アイテム番号: SCP-CN-717
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-CN-717-01はサイト-CN-04の5m*5mの標準的な収容室に収容され、生命維持装置によって呼吸、脈拍、血圧等の基本的な生活反応が保たれるようにしてください。SCP-CN-717-02のある区域周辺は、財団の職員によって国家軍事基地の名目で封鎖され、いかなる部外者の侵入も禁止されます。万が一、住人や探検者による侵入があった場合、対象にAクラス記憶処理を施してください。
説明: SCP-CN-717はSCP-CN-717-01とSCP-CN-717-02の2つの構成要素から成り立ちます。SCP-CN-717-01の外見は、身長176cm、体重72kgのアジア系の青年です。SCP-CN-717-01の住居から見つかった身分証によると、名前は████で、年齢は28歳です。しかし、骨年齢検査の結果は55~60歳を示しています。SCP-CN-717-01は現在、重度の植物状態1にあり、対象を覚醒させるあらゆる試みは失敗に終わっています。一方で、PETスキャン2ではSCP-CN-717-01の後頭葉が依然として高い脳活動を有していることが示されています。
SCP-CN-717-02は████山脈の北部に位置する、約12km*2kmの森林地帯です。 SCP-CN-717-02の範囲内の植生は、人体の筋肉及び結合組織によって構成されています。木本科植物の表皮は骨格とエナメル質に類似している上、関節に似た分枝が生じており、木質部は骨髄に似た液体を含んでいます。草本科植物や木本科植物の葉は筋肉繊維で組成されており、あらゆる植物の師管及び導管は、人間の咽頭部に似た構造に変化しています。真菌類は[データ削除]。SCP-CN-717-02内の変異植物は光合成を行いません。必須栄養素については、周辺の森林から寄生植物に似た方式で吸い取ることによって賄っており、このため周辺は広範囲に渡って、植生の生育不良と枯死が引き起こされています。SCP-CN-717-02内を探査した人物は、木立ちの中で“白い服を着た、早足で駆け回る人影”を目撃したと証言しています。しかし、接近して細部を見ようとしたり、人影を明晰化しようとする試みは、全て失敗に終わっています。
SCP-CN-717-01とSCP-CN-717-02の間には、ある種の空間的なリンクが存在します。SCP-CN-717-01の咽頭に対する外的な干渉は全て、SCP-CN-717-02において類似した形式で具現化されます。
回収ログ: SCP-CN-717-01は2███年7月██日に財団中国支部の注意を引きました。SCP-CN-717-01は住んでいたアパート内にて、昏睡状態で発見されました。隣人の証言と、室内に積もった埃の状態から、彼はベッドに臥せたまま、食料も水分も未摂取の状態で、750時間以上に渡り生存していたことが明らかとなりました。財団による全身検査の実施後、探検家である[データ削除]によって3ヶ月前に偶然発見されていたSCP-CN-717-02との関連性が判明したことにより、アイテム番号が付与され、収容へと至りました。
実験ログ:
実験CN-717-A:
実施方法: SCP-CN-717-01の咽頭にチューブを通し、蒸留水を胃に向かって注ぎ込む。
結果: 降雨が無かったにも関らず、SCP-CN-717-02内で洪水が発生。水位は15分以内には████mmに達した。付近の3つの村落が流され、███人の死傷者を出した。
実験CN-717-B:
実施方法: 金属製のゾンデ3をSCP-CN-717-01の咽頭に挿入する。
結果: SCP-CN-717-02内に全長███m、直径██mの金属[データ削除]が出現。1時間後に消失。
実験CN-717-C:
実施方法: SCP-CN-717-01の咽頭にX線を照射する。
結果: SCP-CN-717-02及び周辺地域に未知の光線が照射された。SCP-CN-717-02自体に影響は無し。周辺住民████人が死亡。
実験CN-717-D:
実施方法: メスを用いてSCP-CN-717-01の頚部の皮膚を切開する。
結果: [データ削除]
コメント: 実験結果は、SCP-CN-717-02とSCP-CN-717-01が密接な関係にあることを、差し当たって示している。前者は後者の喉の、拡大版とも言える。SCP-CN-717に対する実験を安全・容易にするため、我々はより踏み込んだ研究を行うべきだろう。——Crucifixion博士
補遺1: SCP-CN-717-02探査ログ
エージェント・G██████はLED懐中電灯とハンディカム、通信機器を装備した状態で、SCP-CN-717-02へ進入した。
森林内部は非常に暗く、探索時は午前10時であったにも関らず、懐中電燈の光に頼らなければ何も見えない状態であった。エージェント・G██████は懐中電燈の輝度を最大に引き上げた。転送されてくる映像からは、青白い色を帯びた骨節を持つ木々と、様々な濃淡の赤色を帯びた草や灌木が見てとれる。
エージェント・G██████: ここは確かに、不気味な森ね……得体の知れないものばかり。けれど、今の所、身の危険は感じないわ。(エージェント・G██████は手で無意識に葉を触り、すぐさま引っ込める)うえっ、この木、触ると何だか……体温があるみたい。
Crucifixion博士: これらの植物には触れないように。避けて歩くようにしてくれ。
エージェント・G██████は移動を始める。1時間ほど歩き続けるが、SCP-CN-717-02内の景観は最初と何ら変化がなかった。
エージェント・G██████:思ったんだけど、ここは不気味な感じを除けば、本当に何にもない所ね……そろそろ、探索を切り上げた方が良いと思うわ。
Crucifixion博士: 別の方角へ向かって、もう少し探索してみよう。
画面が動くと同時に、白色の動く物体が、画面縁を高速で通過する。
Crucifixion博士: あれは何だ?
エージェント・G██████: 嘘でしょう……あれは人間?白い服を着た人が、走っていった?
(言うと同時に、エージェント・G██████も走り出す。画面には数分間、激しいブレが生じる。)
エージェント・G██████: もう彼がどこへ行ったか分からない!早すぎて追いつけないわ!
Crucifixion博士: だが君は、彼を撮影できた。一度プレイバックしてみよう。
エージェント・G██████は白い人影が通過した、2秒間のシーンをスロー再生する。人影は白い服を着た、平均的な体格をした青年男性のように見える。対象は高速で移動したため、服装の細部がどのようになっているかは撮影できなかった。
Crucifixion博士: もう戻っても大丈夫だ。君の帰還後に、録画を更に詳しく解析するとしよう。
エージェント・G██████は支障なく出発地点に帰還した。途中、白い人影が再び現れることはなかった。探査は終了。
補遺2: 以下はSCP-CN-717-01の住居から入手した日記帳の内容です。この日記帳には正確な日付が記録されておらず、なおかつ多くの文字が曖昧で判読が困難なものとなっています。
1頁:
今日、僕は午後になってようやく目を覚ました。仕事をすっぽかし、御祓い箱にされた。とても不愉快だ。もうあのバカ共とは何も話したくない。日記とだけ話していたい。しかも、またあの夢を見てしまった。
おどろおどろしい森と、臓器のような植物。[文字が掠れて判読不可]もあった。
森には人がいて、とてもすばしっこい。彼は白い。僕は彼が誰なのか、はっきりと見てとれない。
彼は誰
2頁:
最近、やけに眠りたくなる。もうしばらく何も食べていない。冷蔵庫は空だ。でも買い物には行きたくない……というか、僕はそもそも、腹が減らないみたいだ。
やっぱり寝よう。寝て起きれば、すぐに良くなるはずさ。
よし。
[判読不可]
[ページの下部に1行、インクの出ないボールペンで文章が刻まれている]
ぼくはねたでもまだねたいぼくぼくぼくぼくまだねむらなきゃまだゆめみなきゃあのもりあのひとぼく[判読不可]
3頁:
僕はもう喋りたくない。僕は声を発したくない。
言いたいことは、書けば良い。日記の中で。
[15頁まで、3頁と同一の内容となっている]
19頁:
僕の喉には森がある脊椎は、中央に聳え立つ巨木のトーテム
気管は、死ぬことのない蒼白の高木
食道は、林立する藪
動脈と静脈は、蜿蜒と流れる川
声帯は、木の間を吹き抜ける風
20頁:
僕は、あの森を駆ける人が誰なのか、知りたい[数十頁の空白]
███頁:
あの人が誰か分かった。彼は[筆跡が乱れており、判読不可]日記帳の最終頁:
僕はもう起きられないし、話すことも出来ない。僕は、自分の喉に閉じ込められた。