アイテム番号: SCP-CN-019
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-CN-019はサイト-CN-29の高リスク異常物品収容ロッカーにて保管されています。実験や収容場所の移転を除いて、オブジェクトを取り出すことは禁止されています。
説明: SCP-CN-019はチューインガムの円柱型パッケージで、側面には"袖まくり倶楽部 特別提供品"と印字されています。
SCP-CN-019自体は空き箱であるものの、人間が2人以上存在する場所において開封した場合、中から1粒の白いチューインガムが出現します(以下、SCP-CN-019-Aと呼称)。後述のインタビューから推測するに、SCP-CN-019-Aはターゲットとした集団の前では「チューインガムに似せて作られた、新型の麻薬」として振る舞う性質があるとみられています。SCP-CN-019-Aを咀嚼した際、咀嚼者の視界内で他者の権益に害を与えている人物は、SCP-CN-019-Aの咀嚼回数に応じて、身体が徐々に軟化・変形していきます。
SCP-CN-019は広東省で発生した怪奇事件が元となり、収容に至りました。現場の監視映像によると、2人の泥棒がある店舗をこじ開け、窃盗を働こうとした際、1人がショルダーバッグよりオブジェクトを取り出し、中のSCP-CN-019-Aを咀嚼しました。この時、開錠中の仲間の身体には咀嚼に応じて裂傷や重度の奇形が出現。状況を目にした対象は驚愕し、現場から即座に逃走しました。その後、財団が介入を行ったことで、オブジェクトは成功裏に収容されました。
補遺: SCP-CN-019の収容報告および実験結果のフィードバック
エージェント・ケビンを現場に派遣し、SCP-CN-019を収容した後、SCP-CN-019-a1(監視映像に登場した、オブジェクトの影響で身体が奇形化した泥棒)が発見されました。脊椎の骨折・頭部と背部の接着・肢体の歪曲という、極めて不自然な状態であるにもかかわらず、対象は依然として生存しており、エージェントに連れられる形でサイトへと赴き、収容下に入りました。その後、前科持ちのDクラス職員を用いた一連の実験から、影響者の身体にいかなる規模の破壊が生じても、異常状態が原因で死亡することはないということが判明しました。
これまでに行われた多くの実験から、他者の権益を害する行為が過失または脅迫されて行ったものである場合、当人物はオブジェクトの異常影響を受けないことが確認されています。そのため、オブジェクトには一定の自我が備わっているものとみられています。
SCP-CN-019-a1のポケットから見つかった名刺:
袖まくり倶楽部
我々は袖をまくって斬新なことをやりたい人のため、各種の興味深い犯罪道具を提供します。
ご関心がおありでしたら、どうぞ我々のフォーラムページへとお越しください。
www.██████████████.com
名刺上のリンクは青少年による環境保護・公益組織の交流フォーラムに繋がります。オブジェクトに関する情報が当フォーラムで見つかったことはありません。
POI-019-1へのインタビューログと後続調査:
事件の翌日、逃走した泥棒が自首。児童に対する性的虐待等の罪により、懲役15年の実刑判決を受けました。財団のSuri研究員は事件調査のため、警官に扮して対象にインタビューを実施しました。抜粋を以下に記します。なお、当窃盗犯はPOI-019-1と呼称します。
Suri: 君はどういうルートで、ああいった道具を手に入れたんだ?
POI-019-1: ……ある連中と一緒に、誘拐をやったんだ。なんでも"スペシャルなアイテム"を持っているらしい。しばらくして、そいつらが俺を訪ねに来た。俺たちに珍しいオモチャを提供できるんだと。
Suri: 話に乗ったんだな。
POI-019-1: ああ。バカみたいに安かったしな。ほとんどタダでくれるようなもんだった。しかも、オモチャはめちゃくちゃ風変わりなものだった。そいつらが持ってきた飛び出しナイフは、飛び出す刃をひどく凶暴な猫に変えちまう。……毛は刺さるくらい尖ってるし、敵に飛びかかって引っ掻き回すこともできるんだ……
Suri: 彼らについて詳しく話してくれ。
POI-019-1: そいつらのボスが言うには、罪を犯そうとする人や団体を見つけては、色んな機械や道具を提供しているらしい。商売は上手く行ってるし、どの提携も愉快なものになってるんだと。
Suri: あのチューインガムの箱はどうしたんだ?
POI-019-1: 奴らがくれたんだ。俺らが夜中に盗みをやると聞いて、特別にプレゼントするって……中にはサプライズなアイテムが入ってるらしい。——俺たちをハイにしたり、ちょっとした刺激をくれたり、気分を和らげたりする働きがあるんだとさ。俺らの身体で効き目が出れば、普通のチューインガムに似せて、市場に投入すると言っていた。俺はてっきり……これがクスリか何かだと思っちまった。
Suri: 君は多くの犯行を重ねているが、どれも捜査網から逃れることに成功している。それなのに、どうして今回は自首したんだ?
POI-019-1: そいつらのオモチャに耐えられなくなったんだ。実演してみせた時、奴らは慣れた手付きでそれらを扱っていた。けれど、俺が使う時は……
Suri: 何が起きたんだ?
POI-019-1: そいつらがくれた煙玉は、俺が襲った奴の顔に変わりやがった。動き回るし、”社会の負け犬”だの”くたばれ”だの、ひたすら俺を罵倒してくるんだ。とんだ目に遭っちまって、俺はもう壊れる寸前だった。俺は煙玉を捨てようとしたが、逆に全部爆発しちまって、煙が鼻に潜り込んできた。そのせいで今、どこを見ても黒い影が見えるんだ。影はウネウネ動いて、延々と俺を罵っている……頭がおかしくなりそうだ。——何でも協力するから、頼む、俺を助けてくれよ……
Suri: 君はさっき、連中は君達のような者を支援してくれると言ってなかったか?
POI-019-1:[苦悶し、頭を抱える]……知らねえ。知らねえよ。
POI-019-1は収監から3日後、壁に頭をぶつける形で自殺しました。
POI-019-1が以前住んでいた貸家を調べた所、内壁に大量のスプレー書きが見つかりました。文章はネットスラングを用いた侮辱的な内容を多分に含んでいます。Suri研究員はPOI-019-1の携帯から「倀1」「窮奇2」と名付けられた連絡先を発見しましたが、いずれも現在は使われていない番号であることが判明しています。
インタビューで得られた情報から、SCP-CN-019-Aは現在、市販品のパッケージに紛れて流通している可能性があります。オブジェクトに関する消息や上述したフォーラムの動向には引き続き注意しなければなりません。