SCP-9998
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評価: +25+x

キャリントン審問
SCP-9998 収容違反

審問最終報告書

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提出者: ドロレス・キャリントン

倫理委員会、審問責任者

はじめに

O5評議会の皆様へ

1. 私は皆様によって選任され、かつ倫理委員会の全面的な支持を受けて、1999年3月18日にカリフォルニア州バーバンクのNBCスタジオで発生した、SCP-9998関連事件の審問責任者を務めました。

2. 本審問の付託事項には、前述の事件に加えて、財団の文化、慣行、収容プロトコルに関する勧告が含まれます。

3. 私は現在までに、ヴェールの内外から選ばれた156名の目撃者の口頭証言を聴取し、また目撃者らによって提出された、もしくは我々のエージェントが入手した多数の書面証拠やその他の文書を検討しました。

4. 本報告書を作成するにあたって、私は、財団の歴史上最も深刻な収容違反の一つと広く見做されている本件の前、最中、及びその後の出来事について記述しています。




アイテム番号: 9998
レベル4
収容クラス:
neutralized
副次クラス:
none
撹乱クラス:
ekhi
リスククラス:
warning

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1995年9月10日の第47回プライムタイム・エミー賞授賞式。SCP-9998は“コメディ・シリーズ部門作品賞”にノミネートされた。

特別収容プロトコル: 正常性復元活動は終了しました。SCP-9998は人類の集合意識から抹消され、関連する全ての文書を財団の管理下に収めるためにあらゆる努力が成されました。最終回の放送に起因する死傷者と被害は修復されるか、消去されるか、または非異常な要因に帰せられました。MANDELAクラス記憶処理不良のリスクを最小限に抑えるため、SCP-9998と同名の偽装用テレビ番組が制作されました。

SCP-9998の関連資料は全て貯蔵サイト-██の三重ロックを施された書庫に保管されます。これらには第1シーズンから第5シーズンまでのVHS録画 (最終回を含む) と広報資料が含まれます。関連アノマリーを担当する職員は第1シーズンから第4シーズンまでの視聴を許可されていますが、第5シーズンの視聴はSCP-9998研究主任の書面での同意が無い限り許可されません。


キャリントン審問

アプローチ

28. 調査目的での民間目撃者へのインタビューは困難を極めました。SCP-9998の関係者は重大なトラウマを負っており、しばしば最終回の出来事についての知識を否定します。

29. 調査のため、民間目撃者からSCP-9998の制作に関する情報を得るにあたって、これらの人物には明白な異常活動の記憶を消去するための記憶処理薬と、SCP-9998の最終回直前の時期の回想記憶の精度を強めるための記憶補強薬の複合剤が投与されました。

30. これによって、対象者らはSCP-9998の最終回がまだ放送されていないと信じるように誘導され、同シリーズに関するメディアの取材という名目でインタビューされました。必要に応じて、鎮静剤及び/または各種の催眠技術を用いてこの前提を補強しました。

31. 調査への参加後、全ての民間目撃者は包括的な正常性復元活動の一環として処理されました…



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SCP-9998のタイトルカード。

説明: SCP-9998は、アメリカ合衆国のテレビネットワーク NBC で、1994年から1999年にかけて全5シーズンが放送された、スタジオ撮影形式のシチュエーション・コメディドラマ番組 “庶民の中の王子さま”ア・プリンス・アモング・メン でした。同シリーズは原案者のデイヴィッド・ハーパーが放送期間全体を通して製作総指揮と筆頭脚本家を務め、NBCプロダクションズとワーナー・ブラザース・テレビジョン・スタジオが共同で制作しました。SCP-9998は、裕福な上流階級の家庭で育ったものの、悪ふざけの罰として、父親からニューヨーク市 ロウワー・イースト・サイドに住む労働者階級の親戚に預けられた10代の青年、コーネリアス・“ネル”・プリンスを中心人物として展開されました。SCP-9998の異常性については、あらすじと制作過程の概略の後に詳述します。



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付録014: 民間人インタビュー

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ゲイリー・ウォリントン。

インタビュー対象者042: ゲイリー・ウォリントン
役職: 脚本コンテンツ部門 常務取締役

ああ、最初のうち、番組がどう言われてたかは分かってる。独創性に欠けるとか、前にも見たことがあるとかってね。初期の頃なんか、“ベルエアのフレッシュ・プリンス”1を保守的な白人視聴者層にウケるように改作しただけだ、なんて批判されたりもしたよ。放送時期が被ったのもマズかった。スタジオ側の雰囲気がどうかって言うと… もしかしたら、その手の批判も100%的外れじゃないかもしれん。

でもデイヴィー2は違った。彼はいつも自分が作るものに自信を持っていた。彼も類似点に気付いてはいたが、何か違う作品を作りたがっていたんだな。一度、どこでこのアイデアを閃いたのか訊いたことがある - デイヴィーの生い立ちには番組と似通ったところが全然無い。平均的な財産、優しい家族、郊外暮らし。よくあるパターンだ。彼はただ肩をすくめて、子供時代からずっと頭の中にこういう登場人物たちがいたんだと言った。

ところが、出演者たちにその話をしたら、デイヴィーは第2シーズンの打ち上げパーティーで丸っきり違う話をしていたと言われた。ワインを3本ほど空けた後、ある日地下鉄でシリーズの大筋を見つけたと言い始めたらしいんだな。そりゃあキャストは利発だから、自分たちの金のガチョウがひょっとしたら盗作かもしれないだなんて、おいそれと吹聴しないさ。でも、みんな俺を信頼してるし、俺の口が堅いってのを知ってる。ありゃ俺にとっても金のガチョウなんだからね!

俺はスタジオに引き返し、シャイナ3にその話を伝えた。彼女は「まさかそんな」と笑い飛ばして、デイヴィーは一緒に昼飯を食ってる最中にやけに感情的になったことがあると言った。番組全体が大学時代に文学の授業で学んだ戯曲を元ネタにしてると言ってたそうだ。金持ちの領主が息子を農民たちと一緒に生活させ、統治のやり方を学ばせる。例の“五つの教訓”は全部そこから来てるんだとさ。

つまり、番組のアイデアが実際はどこから生まれたのか、誰一人知らないってこった。

自分でデイヴィーに訊くといい。全く新しい答えが返ってくるはずさ。




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1997年度エミー賞授賞式のリハーサルにおけるネル・プリンス。

あらすじと制作過程: 1992年10月、ハーパーは、NBCの脚本コンテンツ部門で常務取締役を務めるゲイリー・ウォリントンに、SCP-9998の構想を売り込みました。ハーパーとウォリントンはホバート・アンド・ウィリアム・スミス大学に在籍していた頃から面識がありました。ウォリントンの支持を得て、構想はNBCスタジオにパイロット版として買い取られ、テスト視聴者からの肯定的な評価を受けてシリーズ番組としての制作が決定しました。

パイロット版は、ネル・プリンスがジョセフ・ブローカー、その妻ジャッキー、そしてブローカー夫妻の子供であるアリーとアントニー (どちらもネルより若い) が暮らす家に到着する場面から始まります。ジョセフとジャッキーはネルの遠縁の親戚として紹介され、彼らの具体的な親族関係の曖昧さはシリーズ全体を通して定番ギャグとして扱われます。ネルはごく最近、裕福な実業家である父親が仕事仲間を邸宅での夕食に招いた際にいたずらを仕掛け、父親に恥をかかせています。これを罰するために、ネルの父親は当分の間、ネルの身柄をブローカー家に預けるように手配します。第1シーズンにおけるユーモアのほとんどは、アントニーと寝室を共有し、家事手伝いに貢献しなければならないなどの、ネルの過去の境遇と現状の並置から生まれています。

このシリーズは主にカリフォルニア州バーバンクのNBCスタジオで撮影されました。第5ステージにはブローカー家の住宅に見立てた常設セットが建造され、全てのシーンがスタジオに観客を招いて撮影されました。SCP-9998事件で破壊されるまで、撮影セットは放送期間全体を通して維持されていました。

第1シーズンは月曜日の夜に、“ベルエアのフレッシュ・プリンス”の直前の30分枠で放送されたため、両番組がまとめて“プリンス・アワー”として宣伝されました。主に好意的な口コミを通して、第1・第2シーズンの視聴率が予想を遥かに上回ったため、第3から第5シーズンの放送時間は“フレンズ”に先立つ木曜日の午後7:30~8:00に変更されました。

好調な視聴率にも拘らず、SCP-9998の第5シーズンは放送前から最終シーズンと発表されました。これはハーパーの強い意志によるもので、NBCのスタジオ幹部との対立にまで発展しました。

全5シーズンの大部分は単発のエピソードで構成されていましたが、撮影スタッフによると、各シーズンのエピソードはいずれも共通したテーマを持つように意図されていました。



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付録014: 民間人インタビュー

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シャイナ・トーヴィー。

インタビュー対象者027: シャイナ・トーヴィー
役職: SCP-9998の脚本家、製作総指揮

だから、私たちが集合してシーズンの筋書きに取り掛かり始めると、デイヴィッドはほぼ確実に2つのものを携えて脚本室に顔を見せました。ピザと教訓です。

こう… 彼には、あの番組を各エピソードの寄せ集めよりも壮大なものにするっていう目標があったんですよ。つまり、それぞれのシーズンがネルにとっての教訓なんです。お父さんと和解するために、彼が学ばなければいけない五つの教訓。

第2シーズンを例に挙げましょう。私たちは、ネルが養子で、彼のお父さんは実の父親ではないことを知ります。それどころか、お父さんは自分の子供を持てなかったので、帝国じみた事業の後継者としてネルを養子縁組したことが明らかになります。ネルはジェニファー4が妊娠を受け入れて赤ちゃんの面倒を見るのを手伝いますし、ブローカー夫妻とその子供たちを巡る数多くのサブプロットと、彼らが絆を深めるのをネルが助ける様子も描かれますよね。あのシーズンの教訓は“受け継ぐということ”でした。分かりますか? ネルはなぜお父さんが自分に大きな期待を寄せているかを知るんです。

第1シーズンは全て、世界における自分の居場所と、その外側にあるものを学ぶことがテーマでした。ネルはペントハウスからは決して見えない事物に触れることになります。第2は受け継がれるもの、自分の生まれの重要性。第3は苦しみを乗り越えての成長。複数話をまたいでネルがいじめられたり、ジョセフが手術を受けたりしますよね。第4は文化の大切さ。ネルはブローカー家の子供たちに音楽を教え、学校で演劇クラブを設立してルネサンス劇を披露します。個人的には、この第4のテーマが一番貧弱だと思います。ただ単にネルが偉ぶっているように見えてしまうんですよね。反対意見を出したかったんですが、上手くいきませんでしたよ。

そして私たちが今シーズン、飛び切り重要な最終シーズンの脚本に取り掛かった時… デイヴが番組を終わらせたいと言い始めて、重役たちとどれだけ揉めたかは多分ご存知でしょう。カリフォルニアのありとあらゆる人が耳にしたと思いますよ、物凄い怒鳴り声でしたからね。

デイヴは脚本室にやって来ました。ピザを持って、でも教訓は抜きで。秘密だと彼は言いました。知りたければ、彼が - 彼一人きりで - 執筆する最終回まで待たなければいけないと。



異常性: シリーズ最終回の放送に続いて、主演キャスト (ネル・プリンスとブローカー家の人々) を演じた俳優への言及は全て異常な改変に晒されました。俳優の名前はいずれも、彼らがSCP-9998で演じた登場人物の名前に変更されました。彼らの個人情報、連邦政府の記録、過去の出演歴などのSCP-9998と無関係な情報は存在しなくなりました。現時点では、SCP-9998事件の発生以前、キャストはいずれも異常な活動に関与していなかったと考えられています。

第5シーズンの制作・放送期間中を通して、SCP-9998と関連する複数の異常な現象が発生しました (補遺001を参照) 。これらはやがてSCP-9998事件に発展しました (補遺002を参照) 。



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付録014: 民間人インタビュー

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ルシール・キートン。

インタビュー対象者022: ルシール・キートン
役職: SCP-9998のキャスティングディレクター

新しい番組を手掛けるのはあたしの夢だった。ご長寿ドラマに新規キャストが参加するよりずっとワクワクしちゃうし、しかも家族についての新しい番組だなんて、もう完璧。登場人物たちはどんな風に交流するのか、力関係はどうなってるのか、色々と考えちゃうわよね。娘は母親似なのか父親似なのか、どうして両親はお互いを選んだのか、二人の相性はどうなのか。まさに夢のよう。あたし、この仕事が大好き。

“プリンス・アモング・メン”にとって、ネルは絶対に失敗するわけにいかない役だった。視聴者が今まで目にしたことのない無名の俳優を選びかったの。デイヴィッド・ハーパーは、ネルがいたずらで問題を起こして、ドヤ街で暮らす羽目になった経緯を教えてくれた。いつも冗談ばかり言ってふざけ倒している坊やだけど、ある日、お父さんがこいつもそろそろ成長しなきゃいけないと判断する。それだけ聞けばもう十分。ボーイッシュでチャーミングでやんちゃだけど、ちょっぴりお高く止まったところもあるってやつよね。そうでなきゃこの家族の力関係は成り立たない。

顔写真を送ってもらって、そこから絞り込んでいったの。40人か、50人ぐらいの志望者がいたかしら? それからゲイリーとデイヴィッドを加えて10人にオーディションをしたのよ。

でもね、誰が演じることになるかは、オーディションの前から分かってた。ドアを開けて入室した瞬間から、ネルにはスターの素質があった。私にはネルがネル・プリンス役にぴったりだって確信があったし5、ゲイリーとデイヴィッドも同意見だって察しがついたわ。彼はまさしくあの役を演じるために生まれたのよ。


補遺001:
SCP-9998 第5シーズン

SCP-9998の第5/最終シーズンは全24話で、1998年9月から1999年5月まで放送されました。複数のソースから情報を得て、財団は潜在的に異常な影響が疑われる複数の事件が、SCP-9998の制作中に発生していたことを把握しました。これらの出来事には以下が含まれます。

  • 撮影中に、キャストが繰り返し台本から逸脱するようになった。これらの逸脱は多くの場合、問題のシーンや番組全体の雰囲気と調和しなかった。次の書き起こしは第5シーズン14話 “ネル、大勝利する” の撮影過程からの抜粋であり、 ネルの父親が近々ネルを引き取りに訪れるという知らせについて、ジョセフとジャッキーが話し合う場面である。

ジャッキー: ネルがもうすぐいなくなっちゃうなんて信じられない。あの子ったら、お父さんがお祝いにジェズアルドに連れてってくれるかもしれないだなんて言ってるの!

ジョセフ: ジェズアルドだって? この前、角にオープンしたピザ屋の?

[観客が笑う。]

ジャッキー: 違うわよ、ジョー! 少しは文化を学ぼうって思わないの? あそこよ… イタリア!

[ジャッキーは国の名前を言いながら、大袈裟な仕草で自分の胸に両手を当てる。]

ジョセフ: …リトル・イタリー?6

[観客が笑う。]

ジャッキー: ジョーってば! ヨーロッパのイタリアよ!

[ジャッキーは冗談めかしてジョセフの頭をはたく。]

ジョセフ: 我らの王子プリンスはヨーロッパよりも遥か遠くの地へ旅立つ。果たして我らは真に、これより訪れるもの、王子が渡らなければならない天上の漆黒の海に、彼を備えさせることができただろうか、そう自問せずにはいられない。我らの卑しい暮らしの中でもがいた時間は、彼に父親の望み通りのことを学ばせただろうか? 真実を言うならば、彼と一緒に暮らし続けたい。彼は我が子孫のどちらよりも真に優れている。然りとて、運命に立ち向かう者たちもまた、運命を受容する者たちと同じくそれに縛られているのだ。怖ろしいよ、ジャクリーン。我らの身に、彼の身に、全ての者の身にこれから起こることが怖ろしい。

監督: オーケイ、カット! ジョー、今のは何だ?

ジョセフ: すまん、その… ちょっと新しい方向性を試してみたかったんだ。

監督: 止めときな。もっかい最初から撮り直す。位置について。

ジャッキー: ねえ、今度から即興でやるつもりの時は教えてくれませんか?

  • 第16話 “ネル、要領を学ぶ” の撮影中に、スタジオ観客の中にいた妊娠後期の女性が流産した。この観客はそれまで妊娠に関していかなる問題も指摘されていなかった。
  • SCP-9998の全5シーズンを通しての主任照明技師、アレハンドロ・ゴンザレスが第5ステージでの単独残業中に失踪した。彼の行方は現在も判明していない。
  • 12回の撮影において、SCP-9998を見て笑いが止まらなくなったスタジオ観客が施設から退去させられた。これらの観客はいったんNBCスタジオの外に出ると落ち着きを取り戻した。
  • それまで細心の注意を払って清廉潔白な世間体を保っていたネル・プリンス役の俳優は、SCP-9998の宣伝目的で“ハリウッド・リポーター”誌の取材を受けた際に物議を醸す発言をした。最近発生した同性愛嫌悪を動機とする殺人事件への言及に対し、プリンスは生物学的子孫を設けることができないという理由で同性愛関係の妥当性に疑義を呈した。この発言はプリンスのエージェントによって隠蔽され、出版されたインタビューからは削除された。
  • デイヴィッド・ハーパーが精神的に不安定だという噂が広まり始めた。多数の証言によると、ハーパーはキャストと撮影班の双方に対してすぐ怒るようになり、各エピソードの脚本執筆をほぼ独占し、ある時点で他の脚本家らをスタジオから締め出すことを警備員に要請したという。彼の体調もまた憶測の対象となった。目撃者らは彼の腹部が極度に膨張していたと述べており、一部の者はハーパーの服の下から皮が剥け、炎症を起こした腫瘍が突き出ているのを見たと主張している。


キャリントン審問

付録014: 民間人インタビュー

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シャイナ・トーヴィー。

インタビュー対象者027: シャイナ・トーヴィー
役職: SCP-9998の脚本家、製作総指揮

私は初日からあの番組に関わっていたので、デイヴとは割と良い関係を築けていたと思っていました。ええ、過去形です。最終回の撮影には立ち会いません。あれはもうほとんどデイヴだけの番組です。彼が脚本を書き、彼が監督します。私は台本を読んですらいません、キャストにしか配られなかったので。

番組が続くにつれて、デイヴの脚本と物語のあらすじはどんどん保守的な調子を帯びるようになりました。それで - なんと言うか - 私は別にグロリア・オールレッド7の大親友なんかじゃありませんが、クリントン絡みのあれやこれや8を考えると、番組を見ている女の子たちに、女であるというのは単なる性別の問題じゃないというのを知ってもらうべきじゃないかと思ったんです。彼女たちはそれ以上の存在として見られるに値するんだと。

デイヴが執筆したシーンには、ジャッキーが娘のアリーに対して、彼女の人生における一番大切な役目は妻となり母親となることだって言い聞かせるくだりがありました。あなたもご覧になったかと思います、今シーズンの第3話ですよ。その時、もう少し表現を柔らかくして、女の子が目指せるロールモデルはそれ一つきりじゃないって示せないかどうか、デイヴにお願いしてみたんです。

すると彼は激怒しました。最終シーズンの脚本作業でストレスが溜まっていたのかもしれません。もしかしたらコカインでもやっていたのかも。

多分コカインでしょう。

とにかく、彼は私に罵声を浴びせました。

Q: 彼に何と言われたかを覚えていますか?

忘れやしません。彼はこう言ったんです。もし番組に出てくる女性のロールモデルがそんなに気掛かりなら、ジョセフにジャッキーの腕と脚を切り落とさせて、彼の言い草をそのまま引用するなら“身動きの取れない子産み女”にしてやってもいいんだぞ、と。そして、とっととオフィスから失せろと言いました。

あれは… ええ。不愉快でした。




第6話 “ネル、ルネサンスフェアに向かう” の放送後、NBCはSCP-9998の最終回を生放送すると発表しました。この決定は、“ロック”第2シーズンや、1997年の“ER緊急救命室”第4シーズン初回放送といった実験的な生放送エピソードの成功を受けて、スタジオ幹部らとハーパーが共同で下したものでした。最終回はそれまでと同じくアメリカ東海岸の時間帯で撮影・放送されるため、西海岸地域での放送は同日早朝に変更されました。この発表と共に、次のログラインが公開されました。

ネルとブローカー家の生活は終わりを迎え、ネルの父親が彼を故郷へ連れ戻しにやってくる。

生放送の決定とその概略の発表は、ネルの父親を演じる俳優の正体について、一般大衆の強い関心とメディアの憶測を招きました。ブックメーカーらは俳優か否かを問わず、多種多様な有名人に対する賭けを受け付け始めました。最終回への出演が予想された人物は、実業家のドナルド・トランプから、ベテランのシットコム俳優 ビル・コスビーに至るまで多岐に渡りました。また、この発表は異常現象の顕著な増加を誘発しました。実例として前述した事件はいずれも発表後に発生したものです。


キャリントン審問

財団による調査

135. SCP-9998の最終回に先立って、財団職員はこの番組に関連する複数の異常現象を正確に特定しました。これらの事件は撮影セット内でも、その外部でも発生しました。

136. SCP-9998が調査された発端は、連邦捜査局 異常事件課 (“UIU” / GoI-102) のハリウッド支局から得られた情報でした。過去数年間、GoI-102は、ハリウッド市内やより広範なエンターテインメント業界で、数字の5と結び付く異常なカルト教団が活動しているという疑惑の捜査を進めていました。一見、この数字はSCP-9998と頻繁に関連付けられていたため - 全5シーズン、五つの教訓、第5ステージでの撮影、5人の主演キャスト - GoI-012は噂のカルトがSCP-9998に影響を及ぼしていると考え、財団の連絡員にもその旨を伝えていました。

137. 財団エージェントらは、当初情報を受け取った者も、その後の調査を行った者も、GoI-102が提供した情報を十分に疑わず、また独立した検証を行いませんでした。GoI-102はしばしば協調的な組織と見做されていますが、第三者からの情報は全て綿密かつ厳格に精査されるべきでした。GoI-102側が立てた仮説に対する財団の過度な依存は、究極的には、実際に関与していた異常な勢力の誤認に繋がりました。

138. 財団内に存在した組織文化上の問題は、初期調査の綻びを悪化させました。SCP-9998は低リスクであると不正確に判断され、十分な注目とリソースを配分されませんでした。SCP-9998が最終的な収容違反と同規模の問題を起こす可能性は、良く言っても極めて低い、最悪の場合は全くあり得ないと見做されました。これを最も明確に表現しているのは、ティム・ウォッチマン研究員の証言からの以下の抜粋です。完全な証言は付録013、財団内インタビューに掲載されています。

どう聞こえるかは分かってる。今にして思えば、怠慢だろう。でも俺たちだって人間だし、ヴェールの両側にいる。ベルリンの壁が崩されて、冷戦が終わった時、俺たちはかなり揺さぶられた。何もかもが前よりも安全になったように思えたんだ。

ああ、大多数の財団サイトには夥しい数の恐怖が相変わらず収容されてたし、そのほとんどは自爆用の核兵器を最終手段として導入しなきゃいけないぐらいヤバかった。でもそのアノマリーや核は両方とも俺たちのもんだった。俺たちが管理していたんだ。冷戦の激化が収容違反をもたらす心配はなくなった。両陣営が研究していた超常兵器はあらかた掌握できた。誰もが未来を楽観してた。

しばらくぶりに、全てが上手くいきそうな気がした。

139. 本審問の過程で、SCP-9998のみならず、当初低リスクと判断された32点の異常物品・現象の分類、調査、取扱いに際して、油断に起因する事件があったことが判明しました。これらの発見は偶発的かつ意図せぬものでした - この問題の真の規模は遥かに大きいと考えられます。

140. 135項に述べた通り、財団はSCP-9998の制作過程で発生した異常な事件を発見できていました。しかし、136項から139項に列挙した問題によって、財団の調査範囲はごく限られたものとなり、職員はSCP-9998に関連する、より深刻な異常現象の幾つかを見落としました。これらの事件は本審問の過程で初めて明らかになりました。実例としては次の通りです。

140.i. ミシガン州デトロイト在住の37歳女性が、顎の骨折に起因する出血で窒息死した。夫が逮捕され、殺人罪で起訴された。彼は妻が顎を骨折したのはSCP-9998を視聴して過剰に笑ったためだと主張した。

140.ii. ネル・プリンス9・ファンクラブの会長を務めていた、マサチューセッツ州ボストン在住の26歳女性が、両耳の蝸牛をコルク抜きで摘出しようと試みた。彼女は入院し、録音笑いが常時聞こえるようになったので消そうとしていたと主張した。

140.iii. オレゴン州スプリングフィールド在住の23歳男性が、自宅のテレビの前で全身の血液を失い、死亡しているのが発見された。現場にはテレビ画面に付着した血まみれの手形以外の血液は残されていなかった。財団は事件を把握し、異常性があると仮定してテレビを押収した。3週間の保管の後、実験が行われ、テレビは非異常だと結論付けられた。検死解剖報告書は、男性がSCP-9998の放送中に死亡したことを示す。

140.iv. 男児2人 (9歳と14歳) が、カリフォルニア州サンフランシスコの聖ルカ病院に、複数の骨折と打撲で入院した。彼らは、育児放棄の前歴や精神疾患の既往歴が無い父親が、ネル・プリンスのような優れた息子ではないという理由で自分たちを殴打し、叱責したと主張した。

141. この調査からは、仮に財団がSCP-9998の異常な影響力の規模を正確かつ完全に評価していれば、SCP-9998事件と同等のシナリオが出来するリスクを予見し、その発生を未然に防止できた可能性があったと考えられます。


補遺002:
SCP-9998 シリーズ最終回

以下はSCP-9998のシリーズ最終回の最後の10分間の書き起こしです。この展開の全体がアメリカ合衆国全域で放送されました。

«記録開始»

[ブローカー宅は風船や“帰宅の時”という横断幕で装飾されている。ネル・プリンスとブローカー一家はドミノマスクを着用している。]

アントニー: へーえ。これが仮面舞踏会マスカレードってやつ? エナジードリンクの名前かと思った!

[観客が笑う。]

アリー: んもう、お兄ちゃんったら…

[観客が笑う。]

[カメラ視点が部屋の反対側へ移動する。ネルがジョセフとジャッキーの隣に立っている。]

プリンス: ねえ、帰る前に言わせてくれ。僕はここでとても素敵な経験を積んだよ。

ジャッキー: あぁ、スウィートハート。本当に優しい子ね。

ジョセフ: 寂しくなるよ、ネル。お前は最高の… いとこ…

[ジョセフがジャッキーに向き直り、ジャッキーは首を横に振る。観客が笑う。]

ジョセフ: 甥っ子…

[ジョセフがジャッキーに向き直り、ジャッキーは首を横に振る。観客が笑う。]

ジョセフ: 又いとこ…

[ジョセフがジャッキーに向き直り、ジャッキーは首を横に振る。観客が笑う。]

[ジョセフは沈黙している。]

ジョセフ: 姪っ子?

ジャッキー: ジョー!

[ジャッキーがジョセフの頭をはたく。観客が笑う。]

ジョセフ: まあそんなこたぁどうだっていいのさ! お前は家族の一員、それが大事なんだ。さあ、おいで。

[3人は抱き締め合う。観客が喜びの声を上げる。]

[家の電話が鳴る。]

アントニー: 俺が出るよ!

[アントニーは電話に向かって走っていくが、転んでソファの後ろに倒れる。]

[観客が笑う。]

アントニー: あう… ポンこつが折れたかもしれない。

[観客が笑う。]

アリー: 何それ?! ポンコツなんて骨無いんですけど!

[観客が笑う。]

アントニー: うん、もう無くなったと思う。

[観客が笑う。]

[ネルが電話に歩み寄り、受話器を取る。]

プリンス: どーも! … うん、ネルだけど… え… そっか… いや、分かった。みんなにも知らせるよ。

[ネルが受話器を置く。]

ジャッキー: スウィートハート? どうかした?

プリンス: ええと… なんて言えばいいのかな。父さんが病気なんだ。すごく具合が悪くて、もう来られないって。僕が帰らなきゃいけないのは変わらないけど、父さんは来れないから、誰か信頼できる人を代わりによこすってさ。

ジャッキー: まあ、ネル、残念だわ。私にとって親であることは世界一大切だから、断言するわ。もし来られたなら、きっとお父様もここに居てくれたはずよ。

プリンス: 分かってる。

ジョセフ: そしてお前もすぐに、親父さんの傍の正しい居場所に戻れる!

アントニー: 血縁からは逃れられない。走って逃れようとしても、血は常に共に走り、虚しい逃避の糧となるばかり。10

アリー: んもう、お兄ちゃんったら。

[観客が笑う。]

[誰かが玄関ドアをノックする。]

プリンス: きっと父さんの代理だ!

[観客が囃し立てる。]

[ネルが玄関に走っていき、ドアを開ける。]

プリンス: やっぱり、君だったか!

[訪問者の姿は見えない。セットやカメラ視点の外部に待機しているようである。]

プリンス: 父さんならきっと君をよこすだろうと思ってた。さ、入りなよ。

[ネルは脇に立ち、身振りで訪問者に入室を促す。]

[SCP-701-1が戸口から入室する。]

[観客は沈黙している。]

キャリントン審問

付録013: 財団内インタビュー

インタビュー対象者132: ラクシュミー・ナラン博士
役職: SCP-701の研究主任

SCP-9998が最終回を迎える以前、SCP-701事象は何年も発生していませんでした。研究チームの中には、もう二度と起こらないのではないか、いつになったらオブジェクトクラスは再評価されるのかと、声を大にして言う者もいました。やがて、新たな事象は発生しました。そしてアメリカのほぼ全ての家庭に生中継されました。

プサイ-9の事件以来、我々はアラガッダを探索するにあたって用心を重ねました。担当職員はより頻繁に配置換えされました。潜入調査が行われる時も、各チームには明確な指示が下されました。できるだけ早く出入りし、出口の近くに留まれ。奥へ踏み込んではならない。

もしかしたら警戒しすぎていたのかもしれません。その対策は情報収集を困難にしました。それでも、701事象が起きていないのに、あの都は全く変化も進展もしていないように見えました。ところが、最終回の数週間前から、著しい活発化が確認されました… 実体たちが、住民も訪問者も等しく、集団で出歩き始めたのです。

我々との会話に応じてくれたのは1体だけで、それもごく短時間でした。その実体は代表団の一員だと名乗りました。“戴冠式”に出席するためにやって来たと。

後知恵で考えれば、全てがどれほど符合しているかが分かります。しかし、アメリカの平凡なシットコムと関連する些細な異常現象が、これらのアノマリーと繋がっていたなどと、当時の我々に知る術があったでしょうか?

無理です。

それは不可能でした。

そうでなければどれほど良かったか。

プリンス: パーティーへようこそ!

[観客は沈黙している。]

[ネルとSCP-701-1はセットの中央へ歩いていく。キャストの大多数はSCP-701-1に反応を示さない。ジャッキーの態度が変化する。彼女は動揺した様子で仮面を外す。ジョセフはSCP-701-1を上から下まで眺め、ジャッキーに向き直る。]

ジョセフ: お前のよりも高いハイヒールだ!

[観客は沈黙している。]

ジョセフ: いい加減あらゆるもんを見尽くしたと思ったがなあ。近頃の流行にゃついていけんよ。

[観客は沈黙している。]

[ジャッキーは画面外の撮影スタッフに顔を向ける。]

ジャッキー: デイヴィッド、どういうことですか? こんなの台本に無かった -

[SCP-701-1が素早くジャッキーに顔を向ける。彼女は沈黙する。ネル以外のキャスト全員がその場に硬直する。]

プリンス: 何か飲む?

[ネルは台所へ歩いていき、冷蔵庫からビール瓶を取り出す。彼はSCP-701-1のもとへ戻り、瓶を差し出す。]

[SCP-701-1は反応しない。観客は沈黙している。]

プリンス: …ワイン派かな?

[観客の1人が静かに含み笑いする。]

プリンス: いいとも、飛びっきりのをご馳走してあげるよ。

[ネルはアリーに歩み寄る。]

プリンス: 16年物の白なんてどうかな?

[観客席からかすかな笑い声が聞こえる。]

[ネルはポケットからコルク抜きを取り出す。彼はそれをアリーのオトガイ下隙11に深く刺し込みながら回転させる。アリーも、その場にいる他の人物らも、この行動に反応を示さない。]

プリンス: ねえ、ブドウがどんな風に呼びかけ合うか知ってる?

[SCP-701-1は反応しない。]

プリンス: 彼らは「シャルドねえ!」って言うのさ!

[観客席からかすかな笑い声が聞こえる。]

[ネルはコルク抜きを引き抜き、傷口にワイングラスをあてがう。グラスは血液で満たされ始める。]

プリンス: ソムリエにバレンタインデーの贈り物をするなら何が良いと思う?

[SCP-701-1は反応しない。]

プリンス: バラの花束ならぬ、ロゼの酒束!

[観客が笑う。]

[血液がグラスから溢れる。それはネルの両手を伝い、撮影セットのカーペットにこぼれる。ネルはSCP-701-1のもとへと移動する。]

プリンス: 里帰りを祝して。

[ネルはSCP-701-1にワイングラスを手渡し、SCP-701-1はそれを受け取る。SCP-701-1はこれ以降、番組終了までグラスを持ったままである。SCP-701-1がグラスを口元に運ぶ様子は見られないが、内容物は時間とともに減っている。]

[SCP-701-1は忘れ去られた書物の頁の間を吹き抜ける北風のような音を発する。その音は牛乳の、蜂蜜の、決して語られなかった事物の味がする。柔らかな首に巻かれる白絹。それは指導である。それは或る父親とその放蕩息子を結ぶ絆である。それは昇天の約束であり、己の地位を知るということである。]12

プリンス: 君たちとここで過ごすうちに、沢山の学びがあった。中でも特に一つ、大事なことが分かったよ。僕にとっての、最後の教訓だ…

[ネルがカメラを直視する。]

プリンス: 僕は君たちの誰よりも偉い。

[観客が熱狂的な喝采を送る。]

キャリントン審問

放送

514. SCP-9998の最終回におけるSCP-701-1の出現は、放送監視ハブ (BSH) に勤めていた職員によって、登場から3秒以内に異常事態としてフラグ付けされました。

515. BSHの認識災害シールドは正常に展開され、職員がSCP-9998の影響を受けるのを防いだことを付記しておきます。

516. 地上波テレビ放送を停止する決定には、勤続年数等級2V以上の職員2人の承認が求められます。その承認は財団の放送監視システム、PANOPTESにデジタル入力する必要があります。放送当時は同等級の監督者2名が出勤しており、うち1名が直ちに承認しました。プロトコルに反して、2人目の監督者はBSHを離れていたため、承認を出すことができませんでした。この監督者を近場の会議室で発見し13、BSHに連れ戻し、承認を入力させるまでに3分34秒が経過しました。

517. 放送停止命令が発令されました。SCPファイルに記載されている通り、SCP-9998の異常性は放送の中断を妨げました。BSHはこれを認識し、速やかに収容努力を強化しました。

518. 収容試行の遅延に加えて、出現した実体がSCP-701-1だと特定されるまでに6分以上が経過しました。より早期に特定されていれば、財団はその後の出来事を収容するにあたって、より適切な準備を整えることができたでしょう。

watchparty.jpg

最終回の同時鑑賞会はアメリカ合衆国全土で開かれた。

放送のこの時点から、重大な異常作用が発現し始めました。財団はSCP-701-1の出現直後に番組の放送停止を試みましたが、SCP-9998の異常性によって、放送は中断されずに続きました。

SCP-9998の視聴者は唐突な暴力行動の激発を経験しました。具体的な事例を以下に掲載します。

[ニューヨーク市ブルックリン区のヘネシーズ・バー。SCP-9998の最終回が大きなテレビ画面で流れている。客はテーブル席に座って飲食し、お互いと交流している。]

[番組の最初の20分間は予想通りに展開される。]

[SCP-701-1が登場すると、バーの雰囲気が静まり返る。]

[数名の客がSCP-701-1の出現に不安または恐怖を感じているようだが、バーを退出したり、視聴を止めようとする者はいない。]

[ネル・プリンスとSCP-701-1が交流し始めると、一部の客が再び笑い始める。]

[何の前触れもなく、1人の客がビール瓶で隣の人物を攻撃する。ビール瓶が砕ける。襲った人物は破片を拾い、被害者に食べさせようとする。このやり取りを通して、両者ともに笑っている。]

[バーで暴動が発生し、視聴者らはそれ以前の人間関係を無視して目の前の人物らを手当たり次第に攻撃し始める。]

[女性がテレビ画面に向かって投げ飛ばされる。画面が割れる。画面の破片一つ一つが放送を映し続ける。暴力行為が続く。]

[視聴者らは一斉にバーを飛び出し、互いや路上で遭遇した人物らに対して無差別かつ日和見的な暴力行為を続ける。閑散としたバーには負傷者らが雑然と横たわっている。左眼窩にビールサーバーの蛇口が強引に挿入された死体が倒れており、顔面の開口部からビールが溢れ出している。]

[通りの反対側で、異常性に影響された別のグループがバーでの同時鑑賞会を抜け出す。両グループは衝突し、街路の至るところで暴力が振るわれる。]

[数人の客が自分の車に乗り込んで武器として使い始め、乱闘する人々を跳ね飛ばしてゆく。]

このような状況がアメリカの各地で出来しました。

放送は次のような終わりを迎えました。

[ネルはセットの中央へと歩いていき、カメラが後を追う。SCP-701-1は動かず、画面端に留まる。]

[カメラの後ろから、何かが動く音と、喘鳴が聞こえる。]

[前屈みになった人影がセットに足を踏み入れる。デイヴィッド・ハーパーである。彼はSCP-701-1に話しかける。]

ハーパー: 私はやったぞ。あなたに [咳込む] 言われた通りのことをやったぞ。

[観客が笑う。]

ハーパー: 私は書いた。

[観客が笑う。]

ハーパー: 彼らは見届けた。

[観客が笑う。]

ハーパー: 授からざる王の世継ぎを。

[ハーパーはシャツのボタンを外す。彼の上半身全体が巨大な炎症組織の塊に包み込まれている。彼はプリンスに顔を向ける。ブローカー一家を演じるキャストが同時に話し始める。]

キャスト: この愚者の血によって、我らは叙任する。

[SCP-701-1が左手の人差指を上げる。組織塊が破裂し、プリンスを血液で覆う。ハーパーが床に倒れ、死亡する。]

[観客の笑い声のデシベル値が更新される。これ以降、笑い声は放送終了まで途絶えずに続く。]

O5司令部が放送の無力化と収容実行のために財団衛星兵器の使用を承認する。

衛星VX-Ω スタートアップ 開始

[プリンスを覆う血液が蒸気を発し、仮装用の仮面以外の衣服を溶かしてゆく。SCP-701-1が人差指をゆっくりと回転させ始める。プリンスの右脚の皮膚が剥離する。皮膚は上方向へと剝けていき、プリンスの右脚全体の筋肉を露出させてから脱落する。この過程がプリンスの身体各所で繰り返され、彼はすぐに全身の皮が剥がれて筋肉と骨が剥き出しの状態になる。彼はこの過程で反応を示さない。脱落した皮膚は、大きな帯となってプリンスの背後に漂う。]

ジョセフ: そして、嗣子を設けること能わざる我らの王に、我らは貢物を、一人の子を捧げる。

[プリンスは後ろに倒れ、皮膚に絡めとられる。皮膚の帯は上方へと浮かび、プリンスを持ち上げる。彼は依然としてカメラ視点に完全に映り込んでいる。]

爆撃地点座標を取得しました。

[観客の笑い声が高まり続ける。回収された監視カメラ映像は、観客が自分自身や周囲の人物らの皮膚を剥がし始めたことを示す。笑い声は止まない。]

ジャッキー: 既に生まれたものが、誤った形で生まれることはない。しかし、生まれたものを縄で括ることはできる。

[6本の骨状突起がプリンスの頭皮から突出する。突起は頭蓋骨と筋肉を突き破り、真上へと伸びている。皮膚を剥がされたプリンスの身体から血液が流れ、下方の撮影セットへと滴る。]

アントニー: 密かに育てられ、畜牛の中で養われ、かつてあなただったものがあなたの所有物となるだろう。

[ブローカー一家役のキャスト4人が各々の背後に手を伸ばし、アンティーク調の短剣らしきものを取り出す。これらの短剣は先行するどの場面にも映っていない。自らの皮膚を剥がし終えた観客が目を抉り出し始める。]

アリー: 吊られた王があなたの帰還を待っている。膚の協定は結ばれたのだ。

[アリーが話し始めると、先程の傷から血液が撮影セットに撒き散らされる。]

[各キャストが短剣で自らの腹を裂く。腸が体から飛び出し、床にこぼれる。観客が歓声や雄たけびを上げる。キャストが同時に話し始める。]

キャスト: そして、この…

軌道攻撃 準備完了度 80%


[こぼれた腸が自然に結び合わされ、1本の長大な臓器になる。片方の端が撮影セットの垂木に向かって浮かび上がり、カメラ視点から外れる。]

キャスト: … 我らの血によって …

[腸で形作られた縄のもう一方の端が、プリンスの首に巻き付く。]

軌道攻撃 準備完了度 90%


キャスト: … 我らは、吊られた王子を叙任する。

[SCP-701-1が拳を握り締める。]

[王子The Princeを支えていた皮膚の帯が浮遊しなくなる。]

軌道攻撃 準備完了度 98%


[王子が落下する。]

軌道攻撃を開始します


[撮影セット全体が財団の介入によって抹消される。一瞬、放送が眩い白色光だけになり、それから停止する。]

[異常現象は終結したと見做される。]

«記録終了»

爆撃後、財団エージェントらが現場の調査に派遣されました。瓦礫から回収された骨粉の法医学的分析を通して、観客と撮影班の86%、ブローカー一家を演じたキャスト4人、及びデイヴィッド・ハーパーの死亡が確認されました。ネル・プリンス由来の生物学的物質は回収されませんでした。ネル・プリンスの行方は不明です。SCP-9998-1分類は保留されています。

キャリントン審問

結論と調査結果

701. SCP-9998が放送された結果、アメリカ合衆国全土で合計█,███,███人14の死傷者が発生しました。

702. 放送は正常性からの重大な逸脱をもたらしました。危険の兆候は見落とされ、手順は遵守されませんでした。今回、財団は異常を封じ込めるという使命を果たすことに失敗しました。

703. 衛星VX-Ωの運用は異常現象を停止させたものの、その起動に至るまでの時間は許容パラメータの範囲外でした。これは運用現場での収容違反が原因だと確認されました。衛星アレイの運用に関わる中核知識の保持者を含む数名の職員が、休憩室でSCP-9998の最終回を視聴し、汚染されたためです。

704. 当該テレビ番組と異常現象の関連性について懸念が提起されていたにも拘らず、それらの情報はどの財団サイトの幹部や保安職員にも配布されませんでした。これはSCP-9998が最終回の放送後まで公式なSCP指定を割り振られなかったためです。この結果、SCP-9998最終回視聴パーティーが██ヶ所15のサイトで開催されました。

705. 最終的には、収容達成のために、データベースの収容プロトコルに記載された措置に加えて、███████ ████████16の実行が決定されました。

706. ███ ████ ██ █████ ████17 、それによって生じた課題が █████ ███ ███ █████████ ████ ████████ ██ ████18 となりました。

707. █████████ ██████████ ████ ██████ ██ ████████ ██████████。19 これを新たなベースライン現実の要素として確立するのは許容範囲と見做されています。

708. このような措置を今後何回実行できるかは不明です。現在の推定では█ ██ █ ████ █████。20

709. O5評議会は █ ██ █21 に鑑みて、本報告書の調査結果を受容し、選択された勧告を実施し、プロセス全体の透明性を確保することを決議しました。

710. この報告書に基づいて成された勧告の詳細は付録06に詳述されています…




















キャリントン審問

付録014: 民間人インタビュー

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ゲイリー・ウォリントン。

インタビュー対象者042: ゲイリー・ウォリントン
役職: 脚本コンテンツ部門 常務取締役

これで打ち止めなんて残念だ、本当に。デイヴィーにこれっきりだって言われた時はむかっ腹も立ったが、結局のところは彼の決定を尊重するっきゃない。何か代わりを見つけるさ、いつも通り。デイヴィーがこの番組について語る時の様子ったら、他には一切関心事が無いように思える。ああいうのを本当の一発屋って言うのかね。

Q: 最終回には何を期待していますか?

記録破りのどデカい視聴率だ! ハッ。

Q: 最終回の筋書きには何を期待していますか?

期待って言われてもなあ… 何人かの脚本家が、最終回の教訓の内容について賭けをしてるのを耳にしたよ。デイヴィーはこの番組を5年近くも完全に掌握してきた。全てを完璧に終わらせたいってんで、最終回の脚本作業も独り占めだ。脚本家たちはデイヴィーがそれを教訓に織り込むだろうって予想してた。全てを正しくやり遂げる勤勉さ、ってな。

… ただ、デイヴィーはその辺をちょっと理解してないと思うんだ。彼を勤勉という奴もいれば、制御マニアと呼ぶ奴もいるだろう! そりゃあ、彼は脚本室を制御できるよ。彼の名前はクレジットのてっぺんに載る。番組から一歩退いて引退することだってできる - でも、全てを制御するなんて無理な話さ。やろうとすれば必ず失敗する。

彼はこの番組を作ったが、そいつはもう箱から飛び出した。いいや、箱の上に飛び乗ったんだ。何かが自分より大きく育ってしまうと、制御なんかできやしない。

確かに、このシリーズは最終回を迎えるとも。でも次が無いなんて誰も言い切れないよな? スピンオフ、リブート、カメオ出演。プリンスを見るのがこれで最後かどうか、まだまだ分からんよ。

なんてったって、そこに視聴者がいる限り、ショーは続けなきゃいかんからね。

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