アイテム番号: SCP-958-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-958-JPはサイト-81██の大型オブジェクト収容倉庫に収容されています。SCP-958-JPに対する実験の際、「表明者」はDクラス職員のみで担当させてください。また実験終了時には、SCP-958-JPを目視した職員全員に直ちにAクラス記憶処理を施すことが義務づけられています。SCP-958-JPに対する実験を行う場合には、担当研究員である███博士の許可が必要です。
説明: SCP-958-JPは全長210m・推定重量12000tで、█████社の物と同系統と見られる不明な型のバケットホイールエクスカベーター、掘削機です。SCP-958-JPに使用の形跡は殆ど見られませんが、全体として老朽化の傾向が見て取れます。また、動力を供給した場合には問題なくその機能を果たすことが確認されています。
SCP-958-JPの異常性は人間がSCP-958-JPを直接視認した場合に発揮されます。SCP-958-JPを直接見た人間(SCP-958-JP-1と指定)は、自分がやってみたいと思ったことを表明したいという軽度の欲求に駆られます。この欲求はそれを表明する機会がなければ無視できる、また別のことに意識が行っていれば気が付かないほどに軽微な物であり、SCP-958-JPから視界から外した場合すぐにその効力を失います。SCP-958-JP-1が複数人の前で自分の「やってみたいこと」を表明し、それを聴いた人間のうち、過半数がそれを「ふさわしい」と思った場合にSCP-958-JPは活性化イベントに入ります。
活性化状態に入ったSCP-958-JPは、動力の有無に関わらず瞬時にホイールをSCP-958-JP-1に向け接近し、その回転によって頭部のみを千切り取ります。SCP-958-JP-1の頭部を奪い取ったSCP-958-JPはホイールの回転をゆるやかに止め、再び不活性状態に戻ります。この時の移動及び本体の回転は瞬間的に行われますが、予想される衝撃や駆動音は発生せず、SCP-958-JP-1までの障害物の破壊も極最小限にしか発生しません。SCP-958-JP-1がSCP-958-JPを距離的に目視不可能な地点に居る場合、SCP-958-JPは即座にSCP-958-JP-1の付近に出現し、結果として出現地点及びSCP-958-JP-1のみの破壊という結果をもたらします。
活性化イベントを引き起こすのは発声という形式の表明に限られます。また、この異常性はSCP-958-JP-1がSCP-958-JPを直接目視した場合にのみ発揮され、写真や映像などでは活性化を引き起こしません。
SCP-958-JP-1はクラスA記憶処理により影響を取り除くことが可能です。また、記憶処理を行わなくとも1時間程度でSCP-958-JPの影響は無効化されることが判明しています。実験により影響時間の延長を確認。現在の影響時間はおよそ1時間20分程度です。SCP-958-JPは活性化時、見たところ通常通りにホイール及びベルトを稼働させています。しかし、その結果ベルト上に残ると推定されるSCP-958-JP-1の頭部、及び血液の痕跡などを発見することはできませんでした。
実験記録A
表明者: D-958-1
他の人員: Dクラス3名。SCP-958-JPを目視させない。
実施方法: SCP-958-JPを目視後、2km離れたSCP-958-JPを目視できない小屋に移動。SCP-958-JPの活性化が起こらないと判断できるまで十分に"表明"をさせ続けた。
結果: 「脱走すること」に続いて「脱走をしないこと」を表明した時点でSCP-958-JPが小屋の付近に出現。小屋の壁及びD-958-1の頭部を瞬時に削ぎ取った。他のDクラス職員に被害はなかった。
分析: SCP-958-JPを目視できない状態でもSCP-958-JPが活性化することを確認。活性化イベントを引き起こさない表明もあったことから、表明の内容にも条件があることが推測される。
どうやら"耳"はいいようだ。「可能そうな表明」の方が活性化の引き金になるのかも知れない。 -███博士
実験記録B
表明者: D-958-2
他の人員: Dクラス3名。SCP-958-JPを目視させない。
実施方法: SCP-958-JPを目視後、直ちに20km離れた財団管理地に移送。SCP-958-JPの活性化が起こらないと判断できるまで十分に"表明"をさせ続けた。
結果: 用意されていた200通りの表明を完遂させたが、SCP-958-JPの活性化は起こらなかった。また、同様の時間を掛けて実験Aを行った結果、SCP-958-JPの活性化イベントが確認された。
補遺: ほぼ同様の手順で数回の実験を行い、活性化イベントの条件を推定。ある程度の移動距離・活性期間の限界などを測定した。
発見記録: SCP-958-JPは19██/██/██に熊本県██山の火口付近で不活性な状態で発見されました。発見報告を受け、財団エージェントがオブジェクトの調査に訪れた際、SCP-958-JPが活性化状態に入ったことで正式にSCP-958-JPとして登録されました。当初SCP-958-JPは自身を調査しようとする物を攻撃するオブジェクトとして、その詳しい条件を調査することを提言されていましたが、エージェントの調査中に再度SCP-958-JPが活性化状態に入ったため、その異常性が判明することになりました。幸いにも、オブジェクトの早期発見・収容を達成できたため、SCP-958-JPを目撃した人物は全員特定され、記憶処理の後に解放済みです。
収容違反事案A
表明者: 一般人1名
他の人員: 一般人2名
状況: SCP-958-JPを「調べること」を表明した。
結果: SCP-958-JPは即座に50m程度移動し、表明者の頭部を奪い取った。一瞬の移動に伴う想定される破壊は発生せず、キャタピラの移動痕が残るだけであった。他の一般人に被害はなかった。
収容違反事案B
表明者: エージェント███
他の人員: 財団エージェント3名
状況: インタビュー記録を参照
結果: SCP-958-JPは即座に400m程度移動し、財団輸送機の一部ごとエージェント███の頭部を奪い取った。輸送機に大きな損傷があったにも関わらず破壊に伴う破片の飛散などは発生せず、他のエージェントに被害はなかった。
分析: 財団輸送機内のエージェント███はSCP-958-JPを目視できない状態だったにも関わらずオブジェクトの活性化という結果を招いた。活性化イベントの条件はSCP-958-JPを目視した人間が何かを他人に"表明"することであると推測された。
不幸な事故を繰り返さないにも、調査中の発声には細心の注意を払うこと。 -███博士
インタビュー対象: エージェント██
インタビュアー: ███博士
収容違反事案Bの直後のインタビュー記録です。エージェント██は軽度のヒステリー状態にありました。
<インタビュー開始, 19██/██/██>
███博士: では、事件のことを話してもらえますか?
エージェント██: ああ……俺たちはあの、抱えて持って帰る訳にもいかないサイズのオブジェクトをどうにかする為に、目撃者を一時収容し、山を封鎖し、そんで情報を統制して…… 奔走していたんだ。
███博士: 続けてください。
エージェント██: それがやっとこさ終わって、次はオブジェクトを何とかして調査しなきゃならないってことで、方針を立てようとしてたんだよ。 なんせ…… あれは単純に自身を調べられるのを嫌がるデカブツだって、そう考えてるやつが多かったんだからな、あれについて言及することすらできねぇ。俺たちは困り果ててたよ。
███博士: それではどうして収容違反が発生したのですか?
エージェント██: ああ、それで俺たちはひと休憩することにしたんだよ。そろそろ昼食にでもしないか?って言われてな。 勿論俺は食事なんてする気になれなかったよ、いつあれが襲ってくるとも分からねぇ、生きた心地がしなかったからな。
エージェント██: (ゆっくりと息を吸う) んで…… 正に食事を始めようって時だったな、あれが……あっという間もなく、輸送機の壁をぶち破って…… エージェント███の頭を、持っていっちまったんだよ。
███博士: ええ…… 不幸な事故だったと聴いています…… 彼のためにも、その時のエージェント███の様子をお願いできますでしょうか?
エージェント██: ああ…そうだな…… 気の毒でしんどそうだったあいつはたしか…… 最後にこう言ったんだよ。「早く帰って温かいカレーでも食べたいなぁ」って。
<インタビュー終了>
補遺958-JP:
以下の文書は19██/██/██の内部調査でSCP-958-JPから発見された物です。
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人間の頭部が「人材」になるのかは定かではないが、実験は一時、あるいは永久に停止されるべきであろう。 -███博士
ページリビジョン: 16, 最終更新: 22 Oct 2021 13:49