アイテム番号: SCP-980-JP
オブジェクトクラス: Euclid
実験直後、非活性状態に移行するSCP-980-JP。
特別収容プロトコル: 現在、SCP-980-JPを用いた一切の実験は禁止されています。
SCP-980-JPは現在、サイト内のパスワード付きロッカーにガラスケースに密閉された状態で保管されます。
担当職員の許可がない状態でSCP-980-JPに接触することは禁止されています。
説明: SCP-980-JPは非活性時は大きさ3cmの表面が濃い赤色の石状の実体です。非活性時、SCP-980-JPは自律的に活動せず、人間が表面に直接触れた時のみ活性化します。
SCP-980-JPは活性時、ゆっくりとしたペースで触れている部分を中心に人体を消失させ始めます。消失現象は血液に対して最も顕著に現れ、SCP-980-JPへの接触範囲が広いほど消失の速度は増加します。人体を消失させる方法は現在まで判明していません。
この現象の間、被験者は一切の痛みを感じませんが、血液が優先的に消失するため長時間接触した場合は例外なく重度の低血圧症を引き起こします。この段階で手を離した場合、被験者の多くはその後の日常生活により回復します。
さらに長時間連続して接触した場合、消失現象は血液以外の人体の構成物に及びます。消失に例外はありませんが、筋肉や内臓系が血液の次に優先されます。体内の構成物が消失するにもかかわらず皮膚への損傷はなく、体内の構成物の消失に合わせて皮膚量も減少します。被験者の体はSCP-980-JPに触れている箇所を中心に萎縮していき、接触が長引くほど生命活動が困難な状態になっていきます。SCP-980-JPから手を離しても欠損、消滅した部位や内臓機能が回復することはありません。
人体の消失現象が発生している間、SCP-980-JPは自らの体積を増大させていきます。活性状態に入った際、SCP-980-JPは触れている部位に似た形状を優先的に構築しているように見えます。
増大した部分のSCP-980-JPの実体は全体が赤褐色で、石膏によく似た質感を有しています。人体の部位によく似た形状をとりますが、体毛などの細かなものは作られません。
ある程度の大きさになったSCP-980-JPは形状に応じて自律的な活動を見せます。これまでの実験結果では意味のある行動は観察できていません。現在、SCP-980-JPは一定の条件下である程度の知性を見せることが分かっています。実験記録を参照してください。
人体から離されたSCP-980-JPは緩やかに縮小していき、元の石状に戻ります。増大部位が大きいほど非活性化までに時間がかかります。
財団はSCP-980-JPを埼玉県██市の公園敷地内で発見しました。その公園では以前から多数の子供が突発的な貧血を起こすことで知られており、その話を聞きつけた財団エージェントによって調査が行われていました。エージェントの1人がSCP-980-JPを手に持った際、手の中でオブジェクトが変形を始めたことで財団はSCP-980-JPを人体に接触することで異常性を見せるオブジェクトと判断し回収、███博士を中心に研究が行われました。
実験記録980-JP-1
被験者:D-980-JP-1(男性、29歳)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:5cmの爪の無い親指状の形状の部位を形成。1箇所の関節が存在し、時折体を折り曲げるような動作を行う。被験者は身体の異常を感じないと報告し、検査でも大きな異常はみられなかった。
███博士の分析:触れた部位の特徴を再現しているように見られるが、指を作るというより全身が指状になっているようだ。
実験記録980-JP-2
被験者:D-980-JP-1(男性、29歳)
触れる部位:左手の親指
触れる時間:5分
結果:実験記録980-JP-1と同様の現象が左手の親指に発生した。
███博士の分析:左右で大きく差が出ることはないようだ。
実験記録980-JP-3
被験者:D-980-JP-1(男性、29歳)
触れる部位:両手の人差し指の先端
触れる時間:10分
結果:中心から横に向かって1対、人差し指に似た7cmの部位を形成した。それぞれに関節が2箇所存在し、左右交互に動かすことで僅かながら移動能力を示した。被験者は頭がぼんやりすると報告し、血液量の減少による軽度の低血圧症と診断された。また、両手の人差し指が実験前と比べて細くなり、長さが3mmずつ縮小していることが判明した。
███博士の分析:形成した部位の使い方を見るに、ある程度の知能を有していると感じる。
実験記録980-JP-4
被験者:D-980-JP-1(男性、29歳)
触れる部位:右足の踵
触れる時間:5分
結果:突起のない山状の体を形成した。被験者が離れた後も動く様子は無く、非活性化するまで一切の活動は観察されなかった。被験者は直立した際の違和感を報告し、その後の検査で右足の踵の表面が内側に4mm後退していると判明した。
███博士の分析:元になった部位の特徴を再現しているということだろうか。自由に柔軟性を持たせることは出来ないのかも知れない。
実験記録980-JP-5
被験者:D-980-JP-1(男性、29歳)
触れる部位:左足の甲
触れる時間:5分
結果:触れた箇所を中心に本体に厚さをもたせるように薄く部位を形成した。実験記録4同様、移動能力は観察されなかった。被験者は靴を履いた際の左足の違和感を報告したが、診断に身体的変化は見られなかった。
███博士の分析:報告内容は被験者の気にし過ぎだろう。正確なデータのためにも、あまり同じ被験者で実験を続けないほうが良いかもしれないな。
実験記録980-JP-6
被験者:D-980-JP-2(男性、25歳)、D-980-JP-3(男性、31歳)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:被験者は特別な選考理由は無くランダムに選ばれた。D-980-JP-2とD-980-JP-3は指示によって同時にオブジェクトへの接触を開始した。その結果、D-980-JP-3の触れていた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-2の触れていた部分には一切の変化が見られなかった。
███博士の分析:これは非常に興味深い現象だ。今回の被験者はどちらも男性で際立った能力が無いため、SCP-980-JP自体が吸収する相手を独自の理由で選抜した可能性が高い。考えられる理由としては、D-980-JP-3の方が体格が良いからというものだが、年齢などの違いもあるため確証は得られない。さらなる複数人による実験が必要だ。
実験記録980-JP-7
被験者:D-980-JP-2(男性、25歳)、D-980-JP-3(男性、31歳)、D-980-JP-4(男性、24歳)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:前回の実験参加者2名と比べて身長が高く、体重の重いD-980-JP-4を新たに追加した。3名は指示によって同時にオブジェクトへの接触を開始した。その結果、D-980-JP-4の触れていた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-2とD-980-JP-3の触れていた部分には一切の変化が見られなかった。
███博士の分析:触れている人数は関係なく、やはり生物的に有利な体格を持つ者を選んでいるようだ。このオブジェクトに生存に対しての執着がある証拠といえる。
実験記録980-JP-8
被験者:D-980-JP-5(男性、37歳)、D-980-JP-6(男性、38歳)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:被験者は事前に行われたIQテストの結果に差が大きい2名が選ばれました。身体的特徴は殆ど無く、D-980-JP-6の方がD-980-JP-5に比べて筋肉量が多い程度だった。結果、IQテストの結果が芳しくないにも関わらずD-980-JP-6が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。
███博士の分析:知能に関してはどうでも良く、あくまでも身体的な強さを求めているようだ。
実験記録980-JP-9
被験者:D-980-JP-7(男性、30歳)、D-980-JP-8(女性、27歳)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:被験者は性別の違い以外はランダムに選ばれた。結果、D-980-JP-8が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。D-980-JP-8は身体的に大きな特徴は無く、D-980-JP-7よりも小柄である。
補遺:███博士の提案により、当実験参加者とは別の男女をDクラス職員からランダムに選出し、同様の実験を3度実施した。結果は女性側に実験記録1と同様の現象が発生するのみで当実験結果との相違点が見られなかったため、記録は割愛する。
███博士の分析:女性が優先されるのは間違いないだろう。性別に関しての認識もあるようだ。
実験記録980-JP-10
被験者:D-980-JP-9(女性、31歳。4人の内最も筋肉量が多い)、D-980-JP-10(女性、29歳。4人の内最も身長が高い)、D-980-JP-11(女性、35歳。4人の内最も体重が重い)、D-980-JP-12(女性、23歳。男性研究員30名へのアンケートにより、女性的な魅力を強く感じる外見とされている。)
触れる部位:右手の親指
触れる時間:5分
結果:被験者は女性の中から身体的特徴が大きい物が選ばれた。結果、D-980-JP-9が接触していた部分のみ実験記録980-JP-1と同様の現象が発生した。
███博士の分析:選ぶ基準は生物的に屈強な者であり、女性のほうが優先度が高いということのようである。
実験記録980-JP-11
被験者:D-980-JP-13(男性、41歳)
触れる部位:腹部の中心(被験者は仰向けの状態)
触れる時間:15分
結果:直径20cmの球形を形成。突起等は見られず、移動手段を持たない。意図不明の小規模な膨張と収縮を繰り返す以外に活動は見られなかった。被験者は12分時点で腹部の違和感と痛みを報告し、14分を超えた時点で意識を喪失。実験後の検査の結果、萎縮により小腸の機能が完全に失われていることが判明した。被験者は検査後解雇された。
███博士の分析:小腸を狙ってやった事ではないのかも知れないが、内臓だけでは動けないだろう。
実験記録980-JP-12
被験者:D-980-JP-14(女性、36歳)
触れる部位:右の乳房
触れる時間:15分
結果:1箇所の突起を持つ直径10cmの山型を形成。後の調査により、突起には一切の機能性が見られなかった。11分時点で被験者は右乳房の痛み、意識がぼんやりする旨を報告した。実験後の診断では低血圧症の他、被験者の右乳房が機能を含めて完全に消失していることが判明した。
███博士の分析:他の実験と比べて見るに、自身に必要な機能を選んで成長しているということだろうか。そうなると成長の中身をある程度操れることになる。
実験記録980-JP-13
被験者:D-980-JP-15(男性、32歳。糖尿病による自律神経障害あり)
触れる部位:右の掌
触れる時間:15分
結果:被験者共に一切の変化が見られなかった。この後被験者は左の掌にSCP-980-JPを持つよう指示されそれを実行したが、変化は見られなかった。
███博士の分析:今までの被験者と今回の被験者で大きく違う点は糖尿病患者かどうかだけだ。健康な肉体を作るのに糖尿病は邪魔だということだろうか。
実験記録980-JP-14
被験者:D-980-JP-16(男性、28歳。過去の事故により右肘から先が欠損)
触れる部位:右肘
触れる時間:10分
結果:SCP-980-JP、被験者共に一切の変化が見られなかった。この後被験者は左手でSCP-980-JPに触れるよう指示されそれを実行したが、結果は同じだった。
███博士の分析:どうやら何らかの方法で触れた相手の状態を知ることが出来るようだが、結果を見るにこいつは選り好みをしているように感じる。
実験記録980-JP-15
被験者:D-980-JP-17(男性、47歳)
触れる部位:前額部
触れる時間:10分7分30秒時点で中止
結果:[データ削除済]。SCP-980-JPは防護服を着用した研究員により被験者から引き離されたが、研究員と被験者はSCP-980-JPからの攻撃を受け、研究員は打撲を負い、被験者は致命的な脳機能の萎縮とオブジェクトを離した際の出血により死亡した。
攻撃を受けている間、SCP-980-JPから人間の可聴域外の高音が規則的に発せされていたことが分かっているが、周辺にいた職員や機器に一切の悪影響がないことからこれはSCP-980-JPの威嚇行動であると結論付けられた。
███博士の分析:もっと警戒するべきだった。これまでの実験結果を見れば、人間の視力や脳機能を取り入れたオブジェクトに攻撃意思が宿る可能性も予想できたはずだ。
実験結果から、SCP-980-JPは生物的に強く生存に有利な状態の人体に執着、依存する存在であると考えられます。男性よりも女性の肉体を優先しますが、理由は判明していません。
ある程度オブジェクトの性質が判明し、収容に継続的な人的コストをかける必要性が見られないためこれ以上のオブジェクトを用いた実験は未知の事象などが発生するまで保留されています。
事案980-JP-1 ████/10/14
D-980-JP-2として実験に参加していた男性職員が、SCP-███-JPの実験中に左手首から先を損なう負傷をした際、SCP-980-JPが形成したと見られる実体によって負傷箇所を再生し始めたため、非常事態と判断した現場の武装スタッフによって射殺されました。死亡する直前、D-980-JP-2は自らの身体に起こった現象に対して明らかに動揺している様子でした。再生された箇所は、D-980-JP-2の死亡と同時に萎むように縮小し、完全に消失しました。
異常現象の原因究明のためD-980-JP-2を解剖したところ、心臓表面に大きさ約1cmのSCP-980-JPに酷似した外見の物体が発見されました。物体(以下SCP-980-JP-αと呼称)は未知の方法でD-980-JP-2の筋組織に融合しており、切除したところ融合面は縮小し、非活性時のSCP-980-JPを小さくしたような形状になりました。
心臓という極めて重要な臓器にSCP-980-JP-αが付着していたにも関わらず、D-980-JP-2は事前に健康状態の悪化を訴えておらず、実験より後に実施されていたレントゲン検査でも異常が発見されることはありませんでした。
実験記録980-JP-α
SCP-980-JP-αの耐久実験を行った結果、物理的な衝撃には一定の耐久性を示しますが、300度以上に熱せられると発火し、組織が崩壊することが明らかになりました。加熱実験はSCP-980-JP-αが完全に破壊される前に中断されましたが、自己再生は行われず欠けた状態を維持しました。
観測機器は、SCP-980-JPへの攻撃時とは別のパターンを持つ可聴域外の高音を記録しました。破壊が容易なことから、今後回収されるSCP-980-JP-αは実験用に補充する場合を除き全て破壊します。保存されるSCP-980-JP-αはSCP-980-JPと同様の状態で保管されます。
SCP-980-JPは触れられている間は吸収のため人間の体内に自身を侵入させており、分離された時点で被験者の体内に残された部分が別個体として独立すると考えられます。
SCP-980-JPはSCP-980-JP-αに比べて大型であることから、類似個体の母体、または成体と考えられます。
事案980-JP-2 ████/10/14
事案980-JP-1を受け、武装した職員がただちにSCP-980-JPの実験参加経験者の拘束を始めました。
職員が駆けつけた際、生存していた実験参加者全員が興奮状態で、拘束を試みた人間に対して攻撃をしながらSCP-980-JPと実験使用されたSCP-980-JP-αの収容されている収容施設方向へ向かっていました。男性被験者は特異な行動を見せずに無力化されました。女性被験者は攻撃を受けると動きを止め、瞬間的に腹部を3倍近くの大きさに拡大させました。女性被験者の腹部は破裂し、周囲にいた職員は高速で飛散した肉片、骨片、無数のSCP-980-JP-αにより被害を受けました。女性被験者は全員死亡しました。
SCP-980-JPの収容違反は防ぐことが出来ましたが、32名の職員が軽傷を負い、検査の結果その内の14名の体内からSCP-980-JP-αが発見されました。飛散したSCP-980-JP-αを素肌に付着させたためと思われます。
回収された被験者の死体を解剖したところ、男女ともに心臓からSCP-980-JP-αが摘出されました。女性被験者は子宮周辺の損傷が激しく、内側から強い圧力をかけられた結果破裂したようでした。
███博士のメモ:これがこのオブジェクトの増殖方法なのだろう。女性を優先していた理由は、効率的に自身を殖やす場所があったためだ。
補遺: 最初のSCP-980-JP-αへの耐久実験を行った時刻と被験者達が暴走を始めた時刻がほぼ同時であったことが判明しました。SCP-980-JP-αが実験時に発していた高音は同種へ向けた警戒を呼びかける合図であると思われます。
追記1: SCP-980-JPが発見された地域で財団が偽装して実施した健康診断では、すでに247名のSCP-980-JP-αキャリアが見つかり、摘出手術を終えましたが、収容以前にどれだけの人数がSCP-980-JPに接触したかは不明です。未確認個体が多数存在する可能性が非常に高いと思われます。
追記2: 上記の健康診断を行っていた職員が、診断の準備中に襲撃を受け、2名が死亡、3名が軽傷を負いました。襲撃者は襲撃の1週間前に行方が分からなくなっていたホームレスの男性で、襲撃時には土汚れが目立ち、興奮状態でした。男性は異常なほど肉体への損傷に強く、投げつけられた医療器具によって頭部が破壊されるまで攻撃を続けました。
男性は死亡直前に実験記録980-JP-15で記録された威嚇音と酷似した高音を発しており、解剖の結果、骨格は見つからず、代わりに人間の骨格型のSCP-980-JP-αが発見されました。対象と接触したにも関わらず攻撃を受けた職員はSCP-980-JP-αのキャリア化をしていませんでした。
ページリビジョン: 10, 最終更新: 29 Aug 2021 16:41