日付:2017-03-15
探索チーム:コルベット級フリゲートFSF-158ロシナンテ/ジェームス・ホールデン艦長/アレックス・カマル操舵手/アモス・ブルトン火器管制官兼探査機管制官/レーダー管制官ナオミ・ナガタ/歴史-宗教的GoI研究部外勤考古学者孟梅モンメイ
目標:SCP-CN-1101-1
前書:関連する観測データ、古文書、歴史-宗教的GoI研究部門の分析から、SCP-CN-1101-1の近距離での観測が必要であると考えられた。この理由から、コルベット級フリゲートFSF-158ロシナンテが必要な改装を受けた後FORC-19に配属され、2017-03-15にSCP-CN-1101-1の観察のため出港した。以下はSCP-CN-1101-2突入前のロシナンテの艦橋の映像である。
<記録開始>
アレックス:記録システムオンライン、酸素循環システムオンライン、空間安定化アレイ起動、主エンジン正常、ロシナンテ、準備完了。
ホールデン:OK、FORC-19、こちらFSF-158ロシナンテ、通信状態をチェックしてくれ。
司令部:FSFロシナンテ、こちらFORC-19、通信状態良好。 地球の方ではNASAとESAとの交渉が完了している。3分間、木星の軌道上の全ての衛星の完全な制御が可能になる。軌道障壁ユニットがデータ転送遮断と偽造データの送信を行う。以降36時間、大口径望遠鏡は全て木星から逸らす。木星周辺の領域の活動は記録されない。
孟梅:これは……本当に大掛かりな仕事ね(ため息)。私が地球で研究をしている間、あなた達がこういう仕事を何回してきたのかは神のみぞ知るというわけね。
ホールデン:我々は完全な隠蔽を行わなくてはならないからな。でなければ明日にはあらゆる天文学機関が木星の近くの謎の熱シグナルについて議論を始めるぞ。博士、シートに戻ってくれ、そろそろ出発だ。かなり揺れるだろう。(間)FORC-19、こちらはFSFロシナンテ、航行プランは送ったぞ、認証コードはKD-6-3-7。
司令部:受信した。ロシナンテ、認証コードを受領、電磁クローを開放する。リリースまであと12秒。カウントダウンする、9,8,7,……
ホールデン:全員、無重力に備えろ。
司令部:……3、2、1、リリース。
画面が振動する。
ホールデン:FORC-19、こちらロシナンテ、発進した。
アレックス:ルートセット、主エンジン点火、加速1G、ETAは2時間14分。
不要な記録をスキップ。
アレックス:高度53,000キロメートル、距離207,000キロメートル。目標は木星の地平線にあるぞ。
孟梅:映像は出せないの?
アレックス:可能だが、目標に向けて減速してる最中だ。殆どの高精度機器は船体の前面にあるので使えない。現在はサイドカメラ、高感度熱イメージ、全帯域レーダーしか使えない。
孟梅:メインセンサーが使えるようになるのはいつ?
アレックス:減速はおよそ……42分続く。その後でメインセンサーを使えるようになる。
孟梅:いいわ、目標の構造を判別できるようになったら教えて。
ホールデン:博士、どんな構造をしていると思う?
孟梅:詳細な観察データがない今言うのは難しいわ。独断で言うことはできない。あれは夏王朝が作った宇宙船か宇宙ステーションと思われるけど、正直、木星のただの衛星であって欲しいわね。
ホールデン:(笑う)君は面白いな。何にせよすぐにわかるだろう。
不要な記録をスキップ。
アレックス:艦長、距離12,000キロメートルです。目標はレーダーの限界範囲に入りました。ナオミ、観察を開始してくれ。
ナオミ:了解、ではどう見えるかを……投影装置に出します。
複雑な不定形の構造が中央のホログラム投影テーブルに映し出される。
孟梅:ああ、とても変な形ね。
ナオミ:まず自然に形成された物体ではないわね。回転はしていない、物体の排出なし、軌道は安定している。1000年後でも変わらないでしょう。そして全体が一つではなく、複数の独立した構造のようね。
孟梅:相互の距離は近いわ。一体と考えるべきじゃないの?
ホールデン:おそらくは反射面がおかしいだけだ。もしかしたら一種の異常な効果かもしれない。ただ確信は持てない。
孟梅:大きさはどれくらい?
ナオミ:鮮明なイメージを出すには遠すぎるわ。反射面だけから考えると、最低でも370立方キロメートル以上。(間)ああ、これは本当に大きい。
ホールデン:減速を継続しろ。CIWS用意。映像の記録を継続。アモス、探査機の発射準備。一足先に到着させて観察を開始させろ。
アモス:了解。20機中10機を準備。
ホールデン:開始。
画面は数秒間わずかに揺れる。
孟梅:探査機は魚雷に搭載されてるの?
アモス:まさか、小型のボートのようなものだな。専用のハンガーはないので、魚雷格納庫に搭載されている。安心してくれ、性能は大抵のドローンより良い。特に出力でな。20Gで加速する探査機なんて見たことないだろう?
孟梅:凄いわね、でも探査機をぶつけないで。光学イメージは撮影できている?
ナオミ:色彩増強の途中よ、先に白黒イメージを見ることもできる。今の所、3つの独立した物体で構成されていることがわかるわね。どうやってこの距離で衝突しないでいられるのかはよくわからないわ。レーダーの映像に重ねてみる。今から、 SCP-CN-1101-A、B、Cと呼称するわ。
//中央の投影テーブルに3つの葉巻型の構造物が正三角形に配置されている様子が映される。長軸の平均は16キロメートルであり、短軸が三角形の中央に向いている。3つの構造物の先端の距離は3キロメートル以下である。
ホールデン:AとBは建造後に強い外力を加えられた痕跡がある。こことここに(ホログラム投影を操作する)激しい亀裂がある。それに比べるとCは損傷していない。孟博士、どう思う?
孟梅:天文学は専門じゃないけど、これは……岩には見えないわね。探査機にLIBSシステムは搭載されてる?
ホールデン:ああ、だが100メートル以内でないと使用できない。
孟梅:いいわ、探査機が到着次第詳細なマッピングを開始しましょう。素材の回収とヒュームインデックス、EVEエネルギー測定も。
ナオミ:増強完了、カラー映像で見られるわ。
葉巻型の構造は、カラー映像では暗い真鍮色に見える。
孟梅:なんてこと。
ナオミ:どうしたの?
孟梅:これは酸化されていないベリリウム青銅の色だわ。
不要な記録をスキップ。
アレックス:みんな、そろそろ停船するぞ。目標から300キロメートル地点に停泊する。主エンジンと航行システムのシャットダウンの準備。全員シートに戻り、磁力靴を起動してシートベルトをしてくれ。もし目眩、悪心、方向失調、バイタルモニタリングシステムに過剰なアドレナリン分泌が確認されたら、医療キャビンに行って宇宙酔いの薬を貰いに行ってくれ。微小重力で吐くことだけはやめてくれよ。
孟梅:今この船でその注意が必要なのは私だけみたいね。
ナオミ:(笑い)確かにね。
アレックス:カウントダウン、3、2、1、主エンジンオフ、姿勢修正開始。
孟梅:ああ、三半規管がおかしくなりそう。
ホールデン:軌道が木星の黄道面から0.03度以上になるようにしてくれ。トーラスが観察に影響しないようにしないとならん。
アレックス:調整完了、距離297.3キロメートルで相対的な静止状態を保つ。全センサーをアクティブ。探査機の最初の集団は目標の10キロメートル周囲に6分で到着する。
ホールデン:了解、仕事を始めるぞ。外部カンチレバーを伸ばせ。
外部カメラが、先端に複数の突起物の付いた折りたたみ式マニュピュレーターが船体から伸びるのを写す。
孟梅:これは後から追加したもの?
ホールデン:そうだ。エイトケン基地のエンジニアの提案で、多数のセンサーを付けた。振動と船体バランスの問題を解決するのに長い時間がかかったそうだ。
ナオミ:展開完了、スキャンを開始するわ。(間)ヒューム値117.03、通常の変動地より少し高い。EVE放射は121.94、これもバックグラウンド値より少し高い。空間曲率は0.48Ēl、比較的高い。アキヴァ放射は──待って、97?これには神性があるの?
孟梅:アキヴァ放射の発生源は?
アモス:ちょっと待って……よし、放射は三角形構造の中心から来ている。放射源は歪曲フィールドの中心とも一致している。だがそこに物理実体はないぞ。アキヴァ放射があるはずない。
孟梅:(ため息)伯益はくえきは正しかった。割れ目は本当に存在するのね。
ホールデン:何のことだ?博士。
孟梅:スキャンをを続けて。完全なデータをFORC-19とサイト-143の河図洛書ヘツルオシュ計画司令部にリアルタイムで送信するように。(ため息)これは……みんなが思ってるようなものじゃないわ。歪曲フィールドが神性を持っているんじゃない。何かが反対側にいる。我々は最上級多能性実体の前にいるのかもしれない。
ホールデン:……本気で言っているのか?
孟梅:冗談で言っているように見える?
不要な記録をスキップ。
アモス:探査機が目標の地点に到着した。経路はC実体を特にスキャンするように設定されている。すぐにレーザースキャニングモデルと、ヒューム値と空間曲率の疑似カラーモデルが見られるだろう。画像を受信する。
スクリーンに複数の映像が浮かび上がってくる。幾つかの映像は探査機が高速で目標の構造の外殻の上を飛んでいるのを写している。サーチライトに照らされて、外殻は暗い真鍮色をしており、平滑で目に見える傷はない。外殻は完全に平坦ではないが、際立った角も、アンテナも、推進ノズルもない。投影テーブルに高精細レーザー描画モデルが形成される。
アレックス:赤外線特性は通常のアステロイドより高い。まだ動いているのかもしれん。だが外部に噴射口らしきものはない。他の帯域では何も写っていない。もしこれが本当に宇宙船なら、かなり高度なエンジン技術で作られているぞ。
孟梅:夏王朝の技術は空間制御に長けていたわ。船体の素材構成は?
アモス:81.33%が銅、13.89%がスズ、2.12%がベリリウム、1.31%が鉛、0.55%がコバルト、0.37%がニッケル、0.13%が水銀、0.12%が金、残りの0.18%は同定不能。典型的な異常ベリリウム青銅合金だ。
孟梅:この合金はパラテック装備ではよくあるものだわ。まず確実なのは、これがベリリウム青銅で作られた理由は──待って、探査機3、探査機3を止めて!
孟梅:レンズを戻して、もっと、もっと戻して、ちょっとまって、200メートル上、OK、止めて、D-062、ズームアウト、、コントラストを上げて、OK……あの模様の周りを丸で囲って(間)これは文字ね。
アモス:自動検出システムでは認識できない。
孟梅:データベースにはないわ。これは古代の中国語。私は以前SCP-2481-3の筆記法を解読したことがある。あの船体の文字と同じタイプだわ。商王朝の文字の変種になる。
ホールデン:なんて書いてあるんだ?
孟梅:“禹舟”。
ホールデン:何だって?
孟梅:“禹王の船”という意味よ。
ホールデン:禹?治水を行ったという伝説の帝王か?いくつかの伝説を聞いたことがあるが。
孟梅:伝説よりも遥かに恐ろしいわ。そのうち知らされるでしょう。
不要な記録をスキップ。
ホールデン:探査機の様子はどうだ?
アモス:7機がC実体をスキャニング中、2機がAとBをスキャニング中、1機が目標の30キロメートルから全体像をスキャンしています。全機がフルオートモードに入っていますが、いつでも手動に切り替えられます。
孟梅:探査機をこの位置へ……(ホログラム映像を指し示す)B実体の大きな亀裂に沿って進入させられる?
アモス:ああ、やるか?
孟梅:ええ。
スクリーンには7番探査機が進路を変更し、数回のターンと減速の後B実体の亀裂の側で止まる。亀裂は短軸をほぼ横断しており、長さ3.74キロメートル幅750メートルである。
アモス:主エンジンオフ、サーチライトを点灯、亀裂に進入する。アレックス、しばらく他の探査機の操作を頼む。いずれにせよ航行はしていないんだからな。
アレックス:(ため息)了解。
ナオミ:(笑い)
探査機は亀裂に入る。レーザーレーダーは亀裂の内部構造を素早くマッピングする。
孟梅:この亀裂はほぼ船体を分断している……でもキャビンらしきものは見えない。このエリアは比較的何もないみたい──待って、アモス、この亀裂があるのは船体の前かしら、後ろかしら?
アモス:どっち側が前かはわからないな。亀裂は船体の中央部から、片方の先端部に向けておよそ4.8キロメートルのところに走っている。(間)船体の奥側に近い亀裂の側に比較的平坦な構造がある。そこには大きな損傷は見られないな。船体の中央部に近い側は……クソ、なんだかわからないな、こんなもの見たことない。疑似カラーモデルを投影テーブルに出す。
中央の投影テーブル上に、亀裂内部の3次元モデルが表示される。船体及び船体の断面が青く表示される。船体の内部空間をほぼ専有している巨大な構造が緑色で表示される。レーザースキャンにより巨大な不定形の、概ね楕円体をした構造が浮かび上がる。楕円体の周囲には9個の巨大なリング構造があり、多数のパイプラインが楕円体に接続されている。
孟梅:すごい……これは長さ7キロメートル、幅5キロメートルはあるわ。
ホールデン:博士、これが何かわかるか?
孟梅:わからないわ、私は考古学者で、エンジニアではないから。
司令部:ロシナンテ、司令部の宇宙アノマリー科学者がわかるかもしれないと言っている。だが確認にはもっと情報が必要だ。リング状の構造の素材と、全体構造の周辺の空間曲率を頼む。
7番探査機が損傷した船体の内部を移動しているのがスクリーンに映る。LIBSから照射されるレーザーパルスが点滅し続ける。
アモス:FORC-19、探査完了、データを転送した。楕円体の外殻はベリリウム青銅でできている。それは驚くことではないが、リングの方はマグネシウム合金だ。
司令部:亀裂から出て、3つの構造体の周辺の空間歪曲フィールドを優先的にマッピングしてくれ。
アモス:了解、探査機を移動させる。
探査機全機が船体の表面から離れ、空間歪曲フィールドの中心から半径20キロメートルに球状に均等に分布し、静止する。
アレックス:待てよ──何だ?
歪曲フィールドの疑似カラーモデルはC実体周囲の空間曲率が他実体よりも低いことを示す。
司令部:ロシナンテ、我々は君たちが発見した巨大な構造物は空間安定装置の一種であると結論した。ピエトリカウ-フォンテイン空間安定化アレイに似た原理を持っている。現在の任務を続行してくれ。司令部はこの情報を分析中だ。
孟梅:これが彼らの言っていた「破られた檻を修復した」ということね。
ナオミ:これが他の2つの実体よりも温度が高い理由ね。彼らが運んできた空間安定アレイのうち2つは壊れ、この1つだけがまだ作動している。
アレックス:何てことだ。
司令部:ロシナンテ、司令部は現在の調査とマッピングのミッションを終了すると決定した。探査機を全て撤退させて次の命令を混て。
孟梅:どうするつもりなの?
司令部:OTF मा-7とOTF मा-12が調査とマッピングを引き継ぐ予定だ。彼らは大型の宇宙船の探索に豊富な経験がある。司令部は現在の状況では宇宙船の遺構の探索は延期されるべきだと決定した。
ホールデン:ハッ、団結号の調査チームか。俺たちはどうするんだ?
司令部:その場で待機してくれ。探査機を安全な距離まで下げて、次の指示を待て。
ホールデン:了解した。アモス、探査機を再配置しろ。
アモス:了解、開始します。
不要な記録をスキップ。
司令部:ロシナンテ、こちらFORC-19、受信できたら応答してくれ。
ホールデン:FORC-19こちらロシナンテ、指示を頼む。
司令部:宇宙アノマリー対応チームが君たちの観測データを分析した結果、歪曲フィールドの中央に安定した領域があることを発見した。表面が不定形の三次元構造で、そこには物質のジェット流がある。彼らによると、物質チャネルの存在の証拠だそうだ。
ホールデン:物質チャネル?つまりは……
司令部:そうだ、おそらく出入り口というわけだ。歴史-宗教的GOI研究部門は、このポータルをGoI-004Xの言う「宇宙の裂け目」と同一の存在と考えている。「大いなる真鍮の檻」に直接通じる入り口かもしれない。安全は確認するが、君たちはポータルと思われるものを調査し、その反対側の空間を探索するために派遣される。我々の知る限り、そこには神格実体が存在する可能性がある。(間)これは、死のリスクを伴う任務だ。準備ができたら、返信してくれ。
沈黙。
ホールデン:だそうだ。どう思う?
アレックス:死のリスクがある任務は初めてじゃない。博士、あなたは?
孟梅:(ため息)死の危険があることを知らずに墓を掘ることは、すでに死の危険がある任務だわ……
ホールデン:そうだな。FORC-19、我々は準備を完了した。
司令部:よし、新宇宙科学調査船FSFカンタベリーが3分前にFORC-19を出発した。任務中、あらゆる武器の使用を許可する。だが戦闘はできる限り避けてくれ。O5評議会からの直接の命令により、ロシナンテの全ての乗員は一時的にレベル5セキュリティクリアランスを得る。GoI-004X「夏の異常文化集団」の完全な説明、関連アノマリーリスト、任務のブリーフィングがロシナンテのターミナルに送信された。現在より、君たちはこれらのデータへの完全なアクセスを得る。
アレックス:オウ、クールだな。
ホールデン:行動を開始する。アレックス、そこへ移動してくれ。
アレックス:了解、主エンジンスタート、ETA6分30秒、そのレベル5のファイルは途上で読んでくれ。
孟梅:もう読んでるわ。
不要な記録をスキップ。
アモス:3番探査機は穴から30メートル。0.7m/sで接近中。
スクリーンには3番探査機が検出する空間曲率が0.3から0.7に急激に変化するのが映る。
アモス:距離30メートル。探査機はもたないだろう。。
探査機の検出する空間曲率は0.73で止まり、下降し始める。
アモス:距離20メートル
探査機の検出する空間曲率は急激に下降し、0になる。
アモス:距離10メートル、進入開始、5メートル、3,2,1、進入。
3番探査機のシグナル及び光学イメージは消失する。シグナル消失前に送信された空間曲率値は-1.0である。
アモス:信号ロスト。自動再進入が問題なく作動しているなら、探査機は10秒で再出現する。
3番探査機のシグナルが回復し、光学イメージでは探査機の表面に目に見える損傷はない。
ホールデン:ビューティフル。
アモス:3番探査機の帰還は成功、自動反転プログラムは正常に作動、通信は不可能、センサーは全てオフ、物理法則の変化は見られず。
ホールデン:これで十分だ。探査機を回収しろ。アレックス、最終アプローチ軌道をとれ。
アレックス:了解、コース修正完了。主エンジンを進行方向に定位、推進は姿勢スラスターで行う。ETAは1分35秒。
スクリーンにはロシナンテが船体の遺跡の影に入っていくのが映る。船体の巨大な亀裂の周囲では、船体が奇妙に捻じれて裂け、破壊された内部構造と、捻じれたパイプが船体のフレームと絡み合う様子を覗かせている。核融合エンジンの噴煙に照らされて、暗い青色に輝いている。
孟梅:何千年も前に……祖先たちがこれだけの凄いものを作った。彼らは金属を使って空と太陽を覆う船を作り、神を真鍮の檻に捕らえた。全ては雨の中の涙のように時の流れに消えた。(ため息)私達は遺跡の中を飛ぶ蛍のようね。
ホールデン:進入前の最後の報告だ、正常。
アレックス:正常。
ナオミ:正常。
アモス:正常。
孟梅:正常。
ホールデン:最後にシステムをチェックしろ。
アレックス:検査後に全てのセンサーはオフにする。エンジンは最小出力で作動、我々はポータルを速度12.5m/sで通過する。
司令部:ポータルを通過すると、君たちと外の世界の通信は不可能になる。君たちは自身の判断で行動しなくてはならない。最優先目標は人類文明の存続である。幸運を祈る。
ホールデン:ポータル通貨まで5秒、4、3、2、1──
強力な電磁干渉により、ロシナンテのシグナルは途絶する。
<記録終了>
結語:SCP-CN-1101-3の通過後、ロシナンテとFORC-19の通信は途絶した。以降の探索記録は探索記録-CN-1101-02に記録されている。