SCP-926-JP
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鎮静化直後のSCP-926-JP、身体構造を変化させている

アイテム番号: SCP-926-JP

オブジェクトクラス: Safe Keter

特別収容プロトコル: SCP-926-JPはサイト-81██の隔離生物収容室に収容され、継続的な麻酔投与により鎮静状態を維持します。装着された心電計からは接続機器へとバイタルサインが出力され続けており、SCP-926-JPの生命維持に異常が確認された場合、即座に待機中の選任医療スタッフが対応へと当たります。

サイト-81██の駐在スタッフは、自身が睡眠中に見た夢の内容を常時報告することが義務付けられています。この定例報告の内、「自身の死」に関連する内容が規定数を上回った場合、もしくは特定内容を含む夢の報告が確認された場合、即座にプロトコル"虚夢"が適用されます。プロトコル発令後は報告された夢の件数/内容に準じ、オブジェクトの保守/移送、もしくは高強度現実改変作用による周囲一帯の希釈化を含めた、あらゆる手段を用いてのオブジェクト無力化が試みられます。

説明: SCP-926-JPは脊椎動物に似た外見的特徴を有する未知の生物です。人間への敵対的性質を持ち、周囲に人間の存在を認識した場合、その人間に執拗な攻撃1を行います。しかし、攻撃の執拗性にも拘わらず、攻撃の結果として被害者が死亡したケースは現在まで確認されていません2。また、後述の異常性により、SCP-926-JP本来の身体構造や外見的特徴は不明です。

SCP-926-JPは特定の決まった姿形を取らず、自身が置かれている状況/環境下に合わせて身体構造を別種の脊椎動物へと変化3させます。その際、SCP-926-JPのサイズは通常種の平均値よりも、明らかに巨大なものとなる傾向にあります。また、変化後のSCP-926-JP身体構造には、更に別種動物の身体的特徴が追加/増設されているケースが多く見られます。しかし、検証の結果、これらの部位は本来の身体的機能を一切有していないことが判明しています。以下はSCP-926-JPの変化例です。

鎮静状態下に置かれて以降、SCP-926-JPはコモドオオトカゲ (Varanus komodoensis)に似た外見的特徴を持つ、全長5mほどの脊椎動物の姿を取っています。各種検査より、サイズ比が通常の種よりも明らかに巨大である点と、肩部にオオコウモリ科(Pteropodidae)の飛膜を有する点を除けば、その身体構造はオオトカゲ科(Varanidae)と概ね一致しています。

また、SCP-926-JPは上記の異常特性とは別に、限定的な現実改変能力を有していると結論付けられています。この現実改変はSCP-926-JPが死亡した際に発揮され、死亡した自身を含む全ての事象を「自身が死亡する前の状態」に再構築します4。この発生から完了までのプロセスは如何なる手段を用いても認識できず、現在まで観測/検知にも成功していません。それに加え、あらゆる記憶/記録までもが再構築される性質上、どれだけ過去の状態に再構築されたのかを確認するための手段は、後述する特定内容を含んだ「夢」の報告を除けば存在しません。

SCP-926-JPによる全事象の再構築完了後、SCP-926-JP近隣に位置している不特定な個人は、自身のレム睡眠中に「何らかの要因によって自分が死亡する夢」を経験します。複数回の検証により、経験する「夢の中における死亡要因」と「SCP-926-JPが再構築を行う原因となった死亡要因」は、必ず一致することが判明しています。なお、一度の再構築によって「自身の死に関する夢」を経験する人物は1人のみですが、仮に同じ状況/条件/要因でSCP-926-JPが複数回に亘って死亡した場合、同じ内容の「自身の死に関する夢」を経験する人物も複数現れることになります。

SCP-926-JPは19██/██/██、ギリシャ共和国イカリア島東海岸部に漂着していたのを同島民により発見されました。現地の潜入エージェントによる報告後、近海で停泊中だったSCPS"ルーシディティ"から回収部隊が派遣され、SCP-926-JPを確保、収容するに至りました。回収当時の注目すべき点として、SCP-926-JPが発見されるまでの9日間、近隣海域の島民より「自分が溺死する悪夢」を見たと主張する報告が多数確認されており、前述の現実改変特性が複数回に亘って発揮された可能性が示唆されています。また、同じくSCP-926-JP回収の9日前、別件任務のためにSCPS"ルーシディティ"より周辺海域へと非物質変位無効装置(nPDN)が展開されていましたが、SCP-926-JPの出自/起源に何らかの形で関与しているのかは不明です。

付記: 収容後、詳細な調査/検査が行われましたが、すでにAnomalous相当として分類済みであった、既存のクラスⅡ異常動物実体5との明確な差異は確認されませんでした。この調査結果を受け、SCP-926-JPの継続的な保持は有意性に乏しいと結論付けられるとともに、生体解剖用サンプルとしての活用が提案されました。19██/██/██、上記提案は承認され、SCP-926-JPは同型異常動物実体の研究部門が置かれるサイト-81██へと移送されました。

事案926-JP: 19██/██/██、サイト-81██に駐在する50人以上の職員が「自分が生きたまま解剖される夢」を見たと報告を行いました。事案発生の同日にSCP-926-JPの生体解剖が予定されていたこともあり、異常現象との関連性を調査する目的のため、一時的にSCP-926-JPの解剖実施日を延期することが決定、新たな解剖予定日が設定されました。

しかし、再設定された19██/██/██、再び「自分が生きたまま解剖される夢」の報告が複数発生したことから、SCP-926-JPが当該の異常現象に関与し、自身の死に際して何らかの異常特性を発揮している可能性が推察されました。これを受け、現在のSCP-926-JPとしてのナンバリングが暫定的に与えられました。

付録: 以下の記録はSCP-926-JPの異常特性検証のため実施された、実験試行群からの抜粋です。





追記1: SCP-926-JPの収容以降、ギリシャ共和国内での心療内科/カウンセラーに対する「悪夢」の相談件数が、過去全ての年間平均比を5年連続30%近く下回るという大きな減少傾向を示しました。それに加え、減少した悪夢の報告内容の大半が「夢の中で翼を持つ巨大な動物に襲われ、必死になって逃げ惑う/死なない程度の攻撃を受ける」といった旨の内容であり、一部からSCP-926-JPとの関連性が指摘されました。

しかし、受診者の中に夢と同様の怪我を現実で負っていた者は存在せず、同様に「SCP-926-JPに襲われる夢」を見たと報告を行った職員は、初期実験の一環でSCP-926-JPに攻撃を受けたDクラス職員のみでした。現在、ギリシャ共和国内の異常現象とSCP-926-JPの関連性については調査中です。19██/██/██、重要性が低いと判断され、調査計画は凍結されました。

追記2: 19██/██/██、SCP-926-JPに関する議論は「SCP-926-JPの異常特性は自身の死に際して発揮され、過去の状態に全事象を再構築する現実改変である」と規定する形で決着を迎えました。また、議決後「SCP-926-JPが回避不能な要因6によって死亡した場合、永続的にSCP-926-JPの死亡と全事象の再構築が交互に繰り返され続けることになり、この現実世界が一定の時間軸内に停滞/拘束される可能性がある」として提言が行われました。

現状では仮説に過ぎないものの、その異常特性のために反証を裏付ける手段もなく、最終的な決定としてSCP-926-JPはZK-クラス"現実不全"シナリオを起こし得る存在と扱われ、半永続的な鎮静化に置かれるとともに、現在のオブジェクトクラスへと暫定的に再分類されました。現在、SCP-926-JPの完全な無力化、あるいは不死性の付与に関する研究が継続されています。

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