上で、自律ユニットを用いた無人輸送を行なってください。

実験時を除き、鏡面を形成しうる物体(撮影機器のレンズ、眼鏡、モニター画面等)をSCP-921-JPに向けることは推奨されません。

説明: SCP-921-JPは1991年に█████の水深130m地点で発見された、自律行動する実体です。オブジェクトは製造元不明の潜水ヘルメット2個および日本潜水機株式会社製のPVC製シュノーケル1本から成っており、互いに首の部分で接合された潜水ヘルメットの背側から左上方向へとシュノーケルが伸びる構造を取っています。各部品の可動性はありません。上部のヘルメット(便宜上「頭部」とする)の正面には円形のガラス窓と格子が取り付けられていますが、これと同サイズの円形の穴が下部のヘルメット(便宜上「腹部」とする)の正面に開いており、内部は空洞です。

SCP-921-JPの潜水ヘルメットは同体積の通常の真鍮と比較して10%程度の質量しか有しておらず、抵抗がない状態であればSCP-921-JPは水面に浮きます。これに対し、SCP-921-JPはシュノーケルを通して身体の上方向へと活発な排水を行うことで沈降するための推進力を獲得し、水底付近に留まります。しかし、シュノーケルの排水口はオブジェクトの重心からかなり遠い位置に存在しているため、SCP-921-JPはしばしばバランスを崩して回転しています。

陸上ではSCP-921-JPは一切の自動能を喪失し、実体が原体積の1%/分の割合で縮小していき、最終的に消失します。縮小中のSCP-921-JPが水中に戻されると、実体の体積は即座に当初の状態まで回復します。

イベント-921: SCP-921-JPが持つ主要な異常性は、REM睡眠状態にある生物の漠然とした思考(一般に「夢」と呼ばれるものです)を読み取り、その内容を端的に表現する物体を腹部の穴から排出することにあります。この一連の過程はイベント-921と呼称されます。

イベント-921が開始されるためには、睡眠中の生物の姿が光刺激によってSCP-921-JPへと伝達される必要があると仮定されており、オブジェクトが頭部の窓ガラスから前方への投光機能を有していることからもこの仮説は正しいと推測されています。排出される物質はオブジェクトの腹部の穴を通過できる程度の大きさで出現し、オブジェクトを脱出した後にSCP-921-JP本体と同程度の大きさにまで拡張します。イベント-921の終息から次回のイベント開始までには最低18時間のインターバルが必要とされます。

例として、透明な水槽に移したSCP-921-JPの前でDクラス職員に睡眠を取らせたところ、SCP-921-JPは腹部からR-50ヘリコプターのローターを1/40スケールにした物体を排出しました。Dクラス職員は起床後に「自分が空を自由に飛び回っている夢を見ていた」と報告しています。複数回の実験の結果、SCP-921-JPには被験者の思考そのものに干渉する性質は存在しないと判断されました。

イベント-921の対象は生物の実体に限定されず、睡眠中の生物実体の姿を明瞭に映した鏡面・写真・動画などの像をも包含します。像を対象として開始したイベント-921では、SCP-921-JPは像が作成された時点において像のモデルとなった生物が有していた思考を出力します。明瞭であれば歪んだ像であっても問題なくイベント-921が惹起されますが、像がぼやけている場合は惹起されません。

補遺1: イベント-921の対象として「鏡面・写真・動画等に投影されたSCP-921-JP自身の全身像」が選択された場合、SCP-921-JPは腹部から自身の複製であるSCP-921-JP実体を排出します。また、こうして出現した新たなSCP-921-JP実体を対象としてイベント-921を発生させた場合も同様の結果になります。これらの行程によってSCP-921-JPは個体数を増加させることが可能です。この結果はSCP-921-JPが「自身の個体数の増加に関連する思考を常に行なっている睡眠中の生物」と見なされていることを予想させますが、実際にSCP-921-JPが生物と呼べる存在であるのか、睡眠という概念を有しているのか、そして意思を持つ実体であるのかを判断するための有効な手法は見つかっていません。SCP-921-JPが自己複製イベントを惹起する対象からの逃避行動を示すことは特筆に値します。

補遺2: SCP-921-JPの構成部品であるシュノーケルに刻印されている製造番号を調査したところ、当該シュノーケルが1980年に製作され、[削除済]高校の生徒であった██ ███氏によって購入されていたことが確認されました。██氏はその後、修学旅行中に発生した"さんのぜ丸"失踪事件にて行方不明となっており、遺体は発見されていません。██氏は修学旅行の1ヶ月前に睡眠障害と悪夢を主訴として自宅近くのクリニックで診察を受けており、そこで妊娠初期段階であることを指摘されていますが、両親や学校にはそのことを伝えていなかったことが判明しています。

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