財団記録・情報保安管理局より通達
以下の文書は、1973年から1975年までニューファンドランド島で活動していたアルファ・コマンド実地部隊に関連する、それまで発見されていなかった資料隠匿場所から回収されました。内容は復号化されましたが、それ以外の編集は施されていません。
実体の死体は発見されていません。
指定名称 GLACIER RAMPANT | SANGUINE CANTO PALACE |
ALPHA MU EPSILON | 9-3-5-1-1-1-3-4-9-2-4 |
開始
巨大な頭蓋を有する痩せ細ったヒト型実体。全身凍傷のために青黒い色調を帯びている。頭蓋には左頭頂結節を中心とする螺旋状のパターンで繰り返された穿頭痕がある。発光性の煙 (金橙色から橙赤色) を穿頭部位と口から放出する。眼球が除去されているが、負傷か自傷行為かは不明。
現地イヌイット集団へのインタビューでは、対象に関する既存の文化知識は確認されていない。トゥーレ基地の空軍関係者はソビエト連邦の関与を疑っており (可能性は低い) 、ルイス特技兵の失踪3時間前に受信されたという、極度に歪んだ声の無線通信記録を提供した。
1月4日、カーナークの北東35km地点にて接触。既知の被害者3名全員の死体が接触地点で発見された。全ての被害者は石器ナイフで皮膚を剥ぎ取られ、内臓を抜かれ、鈍的外傷で頭蓋骨を粉砕されていた。被害者は顔を上に向けて仰向けに寝かされていた。全員の眼球が除去されていた。遺体が消費された形跡は無く、捕食行動とは考えられない。
接触地点における死体の三角形の配置には儀式的な意図の可能性あり。遭遇時に繰り返された発声は人間の声を模倣した可能性あり。知性の程度は不明。思想的動機の有無は未確認。
対象は接触地点でGAWAIN及びPERCIVALによって終了された。GALAHADは対象によって負傷したが、容体は現地で安定した。
被害者の死体は現地で廃棄された。カバーストーリー “疾病に罹患したクマ” がトゥーレ基地の職員らに提供された。ナイフ、テープ、対象の死体は処理及び保管のために回収された。
終了
審査委員会メモ 1992年6月10日 924-AD-029G
案件: 潜在的な再分類を目的とする、非異常性要注意物品13429の研究監査。
要旨: 本報告書の内容には、以下の物証群との関連性が見られます。
非異常性要注意物品12877
GLACIER RAMPANT実体の外見描写には、1989年7月にスヴァールバル諸島で発見された3体のヒト骨格との類似点があります。.これらの死体は、スヴァールヴァル諸島に人間が初めて居住したとされる時代よりも500年早い、西暦1100年頃のものです。 全ての骨格は頭蓋肥大の兆候を示し、繰り返し穿頭された痕がありました。次の物品を除いて、副葬品はありませんでした。
- 七芒星が彫られている石器ナイフ。
- 螺旋状に配置された点模様で囲まれた七芒星が刻印されている粘板岩の板。
どちらの星の図像も、7つの先端のうち5つが塗り潰されていました。この意義は不明です。
非異常性要注意物品12005
報告書の筆者はGLACIER RAMPANTとGRU-P部局の接点はありそうもないとしていますが、オペレーションREDSKYで押収された断片的な記録は、チュクチ族の中から奇跡術に親和性のある人々を選び出し、特定の奇跡術儀式に強制的に参加させた実験に触れています。この儀式は未知の非物理実体群との交信トランス状態を引き起こし、交信中の儀式執行者の呼吸は発光する橙色の霧になると説明されています。
GRU-P文書には実験の概要や結論が含まれていないため、GRU-P部局がどこまでこの現象を理解していたか、また別なアノマリーとの接点に気付いていたかは不明です。同様に、交信対象の実体群との有意義な意思疎通が成立したか、そもそもそのような実体が存在したかも不明です。
非異常性要注意物品13430
最後に、GLACIER RAMPANT文書と共に回収されたオープンリールテープは、恐らく報告書で述べられている“無線通信記録”です。不適切な保管によるテープの劣化で、合計1分36秒以外の記録は利用不可能になっていました。利用可能な部分には、明確なパターン無しで単語や断片的文章を繰り返す声だけが録音されています。これらの断片的な発言は、次のような声明へとまとめられました。原語はデンマーク語です。
<お前をその肉の外に出してやろう、兄弟。太陽のすぐ傍を飛ばずに星々へ到達することはできない。>
結論: 全体としてみると、前述した物証群には、相互関連性を推定するに足る十分な根拠があります。そのため、審査委員会はここに、報告された実体、同種の追加標本全て、関連する物証、及び今後の関連する発見全てに対して“SCP-924”の指定名称を割り振ることを承認します。