SCP-983-JP
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捕獲作戦中のSCP-983-JP

アイテム番号: SCP-983-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 野生のSCP-983-JP個体は発見され次第捕獲し、サイト-1345に輸送してください。SCP-983-JP個体はサイト内の大型魚類収容用生簀で飼育されます。実験時のみSCP-983-JP個体はサイト-1345に設置された容量600tの水槽に1匹ずつ収容します。生簀、および水槽は1週間に一度無人機による点検を行い、異常が見つかった場合は水槽区画を封鎖し補修を行ってください。実験の際は水槽上部の投下口から実験用品を投下し、回収する際は静動ロボットで回収してください。

SCP-983-JP内の異常空間の調査にはオブジェクト担当者の承認が必要です。

説明: SCP-983-JPは主にアメリカ大陸東部湾岸の一部に生息するホホジロザメ(Carcharodon carcharias)のメスです。SCP-983-JP個体の子宮1内には空間異常が生じており、およそ17m ×6m × 9mの長方体の空間が存在しています。この空間には後述の期間を除き、他の物体は存在しません。

SCP-983-JPは交尾後に、音を発している物体(以下「対象」とする)を優先的に捕食するようになります。対象には本来の捕食対象に含まれるイルカやシャチ等の海洋哺乳類の他、エンジンにより駆動する船のような、本来は摂食不可能な物も含まれています。

対象をある程度摂食した2SCP-983-JP個体は、腹部から様々な音声(詳細は以下の実験記録を参照)を生じるようになります。この間、異常空間内には様々な実体が出現します。全ての事例において空間内に共通して存在するのはSCP-983-JPの受精卵です。受精卵は異常空間の中央部に、自身から伸びるひも状の組織で天井からつりさげられる形で存在しています。加えて、再生される音声により異なる実体が1体以上出現します。この実体は道具を使う、本来発声する事の出来ない音を用いるなどして概ね音楽理論に乗っ取った音声を奏でています。実体はSCP-983-JPの出産時に溶解し、成長した胎児と共に体外に排出されます。

なお、発せられる音声は他のホホジロサメの受精直後の卵にも影響を及ぼし、同様の異常性を獲得したメスが生まれることが明らかとなっています。この性質を利用してSCP-983-JPは、各個体が捕食した音源を共有している事が実験記録から推測されています。

以下の記録はSCP-983-JPに対して行われた実験の一部です。全ての記録はサイト-1345内の試料保管室にて閲覧可能です。

実験記録983-1

給餌対象: 木片

構成音: 木片と収容室の床の衝突音のみ。

再生された音声: 既知楽曲と一致しないCメジャースケール、4/4拍子、♩=150の音楽。

特記事項: 木製打楽器と推測される音が混在した音声。

備考: この木片と収容室の床の衝突音を記録した音声ファイルをスピーカーで再生し、捕食させた場合も同様の結果が得られた。加えて、別個体でも同一の音声が生じた事から、SCP-983-JP個体から発せられる音には個体間の差が無く、構成音依存的に生じていると考えられる。以降の実験では音声再生および給餌対象にスピーカーを使用。

実験記録983-10

音源: 木片、鉄パイプ

構成音: 木片、鉄パイプと収容室の床の衝突音など。

再生された音声: ショパンの「ワルツ第6番変ニ長調 作品643」とフレーズの一部が合致する未知の楽曲。既存局と一致しない音声では複数の曲調が出現するが概ね♩=90~150の間で推移する。

特記事項: SCP-983-JPは未知の方法により既存の音楽を模倣することが出来る可能性が存在する。なお、構成音以外に、スネアドラムと推測される打楽器の音がリズムにはまったく一致しない形で使用される。

実験記録983-16

音源: ”Oasis”4が1995年にリリースしたアルバム”Morning Glory”

構成音: ”Morning Glory”収録楽曲のみ。

再生された音声: 収録曲を切り貼りする形で形成された、主に既知の楽曲と一致しないメロディックマイナースケール、5/4拍子、♩=180の音楽。

特記事項: 複雑な音を持つ音源に対する反応を調査する実験。音源は研究班の所有する物からランダムに選択された。発生した音声には11/8から4/6への変拍子が存在。アルバムの曲を切り貼りした形で未知の楽曲が再生される。時折アルバムの楽曲と同一のフレーズが入った。

備考: 観察途中、一体の実体がSCP-983-JP個体から排出された。この実体は小型のイヌの様に見えたが、排出後即時に溶解し詳細な観察を行うことが出来なかった。この実体の出現によりSCP-983-JP個体内部に何らかの空間異常が生じているという推測がなされた。

実験記録983-23

音源: サイト-1345の近隣で営業している食堂に設置されたレコーダー

構成音: 食堂内の様々な音(11:30~12:00の30分間の音声)。

再生された音声: ♩=210の、既存曲と一致しない音楽。複数の木製楽器を叩く音を含むが、この音源の由来は不明。

特記事項: 財団がSCP-983-JP内の異常空間の存在を認識してから初めての実験。
異常空間内に侵入した記録装置には、5体のアシカの形状を持つ実体が拍子木やカスタネットなどの木製打楽器を咥え、空間中央に存在するSCP-983-JPの受精卵を取り囲み、独特のリズムを取りながら走り回る様子が記録された。
受精卵から胎児が孵化した後から出産までの間、胎児が少しずつ実体を消費していく様子も見られた。胎児は問題なく誕生した。

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実験983-29において撮影された人型実体。

実験記録983-29

音源: ウィリアムズ研究員の所有する音楽プレイヤー

構成音: "No.9"5

再生された音声: 実験音源音源及びそれ以外の音声で再現された、倍速で再生される ”Lycanthrope”6の「Elena will die twice」、「Melty of melancholy」、「Chronostasis」の3曲。

特記事項: 音声再生前から実体出現の様子を観察する実験。音源は研究班の所有する物からランダムに選択された。
音声再生前には部屋中央部に受精卵があるのみであったが、音声発生直後に異常空間の底面が盛り上がり、尾ヒレを使い垂直に立つ魚または海洋哺乳類、イヌ、数種類のヒトの形態を持つ実体が数十体形成された。異常空間の入り口とは真逆の位置には、2名の人型実体及び3体のアシカ型実体、スピーカー、ドラムセット、ギター、カスタネット、マイク、船のエンジン、木片等の多数の人工物が形成された。
人型実体及びアシカ型実体が道具を使うなどして音声を発し始める7と共に、外部でもSCP-983-JPから同一の音声が確認できた。音声の再生が進むにつれ、実体は興奮した様子で音声を発し、飛び跳ねながら空間内を移動し始め、最終的に激しい大きな移動の流れが形成された。
「Chronostasis」再生中に演奏に参加していた人型実体が移動の流れに飛び込むと、他の実体がこれを持ち上げ、更に激しく周回移動を行った。この際に一部の実体が受精卵を巻き込み破壊した。これに気付いたような動作を受精卵の周囲にいた一部の実体がとると、全ての実体が次第に鎮静化し、最終的に全実体の活動が停止した。実体は出産時と同様に溶解し、破壊された受精卵と共にSCP-983-JP個体の体外に排出された。記録機器も同時に排出されたためその後の空間内の変化は不明。

備考: 実験記録983-29と同一の音声を用い別個体で実験を行ったところ、同様に実体により破壊された受精卵や胎児が排出された。この音声をSCP-983-JP個体数削減に用いる案がSCP-983-JP研究班により提出され、審議中である。

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