びっくり仰天!財団が20年に渡って出来なかったことを、SCP-CN-066はたった4秒で……
クレジット
タイトル: SCP-CN-066は八十路の老人に対し、なんとまあ恥知らずなことを……
原題: SCP-CN-066居然对八旬老人做出这种不知羞耻的……
著者: ©︎bitchangelover
作成年: 2017
アイテム番号: SCP-CN-066
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-CN-066との間に成立した取り決めに基づき、SCP-CN-066と当ページは互いに接続されています。SCP-CN-066による異常性の影響を、財団の専属サーバー内で完結させるようにしてください。サーバーはJ-021とナンバリングされ、いかなる状況下においても、J-021と外部インターネットを接続する行為は禁じられます。毎日6時から9時、15時から19時の間、担当のDクラス職員はSCP-CN-066と取り決めたプロセスに沿って、J-021専用端末を用い、当ページのリンクをクリックしてください。SCP-CN-066-1は財団が指定した施設において生活させるとともに、SCP-CN-066-1のSCP-CN-066に対する所有権が認可されます。24時間おきにSCP-CN-066-1の生命徴候を確認し、Bクラスの監視を続けてください。
説明: SCP-CN-066は外見上、1台の旧式電話機です。外装は色褪せており、調査の結果、1983年頃に製造されたものであると確認されています。SCP-CN-066の電源コードと電話線は完全に損壊しています。X線を当てた検査では、内部構造が再構成されていることが判明しました。SCP-CN-066の異常性は、人間が閲覧中のウェブページに、興味を引き立てるようなリンクを未知の方法によって付加する点にあります。閲覧者が該当リンクをクリックすると、閲覧履歴に存在する、リンクの名称とは無関係のウェブページや広告ページに移動します。現在、SCP-CN-066によってページ移動はロックされています。
SCP-CN-066は一定の情報探知能力を有しており、インターネット上で発生した異常事案の多くに、SCP-CN-066の影響が確認されています。ユーザーの閲覧志向を基に、ユーザー毎に異なる名称のリンクを生成することで、SCP-CN-066は被クリック率を高めていると見られています。
SCP-CN-066によって生成されたリンクをクリックする毎に、SCP-CN-066のベルが鳴らされます。この時、SCP-CN-066の受話器からは不明瞭な電子音を聞くことができます。電子音とのやり取りから、この電子音はSCP-CN-066の意志によって発生していることが判明しました。SCP-CN-066は高度な知能を有しており、人間が受話器でSCP-CN-066と会話することを通じて、外界とのコミュニケーションを図っていると考えられます。
SCP-CN-066-1は現在86歳の中国系の男性で、アルツハイマー病を罹患しています。SCP-CN-066-1の行動パターンは極めて規則的であり、毎朝6時に起床し、9時から自身の衣服の洗濯を始め、12時に昼食を摂った後、2時間程度の昼寝を行います。その後、19時に夕食を摂り、就寝します。SCP-CN-066-1の自由時間は、殆どがSCP-CN-066を目視する行為に費やされます。また、SCP-CN-066-1は不定期にSCP-CN-066による通話を試みますが、本来のダイヤル先の代わりにSCP-CN-066が返答を行います。これらの現象は注目すべき点です。SCP-CN-066-1はSCP-CN-066のベルが鳴った時も、積極的に受話器を取ろうと試みます。
SCP-CN-066-1以外の人間がSCP-CN-066を用いて電話をかけても、大抵の場合いかなる返答も得ることができません。今の所、SCP-CN-066は6時から9時、15時から19時の間に、異常性のあるリンクを生成します。
発見: █01█年██月2日、████省██市内のある住居から突如として130デシベル以上のベル音が鳴り響き、通行人の注意を引きました。通行人が発生源を調べたところ、部屋の中で心臓発作を起こしているSCP-CN-066-1を発見し、救助に成功。同時刻、住居付近の多くの病院のホームページに存在するあらゆるリンクの名称が、SCP-CN-066-1の住所に置換されていました。この異常現象が財団の目にとまり、事件発生から4時間後、財団はSCP-CN-066-1の住居に進入。SCP-CN-066の収容に至りました。
補遺CN-066-A: インタビューログ1
注記: SCP-CN-066を回収し臨時収容区域に移送した後、SCP-CN-066は当オブジェクトを主管する████博士の個人端末に、“このリンクをクリックし、我とコンタクトする権利を手にせよ。我はSCP-CN-066なり”という名称のリンクを付加しました。████博士は反ミーム災害エージェントを摂取し、記憶のバックアップを取った後、リンクをクリックしSCP-CN-066の来電を受け取りました。これは████博士の耳管に内蔵された録音装置によって記録された音声です。
<記録開始>
████博士: ごきげんよう。
SCP-CN-066: 君達って本っ当にナンセンスだよね。尿漏れしすぎて尿が枝分かれしてるような人を、1週間も監視して収容し続けるなんてさあ。RPGのやり過ぎか法律意識が無いのかは知らないけど、人ん家の財産を盗ることなんて、君達からしたら顔を洗って歯を磨くくらいの習慣らしいね。
████博士: 法律で解決できるのは、人智の理解が及ぶ範囲の事だけだ。人智を超えた事については、我々の規定が当てはめられる。君がこちらの行為に協力してくれることを願うよ。
SCP-CN-066: 僕を収容したいなら、あのボケ老人が霊安室にぶち込まれて、賞味期限切れのハムになった後にしてもらえないかな?僕はあの食っちゃ寝して糞をひり出す以外、何にも出来ない爺さんの脳が止まったかどうかだけ知りたいんだ。
████博士: 今はまだ、イエスともノーとも言えないな。私が知りたいのは、君がなぜ収容を望まず、あの老人の側に留まりたいと思っているかについてだ。
SCP-CN-066: あいつの側に留まりたいって?僕はあんたが脳内でどんな妄想をしているか、だいたい見当ついてるよ。あいつが便所で手を洗うのを忘れた後に、急いであんたの受話器を掴んできたら、もうそんなことは考えられなくなるはずさ。
████博士: 君が彼を嫌っているのだとしたら、何故自分でベルを鳴らして彼の命を救ったんだ?
SCP-CN-066: [短い沈黙] もし爺さんがくたばったら、僕は多分廃品業者に回収されて、バラバラになっていたはずさ。その後はどこか知らない所に捨てられて、クズ鉄として売り飛ばされただろうね。僕はただ、自己保身のためにやったまでさ。あと、人間はみんな僕からしたらシュールストレミングみたいなもんなんだけど、あいつからはそんなに臭い匂いがしなかったんで、嫌わないことにしたのさ。
████博士: 彼が良い治療を受け、峠を越したことは教えておこう。現時点で、もう命の心配は無くなった。
SCP-CN-066: じゃあさ、僕をあいつの病室に連れてってよ。あの老廃物にもそろそろお迎えが来るんだ、耳がまだ機能しているうちに自分の下品さを分からせてやらなくちゃ。
████博士: 君も収容プロトコルについて知っているだろう。君には情報伝達能力が確認されている以上、外に出したら不必要なリスクを冒しかねない。
SCP-CN-066: だったら、君達のSCP-███と同じようにしてよ。あの爺さんと僕を一緒に、オブジェクトとして収容するんだ。
████博士: なんと、SCP-███を知っているとは……君の情報探知能力のレベルをもう一度測り直す必要がありそうだ。単刀直入に言うが、協力には相応の対価が必要だ。もし君が我々の要求に応えてくれるなら、我々も君の要求に応えよう。
SCP-CN-066: 君達みたいなお節介野郎に話すことはもう無いね。僕は3時間後に、あいつの生声を聴ければ良いだけなんだよ。他に用がある時は、あいつが薬殺された野良犬みたいな顔して眠るのを待ってから、君が僕にダイヤルしてくれ。人を取っ替え引っ替えしながら、あれこれ話しかけてくるのはやめてよね。僕はかなりの人見知りなんだ。
████博士: 仰せのままに。
<記録終了>
補遺CN-066-B: インタビューログ2
付記: この音声記録は、SCP-CN-066の受話器に取り付けられた、超小型盗聴器を通じて録音されたものです。SCP-CN-066-1は収容に伴い、財団による治療を受け、生命徴候が安定し、█01█年██月2日午後、目を覚ましました。直後、████博士の個人端末のページ上に、SCP-CN-066によるリンクが出現。████博士がクリックすると、SCP-CN-066はベルを鳴らし、看護スタッフが耳元に受話器を近づける形で、SCP-CN-066-1との通話が行われました。
<記録開始>
中年女性の声: 父さん、貴方はなんて不注意なの!私の鳴らした電話が、ご近所様に聞かれなかったら…私、どんなことが起きたか、想像もしたくないわ。
SCP-CN-066-1: ユエは、ユエは学校に行ったのかい……
中年女性の声: 父さんったら、またボケてるわよ。今日は日曜日だから、学校はやってないでしょう?
SCP-CN-066-1: それは良かった……それは良かった、学校には行くな、学校は良くない。学校に行くな……わし……わしはユエの声が聞きたい。
[中年女性の声が、遠くへ向かって叫ぶ。急ぐような足音と、布が擦れる音がする]
少女の声: お爺ちゃん、私ね!最近、学校の歌唱コンクールでね、また賞をとったの!お爺ちゃんが前に教えてくれた、《私達の暮らしは陽光で満ち溢れる》を歌ったんだ!そしたらね、先生も友達もみんな、私の歌を上手って、褒めてくれたの!お爺ちゃん、早く元気になってね。元気になったら、お爺ちゃんにも歌ってあげるから!
SCP-CN-066-1: よしよし……ユエや……覚えててくれ……学校には行くな。学校は良くない……ユエは家にいれば良い。ユエのパパは先生だ。お家でも勉強を教えられる……
少女の声: でもお爺ちゃん、前は私に、学校でよく勉強しろって、ずっと言ってたよね?どうして今は、学校に行かせたくないの?
SCP-CN-066-1: 学校……学校……
[SCP-CN-066-1の心拍数が上昇する]
中年女性の声: 父さん、あんまりユエを驚かせないでちょうだい。先週、期末テストが終わって、ユエはもうすぐ夏休みになるわ。夏休みが来たら、ユエは学校に行かなくなる。ユエはずっと家の中に居る。ちっとも心配要らないわ。元気になって太りだしたら、父さんを迎えに行くから、みんなで都江堰に帰りましょう。
[SCP-CN-066-1の心拍数は回復した]
SCP-CN-066-1: ああ……それは良い……学校に行かない、ユエは学校に行かない。家に帰ろう……一緒に帰ろう。
<記録終了>
SCP-CN-066-1の個人情報に関する補遺: SCP-CN-066-1の本名は███で、四川省███に住んでいました。1931年生まれで、1人の息子が存在します。SCP-CN-066-1の息子は結婚し、1992年に女児をもうけました。女児の名前は██悦ユエです。200█年5月1█日、四川省███県においてマグニチュード8.0クラスの地震が発生し、震度7を記録。██悦のいた学校は倒壊しました。83時間に渡る救助活動の結果、瓦礫の中から遺体が発見され、身元が██悦であると確認されました。SCP-CN-066-1の息子は娘を失ったことに因む心的外傷から、地震の3年後に妻と離婚しています。
補遺CN-066-C: インタビューログ3
インタビュアー: ████博士
インタビュー対象: SCP-CN-066
<記録開始>
SCP-CN-066: やはり、君達みたいな白衣を着た奴隷の如き輩は、無礼で信用ならない。私の予期した通りであった。君達はまた、聞くべきではないものを聞いてしまったようだな。
████博士: 責任は私にある。だが他の数多のオブジェクトと比べると、私は持ちうる権限の中で最大限の努力を君に対し行ったといえる。1人の何ら異常のない死にかけの御老人を、財団に収容させたのだからな。これ以上、君からしてみれば、何が予期できない事があろうか?この世界にいる人間の行動は全て、君の眼に映っているではないか。
SCP-CN-066: 君はどのような待遇が、私にとって良い待遇だと考えているんだ?私の眼の中では、君達のあらゆる行動は1台のゴミ変換器のように見える。ある種類のゴミを、別の種類のゴミへと変換するような感じだ。毎日24時間、君達のこうした行為を見続けているが、これは恐らくプッシュホンに対する最大の懲罰ではないかね。
████博士: では、君は旧式電話機がいかにして全知の神と化したか、そのゴミ変換器が理解しようと試みることを、許してはくれないのかね?
SCP-CN-066: 君が真夜中に私のボタンを弄るのは、そんな面白味の無いことを問うためなのか?では、君に教えてやろう。ある1人のイカれた科学者が、自分の狂った実験室で、超人的な力を持った少女を創り出すため強力な薬剤を調合した。だが調合した後、彼は主治医から電話で、自分が毎日強烈な放射能を持つ化学原料の近くにいたがために直腸癌を患い、余命幾許もないということを告げられた。そして怒りのあまり、彼は電話機を名も知れぬあの薬剤の中へ投げ入れた。私はそこから生まれたのだ。
████博士: ううむ……ちっとも本当の話とは思えないのだが。
SCP-CN-066: 私はただ、自然発生したものに過ぎない。組織の緻密な策謀により創り出されたものではないし、宇宙人が創り出したものでもない。私は君に、より合理的に聞こえる起源を無数に話すことができる。だが、それらは総じて馬鹿馬鹿しいだけである。君は君達の収容プロトコルの通りにすれば良いのだ。ひたすらに詮索するのは、君達の本分ではないだろう。
████博士: 君の言いたいことはおおよそ分かった。では……
SCP-CN-066: ████████と████の組織に関する資料を、君の上司のパソコン上にリンクとして添付しておいた。君が口に出さなくても、私は君達が見苦しい暗闘を互いにやりあっていることを知っている。だが、これは今回限りの仕事だ。私は収容されたオブジェクトとして、来るものを拒まない母犬のように、君達に奉仕したりはしない。私が身を置ける場所は数多くあるのだ。私はその中から、君達を選んだ。ただそれだけだ。君達に選ばれた訳ではない。
████博士: 最後に1つ、質問がある。老人の為にベルを鳴らすことだけが君の目的らしいが、それなら自分からベルを鳴らせば良いではないか。何故わざわざインターネット上のリンクを、自らへのコールボタンとして機能させているんだ?
SCP-CN-066: 君のつまらない憶測について応じる気はほとほと失せているが、特別に答えてやろう。私は人間ではない。私は人類の一切の行動を知り得ているが、それでも私は到底人間にはなれない。私は言葉と声色をうまいこと偽装できるが、私には欲というものがない。人間的な欲がないのだ。だから、私は疑似餌を演じることで人間から欲を提供してもらっている。好奇心から生じる知識欲というものは、このインターネット世界において最も簡単に手に入る欲だ。同じ人間からの電話しか人はとらないのと同様、人の欲だけが人の欲に応えることができるのだ。
[話中音]
████博士: [小声で] 本当に面倒くさい奴だなあ……
<記録終了>
ページリビジョン: 38, 最終更新: 21 Feb 2024 12:28