SCP-972

アイテム番号: SCP-972

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-972は標準的なヒト型生物収容チャンバーに居住させます。追加の家具や設備の要請はルフ博士に提出され、財団の保安プロトコルに違反しない限度で許可されます。SCP-972と身体的に交流する全ての職員は、SCP-972担当に配属される前に感染症プロトコル(財団SOP-89B)に合格しなければいけません。

SCP-972とのあらゆる接触は、SCP-972-1の疾患伝播の潜在的媒介を制限する形式で行われるべきです。身体的接触が必要であると判断された場合、SCP-972-1が伝播する可能性を制限するために、全ての職員はクラスV感染ハザード防護服を着用すべきです。

説明: SCP-972は、以前はアフメット・オスマンとして知られていたトルコ系のヒトの男性で、年齢はおよそ23歳、身長は立位状態で1.75メートル、体重はおよそ130キログラムです。ほとんどの点で、SCP-972は一般的なヒトの資質を示しますが、SCP-972-1との双利共生関係はその注目すべき例外です。

SCP-972-1は、ヘパドナウィルス科1に最も強く類似する異常な2本鎖DNA逆転写酵素(dsDNA-RT)ウィルスです。SCP-972-1の自然宿主範囲は他に類を見ないほど限定的であり、SCP-972のみが対象だと考えられています。SCP-972-1は、SCP-972の宿主細胞内で長期間ヌクレオカプシドの形態に留まれる独特の複製ライフサイクルを有し、本質的に宿主から分解されることなく長期にわたって“休眠状態”を維持できます。SCP-972-1の存在は、生殖細胞(すなわち精子)を唯一の例外として、SCP-972の身体を構成するほぼ全ての細胞で確認されており、SCP-972-1がSCP-972内のほぼ全ての体細胞形態を宿主として利用できることを示唆しています。宿主細胞がまだ感染していない体細胞と接触すると、SCP-972-1はさらなる複製を行います — 即ち、SCP-972-1はオリジナルの宿主細胞の中で増殖した後、新しい細胞に移動して感染を引き起こします。

SCP-972の主要な異常効果は、SCP-972が外来のウィルスや細菌に感染すると発現します。どちらの場合でも、SCP-972-1は敵対的な外来感染症を排除し、問題の宿主細胞を保護する役目を果たすと考えられます。感染中に細菌と接触すると、SCP-972-1は宿主細胞のリソソームを過剰に刺激して活性化させ、あらゆる貪食された細菌を急速に破壊する加水分解酵素を生成します。同様の作用機序がウィルス感染中にも発生し、感染性ウィルス粒子を破壊する様子が観察されます。SCP-972-1が敵対的な活動を認識する手段は不明です。SCP-972-1は、SCP-1242が生成したものなどの異常なウィルスを認識・破壊する能力を実証しており、その認識手段が非凡であることが示唆されています。

SCP-972-1の異常活動の結果、SCP-972は既知の全ての感染症に対して事実上の免疫を有しています。感染症がSCP-972に導入されると、病原体の自己複製能力に応じて、24時間から1週間以内に完全に破壊されます。この間、SCP-972は体温上昇、食欲不振、全身の倦怠感などの一般的疾患に見られる軽い体調不良を経験しますが、感染中の疾患に関連するそれ以外の症状は示しません。

SCP-972取得報告書: SCP-972は2016/5/6、対象と他多数のヒト型異常存在が居住していたマーシャル・カーター&ダーク社の施設を襲撃したUIUとの共同作戦に続いて、財団に拘留されました。この作戦中、SCP-972に関する数多くのファイルが回収されました。関連ファイルは内容を刈り込んだうえで以下に掲載されています。

初期報告書
筆者 ジョナサン・バーカー 日付 6月5日、2008年
重要度 識別子 万能薬
他の商品を詳しく調べていた時、偶然この特異な検体に巡り合ったが、もしかしたら彼は金の卵を産む鶏かもしれない。我々が押し付けるどんな種類の病気にも免疫があり、今のところ副作用も発見されていない。生物学部門が調査を進めていて、血中に存在するウィルスが病気の影響を防いでいると判明した。我々は現在、このウィルスが彼の血液を輸血した人物にも感染するか否かを研究中だ。初期の結果はかなり有望で、生物学部門が試験をスピードアップしているから、すぐ完全な結論が得られるだろう。

我々にとってさらに重要なのは(こんな旨い話は信じられないかもしれないが)、この青年の血液型がO型Rhマイナスだということだ。この金の成る木を正しく栽培すれば、今後数十年はがっぽり収益が得られるだろう。あらゆる病気に効く血液の小瓶に金を出す人間がどれだけいると思う? そうとも、我が社には自分たちの最悪の習慣から逃れるために大金を払いそうな顧客が相当いる — 私が言いたい事は分かるな?
以下のファイルが開かれている: PNCEA/8MER1/Z62FT
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合
研究アップデート 1
PNCEA/8MER1/Z62FT
送信者 ジョナサン・バーカー 受信者 マルコム・ジョーンズ
初期試験で大量生産へのゴーサインが出た。最初の買い手(特権を得るために大喜びで権利放棄書に署名した)は10年程前からHIVの抗ウィルス治療を受けていた。万能薬の血液を1回輸血すると、1週間でHIVは根絶された。生物学部門は既に、各患者に必要な最小輸血量と、検体に対して実行できる最も効率的な抽出スケジュールを探り出そうと24時間体制で取り組んでいる。

ところで、君は何色の新車が欲しいのかな? 私はもう買い物を始めているよ。
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合
研究アップデート 2
PNCEA/8MER1/Z62FT
送信者 ジョナサン・バーカー 受信者 マルコム・ジョーンズ
製造スケジュールを最適化する手順と最小抽出量を考案した。生物学部門は、検体をあまり消耗させずに実行できる血液抽出は、隔月で1週間のインターバルを挟みながらの週3回程度が限界だと考えている。たった1週間の間に、我々は既に約100件の注文を受けている。

P.S: 君の言う通り、エリザベスはエレクトリック・グリーンを気に入ってくれた。素晴らしいチョイスだ。
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合
研究アップデート 3
PNCEA/8MER1/Z62FT
送信者 フリシケシュ・シャルマ博士 受信者 マルコム・ジョーンズ
万能薬の販売を打ち切る。バーカーの野郎は少しばかり熱心になり過ぎて、俺たち生物学部門の好みよりも早々と計画を押し進めたが、きっと予想収益の桁がデカすぎて抵抗できなかったんだろうな。万能薬は敵対的な感染症の排除という観点では見事な仕事ぶりを発揮するが、ウィルスの量が新しい宿主の身体で転換点に至ると問題が起こる。

ウィルスは(数年前オリジナルの検体から見たように)最終的には体内のほぼ全ての細胞に拡散するのは知っての通りだが、問題はオリジナルじゃない全ての宿主で発生する。ウィルスが複製を止めないんだ。原因はよく分からないが、ウィルスは新しい宿主の全ての細胞内で制御不能に増え続け、やがて宿主細胞はウィルス粒子過多で破裂する。こいつは時間と共にゆっくり起こることもあれば、全ての細胞で一気に発生することもあるし、言わせてもらうが結果はあまり宜しくない。最初の買い手は遺体安置所に運ぶ前に床からすくって瓶詰めにしなきゃならなかった。

これの発生速度は宿主ごとにまちまちだ。一部の宿主は何の問題もなく数十年生きられるが、それ以外の奴らは数年以内に兆候を示し始める。しかも、こいつの感染経路は血液だけじゃない — オリジナル検体の唾液と接触した疑いがある作業員数名に初期症状が確認された、つまりこれから従業員を大勢検査する必要がある。こんな話が他所に漏れたが最後、もう誰もウチの商品を信頼しなくなるだろう。今すぐ販売を中止して、この問題が本格的にケツに食らい付いて来る前に証拠を隠滅しなきゃマズい。オリジナル検体には処分用のタブを付けた — もう投棄場に移送中だ。
マーシャル・カーター&ダーク有限責任事業組合
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