SCP-CN-426
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“潮”現象発生時のSCP-CN-426エリア。


特別収容プロトコル:SCP-CN-426の自然環境により財団による完全な収容が阻害されているために、コードネーム“墜入”による被覆作業が実行中です。これ以外に、オブジェクト収容エリアは24時間衛星監視下におかれ、当該エリア内の民間/行政機関によるいかなる科学調査も及ぶことを阻止されます。 

オブジェクトへの探索は定期的に行われ、全財団職員は三項目の基本規則を厳守せねばなりません。: 

  1. SCP-CN-426-1との対話は禁止されますが、実体間の会話を録音するために録音機器を携帯せねばなりません。 
  2. すべての探索行為は予定時間を厳格に遵守し、かつ、“潮汐”現象の発生時にはその影響範囲内に滞在することを可能な限り回避してください。具体的な時間は気象観測チームが制定します。 
  3. SCP-CN-426により起こる人員/物品の消失はすべて死亡/損失と判定され、救援/奪回が試みられることはありません。

説明: SCP-CN-426は特定の地域で、周期的に発生する異常現象です。中国新疆ロプノール地区内で発生し、毎日日の出と日没時刻(季節の影響により不固定)に最も活性化します。記録と呼称の便宜上、日の出の現象を“潮”、日の入りの現象を“汐”、併せて“潮汐”と記録、呼称します。

“潮”現象発生時に、当該エリア内本来の砂漠地質は迅速に“地平線からこちらへ広がるように”海水に浸かり、そのまま大半の区域が海水に覆われ、最終的に海岸を形成します。海水の深度と実際の海洋に差はありません。目撃者の証言によると、入り江の果てをはっきりと視認することが可能ですが、しかし例え交通ツールを使用しても、日が沈まないうち、つまり“汐”現象発生前にそこへ到達することはできません。

SCP-CN-426-1は“潮”とともに出現する人型実体であり、目撃者の意識しないうちに死角中に出現します。オブジェクトは乗船する船を降りる、販売車を押して接近する、椰子の下で目を覚ます等の行為を行いますが、その行動はこれに限定されません。すべての実体は自由に会話し、相互作用し、かつ外来者からの質問に答え、態度は多大に情熱的かつ友好的ですが、彼等の使用する言語及び文字は一様に理解が困難であり、古代中国において用いられた失われた言語の一種であると推測されます。 

注意するべき点は、一部のSCP-CN-426-1実体は多少の差異はあるものの、彼等は一様に高齢男性であり、奇異で盛大な衣装を着用し、厳格な表情を浮かべ、ほとんどの人物から畏敬と尊敬を受けますが、外来者に対しては警戒と敵意を抱き、通常理解できない長い形式の議論で罵倒し、或いは他の実体を引き連れて、海洋へ向かって跪いて礼拝するなどの儀式活動を行います。この実体はSCP-CN-426中で司祭等の宗教的職位を担っていると考えられます。

“汐”現象発生時、太陽光が消失するにつれ、海洋は次第に縮小、後退し、砂漠地質が回復します。引き潮の追跡は失敗に終わっています。すべてのSCP-CN-426-1は緩慢に活動を停止し、倒れ、衣服・物品は腐敗し、急速に白骨化して完全に消失します。取得したサンプルもまた同様に消失します。 

日の出から日没に至るまでの時間は“平潮”と呼称され、この期間は外来者は自由にオブジェクトエリア内へ進入できます。しかし“海の対岸”へ到達することは出来ず、例え乗船して海へ入っても、一日中成果のない航海をした後に潮汐の退去により砂漠へ座礁し、潜水器具が完全に海面へ浸かっていた場合、それは消失します。もしSCP-CN-426-1実体がオブジェクトエリアを離脱したならば、彼等の身体がどこにあったとしても、日没時刻(現地時刻)に同様の方法で消失します。これら現象の発生原理は解明されていません。 

長期間の観察により、すべてのSCP-CN-426-1実体は“平潮”期間中の記憶を僅かに有していると考えられ、客観的条件によって毎日の行動が異なる点があるとはいえ、前日に出会った外来者を認識できた実体はおらず、加えて彼等は現在の自身の状況に対する知識を持ちません。今後の交流においてこの認識を保持するよう注意し、不要なトラブルを回避してください。インシデント426-K以降、財団職員がSCP-CN-426-1と直接交流することは全面的に禁止されました。 

現在、SCP-CN-426に対する探索と研究は、資料収集と初歩段階の探索に留まり、最新の進展があった場合、適時更新がなされます。

補遺CN-426-A:《諸海行記》七巻の抜粋 

昔在帝が封じ、八荒1を臣と為す、中山の東、陵壤越えて五嶺に連なる;百川ひとしくめぐり、崎崖多くして巉岩をめぐり、是れを諸海を為す。大海の水、朝生まれ潮と為り、夕生まれ汐と為り、其の水苦くからし、波風ともに興り、天の力を通さざるべからざる故に渡り、九虚の阻みに往くを為す。亦た外族世代絶えず有り、其の民は白膚被髪、涵泳さまたげる無し。東海内に神獣有り、名を曰く甾峳さいゆう、状は鲛鲨の如く、眼目無し、終年夢寐、およそ動くものは皆其の息の起こるに因よるのみ、能く動き得る物一つとして無く、時之を止めるを為す。 

天啓十年2、中史殷昌するを諫めて上書して曰く:“古者天下に散乱し、能く相一する莫し、今夫れ封県の疆を以て為さざる、何ぞ也?昌に聞き得る時は待たず、” さかんに聞き得る時待たず、今怠けて急がざれば、其の賢有ると虽も、能く并せざる也。”考武晒して曰く:“卿豈に神を軽んずる者は必将ず神の軽ずる所と為るを知らんや、其の報せを視るに、皆流さまよい途に満ちる、けだし善く終わり難し、子復た言うこと無かれ。”

く乾元年初めに至る、宣帝は祁曌合せて七族の力を以て天下を併せ、将に三十万おおころし海皇少昊3を淵に帰さんとす、赤水の至る所、服従せざる莫し。甾峳既に驚き且つ怒り、波を行かせ浪を作り、併せて力を使い引く、帝遂に善き術者を遣り捕らえて之を鎮める。其の声極めて哀れ、聞く者戚然せきぜんす 

乾元七年、歳将に暮れ行かんとす、潮汐たがいいに起こり、栄枯序有り、澤の民皆以て奇と為す。然り考武より世を携さえ深みに登り、封じ統べる世は衰う、宗の性は奢靡しゃび、勢星は群散す。かつて少昊の復た帰るを見得る人有り、鮫に乗り海にかべて去る、歌いて曰く:“哀しい哉羽弱く、の心は空へ宛て、水暗く窮まり無し、日冥く未だ曙せず、朝生暮死、晦朔を知らず、海将に続き璧を完うとす、何れ挣扎し徒に力する。”其の後知る者はまれなり。 

補遺CN-426-B:███博士の研究日誌の抜粋 

19██年12月7日 

午前八時、サイト-CN-89に到着する。出発前の最後の準備として、この場所に拘束していた数名の観光客に対して情報を尋問する。成果はなし、記憶処理を施した後に解放することを承認した。 

目的地へ到着した時には既に日が落ちており、ドローンにより砂漠の夜の状態をいくつか撮影する。ビデオカメラを用いて二十四時間観察する予定であり、研究価値のある画像が得られることが期待される。 

それを描写するならば、夜の衰退した砂漠の遺跡に異常な兆候は全く無く、鋭い音を立てる強風がくすんだ白い砂礫を巻き上げ、ぐらぐらと不安定な石塊がこの見渡す限りの砂海に荒廃の情緒を添えている。往年商人が駱駝に乗ってシルクロードを通過した頃、きっと駱駝は城外の庭園に留められて餌を食み、自身は宿をとるか商売をするために入城したのだろうが、今この時この場所には、とっくに砂と化した河床と壊れた井戸が残るのみだ。

今日再び夜になる頃、付近のサイトに戻り、明日の正式な探索の準備を行う。 

明朝午前七時にクー博士(メールボックス:moc.pcs|krahsmodeerf#moc.pcs|krahsmodeerf)へ申請文書を送付し、彼女に関係文献記録の調査を依頼しよう。 

19██年1月15日 

三台の定点ビデオカメラは全て喪失したが、オブジェクトの異常影響によるものなのか、または砂塵に埋もれる羽目になったのかは定かでは無い。クー博士からメールを受信した、彼女の送った資料は極めて価値が高い。メールが復旧したことに感謝しなければならない。 

長い間、記録を書いていない。ここ一ヶ月の間に見聞きした、奇妙で幻想的で美しいものに思い耽り抜け出すことが出来ないからだ。:明け方、絶え間ない潮の音に目を醒まされた。視線が及ぶ限では天空と海洋の区別をつけることはほとんど出来ない。白雪の如き泡沫は海潮により柔らかな黄金の砂浜に留められ、空気中には信じがたいことだが確かに磯臭い香りが漂っている。 

しかもこれが全てではない。瞬き一つする間に、砂浜は沸き上がっていて、無数の人(或いは人型実体と呼ぶべきか?)が各々不可思議な角度から歩いて来て、木小屋の外には、古風であるとはいうものの自然の美ではない様々な素晴らしい商品が置かれている。 

言語が通じないため当地人との交流はできず、今後この方面の研究を強化せねばならず、ここの文字と言語の解明を早急に成し遂げなければならない。 

19██年5月26日 

私の考えでは、ここの社会形態は古代中国とよく似ているが、しかしここには明確な統治者が存在しないため、封建制と呼ぶのは適切ではない。彼等の精神的指導者は教皇や司祭に類似するグループらしく、この社会を支える精神的支柱は宗教なのだろう。だが、彼等が結局どのような神を崇拝しているのかは、現時点ではまだ不明だ。しかし、“神と会話する”人(現地人は眷属/神眷等と自称する)は我々に対してあまり友好的ではないらしい。 

文字の解読作業は初歩的な進展を得ることが出来た。 

20██年1月1日 

最初の驚愕の後、続いてやって来たのは無限の恐怖だった。私は常々奇妙な非現実感を覚え、目に見える物事一切が皆夢であり、現実ではないように思う。一言でその全てを形容しようとするならば、私はそれを桃源と呼ばねばならないだろう。日夜の落差は受け入れ難くさせる。神の奇跡に驚嘆し、また己のかつての醜い世俗での生活を恥じている。 

クー博士がまたメールを送ってきた。彼女は、この鳥有の海——“八荒”に関わる一切へ、不必要に足を踏み入れるなと警告してる。だが一人の歴史学博士として、歴史の真相への私自身の好奇心を抑えきれない。 

今、私は既に大部分の言語を殆ど理解し、彼等とインタビューを行った。近い将来、機会があれば“司祭”と話をしに言って、秘められた秘密を解き明かしたい。 

メモ:現地言語をほぼ掌握できた、当時のオブジェクト管理官███博士は安全管理規則に違反して、日の出前に単独でオブジェクト影響区域へ赴き、僅か一台のモニタリング装置のみを携帯し、その後、███博士は失踪した。

███博士が既にSCP-CN-426の一員となっていることを示す証拠がある。いくつかの目撃記録では、彼が自身で“真相を探さなければならない(未知の場所へ探索に向かうことだと推測される)”と繰り返し強調しており、その後間もなく消失した。私にはそれを信じる理由があり——そして確かなことは、彼は朝生暮死の大洋に従い共に次の循環へ墜入したのだ。本当に、私は警告したのだ。 

どうであれ、本当に申し訳なく思う。——クー博士

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