アイテム番号: SCP-CN-069
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-CN-069が所在する位置の都合上、回収作業の遂行は困難です。オブジェクトの所在地には財団探査機「信使The Courier」が送り込まれており、SCP-CN-069-2の活動状態を監視しています。情報部門は火星における各国の探査活動に細心の注意を払い、公衆への暴露を防ぐため、記憶処理やデータ改ざんといった形式でSCP-CN-069の存在を隠さなければなりません。
説明: SCP-CN-069は2つの要素(SCP-CN-069-1、SCP-CN-069-2)で構成されています。オブジェクトは19██年、財団中国支部の宇宙部門によって発見されました。
SCP-CN-069-1は火星タルシス地域██████████に位置する異常領域で、面積は約████平方キロメートルです。探査機が送信した画像によると、当領域には多数の人工建築が分布しており、火星表面の厳しい気候の影響で、大部分は著しく損壊していることが分かっています。当領域において生命活動は観測されていません。SCP-CN-069-1での探索は、当領域において過去に未知の知的生命体が居住していたことを示唆しています。彼らの全体的な科学水準は20世紀中葉の人類社会に近似していますが、一部分野には水準の高低がみられます。探査機は現地に遺された科学製品を少数回収しており、言語/文字の解読作業を目下進めています。
SCP-CN-069-2は1体の人型実体であり、SCP-CN-069-1のエリア-C16建造物の内部より発見されました。対象は外見上、銀白色の未知の合金で構成されており、保存状態が劣悪であることから、表面には広い範囲で破損が生じています。その一方で、対象は依然として正常な機能を維持しています。対象の上半身には3本のロボットアームが存在し、下半身は履帯式の駆動装置に置換されています。これらの動力源については未だ分かっていません。対象はかつて居住していた知的生命体の製造物であるとみられ、一定の知能を保有しています。
SCP-CN-069-1は19██年、財団の火星探査機「信使The Courier」が学術ミッションを実行していた際に初めて発見されました。異常性の確認およびナンバリングを経て、SCP-CN-069はEuclidクラスに分類されました。これ以降、財団は当領域に対して複数の探査を行っていますが、いずれの探査でも生命反応が見つかることはありませんでした。現時点での見立てでは、SCP-CN-069-1に居住していた知的生命体は[データ削除]年前に絶滅しており、原因としては猛烈かつ突発的な気候災害ではないかと考えられています。同月1、無線信号の異常な変動が原因で、SCP-CN-069-2は財団に捕捉されることとなりました。
ファースト・コンタクトの時点では、SCP-CN-069-2は非常に強い敵意を有しているものとみられていました。以下は対話の記録です(現在、SCP-CN-069-2の発言部分は解読が完了しています)。
「信使」無線記録装置の内容
司令部: ……ハロー?
SCP-CN-069-2: [無視]
司令部: ごきげんよう。我々は——
SCP-CN-069-2: [遮る] 離れて。ここから離れなさい。
司令部: 我々は地球から来た。敵意は無い。
SCP-CN-069-2: 離れて。邪魔しないで。[判読不能]はまだ起きていない。邪魔しないで。[カメラは対象のロボットアームが内部より伸ばされるのを記録した]
司令部: 申し訳ないが、そちらの言葉が分からなくてね。
SCP-CN-069-2: [判読不能]はまだ起きていない。離れて。
(数度の交流が失敗に終わり、財団の探査機は撤退の準備に入る。SCP-CN-069-2のロボットアーム前端が突如、不明な原理で高エネルギー粒子の束を放ち、探査機に甚大なダメージを与える。この間、SCP-CN-069-2は「邪魔しないで」「離れて」を繰り返し発し続けた)
最初の交流が失敗に終わった後、財団確保センターはSCP-CN-069-2に対し、15火星日に渡る観察期間を設けました。この間、探査機はSCP-CN-069-2の身体において、秘密裏に小型の監視カメラを取り付けることに成功。送信された映像から、SCP-CN-069-2の活動は一定のルーチンを厳格に遵守していることが判明しました。以下はSCP-CN-069-2の活動記録の抜粋です。
19██年█月█日
00:00 SCP-CN-069-2は不活性状態にあり、明確な活動を示さない。
6:02 SCP-CN-069-2が活性状態に突入したことが確認される。所在する建物内を移動し始める。
6:30 SCP-CN-069-2は建物内の"部屋"に進入する。カメラのアングルからでは、室内の具体的な様子を伺うことは出来ず、淡いオレンジ色の光に包まれていることだけが分かった。
……
7:31 SCP-CN-069-2は機械に似た物体の前に進み、機能の実行を試みる。対象の機能は不明で、著しい損壊がみられる。この間、目立った現象は観測されていない。
10:13 SCP-CN-069-2は建物外へと移動する。2本のロボットアームを伸ばし、地面の埃や砂利を"掃除"し始める。天気の状況から、掃除の試みは尽く失敗に終わった。
11:37 SCP-CN-069-2は屋内へと戻る。
……
16:30 SCP-CN-069-2は同一の部屋に進入する。室内の橙色光は午前よりも幾らか薄くなっている。
……
21:02 SCP-CN-069-2は同一の部屋に進入する。SCP-CN-069-2のスピーカーが駆動を始め、約2時間15分の音声を放送する。橙色光は音声が停止した後、完全に消失する。
23:00 SCP-CN-069-2が不活性状態に移行する。
その後、SCP-CN-069-1で入手した言語サンプルが部分的に解読されたことを受け、財団はSCP-CN-069-2に対し、2回目となる交流を試みました。以下は対話の記録です(中国語に翻訳済み)。
司令部: ハロー?
SCP-CN-069-2: [警戒を開始] お前か。離れて。
司令部: すまない、前回の件は誤解だったんだ。謝るよ。
SCP-CN-069-2: [応答なし]
司令部: 少し話をしないか?我々は別の場所から来たんだ。
SCP-CN-069-2: 別の場所。未知。コミュニケーション可能——
司令部: 君は誰だ?
SCP-CN-069-2: 保護者。
司令部: 保護?何を守ってるんだ?
SCP-CN-069-2: ご主人さま。[判読不能]。ご主人さまは未だぐっすり眠っている。私は彼を守っているの。邪魔が入らないように。
司令部: その人に一目会わせてくれないだろうか。
SCP-CN-069-2: [約30秒の沈黙] 許可。私はお前の一挙一動を監視している。邪魔はしないように。
(探査機はSCP-CN-069-2に連れられ、過去の映像で繰り返し出入りしていた部屋に進入する。内装は他の建造物のそれと大差無いが、保存状態は比較的良好である。"家具"は埃を被り、崩れかけてはいるものの、綺麗に整頓されており、明確な掃除の痕跡が見られる。棚状の家具には金属や陶器で作られた小さく精巧な装飾品が数点置かれている。天井には照明器具が取り付けられており、映像内における橙色光の発生源とみられる。部屋の左端には狭く短い金属製の家具が存在し、朽ちた布に覆われている。布の上には褐色の不明な物体が配置されている。カメラを近づけたところ、対象は体長約60センチメートルの人型実体で、すでに生命反応を失っていることが分かった。実体は布の中央に平たく置かれており、眠っているかのような印象を受ける)
司令部: こ……これは?
SCP-CN-069-2: [判読不能]、ご主人さま。
司令部: つまり君は、彼の安眠を保つため、邪魔をされたくなかったのか。ずっと?
SCP-CN-069-2: 仕事だから。
司令部: [沈黙] ここで何が起こったか、私に教えてくれないか。
(SCP-CN-069-2はしばらくの間、沈黙する。司令部が交流の中断を検討し始めた時、SCP-CN-069-2が通話を再開させる)
SCP-CN-069-2: 人間たちはみんな倒れた。見かけなくなった。あの日。街中が静かになった。でも関係ない。ご主人さまは眠りについた。私は彼が邪魔されないようにしている。彼が起きるまで。私は待っているの。
司令部: ありがとう。[沈黙] ……君はよくやっているよ。
その後の探索ミッションの結果、SCP-CN-069は人類に対する脅威ではないと判断されました。これを受け、オブジェクトクラスはSafeに再分類されました。
19██年から19██年にかけて、財団は数台の探査機をSCP-CN-069-1区域に送り込み、当該エリアに残留する科学技術を回収しています。
19██年██月█日のミッションにおいて、探査機「信使」はSCP-CN-069-2の所在地を再び通過しました。想定外なことに、SCP-CN-069-2は「信使」を識別し、自主的に交流を求めてきました。以下に通話記録を記載します。
SCP-CN-069-2: 問題が起きたの。
司令部: [驚きながら] 問題?……ええと、続けて。
SCP-CN-069-2: ご主人さま、まだ寝ているの?もう待ちくたびれちゃった。
司令部: [沈黙] そうだな。彼はまだ眠っている……きっと、良い夢を見てるんだろう。どうか、そのまま待ってやってほしい。