文書06801:生存者へのインタビュー記録
インタビュアー:研究員L.C.
インタビュー対象:███博士(解職済み)
日時:20██年██月██日
注記:███博士は実験CN-068-13の唯一の生存者です。インシデント発生後、救難信号を受信した財団の救援隊はSCP-CN-068に突入、階段の最上部で全裸の███博士が混乱状態で発見されました。地下室には腐食性の液体が大量に流れており、地下室への侵入を伴う救助は実行できませんでした。残りの行方不明者は死亡と判断。その後、2ヶ月に及ぶ精神療法により、███博士は基本的な会話をこなせる程度にまで回復しました。しかし、論理的な思考は依然として混乱状態にあり、軽度の人格分裂、及び暴力的な傾向が見られます。
<インタビュー開始>
研究員L.C.:こんにちは博士、あなたの協力にとても感謝します。
███博士:[両手で顔を覆っている]余はとても怖い……私は後悔している……
研究員L.C.:第13次実験の状況を教えてくれませんか?
███博士:[手をおろし、前かがみになる]私のせいだ、私は地下室に入るべきではなかったんだ。元々地下室の階段は壊れていて…いや、地下室には階段なんてなかったんだ。
研究員L.C.:その点に関しては否定させてください。記録によれば、1階から地下室にいく場所には階段がありました。ただ、階段が他のと比べて狭かったのは確かですが。
███博士:[力任せに机を叩く]お前は全くわかっていない!あれは一緒じゃない!全く違うものなんだ!あの中で溶解しない階段はあの家のものじゃないんだ!
研究員L.C.:[突発的な状況に対応できるよう警備員に合図する]博士、どういうことですか。SCP-CN-068の性質は、有機体が壁をすりぬけて向こう側に行けることができるだけではないのですか?
███博士:[立ち上がる]溶解なんだ!材料は溶液で、人体は最高の溶質だ。だから、布や設備、動物は壁を通り抜けにくいんだ。1階から地下室への階段は人間を溶かせない!私はもっと早く見つけるべきだった。余はもっと早く見つけるべきだったのだ!余はずっと上から吊るされながらお前たちを見ていたよ。あの変な大きなモノを動かしている間も、まだ我らの間を通り抜けて……[座る]
研究員L.C.: もしそうだとしたら、服を身に着けていないDクラス職員が、なぜ、実験開始直後に落下しなかったのですか?
███博士:[沈黙]
研究員L.C.:いえ、それでも貴重な意見に感謝します。[約一分間の沈黙]博士、落ち着きましたか?第13次実験では何が起きたのですか?
███博士:[低い声で話す]ただ壁だけが溶解できる、これでもう説明できただろう。それで、プロジェクタースクリーンも同じ材質で、同じく溶解できる。あるいは、私たちがあれがただのスクリーンだと思っているだけかもしれない。なぜなら、他の別荘の映画スクリーンもこんな感じだから……
研究員L.C.:博士!財団はあなたの検証されていない予想に対して裏付けをとる準備があります。私達はただ、第13次実験で何が発生したかを知りたいだけなのです。なぜあなた以外の人間が失踪したのですか?なぜ地下のシアタールームで突然腐食性の液体が湧き出たのですか?
███博士:[大きく笑う]余は吐き出されたのだ!余はずっと一番上に吊り下げられていたが、逆に余が一番あそこに近かったんのだ!余は吐き出されたのだ![突然立ち上がり、机を乗り越え研究員L.C.の首元に飛びつく]あれは多くの人間を溶解してきた。犠牲者は彼を構成する一部になって、出て来られない、出て来られないんだ!でも、私は吐き出された。それは、私は完璧な人間じゃない、完全な人間じゃないからさ。余はなぜ中に閉じ込められたんだ?なぜ?[博士は警備員によって引き離される]あの家の壁はとっくに無いんだ。私は誰かが再び壁を作ったんだと思うよ!余は壁を作った女性に会ったことがあるのだ!彼女は、この家は私が住むために作ったと言ってたんだ。その結果を尊重しない人は全員彼女からの懲罰を受けるんだ!
[警備員が麻酔剤を███博士に注入。███博士は昏睡状態に陥った。]
<インタビュー終了>
文書06802:SCP-CN-068材質鑑定
申請者:研究員L.C.
鑑定材料:
1.SCP-CN-068 1階の壁
2.SCP-CN-068 2階の床
3.SCP-CN-068 地下のホームシアターで発生した腐食性の液体(1階1号室前に残っていた液体から採取)
鑑定結果:
1.SCP-CN-068 1階の壁から大量のケラチンを検出。いかなる建築材料とも一致せず。
2.SCP-CN-068 2階の床から大量の石灰化コラーゲン繊維を検出。いかなる建築材料とも一致せず。
3.SCP-CN-068 地下室ホームシアターの液体から塩酸とペプシノゲン、粘液、"内因子"を検出。液体成分の解析結果は胃液と判定。
文書06803:███博士健康レポート
███博士は重度の心臓病を患っており,19██年██月██日に心臓の手術を実施。左心房の開口弁に金属のペースメーカーを装着しましたが、SCP-CN-068失踪事故の後、心臓ペースメーカーが未知の原因により腐食し、███博士の心臓機能が徐々に低下。失踪事故後、███博士の脳内に余分の脳組織が出現したことを鑑みて、医療班は███博士への延命措置を中断することを勧告しました。
文書06804:██博士後任報告
███博士の仕事を引き継ぐことができたことを光栄に思います。彼は優秀な人であり、彼の身に起きた不幸に対して哀悼の意を示します。彼の報告資料はほぼ完璧ですが、小さな間違いがあります。SCP-CN-068の3階の部屋数は4部屋ではなく、5部屋です。また、内部の物品リスト表を見るに、最上階のシャンデリアが一つ少なくなっています。各職員はオブジェクトを遊び場として使わないようにするとともに、持ち去ったシャンデリアは早急に返還するように。