4/CN-798 LEVEL 4/CN-798
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Item #: SCP-CN-798
Object Class: Keter
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特別収容プロトコル: SCP-CN-798の特性を鑑み、SCP-CN-798本体及びSCP-CN-798-1はサイト-CN-03の標準人型収容室に収容されます。12時間毎に1度、ダイスゲームの経験が豊富なDクラス職員に███を注射し、SCP-CN-798-1と共に収容ルームに入れねばなりません。当該Dクラス職員がSCP-CN-798-1から生まれるダイスゲームに対する関心を示さなかった、或いはSCP-CN-798-1に敗れた場合、即刻新たに1名のDクラス職員を派遣して上述の行為を再度行わせねばなりません。収容室内のSCP-CN-798-1が死亡した場合、各地の医院及び監獄中に潜伏しているフィールドエージェントは、即刻所在地の死刑囚もしくは重病患者を観察し、彼らの周囲にSCP-CN-798が存在しているかを確認しなければなりません。もし存在が確認されたのならば、即刻隔離し報告せねばなりません。また、SCP-CN-798-1と疑わしき個体が出現した場合は、即時報告と共に機動部隊-己午-07(“中継報道”)を派遣し対象の行動を収容するまで監視しなければなりません。
説明: SCP-CN-798は通常の状況下では1つの2x2x2cmの6面ダイスです。SCP-CN-798の表面は滑らかで、その構成成分は未知であり、また既知のいかなる手段でも損害を被りません。SCP-CN-798には0から9までのアラビア数字が刻まれた2つのノブが対称の面についており、ノブの数字が変えられた3秒後には、SCP-CN-798の面数とノブが示す数字が一致するようになります。
SCP-CN-798は独居している人物の身辺に出現します。この人物が下記の特徴を有していた場合、SCP-CN-798は更に高い確率でその身辺に出現します。
- 賭博の経験がある
- 治癒困難な重病に罹患している
- 死刑判決を受けている(執行日が近づくほど確率は上昇する)
- 自殺傾向を持つ
- 生命が重大な脅威に晒された状況下
- 現実生活に大きな不満を抱いている
SCP-CN-798は極めて高度な知力と説得力を有しており、付近にあるあらゆる情報伝達媒体(オーディオ、喇叭、コンピュータースクリーンなど)を利用して自身のノブを動かすよう誘導します。仮に周囲に使用可能な媒体が存在しない場合、SCP-CN-798は自ら音声を出し誘導行為を行います。その言語は当該対象の生活言語であり、声は中年男性のものに酷似しています。なお、その発声原理は分かっていません。
対象がSCP-CN-798に接触した場合、対象はSCP-CN-798-1となります。SCP-CN-798-1は極度の賭博願望を有しており、その身辺にその希望をかなえられる物体を保持する対象(以下SCP-CN-798-2と呼称)とサイコロによる賭博を行います。SCP-CN-798-2はSCP-CN-798-1の賭博行為に対して極めて協力的です。この過程においてSCP-CN-798-2は一貫して意識を保持しており、SCP-CN-798-1に対して相手が望むものを代償として提示します。SCP-CN-798-2がSCP-CN-798-1に対する合理的な代償を有していない場合、SCP-CN-798-1はそれと同等のものと考えられる物体を代償として用います(この合理的な判断はSCP-CN-798によるものと推測されます)。この後、SCP-CN-798-1はノブをダイスと符合する賭博ルールの数値に合わせ、SCP-CN-798の変形が終了した後ルールが説明され、説明終了後、2名はダイスによる賭博を開始します(通常、大小か偶奇を当てる賭博が行われますが、現状双方がダイスを投げる状況は確認されていません)。賭博終了後、SCP-CN-798-1及びSCP-CN-798-2は勝敗に応じてその対価を分配し、SCP-CN-798の所有権も勝利者に帰属します。更にその他の対象を探し賭博を行うと、敗者は極端な後悔と希死念慮を抱くようになり、可能な限り一切の方法を用いて自殺を試みます。自殺に失敗した対象はこの過程が始まった約20分後に突発的な心源性ショックにより死亡します。
第三者が強制的にSCP-CN-798-1とSCP-CN-798-2の賭けを中断した場合、SCP-CN-798は即座に消失し、賭博に関わった2名の対象は可能な限り一切の手段を講じて制止者を殺害します。SCP-CN-798-1が18時間以内に賭博を行わないか、SCP-CN-798がより条件に適合する対象者を発見した場合、SCP-CN-798は消失し、更にSCP-CN-798-1は即座に死に至ります。死因としては大脳の致命的な損傷が挙げられ、財団の検死データからSCP-CN-798はSCP-CN-798-1の脳内に移動したと推測されています。
特筆すべきこととして、死亡したSCP-CN-798-1の身辺には一定の確率で表紙が牛革で装幀されたA7の日記本が出現します(以下SCP-CN-798-3と呼称)。SCP-CN-798-3の由来は現状未知であり、その表紙には如何なる文字も認められません。日記の内容は一般的に第三者視点からのSCP-CN-798-1生活記録であり、その描写手法や感情の動きなどから、SCP-CN-798-3の記述者はSCP-CN-798である可能性が極めて高いと考えられます。
補遺CN-798-A: Dクラス職員とSCP-CN-798-1との実験データ記録:
実験CN-798-1
SCP-CN-798-1の代償: 肺及び心臓(SCP-CN-798-1は肺癌患者)
SCP-CN-798-2の代償: 肺(健康)
賭博方式: 六面ダイスの大小を予想し、SCP-CN-798-1は「大」に賭けた。ダイスの目は6。
勝敗: SCP-CN-798-1の勝利
結果: SCP-CN-798-1の肺癌症状は消失し、SCP-CN-798-2は実験場の壁に頭をぶつけ続け、顔面部はねじ曲がった。20分後、SCP-CN-798-2は突発的な心源性ショックにより死亡した。検死の結果、対象の肺には大量の癌細胞が発見され、DNA検査からは癌細胞はSCP-CN-798-2のものであると示された。
実験CN-798-2
SCP-CN-798-1の代償: 大脳
SCP-CN-798-2の代償: 家庭地位
賭博方式: 八面ダイスの大小を予想し、SCP-CN-798-1は「大」に賭けた。ダイスの目は2。
勝敗: SCP-CN-798-2の勝利
結果: SCP-CN-798-2は新たなSCP-CN-798-1となり、元SCP-CN-798-1はその場で死亡した。更に新たなSCP-CN-798-1の宿舎の机上に真空パックと氷で包装された元SCP-CN-798-1の脳が出現した。その上部にはタグが貼付されており、「価値の下落を防ぐため最良の状態を保持中——[姓名抹消済]」と記されていた。
実験CN-798-3
SCP-CN-798-1の代償: 大脳
SCP-CN-798-2の代償: 家庭地位
賭博方式: コイン、SCP-CN-798-1はオモテ面を宣言し、結果としてオモテ面が確認された。
勝敗: SCP-CN-798-1の勝利
結果: SCP-CN-798-2は頭部を地面に叩きつけ続け、約20分後SCP-CN-798-2は突発的な心源性ショックによって死亡した。この時エージェントがSCP-CN-798-2の妻に彼女の夫の姓名を聞き、彼女はSCP-CN-798-1の姓名を述べ、その他の家族からも同様の回答を得られた。全てのSCP-CN-798-2に関する写真、姓名、音声及び映像などの情報は均しくSCP-CN-798-1の情報と置換されていた。
実験CN-798-4
SCP-CN-798-1の代償: SCP-CN-798の対応するノブを00まで回す(研究員がSCP-CN-798-2に提示するよう要求した)
SCP-CN-798-2の代償: SCP-CN-798-2の財布
賭博方式: 四面ダイスの偶奇を予想し、SCP-CN-798-1は偶数に賭けた。ダイスの目は3。
勝敗: SCP-CN-798-2の勝利
結果: SCP-CN-798-1がノブを00まで回したとき、対象の手中から[データ削除済]が生成され、中心から半径██mの全ての物体及び生物が未知の原因で消失し、更に実験場付近のSCP-CN-███の収容違反をも招きました。結果██人が死亡、███人が重軽傷を負いました。[データ削除済]消失後、実験場の中心に1枚の紙が出現し、表面に「面白い、だろ?」と記されていました。分析の結果、この紙とSCP-CN-798-3の構成材料は一致していることが明らかになりました。
補遺CN-798-B: 財団が発見した保存状態の良いSCP-CN-798-3は現状1冊のみです。当該文書は██省██市にある2階建て郊外住宅のアクアリウム付近で発見されました。アクアリウムの中には30歳前後のアジア人男性の遺体と1匹のニシレモンザメが入っており、当該男性は出血多量で死亡したとみられます。
補遺CN-798-C: SCP-CN-798がサイト-CN-03に収容されて以降、サイト職員の一部は赤いベストと黒い蝶ネクタイを身に着けたアジア系男性と交流し、対象が職員に対して催眠を行ったと主張しました。当該現象は全て職員が一人でいるときに発生しており、監視カメラによっても記録することが出来ませんでした。現在、当該現象とSCP-CN-798の関連性が推測されることから、職員の単独行動時間を減らすという提案の批准が検討されています。
あなたはファイルを読み終えた。もともとあったはずの濃厚な好奇心は一瞬で霧散した。「私は何故こいつに対してあんなに好奇心を抱いたのだろう……」あなたはぼんやりとコンピューターの画面を見ていたが、突然、部屋に放送が鳴り響いた。
研究員███、あなたはサイトルールに違反し、SCP-CN-798ファイルを閲覧したため、今を以てあなたに対する降格処分を発令しました。特殊部隊が20秒以内にあなたのいる区域に到達しますので、両手を頭に載せ、そのまま跪いて、特殊部隊の到着をお待ちください。
あなたは唾をごくりと飲み、冷や汗がつたうのを感じた。今回の処分が降格などという簡単なものに留まるはずがないのは分かっている。あなたは慌てて辺りを見回し、オフィスから逃げ出す道を探そうとした。逃げおおせる如何なる可能性もないと気づき、あなたは自らの命運を受け入れようとしたその時、スクリーンに1行の文章が出現した。
「やっかいな事態に遭ってるんだ、違うか?」
あなたは一瞬固まり、そしてうなづいた。
「こっちはお前を逃げ出させるチャンスを持っているが、試してみるか?」
この時あなたは今直面しているのがまさにSCP-CN-798であることに気づいたが、ファイルの内容を思い起こし、躊躇せざるを得なかった。しかし靴底からブリキ床を一斉に踏み鳴らす音が徐々に響くようになり、あなたはもうこの方法しかないと気づき、「はい」を押した。