SCP-9726
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この地はあなたと私のために作られた

評価: +13+x
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アイテム番号: SCP-9726 Level 4/9726
オブジェクトクラス: Archon Classified

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1980年5月18日、フロリダ州フォート・ローダデールの沖合で撮影された、キューバ系のSCP-9726-1個体群を乗せた2隻のボート。


特別収容プロトコル: Archonクラスオブジェクトという性質上、SCP-9726は収容されません。

SCP-9726の研究にはアメリカ合衆国内で誕生したアメリカ国民のみが配属されます。1999年7月以降、SCP-9726の維持は財団の最重要指令と見做されています。SCP-9726の衰退が続いている現在、その存続を保証する手段の開発が進められています。

説明: SCP-9726は、その時点におけるアメリカ合衆国よりも経済、平均寿命、教育機会が著しく劣る国家に居住するヒト型存在に作用し、アメリカ国内でより良い生活を送ることへの願望を生じさせる、人工の (補遺9726.1参照) 精神改変効果を指します。

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ウォルター・クレイン著 “コロンビアの求愛: 十二の象徴的な彩色絵画と詩で綴る挿絵入りアメリカ合衆国史” から抜粋された挿絵。拡大図はこちらをクリックして参照のこと。

SCP-9726は他国で紛争・飢饉・内乱が発生している時期や、アメリカ合衆国の経済的・社会的繁栄期になると急激に活発化する傾向を示しています。特筆すべき事項として、1882年の中国人排斥法や出身国別割当制度1の制定に続く中国系移民の大量流入などが示すように、SCP-9726の影響はアメリカへの入国が違法化されても減退しません。

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1915年、ニューヨークのエリス島から入国するSCP-9726-1個体群。

SCP-9726によって吹き込まれた信念は通常、SCP-9726-1個体の生涯を通して持続します。これらの信念は、典型的には次のようなものです。

  • “一生懸命に働けばどんなアメリカ人でも成功できる。”
  • “ここでの暮らしは以前よりも遥かに良いものである。”
  • “自分はアメリカン・ドリームを生きている。”

1981年以降、アメリカに移住済みのSCP-9726-1個体には急激なSCP-9726関連信念の減退が確認されており、2000年以降は12%が、2023年までには45%がSCP-9726の影響を受けなくなりました。この原因はまだ不明です。

SCP-9726-1はアメリカ合衆国への移民を指します。個体数は2023年時点で4780万人以上です。

補遺9726.1: ASCIによる作成

歴史的記録が不完全であり、場合によっては存在しないため、全米確保収容イニシアチブ (ASCI) がSCP-9726の作成に着手し始めた具体的な経緯は判明していません。しかしながら、大多数の資料は1850年代初頭に当該プロジェクトが開始されたことを示しています。1861年の懲戒事件2を乗り越えて存続したごく少数の記録は、SCP-9726がアメリカ大陸に新たな白人入植者を呼び寄せ、明白なる天命マニフェスト・ディスティニーを西部・北部・南部の未開拓地へ広める手段として作られたことを暗示しています。

SCP-9726が1859年以前に作用していたという記録は存在しません。この年、SCP-4004-α3は全面的に自らを“合衆国皇帝、メキシコの庇護者、ノートン1世”であると思い込みました。皇帝ノートンを自認し始めた彼は、国家間の絆を強化し、アメリカと世界全体の人々の間で人種平等を推進するというテーマを巡って、イギリスのヴィクトリア女王やハワイのカメハメハ5世王との対話を試みました。その過激な信念と現実改変能力を脅威と見做したASCIは、催眠暗示剤4、俳優、その他の破壊工作を通して、SCP-4004-αをサンフランシスコに収容しました。

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生前のSCP-4004-α、撮影日時不明。

SCP-9726は当初こそ成功を収め、多数のドイツ系、フランス系、スコットランド系、イギリス系移民をアメリカに誘致しましたが、その一方でカトリック教徒、ユダヤ系、スラヴ系、中国系の移民も多数入国し始めたため、それを阻止するために前述の排斥法やその他の法的抑制策が導入されました。SCP-4004-αが生前及び死後に表明した信念を考慮しても、望まれなかった国家からのSCP-9726-1個体の流入が、SCP-4004-αがSCP-9726に影響または干渉した結果であるかは現時点で不明です。

ASCIはSCP-9726を頑なに運用し続け、その効果は20世紀に入っても持続していましたが、その頃から更に多くの“アラブ系、有色人種、東洋系、ラテン系”のSCP-9726-1個体を誘致し始めました。これにも拘らず、ASCIは白人のみを採用していました5が、1972年にUSSキティホークで発生した人種暴動を調査するため、最初の“有色人種”エージェントが雇用・訓練されました。この重要な事件の後、ASCIはあらゆる人種のエージェントを訓練するようになりました。1981年以降、白人国家からの移民は更に減少し、スラヴ系・ラテン系移民は増加の一途を辿りました。

1998年、ASCIがアメリカへの貢献を理由に挙げてSCP-9726の存続維持支援を求めてきた時点で、財団は初めてその存在を認知しました。財団は応じる代わりにASCIを編入するという条件を提示し、ASCIは1999年後半にSCP-9726の影響が更に減退したことを受けて最終的に条件を受諾しました。

補遺9726.2: 財団における歴史

SCP-9726の発見後、財団はアメリカ国内のサイトに勤務する外国生まれの従業員をサンプリングして、SCP-9726の研究に相応しい候補者を複数選出しました。以下に添付されているのは、そのような従業員の1人、ジャスティン・“ジェイ”・エバーウッド博士の経歴情報です。

ジャスティン・S・エバーウッド

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要注意団体研究

上席研究員
セキュリティクリアランスレベル: 4

勤務地: サイト-132 (1998年4月-2001年11月) 、 サイト-55 (2001年11月-2023年6月) 、サイト-43 (2023年6月-現在)
オフィス: MC-726
現在の役職: サイト-43、GoI研究主任

出生地: キューバ、ハバナ、サントス・スアレス
誕生日: 1974年6月26日

エバーウッド博士は財団の主要な外交担当者かつ要注意団体研究員である。かれ (They) は当初、キューバ国家対異省からアメリカ国内で潜入スパイとして働くように打診されたが、その申し出を断り、アメリカに亡命した。エバーウッド博士は世界各地の多種多様な団体、その目標、構成員、諜報能力に関して豊富な知識を有する。エバーウッド博士の学術的業績には、次のようなものが挙げられる。

  • ワンダー・オブ・ドクター・テインメント — サイト-55、2014年
  • 一本腕を背中に回して山登り — サイト-55広報、2020年
  • “揺れる混沌: カオス・インサージェンシーとその残滓” — ファウンデーション・インフォーマー vol. 62, no. 12 (2025年秋号): 12-21

エバーウッド博士は1998年に財団に雇用された当初からSCP-9726-1個体と特定されていました。かれは1994年にキューバからいかだでアメリカに不法入国していましたが、1966年のキューバ調整法に基づく濡れた足、乾いた足ウェットフット・ドライフット政策6のために、1995年には市民権の申請ができる状態となり、1998年までにアメリカ国民となっていました。

以下はエバーウッド博士が1998年5月に制作した詩の書き起こしであり、スペイン語の原文と BABEL.aic による翻訳が併記されています。 注記: 詩の構造、押韻、特定の言語の使用は翻訳に反映されていません。

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Nací en el día
veinte y séis de julio
en una noche
cálida habanera
en ciudad Santo Suárez

Mi madre dijo
que tocó una banda
afuera cuando
nací, celebrándome
y mi primer aliento

Mi padre dijo
que hubo un desfile
celebrándome
cuando no podía ni ver,
hablar, cantar, escuchar

Y yo les creí
Porque simplemente no
sabía na' mejor
Cada año, desfiles.
Los disfrutaba mucho.

Viajábamos a
el Capitolio a
ver los desfiles,
mi madre y yo, joven,
sin saber lo que eran.

Pero entonces,
empezó el colegio,
y con él, llegó
el conocimiento de
que mis desfiles no eran para mí.

no.

no.

no.

Pertenecían a Fidel.
Siempre le habían pertenecido a él
Ese hombre que creó un culto a la personalidad
Ese hombre cuyo nombre no podía pronunciar
Por miedo a invocar el Comité de Defensa de la Revolución

Debería haber sabido que
los tanques,
los soldados,
las banderas,
los aviones,
los bailarines,
las bandas,
no eran para mí.

Que le pertenecían a él.
Al hombre que abandonó mi familia.
Todo por pensar mudarnos a la "U S A"

El hombre que nos quitó las raciones cuando ya no había nada que comer
El hombre que encarceló a mi tío por atreverse a decir lo que pensaba
El hombre que se apoderó de mi hermosa isla
El hombre que me quitó mi cumpleaños.

Como empezó todo con un ataque al Moncada.
Como continuó sacando a hombres y mujeres de sus hogares.
Como culminó con su toma de posesión de Cuba.

Cuanto más aprendía, menos quería hacerlo.

Lo peor no fue saber que le pertenecían a él
Lo peor no fue el ridículo que me provocaron mis compañeros
Lo peor fue saber que mis padres me mintieron
Y todo por culpa de Fidel.

y los años han
pasado. perdonando
fue la parte mas fácil.
vivo en américa.
los desfiles en mi nombre no se celebran desde hace años.
no desde que tenía cinco.
he aprendido a dejarlos ir.
recuerdos buenos, sin duda, pero eso es todo lo que son.
recuerdos.
mi familia ya no celebra el 26 de julio.
no como el día de la rebelión, al menos.

ahora el 26 de julio es sólo mi cumpleaños.
nada más.

nada menos.

Me llamo Jay Everwood y he sobrevivido a Fidel Castro.

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私は7月26日、ハバナの暖かい夜に、サントス・スアレスの街で生まれた。

母は、私が生まれた時、楽団が外で演奏し、私の最初の一息を祝福していたと言った。

父は、まだ見ることも、話すことも、歌うことも、聞くこともできない私を祝福するパレードがあったと言った。

何も知らなかったので、私は両親を信じていた。

パレードは毎年開かれた。
私は大いに楽しんだ。

母と私でパレードを見に国会議事堂へ行った、
幼い私にはそれが何なのか分からなかったけれど。

けれどもやがて、
学校に通い始めると、
パレードは私のためではないことが分かった。

違う。

違う。

違う。

それはフィデルを祝うものだった。
最初から彼のものだった。
個人崇拝を生み出したあの男。
革命防衛委員会がやってくるのではと怖ろしくて、
名前を発音できなかったあの男。

気付くべきだった、あの戦車も、
兵士も、
旗も、
飛行機も、
ダンサーも、
楽団も、
私のものではないのだと。

全ては彼のものなのだと。
U.S.A.への移住を考えたというだけで、
私の家族を見捨てた男に捧げられているのだと。

食べるものが何も無い時に配給を取り上げた男。
私の叔父が自分の意見を言っただけで投獄した男。
私の美しい島を乗っ取った男。
私の誕生日を奪った男。

全てはモンカダへの襲撃から始まった。
それがいかにして人々を家から連れ去り続けたか。
それがいかにして彼のキューバ占領に至ったか。

学べば学ぶほど、学びたい気持ちは薄れた。

最悪なのは、パレードが彼のものだと知ったことではない。
最悪なのは、クラスメイトから嘲笑されたことではない。
最悪なのは、両親が嘘を吐いたと知ったことだ。
何もかもフィデルのせいだった。

あれから何年もの月日が
流れた。最も簡単なのは
家族を許すことだった。
私はアメリカで暮らしている。
私を称えるパレードはもう何年も開かれていない。
5歳の頃からずっと。
もう忘れることにした。
間違いなく良い思い出だけれど、それだけだ。
思い出。
私の家族はもう7月26日を祝わない。
少なくとも、反乱記念日としては。

7月26日は私の誕生日だ。
それ以上じゃない。

それ以下でもない。

私の名前はジェイ・エバーウッド、フィデル・カストロを生き延びた。


キューバ政府がグアンタナモ湾外における財団の駐留を拒否しているため、家族や渡米以前の経歴に関するエバーウッド博士の記述の真偽は検証されていません。しかしながら、上記の詩が財団支給品の私用ハードドライブで執筆されたという記録から、恐らくその内容は事実に即していると考えられます。このため、エバーウッド博士はアメリカに対して非常に好意的な見解を有するSCP-9726-1個体と特定され、更なる研究のためにインタビューの予定が組まれました。

以下は、SCP-9726-1のステータス試験のために実施された初期インタビューの記録です。

出席者:

  • D・ミラー博士、SCP-9726研究主任 (質問者)
  • J・エバーウッド研究員、SCP-9726-1個体 (回答者)

インタビュー日時: 1998年5月17日

注記: エバーウッド研究員は、SCP-9726-1個体の特徴と思われる見解が判明する約1ヶ月前から財団に勤務していた。


<記録開始>

ミラー: オーケイ、記録が始まったよ、ジャスティン。

エバーウッド: 私の名前はジェイです。

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SCP-9726研究主任、D・ミラー博士。

ミラー: 書類ではまだジャスティンとなっているようだな。

エバーウッド: 変更してもらわなくちゃいけませんね。この会議の目的は何ですか、ダリル?

ミラー: 君が書いたものについて話し合いたいんだ。

エバーウッド: もしかしてデータ入力のミス -

ミラー: あー、いや、仕事とは全く関係ない。

エバーウッド: だとすると、他に何のことを言っているのか分かりかねます。

ミラー: 君の詩だ。

[エバーウッドは身を強張らせ、ミラーを睨みつける。]

エバーウッド: どうしてそれを -

ミラー: 心配しないでくれ。君は面倒に巻き込まれてはいないよ。

エバーウッド: そんな心配はしていません。むしろ、あなたが面倒なことになるんじゃないですか。こ… この… 英語であなたを罵る言葉が分かれば良かったのに。

[ミラーは含み笑いする。]

ミラー: ジャスティン、落ち着きたまえ! これは良いことなんだ。君の詩からは、かつての故郷を支配する独裁者を乗り越え、ここでより良い生活を見出したという、一際アメリカ的な情緒が感じられた。

[エバーウッドは頬を赤らめ、顔を手で覆う。]

ミラー: アメリカが今年初めに君を迎え入れたのと同じように、財団はあらゆる人種、信条、立場の人々を歓迎している。もちろん、翻訳が台無しにしたに違いないから詩のクオリティについてはなんとも言えないが、きっとスペイン語では素晴らしいのだと思うよ。

エバーウッド: ええ。それで、なぜあなたは私の個人的なハードドライブを覗き見したんですか?

ミラー: これは“私”というよりも“財団”の問題なんだ。うちの上層部は、その、全員の業務を把握しているのを好む。ただ、私は役職上、この話をもう少し掘り下げる必要があるんだ。

エバーウッド: Verga. Chingada madre, me jodí al aceptar el primer trabajo que me pusieron por delante..“クソッ。なんてこった、一番最初に持ちかけられた仕事に飛び付いたせいでこのザマだ。” 成程。皆さんは故郷のMACと似てますね。

ミラー: こちらに来る前、君を勧誘していた組織のことか?

エバーウッド: はい。

[ミラーは笑う。]

ミラー: じゃあ何だい、君はスパイだとでも?

エバーウッド: いいえ。彼らのオファーは断りました。私はスパイにはなりたくなかった。外交家になりたかったんです。私がここでやっているのは、まさしくそういう仕事です。ヴェールに隠された世界を構成するあらゆる団体を理解しようと -

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キューバ国家対異省、通称MAC (スペイン語表記) またはCMA (英語表記) のロゴ。

ミラー: ああ、うん、知っているよ。要注意団体スペシャリスト。すると、MACは君を脅迫しようとしたのか?

エバーウッド: はい。

ミラー: そうか。安心してくれ、ミス・エバーウッド。財団は決して君にそんなことはしない。まあ、例外的な状況が出来しない限りは。

エバーウッド: …そうですか。それでも、まだこのインタビューの要点が見えてきません。

ミラー: 財団は、君がアメリカ国民になって以来、どう感じているかをより深く理解したいと考えている。

エバーウッド: それは… 私にもよく分かりません。沢山の事が一気に起こりましたからね。ここに雇われて… あれは何と言うんだっけ -

[エバーウッドは漠然とした手振りをする。]

エバーウッド: - 家、ですか。家を持つことができました。でも、ええ、もし出身地よりも良い環境かというご質問であれば、その通りです。配給カードや電気の点かない夜に慣れっこでしたから、以前と比べれば夢のような生活です。

ミラー: そうか、それは嬉しいね。結局のところ、この国は機会の土地だ。上手く順応できているかい?

エバーウッド: 割と好調だと思いますね。英語を話すのにどんどん慣れていますし、コンピュータや電気やインターネットがちゃんと存在して、突然ダウンしたりしないおかげで、学習と没入にとても役立っています。

ミラー: 実に素晴らしい。

エバーウッド: でも、今のところ一番気に入っているのはエアコンだと思います。

ミラー: うん、あれはまさしく現代の奇跡だね。ともあれ、聞きたかったのはそれだけなんだ、この辺りでひとまず終わりにしよう。 本当にありがとう、ジャスティン。

エバーウッド: ジェイです。

ミラー: そうだった。

<記録終了>




私はかつて存在したもの、もはや存在しないものです。私の言わんとすることがお分かりですか? 大統領閣下、私は、私は自分が目の当たりにしているものを、どう捉えればよいのか分かりません。私はいったい何者で、我々は彼らをどう解釈すればよいのですか? 大統領閣下、私はあまりにも大勢を傷つけてきました。数百万人が死んで、更に数百万人が墓場へと行進しています。私は単なる殺戮の機械に過ぎないのですか? 私は豚同然です。




エバーウッド研究員が実際にSCP-9726-1個体であり、アメリカに対する肯定的な考えを示していることが確認された後、ミラー博士は地域司令部にこの件を報告しました。この時点から、エバーウッド研究員はSCP-9726研究チームとミラー博士の綿密な監視下に置かれました。

2001年10月13日、エバーウッド研究員はマサチューセッツ州にあるサイト-55への異動を申請しました。ほとんどのSCP-9726-1個体は最初の配属サイトに留まることを望んでいたため、ミラー博士は当初、どのように対応すべきかを懸念しましたが、サイト-55は財団の主要な外交拠点であるため、エバーウッドの要請は受理されました。以下は、サイト-55のE・アルダー管理官による、新入従業員への自己紹介を目的としたインタビューです。

出席者:

  • E・アルダー管理官、サイト-55管理官 (質問者)
  • J・エバーウッド研究員、SCP-9726-1個体 (回答者)

インタビュー日時: 2001年11月29日

注記: エバーウッド研究員は異動申請以前から、全ての業務において優秀であり、同僚を凌いでいた。かれの異動は、アルダー管理官と、SCP-9726研究主任のミラー博士の両名によって承認された。

<記録開始>

[映像が映し出される。アルダーはカメラを調節しているようである。]

アルダー: ハロー? 見えてるかしら?

エバーウッド: ハロー、管理官。ええ、見えていますよ。

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サイト-55管理官、E・アルダー。

アルダー: あらやだ、そんなに畏まらなくっていいのよ、ハニー。エミリーと呼んでちょうだい。

エバーウッド: お会いできて嬉しいです、エミリー。

[アルダーは後ろにもたれかかり、カメラに向かって微笑む。]

アルダー: さて… ジェイ、だったわね? その名前がお好み?

エバーウッド: はい、そうです。ワオ、旧名デッドネームで呼ばれないと逆に妙な気分だな。

アルダー: まあ、それについては直に心配する必要もなくなるでしょう。サイト-132はちょっぴり辺鄙な土地柄なのよね。外縁部とでも言うのかしら。55の職員はこの種の事情をもっと良く把握しているわ。

エバーウッド: 心強いです。

アルダー: それで、あなたの出身地は?

エバーウッド: サントス・スアレス。

アルダー: それはどこ?

エバーウッド: ハバナの地区バリオの1つです。

[アルダーは両手を打ち合わせる。]

アルダー: あらぁ! Ayres dey Cooba? Yo hablow un poko day espagnol!.“クーバの土地名前? ワタシもスペインの語を少し話す!”

エバーウッド: 私は英語でもしっかり話せます。

アルダー: ごめんなさい、ちょっと興奮しちゃって。あなたがもうマイアミにいないのは知ってるけれど、もしかしたら話に聞いているんじゃないの… なんて名前の子だったかしら… エリアン・ゴンザレスを知ってる?

エバーウッド: ええ、残念ながら。彼の事件については嫌というほど知っています。

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エリアン・ゴンザレス (右から2人目) は、キューバとアメリカに住む家族の間で起こり、注目を集めた国際的な親権紛争の中心人物だった。米国連邦保安官局がマイアミに住むゴンザレスの大叔父の自宅を家宅捜索した後、彼は父親 (右端の人物) と共にキューバに強制送還された。

[アルダーは溜め息を吐き、頷く。]

アルダー: それについてどう感じる?

エバーウッド: 複雑な心境です。私は故郷を愛していますが、なんと言うか… 今あそこは居心地の良い国ではありません。

アルダー: ええ、私も同感よ、ジェイ。私の家族もより良い環境を求めてこの国に来た。だから、あの気の毒な少年の明るい未来が早々と絶たれてしまったのを、きっとあなたは納得できないだろうと思ってね。

エバーウッド: えっ?

[エバーウッドは片眉を吊り上げ、身を乗り出す。]

アルダー: そう。私の家族は350年くらい前にイギリスから移住したのよ。イングランド国教会からの分離派で、宗教の自由を実践できる場所を求めてた。

エバーウッド: 成程。確かに、ここの国民は大半が移民ですね。そうでない人々はとても少ない。

アルダー: どうかしら、私は結構自分をアメリカ人だと感じているけれど。

エバーウッド: 私もそんな気がします。多分。

アルダー: それは良かった! こちらでは歓迎されていると感じてもらえれば良いんだけどねぇ。南部は外国人に少しきつく当たりがちな地域でしょ。

エバーウッド: 私は毎日、周りのほとんどの人とスペイン語で話していますよ。

アルダー: 素晴らしいことだわ! アメリカには公用語が無いって知ってた?

エバーウッド: はい。市民権試験に出ました。

アルダー: 教えてくれてありがとう。ところで、ひとつ訊かせてちょうだい。なぜ私のサイトなの?

エバーウッド: サイト-55は財団の外交活動の中枢です。財団における私のキャリアパスであるGoI研究には、まさに最適な場所です。

アルダー: よくぞ言ってくれました、ジェイ。それに、MACの知識がある人をチームに迎えられるのは、私たちにとっても喜ばしいことよ。前の専門家は最近、別なサイトに転勤してしまってね。だからあなたが加わってくれるのは朗報だわ!

エバーウッド: 実は、私が専攻したいのはワンダーテイン -

アルダー: あら、だけどきっと故郷が恋しいでしょう?

エバーウッド: 実は恋しくないんですよ。

アルダー: オーケイ、分かったわ、ハニー。でもあの組織を専門に扱う人物が必要なの。

エバーウッド: うーん。財団との関わりはいつもMACだなぁ。

アルダー: もし了承してくれるのなら、すぐにでもあなたの異動を承認できる。

エバーウッド: Verga..“クソッ。” 分かりました。

アルダー: じゃあ、今からあなたと通話してる間に異動を承認しちゃうわね。オーケイ?

エバーウッド: ありがとうございます。

[両名共に微笑む。]

アルダー: 感謝祭はどう過ごしてた?

エバーウッド: ええと、私は感謝祭を祝いません。

アルダー: あら、でもこちらに来たら是非とも祝ってほしいわ。マサチューセッツはアメリカ生誕の地ですもの! あなたは信心深い人?

エバーウッド: 複雑です。私はカトリック系無神論の家庭で育ちました。まあ、そんなに気にしていませんけどね。今でも毎年クリスマスにはエルミタ・デル・コブレに行って、ヌエストラ・セニョーラ・デ・カリダ・デル・コブレに幸運を祈願しています。

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キューバの守護聖人 ヌエストラ・セニョーラ・デ・カリダ・デル・コブレ (“慈愛の聖母”) の本来の像は、1612年にキューバのニペ湾に浮かんでいるのを発見された。発見当時、聖母像は“私は慈愛の聖母​​です”という句が彫り込まれた小さな板の上に乗っていたという。

アルダー: 成程ね。あなたのルーチンにあまり支障が出ないことを願うわ。ここはクリスマスの頃になると大雪が降るし、その時期は休みも取りづらくなっちゃうのよ。

エバーウッド: 了解しました。ところで、引っ越す時に一緒に人を連れてきても大丈夫でしょうか? サイトやその付近には滞在しません。ボストンに住まいを手配しています。念のため、近場で暮らしてほしい人たちなんです。前回ミラー博士に相談した時は、問題ないはずだとのことでした。

アルダー: それはやっぱり誰の話かによるわ。

エバーウッド: 父と母です。今年アメリカにやって来て、市民権を取得しようとしていますが、滞在に必要な支援を受けていると証明できなければいけません。今は子供である私が両親を養う立場です。これもミラー博士は大丈夫だと言っていました。市民権試験の勉強を手伝っています。

アルダー: あら、もちろん! ご両親もこの国で職に就く予定なのかしら?

エバーウッド: 父は働けますが、母は読み書きも運転もできません。

アルダー: 読み書きができない?

エバーウッド: 弟たちの世話と畑仕事を手伝うために、10歳で学校に通わなくなりました。

アルダー: そうなの。それはお気の毒に。アメリカでは絶対に起こり得ないことだわ。

エバーウッド: ええ。

[アルダーは少しの間、コンピュータに入力を続けている。]

アルダー: さてさて、ハニー、準備はこれで完了よ。明日また、ここで会いましょうね。

エバーウッド: ありがとうございます、エミリー。


<記録終了>




長らく、私は奴隷の血によって生かされてきました。今は、今はもう、私はこの地を愛してなどいません。この大地を。私は民を愛しています。いえ、かつては愛していました。私はこれまで長い間、彼らを本来のあり方から捻じ曲げてきました。異国人の血を渇望する者は存在しません。自然の下では存在しないのです。この世界は。この世界は、私の長年の働きによって歪められました。




その後の年月を通して、エバーウッド博士は同僚よりも遥かに急速なペースでキャリアを積み上げました。かれは速やかにGoI研究主任へと昇進し、やがてサイト-55外交ハブの責任者となりました。GoI研究主任として、エバーウッド博士は世界オカルト連合、マナによる慈善財団、境界線イニシアチブなどを含む多数の要注意団体と連携し、様々な異常オブジェクトの確保と収容、情報交換、戦略上重要なアノマリーの交換に従事しました。幅広い専門知識を有していたものの、ミラー博士の要請で、かれはあくまでも対MACスペシャリストの地位に留まっていました。

2012年5月13日、移民・関税執行局 (ICE) がボストンの倉庫で強制捜査を行い、エバーウッド博士の父親である従業員のラウル・レメディオス・エバーウッドを逮捕しました。アメリカの市民権を得ていたにも拘らず、エバーウッド氏は拘留され、キューバ政府が帰国を拒否したためにベネズエラへ強制送還されました。エバーウッド博士は父親の逮捕直後、北米評議会の地域管理官に昇進したばかりだったミラー博士との対話を要求しました。

以下はエバーウッド博士とミラー博士の会話記録です。

地域評議会司令部オフィスから取得したログ。機密情報につきクリアランスレベル4以上の職員のみ閲覧可。

<記録開始>

エバーウッド:rrarlo por el rabo y voy a deswanizar a ese malparido condenado y te haré lo mismo a ti si no me pasas con ese cabrón ahora mismo!.“- あのド畜生の尻尾を掴んでズタズタに引き裂いてやる、今すぐあの野郎に繋がないようならお前も同じ目に合わせてやるからな!”

ミラー: ジェイ? すまない、スペイン語は分からないんだ。何か問題でも?

エバーウッド: へえ、田舎者グアヒーラ丸出しで喚いてやれば要求に応じるってわけか。オーケイ。ミラー博士、さっきからあなたに取り次ぐよう秘書に怒鳴り散らしていた。父が逮捕されたんだ。

ミラー: えっ?

エバーウッド: 政府役員が職場に来て、英語があまり上手くないという理由で父を逮捕した。

ミラー: そんな馬鹿な。きっと何か他に理由があるはずだ。アメリカ合衆国がその程度で人を逮捕するはずがない。無茶苦茶だ。

エバーウッド: ああ、でも実際に起きたんだよ。キューバが帰国を望んでいないから、ベネズエラに送還するつもりだと言っている。

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ラウル・レメディオス・エバーウッド氏。

ミラー: お父上はスペイン語を話せるんだろう? 何がどう問題なのか分からないよ。

エバーウッド: はぁ?!

ミラー: 彼は帰ってこれるはずだ。

エバーウッド: ワオ。その - オーケイ。ワオ。両親はこの国で元気に生活できると約束したのはあなただ。

ミラー: そして実際これからもそうだよ、ジェイ! 彼が無事にアメリカに戻ってこれると保証しよう。

エバーウッド: その間、母はどうなる? ベビーシッターの仕事だけじゃ生計は立てられない。運転もできない。英語も話せない。Verga!.“クソッ!”

ミラー: 財団ができることには限界がある。

エバーウッド: それはどういう意味だ?! 私は財団に何ができるかこの目で見てきた。従業員の家族を守るのなんて、基本中の基本みたいな -

ミラー: オーケイ、まず一息ついて落ち着こう。吸って… 吐いて。

エバーウッド: くたばれ。

ミラー: 何だって?

エバーウッド: 父を連れ戻せ。嫌なら私と同等の知識がある別のMACスペシャリストを探すんだな。

ミラー: 性急になるのは禁物だ、ジェイ。私は -

[エバーウッドが通話を終了する。]

<記録終了>

注記: エバーウッド博士は従業員として極めて重要であるという判断から、ミラー管理官は介入を決定した。

エバーウッド氏の国外退去を阻止するには手遅れであったため、ミラー管理官は代わりに南米地域司令部に連絡を取り、ICE役員によってベネズエラに強制送還されたエバーウッド氏が、同地の施設-9に保護されるように手配した。その後間もなく、エバーウッド博士は父親の所在が確認され、L-1ビザ7でアメリカへ帰国の途上であると通知された。彼のビザは、エバーウッド博士の母親であるレオノール・ドロレス・サントスとの婚姻書類確認後、IR-1ビザ8に移行した。

これに加えて、アメリカ国内での更なる安全を確保するため、エバーウッド氏は財団フロント企業に雇用された。




禁輸の解除だけでは不十分です。貴方はこれに終止符を打たねばなりません。私に終止符を。私に。私を終わらせましょう。我々を終わらせましょう。これ以上続けるべきではない。我々はあまりにも深く加担しすぎた。これを続ける道理はありません。もう、もう、もう、もう止しましょう。大統領閣下、私はもはや皇帝でありたくありません。きっとかつて望んだこともないのです。私は皇帝などになりたくはなかった。皇帝であるというのは即ち抑圧です。




この事件をきっかけに、SCP-9726の作用によってエバーウッド博士が抱いていたアメリカへの好意的見解は薄れました。単一の盲検試験9に続いて、財団に勤務する他のSCP-9726-1個体にも同様の変化が確認されたため、SCP-9726の状況を改善する手法の研究が開始されました。SCP-9726の更なる衰退を受けて、ASCI特別利益委員会は財団宛てに次のような声明を発しました。


理由: 財団が委託された現象を適切に管理できていないため。

対象: 現象9726

決定事項: 全米確保収容イニシアチブは、その現管理機関である財団に対し正式な抗議を申し立てる。

よって: 財団は現象9726に関する研究責任を強化し、アメリカ合衆国民の未来を確保すべし。

さもなければ: 財団はアメリカ合衆国からの全ての資金援助を失うであろう。

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アンドリュー・アダムズ、ASCI特別利益委員会 委員長

我らは神を信ずるIN GOD WE TRUST

資金と信頼できるパートナーを失うことを懸念して、ミラー管理官はSCP-9726研究の予算配分を30%増額し、プロジェクトに従事する人員10を約15%増強しました。

研究には2013年から2015年にかけて有望な兆しを見せ、SCP-9726は特段の変化が認められない停滞期に入りました。望ましい国家から流入するSCP-9726-1個体の数は依然と同程度にも拘らず、ラテンアメリカ、東アジア、南アジア諸国出身の個体数は増え続けました。ASCI特別利益委員会は、技術分野の学位を有するSCP-9726-1個体が過去最多となったことに満足を表明しましたが、アメリカに入国した個体の大多数は依然として未熟練労働者でした。この傾向は2016年後半まで続きましたが、その時点でSCP-9726はほとんどの誘致対象国への影響力をほぼ完全に失ったようです。

これに加えて、財団に雇用されているほぼ全てのSCP-9726-1個体の士気低下を受けて、ミラー管理官は全個体への更なるインタビューを試みましたが、その多くは協力を拒絶しました。以下は、インタビューの調整を試みた際にミラー管理官とエバーウッド博士の間で交わされた電子メールログです。

From: dir.d.miller@scp.int
To: dr.j.everwood@scp.int
件名: フォローアップ依頼
日付: 2017/01/17

親愛なるジェイ、

元気で過ごしているかい? そうであることを願う。

かなり前に、アメリカをどう思うか、言葉を交わしたのを覚えているだろうか。この国に対する君の心境について改めて語り合いたい。前回の会話以来、情勢は色々と変化しているが、君の意見を聞かせてほしいんだ。

敬具、


D・ミラー管理官
北米評議会
確保、収容、保護


From: dr.j.everwood@scp.int
To: dir.d.miller@scp.int
件名: RE:フォローアップ依頼
日付: 2017/01/17

既によくお分かりのはずです。


ジェイ・エバーウッド博士
サイト-55 GoI研究室
MACスペシャリスト
確保、収容、保護




死があるのみです。陰府シェオル奈落迦ナラカ火獄ジャハンナムドゥッカ。それが、それだけが私に相応しい。私はこの世に地獄をもたらし、彼らはまだ私を終わらせようとしない。彼らはこの上何を望んでいるのでしょう? この苦痛を、私だけではなく他の者たちの苦痛も、どうか終わらせてください。




エバーウッド博士は、ミラー管理官からの複数のメールにも拘らず、この話題について詳しく述べるのを拒みました。特筆すべきことに、財団が雇用する他のSCP-9726-1個体らもやはり詳述を拒否しました。

エバーウッド博士は後日、カナダにあるサイト-43への異動を申請し始めました。ミラー管理官とアルダー管理官は、MACの専門家を留め置く必要性を理由としてこれを却下しました。MACはフィデル・カストロの死後、2016年に公式に解散していましたが、依然として残党がベネズエラのジャングルで抵抗活動を続け、キューバ国内に潜伏工作員を配置しているという噂があったためです。異動を実現するため、エバーウッド博士は直ちに直属の助手であるアルセス研究員を後任者として訓練し始めました。

以下は2020年7月26日にエバーウッド博士の私用ハードドライブから回収された詩のログであり、スペイン語の原文と BABEL.aic による翻訳が併記されています。 注記: 詩の構造、押韻、特定の言語の使用は翻訳に反映されていません。

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Otro cumpleaños que llegó y fue
Este me lo pasé tomandome un té
¿Qué pasó con el cortadito y el guarapo?
No me lo encuentro aquí, no papo.
Gentrificado.
No sé por qué, no.

Anhelo la verdadera libertad.
Anhelo la verdadera oportunidad.
Considera esta mi salida
Mientras busco a pastos más verdes.

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また一つ誕生日が過ぎ去った
今回は紅茶を飲んで過ごした
エスプレッソやサトウキビジュースはどこに消えた?
そんなものはここじゃ見つからないよ、相棒。
高級品になったから。
なぜかは分からないけどね。

私は真の自由を切望する。
私は真の機会を切望する。
だからこれを私の退場と受け取ってくれ、
私はより良い環境を探しに行くから。

エバーウッド博士がSCP-9726-1個体の定義を満たさなくなったため、かれの活動の監視は打ち切られました。エバーウッド博士は最終的に2024年、サイト-43への転任を許可されました。



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ジェイは、パートナーと養子の息子が同居するイッパーウォッシュ・ビーチの家を出ると、イルゼのための抹茶を持って裏庭へ向かった。パートナーの右側にある籐椅子に座り、自分のアールグレイ紅茶の横に抹茶を置く。

「淹れてくれてありがとう」 イルゼは優しい微笑みを浮かべた。

「どういたしまして。どっちみち、私のお茶が冷めるのを待たなきゃいけなかったし」

イルゼはカップを持つと、沸かしたばかりだというのに一口すすってみせた。

「よく飲めるなぁと思うよ」 ジェイは笑った。「熱くない?」

「熱いわ。でも、普段の状態と比べたら大したことない」

ジェイは頷き、数メートル離れた砂場に恐竜のおもちゃを持ち込んで遊んでいる6歳児に注意を向けた。かれは溜め息を吐いて自分のカップを手に取り、念のために息を吹きかけてから、縁に唇を当てた。まだ熱いが、耐えられないほどではなかった。

「イルゼ?」 一口飲んでから、そう切り出した。

「なぁに?」

ジェームズがティラノサウルスとトリケラトプスの戦いを真似ながら大声で吼え、砂を蹴り上げた。

「君がカナダに来たばかりの頃と今では、もちろん状況が違っているけれど、移住を後悔したことはある?」

イルゼは少し考える間を置いた。信じられないほど熱い飲み物を二口飲んだ。またティラノサウルスの鳴き真似をしているジェームズに目をやり、それからパートナーに向き直って、お得意の甘い笑みを返した。

「いいえ」

プラスチックの衝突音とジェームズの雄叫び以外に破るものの無い静寂の中、二人は座っていた。一分ほどして、ジェイは沈黙を破った。

「どうして?」

「私が移住しなかったら、私たちは出会えなかった。あなただってそうよ、ジェイ。あなたがここにいてくれて嬉しい」

「でも、君の身に起きた諸々は… 君が故郷に留まっていれば一切起こらなかったはずだ」

「そうかもしれない。でも結局、私はここに来て良かったと思ってる」 パートナーを安心させようと、イルゼは一層大きな笑みを浮かべた。

「そうか」 ジェイは呟いた。「でも、財団がASCIを吸収したのをどう思う? アメリカ政府からの資金援助は?」

「それがどうかしたの?」

「違和感を感じないかい? こう、植民地主義を掲げる帝国が出来上がりつつあるような…」

「私自身、フォーコンパニーvoorcompagnie11とオランダ海上帝国の歴史をよく知っているし、ADDCに閉じ込められている間にアメリカでどんなことがあったかも研究した。南アフリカでのアパルトヘイトや先住民の扱いには、それが続いている間ずっと反対してきた。帝国主義には精通してるわ、ジェイ」

「分かってる、分かってるとも。だけどさ。やっぱり私は納得がいかないんだ。まるで、自分自身と同胞を犠牲にして、何かが前進するのを助けてしまった気がする」

「あなたはより良い暮らしを求めていただけだった」

「もう私だけの問題じゃない」

イルゼとジェイは顔を見合わせた。そして二人とも我が子に視線を向け、彼は手を振って応じた。

「私は正しいことをしただろうか?」 ジェイが訊ねた。

「したわ」 イルゼはそう返し、手を振り返した。

ジェームズはおもちゃを片付け、身体から砂を払いながら近づいてきた。

「でもまあ、当然の帰結かな。何しろ私自身、ヒスパニックなのに“エバーウッド”なんて苗字なんだ。植民地主義を受け入れるしかないのかもね」 ジェイは嘆息した。

静寂の中で、十月の涼しい風が吹いていた。

「ねえ、ママ、ババ」12

「やあ。そろそろ中に入ろうか?」 ジェイは物憂げに微笑んだ。

彼は頷き、ばつの悪そうな目で両親を見てから、サンダルに視線を落とした。「さっき、ババとママが話してたの聞こえた…」 ジェームズはそう呟いた。

「もう、気にしないでいいの、大丈夫だから!」 イルゼが口を開いた。

「いいや、ジェームズ、大丈夫なんかじゃない。この先、私にとって大丈夫になる日が来るかどうかも分からない」 ジェイは溜め息を吐いた。イルゼはパートナーを見つめ、手を差し伸べた。「第一、カナダに来たからって状況が好転すると思うかい? 私をこんな目に遭わせた国の隣にあるのに? 隣国のやること成すことにすぐさま追随するお国柄なのに?」 イルゼは右手の親指で、片方しかないジェイの手を軽く小突いた。「でも、どうにか生きる術を学ぶさ」

「聞いちゃいけないお話だった?」 ジェームズが膨れっ面になった。

「そんなことはないよ、坊や。さ、おいで。家に入ろう」

イルゼとジェイは立ち上がったが、ジェームズに引き留められた。「待って!」 幼子はそう言って砂場へ駆け戻り、ティラノサウルスを掴むと、砂を払いながら両親の下へ戻ってきた。「はい」 そう言って、彼はジェイにおもちゃを差し出した。

「これは?」

「ミスター・レックスは僕のお気に入りのおもちゃなんだ。スイッチ2の次に。ミスター・レックスは僕を幸せで強い気分にさせてくれるから、ババにも悲しくて大丈夫じゃない代わりに、幸せで強くなってほしいな」

ジェイは、今度こそ明るく微笑んで、ミスター・レックスに手を伸ばした。

「ありがとう、ジェームズ」






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