SCP-ES-296
rating: +10+x

アイテム番号: SCP-ES-296

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-ES-296は財団によって買収され、周囲に不要な侵入を防ぐためのフェンスが設置されています。

また、近隣にある数ヶ所の共同前哨基地がSCP-ES-296の監視、研究、収容を担います。これらの前哨基地は暫定サイト-89の一部と見做されます。この体制は、SCP-ES-296の本質と厳密な特性に関する十分な知識が得られるまで継続されます。

SCP-ES-296関連の如何なる記録も — 付随的なものか、歴史的なものかを問わず — ESTIBEN.aicによって発見・削除されます。削除対象には、あらゆる種類のフォーラムやウェブサイトにおける、SCP-ES-296への言及と捉え得る投稿が含まれます。削除後、全ての関係者の身元を特定し、尋問し、記憶処理を施すものとします。

Teatro_Cresswell.jpg

SCP-ES-296の内装。写真の出典は不明。

説明: SCP-ES-296はアメリカ合衆国アーカンソー州にあるクレスウェル劇場の指定名称です。この劇場は1940年から1976年まで娯楽施設として運営され、数多くの演劇が上演されたことから、長年にわたってアーカンソー州で最も重要な興行場の1つと見做されていました。しかしながら、SCP-ES-296の構造は、ロン・クレスウェルに買収された時点で約20年が経過しており、建設当時頻繁に用いられていたアール・デコ1風の建築様式を取り入れた外観にもそれが反映されています。

SCP-ES-296に入場した人物は、未知の性質を有する多数の幻視・幻聴だと現在想定されている事象を経験します。このため、SCP-ES-296の内部で意思疎通を行う際には、電子機器が唯一の手段となります2。また、SCP-ES-296は余剰次元性を帯びていると考えられており、既知の機能する出口は正面ドアのみです。

最初のログを除く全ての証言において、幾度か講堂区画に短い旋律が流れ、また楽屋では聞き取れない会話が交わされていたと報告されています3

補遺 ES-296/A: 発見

財団は1977年初頭、その内部で発生するという異常事象の噂を切っ掛けにSCP-ES-296を発見しました。しかしながら、SCP-ES-296から2km離れた街、リソン出身の16歳少年 ハリソン・ロスが地元警察に複数回通報した2002年半ばまで、実際の収容は行われませんでした。通報の抜粋を以下に掲載します。


通報書き起こし


対象者:

  • ハリソン・ロス

[記録開始]


911: アーカンソー州911です、ご用件をお伺いします。

ハリソン・ロス: 友達が連れていかれた。パトカーか何かよこしてくれ、お願いだ。

911: 大丈夫です、落ち着いてください、すぐにパトカーを派遣します。あなたのお名前は?

ハリソン・ロス: ロス。ハリソン・ロス。 (合間) 16歳、一緒にいた友達を連れていかれた、よく分かんねぇ。

(沈黙)

ハリソン・ロス: (明らかに動揺している) 分かんねぇ、分かんねぇよ、あそこで何が起きたのか見当も付かねぇんだよ、あいつらが俺の友達を連れてった、パトカーを送ってくれよ、頼むよ。

911: ロスさん、どうか落ち着いて、できるだけ詳しく状況を説明してください。

ハリソン・ロス: お- 俺、友達と一緒だったんだ、ジェイコブと、ウ- ウェイドと (呼吸が速くなり始める。少しの間、電話から離れて呟くのが聞こえる) 嗚呼、ウェイド。嗚呼。

911: 大丈夫です、続けてください。

ハリソン・ロス: 分かった、分かったよ。畜生、ジョーイの奴も俺たちと一緒だった。リソンから2kmの所にある廃墟に行った、ジェイコブが免許持ってたから- (微かにすすり泣く声) あいつの車で向かって、そ- それで、俺たちはただあそこを探検したかっただけで。みんな興味津々で、ああいう場所に行くのは初めてじゃなかったから、だから-

(合間。ハリソン・ロスが泣き始める。)

ハリソン・ロス: 前にた- 建物のことを祖母ちゃんに訊いたら、なんであれがあるのか誰も覚えてないって言われたんだ。だから、だからますますそこに魅力を感じた。

ハリソン・ロス: そのうち足音が聞こえてきた、何処からかは分かんねぇけど、大勢の足音だった。正体を突き止めてやろうと思って、し- 慎重に、すごく慎重に後をつけたけど、突然聞こえなくなった。自分が独りきりだって気付いた時-

(すすり泣き。)

ハリソン・ロス: みんなが悲鳴を上げて、走って- (合間) 引きずられてく音が聞こえた。そ- それから俺の方に幾つか足音が向かってきたから、ドアを開けてその中に隠れた。トイレの個室に籠って、そ- 外に出なかった。男がなんかもごもご言いながらドアをノックするのが聞こえた。

ハリソン・ロス: 結局、最後にはドアを開けた。な- 何時間か経ってたと思う。それから何も無いのを確認して、走って逃げたんだ。振り返らなかった、俺はただ- 俺…

(ハリソン・ロスは叫び声を上げ、泣き続ける。)

ハリソン・ロス: 友達を置いてきちまった。ジェイコブの母ちゃんに合わせる顔がねぇ。どうしたら-

(沈黙)

911: 分かりました。今、何処にいるかを教えていただけますか?

ハリソン・ロス: え- えっと、分かんねぇ、野原の真ん中にいる。

911: 先ほど仰った建物の近くですか?

ハリソン・ロス: ま- まぁそんな感じ。

911: パトカーが到着したらすぐ分かるように、そこを回り込んで道路脇に向かうことはできそうですか?

(ハリソン・ロスの呼吸が著しく速くなる。)

911: もしもし?

ハリソン・ロス: (過呼吸) やってみる、でもお願いだ、電話を切らないでくれ、だ- 誰かと…

ハリソン・ロス: 誰かと話し続けたいんだ、頼むよ。

911: 大丈夫です、ハリソン。私がここにいます。

ハリソン・ロス: ありがとう、ほ- 本当にありがとう。

911: 呼吸を整えてください、大丈夫ですから。先ほど話してくれた出来事の後は、何か起こりましたか?

(ハリソン・ロスは暫し沈黙した後、再び過呼吸を起こし始める。)

911: ハリソン?

ハリソン・ロス: ああ、他にもあった。

911: もし宜しければ、教えていただけますか?

ハリソン・ロス: 絶対に、これはもう間違いなく絶対に、走っている最中に誰かが“ハロー”って言うのが聞こえたんだ。


[記録終了]



ハリソン・ロス4捜索のために到着した警察官は、SCP-ES-296の異常性に曝露しました。領域内の捜査では何も発見されませんでしたが、建造物外部の事後調査では、10代の若者の一団がそこを訪れていたことが確認されました。この捜査とハリソン・ロスの関係者、並びにハリソン・ロスの友人たちは全員記憶処理されました。
俺たちはみんなここにいるよ。一人残らず。
補遺 ES-296/B: 歴史的記録

SCP-ES-296は1940年、当時34歳のアメリカ人、ロン・クレスウェルによって設立されました。ロン・クレスウェルは10代の頃、カーク・ロンウッド高校に1923年度の優秀な生徒として通っていました。在学中のロン・クレスウェルは音楽、演劇、並びにその他の文芸活動に精通していました。

cress1.jpg

ロン・クレスウェル、1930年にカーク・ロンウッド高校で撮影。

同時期に、ロン・クレスウェルは音楽・文学に焦点を当てた教養ある生徒のグループを結成しました。このグループは最終的に、カーク・ロンウッド高校のオーケストラの一部を統制し、高校内での芸術活動を推進する閉鎖的なクラブへと変質しました。生徒グループが結成された正確な日時は不明ですが、ロン・クレスウェル自身の証言から、SCP-ES-296の設立というアイデアの一部がこのグループから生じたことが判明しています。

これを切っ掛けにして、卒業から10年後、彼はクレスウェル劇場を設立しました。この劇場の狙いは、アーカンソー州及び近隣の幾つかの州に位置する他の高校に、優れた演劇を発表する機会を与え、公演から得られる多額の資金を高校自体に還元することにありました。しかしながら、非の打ち所がない公演を保証し、劇場の名声を高めるために、上演される演劇は全てクレスウェル本人と演劇界の複数の専門家から徹底的に分析されました。

ロン・クレスウェルが現れるまで建造物は廃墟であり、買収以前の記録は全て喪失または破棄されています。

クレスウェル劇場は初期の数年間こそ若干の財政難を抱えていましたが、やがて適度な知名度を獲得し、同時代 (特に60年代) の最も著名な興行場の1つとなり、現在は既に記録が残っていない数多くの演劇を上演しました。しかし、その一方では、ロン・クレスウェル自身が提案したプロジェクトが多数中止された証拠が残っています。

これにも拘らず、クレスウェル劇場は1976年に閉鎖されました。その理由は現在まで不明のままです。1976年に関連する唯一の記録は、1冊の広報パンフレットからのみ得られています。

クレスウェルの知人から得られた幾つかの証言によると、劇場閉鎖前の最後の数年間、彼は友人たちと疎遠になっていました。

認識災害警告!

以下のファイルには、変質した画像や文字など、閲覧者に対して能動的に危害を及ぼす要素が含まれている可能性があります。認知抵抗値 (CRV) が約12.5である人物のみの閲覧が強く推奨されます。それでもなお文書の閲覧を希望する場合は、以下のオプションをクリックして自己責任でアクセスしてください。

補遺 ES-296/C: 追加情報

報告・分析
日付: 2006/01/03 部門: ミーム部門 提出者: アンドレス・モンドラゴン博士
性質: 情報災害、認識災害(?)、ミーム
優先度:

2006年1月2日、SCP-ES-296とその異常性に関連して現地で発生する事象の規模が顕著に激化した5。囁き声は入口から5mの地点から聞こえ始めた。更に、SCP-ES-296の唯一既知の入口である正面ドアが封鎖され、あらゆる種類の突破試行が実行不可能になった。1:00 AM、現時点で起源不明の旋律がSCP-ES-296内部で記録された。収容担当職員はこの影響を受けたが、その後SCP-ES-296のドアは解放され、調査・収容部隊が突入した。

4:56 AM、全ての職員がSCP-ES-296とその周辺区域を去り、後ほど改めて普段の配置へと戻った。しかしながら、一定数の職員はより深刻な影響を受けたことが確認されている。当該事案中に影響を受けた全ての人物は、この期間中に発生した出来事を全く記憶していないと証言した。 事案の2日後、トリスタン・プール上席研究員は当時の出来事の大半を思い出したと主張した。実施されたインタビューの書き起こしは以下のとおりである。


ビデオカメラ録画の書き起こし

出席者:

  • アンドレス・モンドラゴン博士
  • トリスタン・プール研究員

[記録開始]

(アンドレス・モンドラゴンが入室しながらトリスタン・プールに手を振り、プールは同じように挨拶する。その後、モンドラゴン博士はテーブルを挟んでプールの反対側に着席する。)

アンドレス・モンドラゴン博士: 大丈夫か、プール?

トリスタン・プール研究員: ミーム系アノマリーの収容違反に巻き込まれたにしては、まぁ、割と元気ですよ。

アンドレス・モンドラゴン博士: そりゃ良かった。君がSCP-ES-296の研究主任としてこの件に関与したと聞いた時は、トランス状態にでも陥ったかと思った。

トリスタン・プール研究員: 当たらずといえども遠からずですね、アンドレス。

(合間)

アンドレス・モンドラゴン博士: では、具体的に何が起こったのか、何がそういう特異反応を引き起こしたと考えているか、訊かせてもらおう。

トリスタン・プール研究員: そうですね、私が高校を卒業する間際、“ねずみとり”の観劇に行った時と似たような事が起きた、と言えるでしょう。あまり余計な話はしたくないんですが、私はそう感じました。劇場はそんなに好きじゃありませんが、当時はパートナーが一緒だったのでかなり浮ついていたんですよ。

トリスタン・プール研究員: 我々全員、入場後はメインホールに着席して、私は最後列から夢中で見ていました。

(沈黙)

アンドレス・モンドラゴン博士: それで?

トリスタン・プール研究員: 月と森。

アンドレス・モンドラゴン博士: もっと詳しく頼む、トリスタン。

トリスタン・プール研究員: 口から情報災害を吐かずに言えるのはこれだけです。

アンドレス・モンドラゴン博士: 成程な、とにかく言いたまえ-

トリスタン・プール研究員: [自動検閲機能が作動しました - 高強度認識災害ミーム - データ削除済]

アンドレス・モンドラゴン博士: (ゆっくりと) ここから出たら記憶処理を受けなければな。君は昔の日々が、今よりも晴れやかに見えた朝が頭から離れないんだろう?

トリスタン・プール研究員: もし良ければ、どういう意味かお聞きしても?

アンドレス・モンドラゴン博士: つまりだな、実際のところ、誰しも自分が無敵のように思えて、世界を食い物にできていた日々を懐かしむものなんだ。だが、いったん外に出てしまえば、世の中に食われるのが現実だ。

トリスタン・プール研究員: 状況をそこまで大袈裟に捉える必要はないと思いますよ、アンドレス、一番良いのは単純に-

アンドレス・モンドラゴン博士: ただ仕事に打ち込み、必要以上の事を考えないこと、そうだ、私もそう思う。'76年に実際には何が起きたかなんて知りたくもない。

トリスタン・プール研究員: ええ、私もそう言おうとしていました。

(沈黙)

アンドレス・モンドラゴン博士: で、私の勘違いでなければ、そいつは広めようとしていた。

トリスタン・プール研究員: ええ、奇妙ですが、実に論理的です。劇場は何を求めるのか? ああいう施設は演劇を披露するだけでなく、それを見に来る観客がいるのを認知してもらわなければならないんですよ。

アンドレス・モンドラゴン博士: 分かるとも、ああ、それなりに筋は通る。しかし、君は最後で言葉を切ったな。そいつは何処に行ったんだ?

トリスタン・プール研究員: ただ一つ残された場所です、アンドレス、森の中へ

[記録終了]

トリスタン・プール研究員へのインタビューの後、SCP-ES-296の調査が行われました。この調査では、SCP-ES-296の異常性や構造に顕著な変化は見られませんでした。しかしながら、ロン・クレスウェルの署名が入った封筒が楽屋から発見されました。文書自体は一部損傷していたものの、内容の大半は再構成が可能でした。以下はその書き起こしです。


補遺 ES-296/D: 調査報告

本稿執筆現在、SCP-ES-296の活動はソナタ・インシデント以前と同じ間隔に保たれています。SCP-ES-296の収容に向けて追加の収容プロトコルが導入されると共に、ミーム的性質の認識災害因子が流出するのを防ぐため、担当職員は全員記憶処理されました。

現時点では、ソナタ・インシデントが発生した原因は不明です。これに関する調査は未だ進行中です。




特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。