SCP-CN-305
評価: +8+x

アイテム番号: SCP-CN-305

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-CN-305はサイト-CN-75-C7の標準人型収容室内に収容し、日常的な交流を除きオブジェクトと接触する行為は禁止されます。オブジェクトの協力を得るために、オブジェクトは毎日一時間サイト-CN-75-C7の屋外環境模擬室内で活動させねばなりません。

説明: SCP-CN-305は高度な腐敗状態にある一体の男性の死体です。オブジェクトの姿は一般的な農業用かかしの形状と一致し、その姿勢は両手を開いた状態で固定され、破れた衣服を着用して木製の支柱に固定され、藁により身体を完全に覆い隠されています。SCP-CN-305の身体は未知の手段により支柱に固定され、通常の方法では分離することができず、身体上の衣服と藁もまた同様に分離することができません。SCP-CN-305は死体ですが、その心臓には来歴不明の非異常性の血液が充填され、心拍運動により全身の血管へ輸送され、血液は心拍のポンプ圧により血管末端まで至り端部から滴り落ちます。しかし、そのメカニズムは不明です。

SCP-CN-305の心臓の位置には一株の細い太陽蘭(Thelymitra pauciflora)の蕾みが埋まっており、X線検査を通して、この植物の根部がオブジェクトの左心房側部と接合していることが確認されました。分析によりこの植物はオブジェクトの心臓の血液を吸収して通常の栄養供給を行うことが確認され、いかなる植物も移植する試みは失敗に終わると共にオブジェクトが敵対的となることを招き、オブジェクトが財団の日常業務へ非協力となることへ繋がりました。

SCP-CN-305は標準中国語及び英語に熟練し、コミュニケーションを行います。同時に周辺の鳥類は異常効果を受け、影響を受けた鳥類はSCP-CN-305へ極めて近くまで接近して親近感を表わし、オブジェクト周辺またはオブジェクトの身体上を選んで巣を作り始め、そしてオブジェクトの心臓にある植物へ接触する者に対して攻撃を行います。

補遺: インタビュー記録

インタビュアー: ヨーグルト博士

インタビュー対象: SCP-CN-305

前書き: このインタビューは収容後に実施された第一回目である。


<記録開始>

ヨーグルト博士: こんにちは、私はヨーグルト博士。君を何と呼べば良いかな?

SCP-CN-305: かかし。

ヨーグルト博士: それが君の名前か?

SCP-CN-305: 僕は案山子、僕に名前は要らない。

ヨーグルト博士: それなら我々は今後、君を呼ぶのにSCP-CN-305とするが、良いかな?

<SCP-CN-305は頭を下げ、不明瞭で小さな声を発する。>

ヨーグルト博士: SCP-CN-305?

SCP-CN-305: 今日も風が無い。

ヨーグルト博士: よし、少し質問をしても良いかな?

SCP-CN-305: ああ。

ヨーグルト博士: 君はどこから来たのだ? 

SCP-CN-305: 風の吹いた場所。

ヨーグルト博士: それはどういう意味だ?もう少し具体的に言えないか?

SCP-CN-305: <頭を揺らす>僕も良く覚えていない。

ヨーグルト博士: 君がどのようにして今の状態になったか覚えているか?

SCP-CN-305: これはあいつの贈り物だ。

ヨーグルト博士: あいつ?もっと詳しく説明してくれ。

SCP-CN-305: あいつはあいつだ、風からの囁きであり、陽光、そしてそれの至る場所であり、空気と湿度の重量であり、満開の蘭であり…それは肥沃な土地、腐葉、新鮮な糞便や思考が僕を飼い、僕は血肉でそれを飼って、ずっとそうしている。沈黙の期日が訪れた時が、それがその花が開く日なんだ。

ヨーグルト博士: うーん……君の胸の前に咲いている花について、話してくれないか?

SCP-CN-305: これもまたそれの恩恵、陽光を恐れ私の血肉中に植えられた人であり、彼等は野獣の衣を身に纏い、ティターニアに心臓を捧げ、ただ開花を待つのみだが、それらは僕に陽光のある所で陽光を浴びせさせるんだ。

ヨーグルト博士: わかった……君自身について話してくれ。

SCP-CN-305: 僕は一体のかかし、務めはそれの世話をすること。

<SCP-CN-305は緩やかに頭部を持ち上げ左側を見て、低い声で幾つかの言葉を囁いた。この時、一羽のエナガが左肩に止まった。>

SCP-CN-305: そして今は、友人としばし一緒にいることを望むだけだ。

ヨーグルト博士: 君が我々の仕事に協力する限り、我々は君に時間をあげられる。だがそうでなければ、我々の仕事を手伝わすのに強硬手段も辞さない。

<その後のインタビューでは両者睨み合いになる。エナガがSCP-CN-305の身体を離れ、SCP-CN-305がヨーグルト博士と向き合うまでの半時間それは続いた。>

SCP-CN-305: 僕は名も知らない田舎から来た。小便垂れた頃から父親の放浪に付き従い、見知らぬ多くの人々に頼って生きてきた。13歳になった年、父親は僕をあるサーカスに遣って、僕はそこで有名なlckyと“親指将軍1”に出会って、その後ずっと彼等とステージに立った。彼等は僕に軍服を着せて観客に吠えさせて、拍手を貰った。彼らは僕を“人と犬の子孫”と呼んで、僕はそれに従った。後に、僕の身体が弱くなったのだけれど、医者に行くための十分な時間が取れなくて、それが原因で後にギリシャ公演で事故が起こされた。

<SCP-CN-305は突然、身体を僅かに揺り動かす。>

SCP-CN-305: 分かったよ先生、今回の興業が終わった後にこの仕事を辞めたい。僕はもう、毎朝七時に始まる演目と“不気味なサーカスにようこそ”という変わらないフレーズにはとっくにうんざりしているんだ、それに沢山の人達の奇異の目とひそひそ話、あれは本当に鋭くて痛いんだ。彼は怒って叱責し、僕を“異形”と呼び、僕達は止めどなく論争し、最後に彼は匕首を僕の肺に突き刺した……<ひとしきり激しい咳をする>……目が覚めた時、あの人を見た。彼は僕を“面白い相だ”と言って、そして僕は今のような外観になった。彼は藁で僕の容貌を隠し、僕を傷つける言葉は使わず、支柱を立てて暴風雨中で安身立命できるようにし、それてそれ以来僕はずっと風の中に立っている。

ヨーグルト博士: 君はその人の容姿を覚えているか?

SCP-CN-305: <頭部を揺らす>誰もNobody彼の姿を覚えていない。

ヨーグルト博士: それ以来君はずっと今の姿のままなのか?

SCP-CN-305: ずっとこれが咲くのを待っていた。

ヨーグルト博士: その間、君は他のことを考えなかったのか?孤独ではなかったのか?

<SCP-CN-305は口笛を吹き、白いカラスがSCP-CN-305の頭上に飛来する。>

SCP-CN-305: 僕は風の中に佇むけれど、それでも鳥が僕と共にいる。

<記録終了>


後書き: オブジェクトは意図的に、或いは意図せずに質問へは回答しておらず、オブジェクトの由来及びその目的についてはさらにインタビューや討論を分析せねばなりません。オブジェクトと関係する可能性のある異常組織あるいは異常な人物との関係について更なる調査が待たれます。 

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