クレジット
タイトル: SCP-CN-2186 - アレックス・ソーリーはオフィスに帰ると同僚が必ず死んだふりをしている。
翻訳責任者: walksoldi
翻訳年: 2023
原題: SCP-CN-2186 - Alex Thorley每次回办公室都看到同事在装死
著作権者: sjx07
作成年: 2023
初訳時参照リビジョン: 2
元記事リンク: SCP-CN-2186
アイテム番号: SCP-CN-2186
オブジェクトクラス: Pending
特別収容プロトコル: SCP-CN-2186は現在、非現実部門のアレックス・ソーリー現実性リエゾンのオフィスにて自己収容しています。更なる収容プロトコルについては制定中です。
説明: SCP-CN-2186は2023/09/21に自殺した真桑友梨佳氏の死体です。真桑氏はこの日に財団職員として非現実部門に異動し、同日に死亡が確認されました。注意すべき点として、真桑氏の本来の死因は未だ判明しておらず、初回発見時の死体の状態から暫定的に自殺であると判断されています。
アレックス・ソーリーはため息を吐き、ペンを置いた。あんな通知書を信じるべきではなかったのだ。あの日、デスクの上にどこからともなく現れて、明日には新しく同僚が入ってくると書いてあって、読み終わると同時に自ら折りたたまれて、小さな可愛らしいカエルとなって窓から泳いでいった通知書のことなんて。少なくとも信じていなければ、こんな報告書を執筆する羽目になったとしても、心理的な落差は小さくて済んだだろう。
ソーリーはこんなものを執筆する必要はないと感じていた、どうせ誰に渡せばいいのかも分からないからだ。それでもソーリーは執筆を続ける。あんな由来不明の通知書でも、非現実部門の同僚はきっちり時間通りにやって来たように。
SCP-CN-2186の異常性は、非現実部門のアレックス・ソーリー現実性リエゾンが自身のオフィスに入室した直後に、SCP-CN-2186が室内に出現することです。SCP-CN-2186の外見などは出現ごとに異なりますが、いずれも2023/09/21に自殺した真桑友梨佳氏の死体であると確認できます。
同一人物に違いない、アレックス・ソーリーは非現実部門での長年の経験からそう推測した。どのアレックス・ソーリーもアレックス・ソーリーであった以上、どの真桑友梨佳も真桑友梨佳であるというのはおおかた類推できる。本当は "DNA分析により" とか、そういう高等で信用性のあることを書きたかったのだが、それはできなかった。この部門にそのやり方を知っている同僚は一人もいないからだ。そう思っているのだが、実のところ尋ねたことは一度もない。ソーリーはちょっと尋ねてみることにした。
「君の専門は? 医者とか生物学者とか、そういうのだったりしないかな? 力を貸してほしいんだ」ソーリーはそう真桑友梨佳に尋ねた。彼女は何も答えずにただゴミ箱をひっくり返し、デスクの下から転がり出てきた。アレックス・ソーリーはため息を吐いた。今回は頭部だけだったが、ずいぶんと活発的なようだ。少なくとも態度は良く、彼女はソーリーに微笑んですら見せた。アレックス・ソーリーはゴミ箱を拾い上げ、真桑友梨佳の頭部をその中に入れて、報告書の執筆を再開した。
補遺: インシデント報告
以下は非現実部門のアレックス・ソーリー現実性リエゾンの記憶に基づくSCP-CN-2186の目撃記録です。
2023/09/21の記録:
午前9時頃、正面口からオフィスに入室したアレックス・ソーリーは、財団研究員の制服を着用し、真桑友梨佳氏のIDカードを身に着けたSCP-CN-2186を発見した。SCP-CN-2186はオフィスデスクの前で膝をついていて、上半身がデスクにもたれかかっており、右のこめかみに致命的な銃創を負っていた。垂れ下がった右手の下方の床で、標準仕様の財団支給品である1丁の拳銃と、1個の薬莢が発見された。薬莢のサイズは拳銃に装填された銃弾と一致し、弾倉内を確認したところ丁度1発分の弾丸が欠けていたため、真桑氏はこの拳銃で自殺したものと思われる。この拳銃と薬莢は現在アレックス・ソーリーの個人用ロッカーに保管されている。
彼女がなぜ命を粗末にしたのか分からない、アレックス・ソーリーはそう思った。非現実部門が憧れの場でないのは確かだが、多分自死を選ぶほどでもないし、もっと言えば自死が許可されているとも限らない。アレックス・ソーリーはアレックス・ソーリーの手で幾度も殺されたらしいのだが、アレックス・ソーリーは今も生きていて、今も報告書を執筆しなければならず、今もアレックス・ソーリーを殺害できる。もし真桑友梨佳が真桑友梨佳自身の手で殺されて、もう生きる必要がなくなったとしたら、それは本当に素晴らしいことだ。彼女がもう生きなくてもいいよう心から願った。
それかひょっとしたら、真桑友梨佳はアレックス・ソーリーの手で殺されたのだろうか? ソーリーは首を横に振り、軽く笑ってその考えを振り払った。確かに暴力的な思考を抱くことはたまにあるが、人を殺したことは一度もない、それはソーリー自身が一番よく知っている。アレックス・ソーリーは7591がもたらしたゴミみたいな考えを捨て去り、執筆を続けた。
2023/09/22の記録:
午前9時頃、天窓からオフィスに入室したアレックス・ソーリーは、昨日作業の邪魔にならないよう隅に移動させていたSCP-CN-2186が、未知の手段でオフィスチェアに移動していたことに気付いた。当初負っていた銃創は既に治癒しており、その代わりとして喉に傷が開いていた。この傷をつけた刃物は回収できていない。
2023/09/23の記録:
午前9時頃、アレックス・ソーリーはクローゼットからオフィスに入室する過程で、クローゼットの中にいたSCP-CN-2186を発見した。ソーリーは驚愕し、SCP-CN-2186に向かって挨拶したところ、SCP-CN-2186はわずかに頷いて反応を返した。SCP-CN-2186に他の生命反応は確認されず、この出現事例ではそれ以上動かなかった。SCP-CN-2186に蘇生の傾向があるのか、ソーリーが幻覚を見たのか、それとも別の非現実部門関連のアノマリーが関わっているのか、実情は確認できなかった。アレックス・ソーリーはSCP-CN-2186の了承を求めようとした (返答は得られなかった) のち、SCP-CN-2186を中に残したままクローゼットを出た。
2023/09/24の記録:
午前9時頃、アレックス・ソーリーはコンピュータのモニターからオフィスに入室しようとして、不用意にもコンピュータの前に座っていたSCP-CN-2186をイスごと倒してしまった。SCP-CN-2186の体表に明確な傷は発見されず、硬い表面に頭部を打ち付けて死亡したのではないと思われる。アレックス・ソーリーはSCP-CN-2186の気分を落ち着かせるために、先ほどまで座っていたイスにSCP-CN-2186を座り直させた。SCP-CN-2186が不満を示す様子は見られなかった。
2023/09/25の記録:
午前9時頃、オフィスに入室したアレックス・ソーリーは、オフィスにてアレックス・ソーリーとSCP-CN-2186を発見した。アレックス・ソーリーは自分が誤って入室したと思い、再度入室し直すと、オフィスにはアレックス・ソーリーもSCP-CN-2186も存在しなかった。人生におけるこの感謝すべき幸運な出来事を祝福するため、アレックス・ソーリーは午後3時半頃にオフィスを退室し、甘くないドーナツと甘いベーグルを購入しに向かった。
午後4時半頃、アレックス・ソーリーが上述の食品を持ってオフィスに戻ると、オフィスにはアレックス・ソーリーもSCP-CN-2186も依然として存在しなかった。その後、アレックス・ソーリーが上述の食品を摂食していると、その途中でそれらが死臭のするドーナツとベーグルに変質していたことに気付いた。アレックス・ソーリーは不快に思い、臭いの発生源を探ったところ、部屋の上部にある換気ダクトから発生していると感づいた。アレックス・ソーリーが換気ダクトのカバーを開けると、大量の砕けた人肉が落下した。のちの分析により、これらはアレックス・ソーリーとSCP-CN-2186に由来するものであると確認された。アレックス・ソーリーは食事を続けなかった。
アレックス・ソーリーは昨日の出来事を思い出したくなかった。ドーナツとべーグルが惜しく感じられた。ケチャップも嫌いだった。
ただ幸いにも、これでようやく昨日の分まで仕上がった。さらに幸運なことに、アレックス・ソーリーは時間異常部門に勤務してもいない。あとは最後の日 — つまり今日の分 — の記録を書けば、お茶を淹れて昼食の用意ができるのだ。
2023/09/26の記録:
午前9時頃、カバーを付け忘れた換気ダクトからオフィスに落下したアレックス・ソーリーは、床に転がったSCP-CN-2186の頭部を発見した。私情により、アレックス・ソーリーはその頭部を円筒状の収容ユニットに一時収容した。SCP-CN-2186は比較的低レベルの活性化を起こしたと思われ、軽度の収容違反を引き起こしたものの、アレックス・ソーリーによって直ちに再収容された。SCP-CN-2186の首から下と、9月25日に生じた組織片については、現状行方が判明していない。
やっと終わった。アレックス・ソーリーは手元にある報告書を、現実の外にありながらバカ真面目に働いているコピー機に入れ、どこにいるのかも分からない上層部にコピーを送付する準備をした。聞いた話によると、階下にある緑色のポストに報告書をそのまま入れれば、自動的に上層部に情報が届くらしい。だがこの話はアレックス・ソーリーから言われたものなので、実際のところは半信半疑だった。
再び換気ダクトから落下した頃には、アレックス・ソーリーが抱えていた負の感情は全て洗い流されていた。予め買っておいた昼食の弁当をテーブルの上で開け、口いっぱいに頬張る — ああ、ソーリーの大好きな日本の味だ。



