SCP-CN-999
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SCP-CN-999の表紙

アイテム番号: SCP-CN-999

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現在、財団が所有する全てのSCP-CN-999は無力化されています。原本の内容はアーカイブ化され、サイト-CN-71の高機密書庫の中で保管されます。新たに回収されたSCP-CN-999は、サイト-CN-71の高危険度収容区で保管するようにしてください。SCP-CN-999の対する実験は現在凍結されています。新たに発見された原本の内容は適宜アーカイブ化し、整理してください。

説明: SCP-CN-999は両面刷りで10ページのA4サイズの冊子です。SCP-CN-999の材質は一般的な紙であり、異常性は見られません。表紙には翼を広げて飛び立とうとする1羽のハト(Columba)を模した生物のシルエットが印刷されており、表題には《展翅高飛:先進的な就職先を探そう》と書かれています。

SCP-CN-999の内容は、世界中の超常組織についての概要となっています。概要には各組織のロゴが掲載されており、組織の歴史や事業に関する簡潔な紹介が記されています。特筆すべきことに、各概要の最下部には、「募集職種」と記された欄があり、組織の性質に合わせた役職と、求人人数と推測される数字が記載されています。

オブジェクトのガイドである1ページ目を除き、SCP-CN-999の各ページにはそれぞれ5つの超常組織の概要が掲載されており、合計で45の組織が紹介されています。しかし、財団が把握している、いくつかの大規模な要注意団体については掲載されていません。

回収された各SCP-CN-999全てに、1枚のA4判用紙が付属しています(以後、SCP-CN-999-1と呼称)。実験において、SCP-CN-999-1は極めて優秀な防水・防火・防刃性を示しました。SCP-CN-999-1に印刷されたフォーマットには、個人資料を記載する欄と、志望する超常組織と職種を書き込む欄が存在します。

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SCP-CN-999のページサンプル。拡大可

SCP-CN-999の異常特性は、SCP-CN-999-1の署名欄に名前が書き込まれることで発現します。この時、SCP-CN-999-1に書かれた筆跡は自動で消失し、裏面の特定の位置に、英語で書かれた時刻と住所が出現します。出現した住所は通常、SCP-CN-999-1の最も近くにある6~8㎡の部屋を示しています。また、時間は通常、署名した時点から30~120分後を示しています。

注意すべき点として、SCP-CN-999-1の異常性は、SCP-CN-999-1に書き込まれた個人資料が正確である場合にしか発現しません。また、SCP-CN-999-1に書き込んだ時点で犯罪者であった場合や、既に就業している場合は、筆跡の消失後、裏面に繁体中国語で「エラー:個人資料不備」または「エラー:定職アリ」とだけ記述され、それ以上の異常性は発現しなくなります。現れた文章は、条件を満たした人物がSCP-CN-999-1に再び署名するまで残り続けます。

正常に署名した人物が指定時間内に目的地の部屋に到着した場合、室内にいる署名者以外の人物は、未知の方法で室外に移動させられ、面接中はいかなる手段でも、室内に干渉することができなくなります。同時に、室内には超常組織の標準的服装を着た、1人の人型実体が出現し、署名者と面談を始めます。実体の外見的特徴と対応は、超常組織内の幹部職員と一致します。室内の監視機器の記録によると、両者の面談は、一般企業の人事採用における面接の形式と類似しています。監視記録を閲覧するには、補遺SCP-CN-999-Aを参照してください。

面接の合否によって、以降の状況は2つのパターンに分かれます:

  • 面接が合格となった場合、署名者は面接官と握手してから3秒後に、失明に至るほどの激しい光に包まれます。発光が収まった時には、署名者と面接官はその場から消失しています。実験後、署名者が希望していた職場で働いているケースが3件確認されていますが、多くの場合、署名者はそのまま行方不明となります。
  • 面接が不合格となった場合、面接官は憤りを示しながら、未知の方法によって、署名者を強制的に室外へ移動させ、面接官は消失します。その後、署名者は二度とSCP-CN-999-1の効果を発現させることができなくなります。

補遺SCP-CN-A:SCP-CN-999-1により発生した面接の映像記録
当補遺は、財団によるSCP-CN-999-1の第4回実験の記録です。この実験において初めて、SCP-CN-999-1による面接が発生しました1

機密漏洩を避けるため、被験者は財団フロント企業"標準介護企画"(Standard Caring Project)の香港支店にて、SCP-CN-999-1に署名しました。SCP-CN-999-1の裏面に出現した情報は、15分後に支店内の空き会議室にて面接が行われるというものでした。以下の記録は、被験者が該当する会議室に入った際の様子です。

被験者: D-1851、本名:劉宜隆。スパイ事件に巻き込まれ、国家反逆罪により死刑判決を受ける。その後、財団の標準的な職員募集プロトコルに従い、Dクラス職員となる。実験にあたって、財団は政治コネクションを通して政府に罪を取り消させ、同時に月末の終了措置を免除。彼を自由の身とした。

志望組織: 連邦捜査局異常事件課(UIU)
志望職種: 初級捜査官

[記録開始]

被験者が入室する。画面に1秒間のフリーズが発生。
画面復帰後、室内で撮影機器を操作していた人員は消失。黒いスーツを着た、UIUのカール・ベルリック上級捜査官と一致する人型実体(以後、面接官と表記)が、室内中央の長机のそばに座っている。

面接官: こんにちは、ミスター・劉。私は行動部の上級捜査官で、人事部の補佐を兼任しています。カールと呼んでください。どうぞ座って。

被験者: ハロ…こんにちは、カールさん。

被験者は面接官の向かいの椅子に座った。

面接官: 戸惑わなくても良いですよ、劉さん。一介の捜査官として、主要な言語に精通するのは基本ですから。まずは、貴方に一つ簡単な自己紹介をして頂きましょう。

被験者: 私は劉宜隆、大学で民法を学び、学士として卒業しました。卒業後は、経歴欄に書いてあると思いますが、太平ビスケットファクトリー2の法律顧問となり、会社の法律方面での問題にあたっていました。その後…その後…いくつかの小さな偶然が重なって、数ヶ月の間…檻の中にいました。その後、刑務所の職員が、私にこの仕事を斡旋してくれました。…私は法学系の卒業生ですが、軍学校に何年かいたことがあり、今でもトレーニングを続けています。射撃技術については、捜査官として活動するに十分な水準を持っていると自負しています。また、私は中国の民法や刑法に熟知しているので、貴所がこうした法律知識を必要とする際は、お役に立てると思います。私のプロフィールは大体このような感じです。

面接官: ふむ…良いでしょう。では私から貴方に、幾つかの質問があります。劉さんには前科があったようですね?国家反逆罪ですが、後に取り消されている…これは興味深い。訳を教えて頂けますか?

被験者: あっ…はい。私が以前、法律顧問をしていた時、主に知財関係の問題を処理していました。ですが、あの馬鹿が、新商品…記憶喪失ビスケットの特許問題を、私に処理してほしいと言って…材料配合と生産工程に関する情報を、一切合切よこしてきたんです。更に悪いことに、知らないうちに秘書が仮面を被った人形にすり替わっていて、逃げられていました。それで、私だけが逮捕され、国家反逆の罪を着せられたんです。……小さな企業の社員が、国家反逆罪になるなんて、誰が思うでしょうか?…最近になって、私はようやく、身の潔白が証明され、そして、この仕事を紹介されたんです。ですが、それがアメリカの公務員だとは…私には、彼らの意図がよく分かりません。

面接官: どうやら、随分と驚かれたようですね。ご存知の通り、我々は、アメリキン合衆国United State of A Mary Kingの公的組織です。このような特殊な状況でなければ、貴方は面接の機会さえ得られなかったでしょう。我々の組織に加わるということは、アメリキン合衆国のために働くことを意味します。必要とあらば、貴方は祖国の敵とならなければなりません。これでも、貴方は捜査官になることを望みますか?

被験者: アメリキン?…はい。私にはもう、退路が残っていません。私がもしこの面接に行かなかったら、また牢屋に連れ戻されて、鉛玉を撃ち込まれていたかもしれません。この有様では、祖国も糞もありゃしませんよ。

面接官: 我々は他のいかなる組織とも異なります。我々が相対する脅威とは、超常現象や怪異とも言えるものです。貴方が最期にいる場所は、恐ろしい大トカゲの胃袋の中になるかもしれないのです。それでも、問題ありませんか?

被験者: ええ。怪異といっても、私がビスケット工場で遭遇した怪異よりは、ずっとマシでしょう。

面接官: では、決まりですね。異常事件課へようこそ。貴方は採用されました。

被験者: えっ…なんだって?これだけで良いんですか?帰って通知を待ったりはしないのですか?

面接官: 良いんですよ。給料と勤務日時は後ほど決めましょう。[被験者に向かい、手を伸ばす]君はもう、我々家族の一員です。歓迎しますよ、ミスター・劉。

面接者: カールさん、ありがとうございます。受かるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。

面接者は手を伸ばし、面接官と握手する。2人は30万ルクス以上の強烈な光を発し始める。
3秒後、光と共に、2人は室内から消失した。

[記録終了]

付記: 実験後、財団がUIUに問い合わせた所、新入職員の中に劉宜隆という名を持つ初級捜査官は確認できませんでした。また、UIUの人事ファイルにも、劉宜隆に関する資料は存在しませんでした。カール・ベルリック上級捜査官は、劉宜隆を含む、いかなる人物との面接も行ったことがないと主張しています。

実験中、面接官はUIUについて、「アメリキン合衆国United State of A Mary King」の公的機関であると発言しています。発音的な間違いという可能性を排除すると、実験中に出現したカール・ベルリック氏は、高い確率で並行時空より来たものだと推測されます。

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