アイテム番号: SCP-938-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: 機密性維持のため、SCP-938-JPは日本支部内の13の関連施設へと定期的に移送され、専用の特別危険物収容ロッカーに収容されます。収容先が変更される度、以前の担当職員と収容に関わった人員、および移送を担当した人員は全員クラスF記憶処理を受けてください。収容に関わる全体統括はエリア-8199の管理者が担当し、エリア管理者が後任へと引き継がれる際には前管理者はクラスF記憶処理を受け、SCP-938-JPの全記憶を抹消しなければなりません。もし、これらの記憶処理が何らかの理由で解除され、SCP-938-JP関連の記憶を取り戻した対象が確認された場合、プロトコル"クラスG"による再度の記憶処理か、即時の終了措置が現担当職員によって実行されます。
SCP-938-JP専用の特別危険物収容ロッカーは各施設の地下500mに建造され、そこに辿り着くまでの経路は複雑に迷路化され、20の物理的施錠、22の電子的施錠、44の物理的トラップ、50のミーム的トラップ、7の異常存在が配置され、すべての施錠とトラップは3ヶ月毎に更新されなければなりません。収容ロッカー本体にも7重の施錠と9重のトラップ、そして現実改変による強奪を防ぐスクラントン現実錨が設置され、最終的な開錠にはエリア-8199管理者と日本支部理事会、そしてO5評議会からの承認を示すアクセスキーが必要です。
担当職員は1ヶ月に1度、SCP-938-JPの収容が正しく維持されているかを確認する必要があります。担当職員は収容確認を実施する日時と、自身が心身共に健康でありSCP-938-JP以外のオブジェクトに暴露していないことを示す検査証明書を添えて、エリア-8199管理者の機密アドレスへとミーム処理により暗号化された申請書を送ってください。送信された申請書はエリア-8199管理者から日本支部理事へと送られ、日本支部理事から日本支部理事会の審議にかけられ、理事会の承認を得た申請書はO5評議会へと送られ、評議会による承認をもってSCP-938-JPの収容確認プロトコル"D&S"が許可されます。
申請が受諾されると、プロトコル"D&S"実行のための機動部隊ろ-9("パーティ")が召集され、SCP-938-JPを収容中の施設に派遣されます。収容ロッカーへと続く経路への突入からSCP-938-JPへの到達、そして帰還までの全プロトコルの完了は24時間以内に行われなくてはなりません。時間内の帰還が叶わなかった場合には致死性の神経ガスが自動的に散布され、経路内に残る全スタッフの終了措置が行われます。
同プロトコル実行に際しては、補助要員として必要数のDクラス職員を動員することが許可されます。もしプロトコル完了後に終了していないDクラス職員が残存する場合、対象には機密保持のためのクラスF記憶処理または終了措置が施されます。
SCP-938-JPの収容は極めて優先度の低い事項です。もしSCP-938-JPに収容違反の危機が迫った場合、収容に関わる全ての施設は総力を挙げて阻止しなければなりません。エリア-8199管理者はSCP-938-JPの収容違反を阻止するために、プロトコル"ゲイリー・クエスト"の発動権限と、機動部隊さ-1から6までの指揮権が与えられます。プロトコル"ゲイリー・クエスト"が発動されると、各機動部隊は直ちに行動を開始し、収容違反の要因となるあらゆる因子を排除します。そのための危険が予想される場合、Dクラス職員を適時動員することでリスクの削減を行うことが許可されます。職員の補充は随時行われます。
プロトコル"ゲイリー・クエスト"をもってしてもSCP-938-JPの収容違反を阻止できないと判断された場合、エリア-8199より核弾頭が発射され、収容中の施設の破壊と全職員の処分が実行されます。
説明: SCP-938-JPは横11cm×縦7.5cm×高さ8cmの木製の箱です。中身は空です。
補遺1: エージェント・水野の報告
本日20██年█月█日、過去にGOCが管理していたと思しき██県の巨大地下空間の探索が完了したことを報告します。本件における人的損失は死者14名、重軽傷者27名、精神崩壊者6名で、その他の損失額は追って報告いたします。
空間の最深部には特に強固な施錠とトラップが施されており、その内部には一箱の木箱が安置されていました。私の目にはただの空箱のように見えます。同行していた研究員の見解も同様で、何の異常性も感知できないただの木箱のようだと言っています。なぜ対象がここに保管されていたかは不明ですがSCiPである可能性は低い、あるいは過去に異常性を喪失したものと考えられます。
最寄のサイト-81██には機動部隊の緊急出動と、対象の速やかな収容を要請します。 - エージェント・水野
補遺2: 清松研究員の報告
サイト-81██に送られてきた対象を精密検査した結果、その材質、機能、性質にこれと言った異常性は発見されず、あらゆる面において通常の木箱と同様の性質を示しました。
オブジェクト認定は元より、Anomalousアイテムに指定することも憚られる品です。何故これを機動部隊を緊急出動させてまで収容する必要があったのか、理解に苦しみます。
対象は直ちにSCPオブジェクトとして認定し、他のオブジェクトにも勝る厳重な収容体制下に置くべきであると、強く上申します。 - 清松研究員
補遺3: O5-██からの通達
日本支部から申請のあったSCP-938-JP収容のための予算と人員の追加申請はまったく不合理なものだ。我々はオブジェクトの収容のために必要なあらゆる資源を惜しまないが、それは常に最小限でなくてはならない。危険性の低いオブジェクトに過剰な資源を浪費する余裕は無いのだ。
よって申請を受理する。不要な予算と人員は直ちに配備されるだろう。 - O5-██
補遺4:菊池監査員の報告
20██年10月20日、かねてより日本支部内で発生していた不透明な予算の流れに関する監査が終了しました。当該責任者であるエリア-8199管理者への聴取と実地調査の結果、消失していた巨額の予算の用途はすべて明らかとなりました。
詳細に関しては機密性と情報汚染の観点からここでは申し上げられませんが、何も問題はないものと考えられます。
補遺5: エリア-8199管理者からの申請
何が異常であるのかを、我々は理解しています。そして我々の行いの愚かしさも。
SCP-938-JPは極めて厳重な管理下にあり、収容違反が発生する可能性は微々たるものです。機密の保持も万全であり、無関係な者に対象の秘密を知られる可能性は皆無です。
すべて、我々がやったことです。それが無価値であり無意味であることを知った上で、我々はSCP-938-JPに「完璧な収容」を施しました。それこそが対象の異常性であることに気付いた時には、すべてが手遅れでした。もはや我々自身にすら、対象の特別収容プロトコルを破棄する権限はありません。
SCP-938-JPの収容は完璧です。であるが故に、対象はまったく収容などされていません。我々は対象を「収容させられて」いるのですから。
既に必要以上に莫大な予算と人員が、SCP-938-JPの収容を維持するために費やされています。幾つかのサイトは本来の機能を停止し、SCP-938-JPを守るための礎となりました。現状を放置する限り、収容規模は際限なく拡充されるでしょう。一刻も早く対象を"正しく"収容しなくてはなりません。
よって私はここに、SCP-938-JPのオブジェクトクラス変更と、対象収容のための追加予算を申請します。 - エリア-8199管理者
補遺6: 収容中のSCP-938-JP表面に貼り付けられていたメモ用紙
誰か早くコレを収容違反してくれ。