SCP-CN-032
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アイテム番号: SCP-CN-032

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 既知の全てのSCP-CN-032個体は原生地において収容されており、照明設備を備えたビニールハウスを用いることで外界より隔離されています。職員はオブジェクトに対して毎日10人民元1以内の硬貨および紙幣を与え、1週間に1度給水を行ってください。フィールドエージェントは江蘇省・浙江省・四川省内の高速道路を巡回し、SCN-CN-032のコロニーが増加していないか監視しなければなりません。SCP-CN-032の個体数が35本を越えた場合、レベル3職員の承認を経ることで、一部個体の除去が許可されます。除去された個体はバイオサイト-CN-190の温室において保存されます。

説明: SCP-CN-032は100本以上のクワ(Morus alba L.)の総称です。オブジェクトは江蘇省・浙江省・四川省の主要な高速道路の付近に自生しており、幹には人間の特徴を有した顔面が形成されています。顔面には自我と一定の知能の存在が確認されています。SCP-CN-032は干ばつや水没に対する異常な耐性を有している他、一般的な樹木よりも高い自然治癒力を示しています。

SCP-CN-032の主要な異常性は6~8ヶ月に渡るサイクルにおいて展開されます。サイクルが始まると、夜間に10~15株のSCP-CN-032個体が発芽し、1時間以内に完全な成木へと成長します。このプロセスの間、新たに生えたSCP-CN-032の近くには、感覚器官(目や耳、鼻、舌)を欠如し、酷く傷んだ衣服を着用した、10体程度の幼年の人形実体(SCP-CN-032-1)が出現します。対象はナタや斧を手にしており、それらの道具を用いてオブジェクトを執拗に攻撃し、枝や地上に露出した根を切断します。

攻撃を終えると、SCP-CN-032-1は両手を自らの傷口にかざし、体内より大量のカイコ(Bombyx mori L.)を出現させます。これらのカイコ(SCP-CN-032-2)は、樹皮に付けられた傷口よりSCP-CN-032の体内へと侵入します。この間、SCP-CN-032-2は酸性の物質を絶えず分泌して、周りにある木質部を腐食させます。その後しばらくすると、SCP-CN-032-1は消失します。

SCP-CN-032個体は通常、日中は沈黙を保ちますが、近くを通る車両や歩行者に向かい、声を発することがあります。発声の内容は大抵、オブジェクトが受ける苦痛についての叙述や、金品や食物を乞うものですが、稀に歌唱を用いて寄付を募ることもあります。オブジェクトは人間に対し、金品を幹にある人面の口部に投げ入れるよう要求します。口が閉じてから20~30秒後、オブジェクトは再び口を開きますが、この時、内部の金品は完全に消失しています。

28~31日後の夜間、SCP-CN-032個体は開花し、不定なサイズの果実をつけます。果実を解剖した所、内部には過去にオブジェクトの口内に投げ込まれた金品が詰められていました。果実は完全に熟すと地面に落下しますが、この時、再びSCP-CN-032-1が出現し、果実を自身の体内に収めます。

SCP-CN-032-1がSCP-CN-032に接近すると、SCP-CN-032-2が人面の口内より這い出します。この際、SCP-CN-032-1は一定数のSCP-CN-032-2を回収します。残されたSCP-CN-032-2個体はオブジェクトの葉部へ移動し、葉の摂食を始めます。オブジェクトはこの間、多大な不快感と苦痛を訴えます。詳細な研究の結果、オブジェクトが物乞いで得た金品の価値と、回収されるSCP-CN-032-2の数は正比例の関係にあることが分かりました。

葉を食べ終わったSCP-CN-032-2個体は人面の口部を通じて、樹木内へと這い戻ります。その後、SCP-CN-032-1は再び消失し、そこでサイクルが1巡します。物乞いで得た金品の数が顕著に少なかった場合、SCP-CN-032-1はSCP-CN-032-2を回収せず、更に多くのSCP-CN-032-2個体を幹に放つことが観察により判明しています。

収容経緯: 2015年██月██日、成綿高速道路の付近にあった果樹園にて放火事件が発生。駆けつけた地元警察により、果樹園の屋上にいた1名の男性が拘束されました。対象は情緒が不安定であり、「園内の木に妖精が宿った」「木の周りには化け物がいる」と繰り返し供述し、自身を果樹園を管理する作業員であると称しました。調査の過程において、警官は全焼を免れた数本のSCP-CN-032個体より発された、呻き声や助けを求める声を耳にしました。

公安当局内にいた財団エージェントが再度調査を行った所、3本の生きたSCP-CN-032個体を発見。全ての目撃者にはAクラス記憶処理が施されました。また、財団はフロント企業を通じて、現地の地権者である李██氏より果樹園を買収しました。今の所、SCP-CN-032のコロニーは7箇所存在していることが知られており、これらは渝昆高速、成渝環状高速、沪蓉高速、および成都繞城高速の付近において発見・収容されています。

付録CN-032-1: インタビューログ

インタビュアー: 呉恵蘭2級研究員

対象: SCP-CN-032のうち1個体

前記: 以下は四川省成都市のコロニーに生育している、1本のSCP-CN-032個体に対して実施されたインタビューである。インタビューに際し、研究員は15元分の貨幣を携行している。

<記録開始>

呉恵蘭研究員: おはようございます、SCP-CN-032。お話ししてもよろしいですか?

SCP-CN-032: そ、それは、私のあだ名か? [吸気音] よ、よし。でも、長くは無理だ…

呉恵蘭研究員: あなたのお名前を教えていただけますか。

SCP-CN-032: [10秒静止] い……言えない。

呉恵蘭研究員: それはどうして?

SCP-CN-032: 痛む。痛むんだ。 [対象の葉が数枚落下する] もうすぐで忘れそうなんだ。お願いです、どうか私に御慈悲を、恵みを施しください。

研究員は3枚の1元硬貨を取り出し、オブジェクトの口内に放り込む。

呉恵蘭研究員: あなたはどういった経緯で、今の姿になられたのですか?

SCP-CN-032: [判別不能] を切り落とし…… [判別不能] を潰した……必ず罰を受ける……とても痛い、彼らと同じように、痛い。

呉恵蘭研究員: ”彼ら”とは、具体的に誰を指しているのですか?

SCP-CN-032: 子どもたちだ。

呉恵蘭研究員: SCP-CN-032-1でしょうか?例の、あなたを攻撃するーー

SCP-CN-032が数回に渡り、叫び声を上げる。23秒の間、インタビューは中断する。

SCP-CN-032: 頼むよ、それ以上聞かないでくれ。彼らが言わせないんだ。虫が噛んでくる。

呉恵蘭研究員: ええ、では話題を変えましょう。そのカイコ——SCP-CN-032-2は、普段もあなたを攻撃しているのですか?

SCP-CN-032: ああ。ヤツらはどうしたらカネが集まるのか知っている。ヤツらの牙は極めて鋭い。ひとたび噛めば…… [震える] 罰だ。全て罰なんだ。子どもたちが悪鬼となって、復讐に来たのだ……

呉恵蘭研究員: 口に入ったお金は、カイコたちが運んでいるのですね?

SCP-CN-032: そうだ。 [嗚咽] 限界だ、もう聞かないでくれ。私を憐れむのなら、もっと寄付をしてはくれまいか。さもないと、彼らは再び虫を放ち、私を貪らせに来る。

呉恵蘭研究員: 分かりました。最後に1つだけ。SCP-CN-032-1に全てのカイコを回収させるには、どれだけ貯める必要があるのでしょうか。

SCP-CN-032: た、貯まることなんて…… [小声で呻く] 体の中にはいつも虫がいる。ひたすら噛んでは、私に物乞いを強いる…… [啜り泣く声] い、いまさら後悔しても、手遅れだ。

研究員はSCP-CN-032に10元紙幣を与える。

呉恵蘭研究員: ありがとうございました。他に何か、言いたいことはございますか?特に無ければ、今回のインタビューはこれで終了となります。

SCP-CN-032は34秒の間、沈黙する。

SCP-CN-032: 死にたい。どうか [判別不能] ……

対象は葉を再度激しく揺らし、3分間に渡り大声で叫び続けた。その後2時間の間、対象はコミュニケーションを図らず、外部からの刺激にも無反応となった。対象が次に声を発した際は、研究員への経歴の供述を拒否した他、激しい抑うつの兆候を見せた。

<記録終了>

付録CN-032-2: SCP-CN-032個体に対してレントゲン検査を実施した所、内部にはSCP-CN-032-2により腐食されて出来た多数の孔が確認されました。また、内壁には虫卵に類似した物体が粘着していました。幹の頂部に近い部分には直径約9cmのボウル型の空洞が存在しており、内部には貨幣が保管されていることが観察により明らかとなっています。

さらなる観察の結果、SCP-CN-032-2は社会性生物の特徴を部分的に有していることが判明しました。体長が6cm以上のSCP-CN-032-2は、半透明で粘着力のある物質を分泌し、頭部に形成されたキチン質の先端に金品を貼り付けた上で、ボウル型の空洞まで運搬します。6cmより小さいSCP-CN-032-2は、くり抜かれた通路の壁面に顎を用いて貼り付き、産卵や繭糸を用いた卵の保護を担当します。

SCP-CN-032-2に寄生されたSCP-CN-032個体が”不適切な行動”2を行った場合、樹木内の全てのSCP-CN-032-2個体から、複雑な組成の酸が放出されます。酸の成分は不明ですが、pH値は3.3を示しており、SCP-CN-032個体に対しては神経毒に似た中毒症状を引き起こします。

SCP-CN-032が開花期に入ると、カント計数機はオブジェクト周囲のヒューム値の急激な変動を検知します。ヒューム値の変動は幹内部のボウル型空洞付近に集中しており、現実改変や空間異常を引き起こしている可能性が高いと推測されています。この期間中、内部の様子をレントゲン撮影することは不可能です。

付録CN-032-3: 2017年██月█日、新たに確認されたSCP-CN-032のコロニー3においてSCP-CN-032-1が出現。その内2体は木工用ののみ4を所持しており、1本あたり7〜9文字の文章をオブジェクトに刻みつけていたことが観察により判明しました。文章の抜粋を以下に記載します:

『明律』一九巻『刑律二・人命・採生折割人』: “児童を捕らえ、其の体を傷つけ殺した凡ての者は凌遅刑5に処せられる。罪人の財産は断じて死者の家に付せられる。罪人の妻・子および同居の家族は、たとえその事情を知らずとも、二千里離れた場所へと流されたのち、従者によって斬られる。”

悪を以て悪を制し、善を以て善に報いよ。

世界が君達を忘れようとも、この手が血で汚れようとも、私は袖をまくり上げ、君達の代行者となり続ける。

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