SCP-940-JP
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財団に記録されている中でSCP-940-JPであったと思われるもの。赤色の物。

アイテム番号: SCP-940-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-940-JPは、サイト-8181の耐火設備を備えた収容ロッカーの中に収容されます。担当職員はSCP-940-JPの周辺で火気および高熱が発生する危険性に留意して収容を続けてください。
新規のSCP-940-JPが発見された場合、その個数を正確に記録した上で記録媒体を保存したデバイスをスクラントン現実錨を用いた対現実改変設備を備えた小型ロッカーに収容する試みが計画されています。新規のSCP-940-JPの発見・収容の際には、日本支部理事及び対現実改変装備を備えたエージェント3名の立会いの元、その全ての工程が記録媒体に記録されるようにしてください。
現在、SCP-940-JPに関する実験は日本支部理事の命令により中止されています。

説明: SCP-940-JPは、現在財団に収容されている19発を含む、特殊な爆薬によって作成された赤・青の火花をもたらす花火玉です。財団が確認している限り、SCP-940-JPによると思われる被害は19██年に確認されてから現在までに5█件が記録されています。

SCP-940-JPは観光地や各種のイベントに用いられる一般的な打ち上げ式の花火の形をしています。現在収容されているSCP-940-JPは後述の1つを除いて全て2発1組、赤色火薬を用いた物と青色火薬を用いた物、2発の花火玉のペアで構成されています。青色火薬を用いた花火玉の裏には「如来観光 観光促進課 謹製 」「速効」の文字と、アルファベットで「z」の小文字が、赤色火薬を用いた花火玉の裏にはアルファベットで「w」の小文字が、いずれも一般的なインクを用いて印字されています。その構造の特筆すべき点として、青色の花火には着火用の導火線が備えられているのに対し、赤色の花火にはそれが存在しておらず、完全に全体がクラフト紙によって覆われています。
SCP-940-JPが使用される時期は限定されませんが、その構造上の特性から多くは夏場に使用される傾向にあります。

SCP-940-JPはその爆発を介して2回に分けてその異常性を発現させます。
第1回の異常性の発現は、現在まで確認されている限りその全てが、多数の人間が目撃すると思われるイベントや祭事の一環として起こっています。SCP-940-JPが爆発した際、その光は概して赤色の光を放つ花火として捉えられます。この光を視認した人間は後述するSCP-940-JPのもたらす精神汚染の影響下に置かれます(以後、-Aと記述)。現在まで、財団による記憶処理を含めたあらゆる処理はこの異常性の除去について有効な効果を示していません。

SCP-940-JP-Aはこの光を視認した際、それに伴う各種のイベント・祭事に関するものを含めた一定の記憶をある程度に美化された形で記憶します。この記憶に伴う影響として、同時刻にSCP-940-JPが発する光を目撃した-Aが複数人のグループであった場合、その多くが以後もこの記憶を通じて良好な関係を保つ傾向にあります。顕著な例としては男女2人のグループでSCP-940-JPを視認した場合、その多くは後述する第2の異常性の時点までに婚姻関係を結ぶか、そうで無くとも多くが恋愛関係となり交際を継続します。

SCP-940-JPの第2回の異常性の発現は、第1の異常性からおよそ10年後のほぼ同日(曜日等のずれはある程度無視される)に、SCP-940-JP-Aらによって引き起こされます。SCP-940-JP-A達はSCP-940-JPの1度目の爆発から10年後の同日が近づくにつれて、記憶されている状況を当時のイベント・祭事含め可能な限り再現する為の活動1を開始します。また、既にそのイベント・祭事が終了している、あるいは開催地そのものが既に存在しない場合、原理主義的に当時の状況を完璧に再現しようと活動を開始する傾向にあります。
財団によって記録されている事例では、既に老齢によって引退している金魚取扱業者の捜索と当時彼が居住していた老人ホームからの誘拐事件、博物館に収容されていた当時使用されていた神輿の盗難事件、-Aの親族・関係者に対しての過剰な入場チケットの販売などの事件が関連して発生しました。

SCP-940-JPの2度目の爆発は青色の光を放つ花火として捉えられます。この光の目撃を以って、現地でこれを観測しているSCP-940-JP-A全てに遅効性の記憶異常が発生します。多くの場合、この光の目撃から72時間以内にSCP-940-JP-AはSCP-940-JPに関する記憶の全てを喪失しますが、この10年間の間に-A間で築かれた関係性、家族・恋愛関係については継続する傾向にあります。SCP-940-JPの2度目の爆発を目撃せず、記憶以上の影響を受けていない-Aの捜索を続けていますが、現在までその発見には至っていません。

財団はSCP-940-JPの爆発を事前に阻止するべく、以前SCP-940-JPと見られる花火が打ち上げられたイベント・祭事の全てに、また全国各地で開催される同様のイベントに対しても毎年複数の機動部隊、エージェントの投入を継続しています。偶発的にSCP-940-JPの起爆にエージェントが遭遇した幾つかのイベントにおいて財団は起爆前のSCP-940-JPのペアを回収することには成功しましたが、現在までその2回目の爆発を阻止する試みは全て失敗に終わっています。

SCP-940-JPは、2018/08/16、愛知県██町██地区にて開催された小規模な花火大会の実行委員として潜入していたエージェント・黒躑躅による報告からその発見、収容に至りました。(事例-940-JP-29)同年、09/18にはこの際に回収された資料及び関係者への聞き取りから岐阜県██町に存在した如来観光の倉庫への財団機動部隊ら-88「悠々自適の熟年夫婦」による収容作戦が実施され、未使用のSCP-940-JP14点、青の花火玉のみが残された半分のSCP-940-JPが1点発見され、収容に至りました。以下に事例-940-JP-1の資料及び研究資料を添付します。

補遺: インタビュー記録-940-JP-1

対象: 間宮██(事例-940-JP-29にてSCP-940-JPを如来観光のエージェントから購入、使用した)

インタビュアー: エージェント・黒躑躅

付記: インタビューは間宮氏の拘束から3時間以内に行われた。拘束直後から間宮氏には漸増的に記憶の欠落症状が見られ、72時間後にはSCP-940-JPに関する全ての記憶を喪失した。

<録音開始, 2018/08/17 00:19>

エージェント・黒躑躅: お疲れ様です。今回の聞き取りはあなたと、あなたが先ほど説明した物品を購入した相手に関するものです。

間宮氏: 黒躑躅さん、警察の人だったの…全然そんな風に見えないね。

エージェント・黒躑躅: 私に関することは取り敢えずいいですから、質問されていることについて、お願いします。

間宮氏: あ、あー、わかった。えーと、あれを買い取ったのは、マイトラって名乗ってた人からです。名刺ももらったけど、いつのまにか無くなっちゃったんだよね。

エージェント・黒躑躅: 確認します。マイトラさんは何と言ってあなたに話を?

間宮氏: うーん、最初に会ったのはいつだったか覚えてない、ただ、何ヶ月か前から準備はしてた。あの日の思い出を再現しよう!って話を、まあ俺が立ち上げて動いてた。ウチの祭りも年々参加する人も少なくなってたし、いつまで続けられるかも分からない、というかほんとは今年で最後にするつもりだったから、じゃあ俺のヨメはんとの思い出の花火を再現したいって。

エージェント・黒躑躅:ええとですね、間宮さん。

間宮氏: いやあ楽しかったね、祭囃子、金魚すくい、セルロイドのお面。花火が打ち上がった時の盛り上がりは最高だった。みんなの目が、顔が光を反射して青にぱっ、と輝いて…10年前のお祭りの日を思い出したよ。素晴らしい一瞬だった。…10年前のあの日も、ヨメはん…あの時は彼女だっけれど、隣にいて、俺は気の利いた物なんてなんも持ってなかったけど、花火に照らされて赤く輝く顔を見て、俺この人と一生一緒に居たいって思って、そして…結婚しようぜって、言って、10年。あっという間だったなぁ…幸せな10年だったなって、███[間宮氏の娘の名前]肩車して、肩に娘の体の重さと、寄りかかってくるヨメはんの体の感触を感じて……

エージェント・黒躑躅: すみませんが、もう少し、そのマイトラさんについて詳しく思い出せませんか?

間宮氏: あ、うん、申し訳ない…。…スーツを着てた、細い人…それくらい…かな、多分女の人…でも何回か話し合いをして顔も合わせてんだけどな…それで、祭りの前にあれを買って、打ち上げるやり方を聞いたんだ。

エージェント・黒躑躅: ……打ち上げるやり方?花火の打ち上げ方について、その方から教わったのですか?

間宮氏: うーん……あまり覚えてない。打ち上げるやり方を教えてもらった、はず。こっちにだけ火をつけて、打ち上げて、それで……終わりだって、その程度…だったと思う。

エージェント・黒躑躅: …ちょっと待ってください。"こっち"とは?貴方は複数の花火をマイトラさんから購入したんですか2

間宮氏: ああ、それはそう。うん、覚えてる。ふたつ買ったよ。

エージェント・黒躑躅: 2つ…確かですね?……私の記憶では、あなたがあれを打ち上げた後、私がすぐにあなたを拘束しました。周囲の確認もしましたが、あなたは花火を1発しか打ち上げて居ませんね。もう1発……恐らく、次に使うための「赤い」花火はどうしたのか、教えてもらえますか?

間宮氏: うーん、あんまり思い出せない…青い方に火をつけて打ち上げる、というのはちゃんと覚えてるんだけれど…。でもふたつ買ったよ、確かに。どっかに行ってしまったのかな……

エージェント・黒躑躅: 「赤の花火」がまだ町にあるとしたらそれは我々にとって重大な問題になります。よく思い出してもらえますか。

間宮氏: うーん……いや、申し訳ない。正直全然覚えてない。覚えてないというか、記憶にない?あー、赤い方は…打ち上げ無くてもいいとか、言ってたような。いや俺がもう忘れてるのかな…?でも打ち上げ方は確かに青い方しか聞いてないんだよな…赤い方は…うーん。ごめんなさい、黒躑躅さん。本当にそれは思い出せない。

エージェント・黒躑躅: …結構です。しばらくお待ちください。


<録音終了>

終了報告書: 間宮氏の証言から、如来観光のエージェントから間宮氏にSCP-940-JPが「2発」売却された可能性が浮上しました。これが来年以降に使用する目的で購入された花火である可能性を踏まえて捜索が開始され、その途中で先述の機動部隊の活躍によりSCP-940-JPの実物が確保されました3
その際に確保されたSCP-940-JPの形状から、SCP-940-JPが赤・青2発1組の花火で販売されていることが予想されたため、財団は間宮氏が起爆した花火は青の花火であり、さらに再度の花火大会の開催を目算して赤の花火を購入したと仮定し調査を行いましたが、如来観光による隠蔽工作か、事例-940-JP-29において間宮氏が購入したと証言するCP-940-JPの半分は回収出来ませんでした。

実験記録001 - 日付2018/10/01

対象: SCP-940-JP

実施方法: SCP-940-JPの爆発がもたらす影響を考慮し、回収されたうちで唯一ペアでなく青の花火のみの状態で収容されたSCP-940-JPを使用した。これを実験に参加するDクラス職員のみが視認できる状況で起爆させる。実験に際しては3名のDクラスを使用し、起爆担当のDクラス職員1名とそれを目視するDクラス職員2名のみが実験室内部を視認できる状態にし、ガラス壁越しに起爆スイッチを操作させる。

結果: 問題なく青の花火は起爆した。直後、起爆担当と視認担当のDクラス職員が涙を流しながら抱擁。拘束して尋問を行う。以下にインタビューの内容を記す。

対象:D-940-JP-001,002および003

インタビュアー: 東郷博士

<録音開始>

東郷博士: 手短に済ませよう。先ほどの反応はなぜ起こったか。それを話しなさい。それだけだ。

D-940-JP-001: あぁ、そりゃ、俺たちの…思い出だったからさぁ。

東郷博士: 思い出?

D-940-JP-002: 実は俺たち、この実験に志願する前から知り合いだったんです。

東郷博士: …それは財団の記録では確認されて……[手元のメモを確認する]…いない。原則、そう行った関係のある人物は、財団は同じ実験には参加させない。君たち何かしたか?どうやった?

D-940-JP-001: いやぁ…本当に、本当に偶然だよ。さっきまで俺たち、全然この施設でも会ったことなんてなかったし…。

D-940-JP-003: でも、実験の最初に顔を見てすぐに思い出したんだ!

東郷博士: 思い出した…ふむ。いや…しかし…財団は…いや。続けて。

D-940-JP-001: 俺たち、高校生の時に…高校なんて殆ど行ってなかったけど…でもあの日に見たんだよ、おんなじ花火、赤色の。場所も……ここだったのかな、あれは。

東郷博士: ……。

D-940-JP-003: 俺たち、10年前、3人でよくつるんでバカやってたんです。無免許で走り回って、悪いことばっかりして。あの日もそうだったよ。テキトーに走ってたらいつの間にか変なところに着いちゃって、倉庫みたいなのがあった。カギが壊れていたから、中を覗いたら何か妙な機械とかいっぱい置いてあって…花火が落ちてた。ふざけてあいつ[D-940- JP-001]がジッポで火をつけて、外で爆発させたんだ。ヒュルルって打ち上がって…赤かった。俺は正直マジ誰のものかわからん、結構ああいうの高いんだぞって言ったけど、そしたら一緒に逃げるべって言ったんだよな。

D-940-JP-001: あー、言ったなあ。でも俺の人生、やっぱあの時期が最高に楽しかった。ずっとこいつらと一緒に遊んでたいなあ、なんて思ったりしてさ、

東郷博士: …………。

D-940-JP-001: でもこんな事になっちまったから、もう約束なんて無理だと思ってたけどさぁ、ハカセ。奇跡って起きるんだな、マジ感動したよ。それでつい…泣いちゃったんだ。

東郷博士: ……わかった。もういい。君たちはそれぞれの部屋へ戻そうか。

D-940-JP-001: ああ、ハカセ。ありがとうな。ほんとに、ほんとに、ありがとう。

D-940-JP-002: ……ここじゃあ無かったけれど、あの花火も、こんな感じの場所で見つけたんだよ。壁の感じとか、似てる。

<録音終了>

終了報告書: Dクラス職員は以後72時間でSCP-940-JPに関する記憶を消失した。

分析: そもそも何故、既に使用形跡のあるSCP-940-JPの片割れという一つしかないものを、もっともらしい理由をつけて実験に使用する許可が降りてしまったのか、またこの実験に使用したSCP-940-JPは収容作戦当時から実験前まで、本当に1発のみの形で収容されたのか、今一度議論の必要あり。東郷博士

付記: Dクラス職員の証言するSCP-940-JPの第1の爆発の記録が、財団のデータベースに記録されていることが確認されました。当該の記録は財団サイト内部の倉庫にて、当時高校生であったDクラス職員らが偶然にも侵入、内部に立ち入り幾らかの騒ぎを起こしたとの物でした。事件自体は即時の記憶処理と担当者への処分によって既に解決しています。この記録の発見に伴い、SCP-940-JPのもたらす異常性に関しての再調査が検討されています。

東郷博士の提言により、SCP-940-JPを用いた実験は上記の1件を以って無期限の凍結中です。

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