SCP-CN-900

アイテム番号: SCP-CN-900

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: 現状オブジェクトはサイト-CN-220の高危険物品ロッカーに保管されており、不透明なプラスチックの袋で包装されています。人員との身体接触の可能性を避けなければなりません。

説明: オブジェクトは未知の物質で構成された円錐形の物体であり、長さは20mm、一定の弧度を有しており、全体は緋色で滑らかさと光沢感を有しています。オブジェクトの先端を人間個体に刺すと、オブジェクトは個体を透過しますが如何なる傷害も生み出しません。この後、個体は全身に徐々に異なる程度の身体的影響を被ります。既知の影響としては個人が一生涯に直接或いは間接的に他人に与えた身体的傷害の総和が挙げられ、影響が出現する順序は直近に他人に対して与えた影響から、最初に影響を与えたときまでの順番となっています。

オブジェクトが刺し込まれた身体に如何なる傷害も出現しなかったとしても、オブジェクトが与える異常状況は必然的に苛烈な疼痛を産み、影響そのもの或いは影響のもたらす後続の現象によって、最終的には極めて高い可能性に於いて個人を死に至らしめます。現時点では、異常効果の対象者が他者に与えた負の身体的影響をオブジェクトがどのように判定および定量化しているかは不明です。

補遺:

+ 回収記録

オブジェクトは異常団体間での古物オークションの会場で回収されました。競売人がオブジェクトの競争価格を示した時のオブジェクトに関する紹介が場内に潜伏していたエージェントの注意をひき、エージェントはサイト-CN-220の代理として越境異常収容条例を行使し、当該異常物品を収容しました。

競売人の説明内容の記録は以下の通りです。

[関係性のない内容につき省略]

皆様が次の競売品に対して、蚊帳の外の世界の愚か者たちよりも多少なりともこれについての伝承を理解しておられることを信じております……

これは世間の人の背負う罪に対して同等の反動を与える古代の刑具であり、犯罪者に対して有効かつほぼ合理的な処罰を与えられることで有名です。もともとは名高い神獣の首でありましたが、先人がこの神獣の残虐な「公正」と神獣の頭蓋上にあるこの奇異な事物を恐れた結果、彼らは神獣の頭からこれを打ち落とし、保存して刑具としたのです。

客席の一部の方は既にこの競売品がなにか分かったと存じ上げます。——この競売品は、即ち角を以て「触り直はざる者」たる神獣・獬豸かいちから先人が折った角の一部であります。

本体を離れたと言いましても、これには依然として恐るべき能力が保持されています。これの作用はこれ自身を優秀な刑具や武器、奇術の材料とさせしめ、これの美しさと歴史的意義は頗る収蔵価値のあるものとさせています。

もしこれに心を動かされたのでしたら、どうぞご落札ください。では，この競売品の入札価格は——

[関係性のない内容につき省略]

+ オブジェクト保有者に関する資料

オークションの主催側から得たオブジェクトの前の保有者に関する部分的な資料を通じ、その住居に赴いた際、近隣住民によって当該住居からは既に引っ越していたことが分かりました。部屋からは[データ削除]を呈し、全身[データ削除]な女児の遺体が発見されました。オブジェクトの異常がもたらす影響に遭ったと推測されます。

団地のごみ回収所からは保有者の棄てたゴミが拾得され、その中からは数枚の未完成な幾何図形の見本と一枚の引き裂かれた便箋が発見されました。便箋をつなぎ合わせた後の内容は以下の通りです。

たとえ病を治す医者でも、秩序を維持する警察でも——新生児でさえもこれによって傷害を受ける。これの異常たる処を複製し、視覚に作用する図形触媒を作成しても、我々には如何なるメリットもない。これを売りさばく方が持っていることよりも大きな利益があるだろう。

女児の遺体と便箋の内容から推測されるに、オブジェクトの異常状況は個人の誠実性或いは善良性とその対偶の偏差から産まれるものとは限らず、たとえ個人が出生から起算して他人に対してマイナスの身体的影響を与えていないとしても、個人が出生前に母体に与えた傷害が個人に対する死亡リスクとなりえます。関連する実験の中では、オブジェクトの与える異常影響を受けた後に生存していた人間個体は未だいません。