財団の特製無人機によりオブジェクト観察を数回行った後、更に理解を深めるため収容スペシャリスト███博士をエリアへ派遣しました。
博士: 500、貴方のお邪魔にならなければ良いのですが。今回私は貴方にインタビューを行うために来ました。
SCP-CN-500: 君の声は覚えている、君はこの前来た時はブリキの箱だったな。今どうやってかこんなに変わってしまった。
博士: 貴方が以前見たのは、私が操縦した探索機械ですよ。
SCP-CN-500: なるほど。
博士: 貴方をこの場所へ鎖で繋いだのは誰ですか?
SCP-CN-500: 話すことはできない。
博士: なぜ貴方はこの場所へ鎖で繋がれているのでしょうか?
SCP-CN-500: 若い頃は気が短く、どんなものでもわざわざ口にして、このために多くの人々に不快感を与えた。
博士: どのようなことを口にしたのですか?
SCP-CN-500: (笑い声)要するに我は四凶の一、饕餮なのだ。
博士: あなたはどんなものでも食べられるのですか?
SCP-CN-500: 勿論。かつて我を鎖で繋いだ者は我の力を拘束し、この山洞の位置を隠匿し、我に彼のいくつかの頑強な敵を食べさせた。彼が死に、彼の王朝が終焉を迎えた後、この場所は見つけられた。奴らは彼のような聖人ではなく、ここへ来た者は我に奴らのために何かを食べさせて、(ため息)、我は全てに合意した。
博士: なぜ貴方は彼らの要求に応えたのですか?
SCP-CN-500: もしそうしなければ、奴らはこの鎖を使って我を打つのだ!あれは実に痛いし、それに我は既に年寄りなのだ。
博士: 貴方がどんなものでも食べられるのならば、なぜこの鎖を食べないのですか?
SCP-CN-500: (大声で悲鳴を上げる) これには我の母親の骨血から作られたものが使われている!
博士: 貴方は、恐らくは貴方に要求を達成させようと鎖を使う者に対して報復を行えるのに、なぜそれをやらないのですか?
SCP-CN-500: 我を拘束するため、また更に我の力を利用するため、ここへ降りてきた奴らにはある術がかけられている。そいつがここへ進入すると、すぐに心臓に符印が刻まれ、我は奴らが理解できる範囲内の如何なる物に対しても危害を加えることが出来なくなる。
博士: 貴方はこの領域を食べようと考えたことはないのですか?
SCP-CN-500: 以前はあった。しかし、君が出来ることがあるが、君はそれをしないだろうということを、今の我は知っている。その上、もし誰も我に命令をしなければ、今の我は己の能力を全く発揮できない。
博士: 貴方はこの場を離れるのは簡単なことではないのですか?
SCP-CN-500: 容易ではない。あの人は我の母親の骨で我を拘束し、父親の犬歯で我を挟み、我の妻の肉でこの山洞を築き上げた——彼らを除けば我は何も無くなってしまう。我がここに来て千年が経った。その上、我は外へ出るのを恐れている、それら我へ対処する方法を持つ人間は、我を探すことがより容易くなるだろう。
博士: 貴方へ対処する方法?
SCP-CN-500: ……我が君に教えると思うか?
博士: ああ、今の貴方は世界の破壊を行うことは出来ないのですか?
SCP-CN-500: (少しの間熟考) 人間が我を貪欲、欲望或いは別の何かの化身であると言っていることを知っている。しかし我はそうではなく、ただこのような形に作られたのだ。——明らかに人間こそ貪欲の化身だろう?ずっと満足することができない、ずっと一つを得た後に別の同じような物を欲しがる。我に枷を食えと求めてから、世界全部を食えと求めるまで、次第に我は一つの法則に気がついた。それは即ち、時間の推移と共に人間が見たり所有したりする物が増え、人間の欲望もまた絶えず大きくなっていくとうことだ。あの、ここへやって来る目を血走らせた人間が我に命令する度に、我が見ているのは人間ではなく、一頭の飢えて目の前の肉を見ている獣だと思うのだ。
博士: 悲しまないでください。
SCP-CN-500: ……我は当然欲望を持つことが必ずしも悪ではないと知っている。それは我々に探索を促し、発見に至る、好奇心と同様に一種の独特な贈り物なのだ。人間は欲望を満たすためにあらゆることをせねばならず、欲望が満たされた後もまた新たな欲望を生み出す。——我が貪欲なのか?これこそが貪欲ではないか。(咳をする)—— すまない、少し興奮してしまった。
博士: 無欲で何も求めない人間もまた、いないのではないでしょうか。
SCP-CN-500: 無欲で何も求めずにありたいと願うこと、それ自体もまた一種の欲望ではないのかね。
博士: 我々はやはりこの話題を先に飛ばしてしまったようです。――貴方はなぜ貪欲の化身と見られるようになったのですか?
SCP-CN-500: 我を鎖で繋ぐには正当な理由が必要だ、事の起こりは陰険な濡れ衣だった。我は——ああ、我は本当に嘘がつけない、我は当初は間違っていた。しかしそれは若いときのことで、現在まで用いるのはふさわしくない。
博士: ……貴方はこの後何がしたいのですか?
SCP-CN-500: 知らない。我はただ邪魔をされずに、ゆっくり休みたい。——我の家族と一緒に。
博士: 家族の屍体と一緒に……おや、この希望は少し変わっていますが……貴方がここにずっと留まることを保証しさえすれば、あなたの希望は実に容易く達成されるでしょう。
SCP-CN-500: わかった、始めから終わりまでこれほど何度もやって来て、君は一度も我に君のために何かを食べることを求めなかった。
博士: 食べる……今後貴方は一切を食べる可能性があるのですか??
SCP-CN-500: (笑い声)我にそれをすることはできない。そうでなければ前に来た奴らが我がその要求を達成した後に我をこんなふうにしてしまう。
博士: こうなったからには、私もまた別の要求はありません。インタビューはこれで終了します。ご協力ありがとうございました。
SCP-CN-500: ああ……待て。我は君たちが外でこそこそとやっていることを知っている、君たちがこんなことをするのは我が逃げ出すのを防ぐためなのは明らかだとはいえ、しかしもっと大きな理由は人間が我に命令をしに来るのを阻止するためなのだろう?我は君たちに感謝する。
博士: 我々はただ職務を行うだけです。
インタビューメモ: オブジェクトは拘禁された後に人類に発見され、一部の人間はオブジェクトに彼らの要求を達成させるために拘束具を破壊した可能性がある。オブジェクトは自身のために重大な破壊を引き起こすことはできないが、しかしオブジェクトの情報を知りオブジェクトを通して世界を大きく、或いは小さく改変する人間があり、私欲に満ちた要求を行う。オブジェクトが言うことを信用するならば、オブジェクトは貪欲な凶獣ではない、それは人類の貪欲と凶悪さに暴露されてきただけかもしれない。
私はオブジェクトをThaumielクラスへ再編成し一部の高危険オブジェクトを完全に抹殺する提案には賛成できない。そのようにオブジェクトを利用する人間がオブジェクトを今の世界を改編する道具へと導いてしまったのだ。また、例えオブジェクトが温和な表現を用いても、それは依然として想像を絶する重大な損害を引き起こすことが出来る。オブジェクトがみせる温和さ、誠実さ、礼儀、そして老いは我々の警戒を緩めさせる偽装かもしれず、我々はオブジェクトが腹の内で悪心を抱いていないと断言することはできないのだ。