SCP-ES-357

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SCP-ES-357。

アイテム番号: SCP-ES-357

オブジェクトクラス: Uncontained

特別収容プロトコル: SCP-ES-357の性質上、現在の収容試行は、キューバ国家対異省 (MAC) への潜入スパイ候補として、リトルハバナ在住のキューバ出身者を募ることを重視しています。

説明: SCP-ES-357はソンブレロ帽子と水着を着用した中年男性のモノクロ写真です。被写体は両手に1本ずつ酒瓶を持ち、キューバ葉巻を吸っています。SCP-ES-357を構成する写真は本来、コンスタンティノ・アリアスが1953年にキューバのハバナで撮影したものであり、"El Americano Feo" (“醜いアメリカ人”) と題されています。

SCP-ES-357の異常性はアメリカ合衆国民が観察する際に発現します。SCP-ES-357に曝露すると、その影響に脆弱な人物は極度の不安、顔面蒼白、発汗、被害妄想を示し、更にはキューバ領土、キューバ国民、或いはキューバに滞在することと直接関連する観念への不快感・不安感を表明します。SCP-ES-357の効果は永続的ではなく、通常は曝露後1~2時間以内に収まります。しかしながら、全ての被影響者はMAC監視任務に再度任命されることへの不快感を示し続けます。

SCP-ES-357は、キューバにおけるMACの創設とフィデル・カストロの台頭の後、1960年代半ばに初めて発見されました。当時新興の組織だったMACの内情を探る複数回の試みは、財団のアメリカ出身スパイがSCP-ES-357の運用を通して全員即座に排除されたため、成功しませんでした。当該アノマリーに関する初期報告は全て清算・調達部門に転送されましたが、SCP-ES-357実例は1枚も発見されませんでした。財団内にMACのスパイが存在することは判明しているものの、現時点では、財団がSCP-ES-357の知識を有することをMACが把握しているかは不明です。

補遺357.1: 1995/01/05、財団はリトルハバナでキューバ国籍を有するエージェントの勧誘に成功しました。対象者 — 42歳のMACエージェント、ハビエル・パラシオス — は、彼自身及び家族へのアメリカ国籍の付与、特赦、昇給という条件の下で、二重スパイとして財団に離反するという取引を持ちかけました。財団がこれに合意した後、パラシオスはSCP-ES-357の情報を回収し、その対スパイ特性の増強を補佐する任務に配属されました。

補遺357.2: 以下は、1995/09/25のパラシオスからの通信の書き起こしです。

注記: エージェント パラシオスは過去数ヶ月間を費やして、SCP-ES-357製作班の一員と思われる人物、グスタボ・サントスとの交友関係を深めている。以下は、グスタボ・サントスと交流している最中のエージェント パラシオスから送信された通信記録である。

<記録開始>

[簡潔にまとめるため、無関係な会話を省略。]

パラシオス: 君は面白い奴だな、グスタボ。

サントス: 止してくれよ。俺は単なる研究員だ、この建物にいる大勢の根暗どもと大して変わらねぇ。

パラシオス: 何とでも言いたまえ。実はね、君に訊いてみたいことがあったんだ。

サントス: いいとも。何でも訊いてくれ、友よ。

パラシオス: 例のアメリカ人の写真のことだ。ヤンキーを撃退する時に使うやつ。

サントス: ああ、アレか?

パラシオス: うん。ありゃどういう仕組みなんだい?

サントス: 口外厳禁なのは分かってるだろ、ハビ。誰にも言っちゃいけねぇんだ。

パラシオス: ちょっとした好奇心、それだけだ。

サントス: 本当にマズいんだって…

パラシオス: おいおい。お互いMACにずっと勤めてきたじゃないか。科学者同士だぞ。

サントス: お前はエージェントかと思ってたが。

パラシオス: 大学で化学を専攻した。

サントス: 成程ね。ま、そういうことなら教えても構わねぇか。

パラシオス: 信用してくれてありがとう、グスタボ。この件は2人だけの秘密にすると約束する。

サントス: 良し、だがその前に教えてくれ、ハビ、どうしてまたケース001221に興味を持った?

パラシオス: 単なる写真に帝国主義者どもを縮み上がらせるような力がある、というのは実に面白いと思ってね。それに写真の構図にも惚れ込んだよ。アリアスはあの醜いアメリカ人に、お前なんか大嫌いだと言ってやったと思うか?

サントス: 多分言わなかったろう。それにしちゃあの男は随分幸せそうな面をしてる。酔ってるだけかもな。

[2人とも笑う。]

[書類をめくる音が聞こえる。]

サントス: おぉ、これこれ。

パラシオス: ケース001221?

サントス: そうだ。

パラシオス: この目で見るのは久しぶりだよ。

サントス: ほう、そうかい?

パラシオス: あ、あぁ。

サントス: どうした、ハビエル? ちょっと顔色が悪いぞ。

パラシオス: 大丈夫。きっと昼食が — があっ!

[パラシオスが嘔吐する音が聞こえる。]

サントス: おお、神よ。

パラシオス: すまない、グスタボ。す… すまない — あぁ、どういうことだ?

サントス: どうやら他の奴らは正しかったらしいな。お前の態度は妙だったよ、幸せそうで、落ち着きがあって… 超然としてた。お前がスパイだってのは単なる仮説に過ぎなかった。今日そいつが証明されたわけだが、今起きたことのおかげで、俺は1つの結論と他幾つかの理論を導き出せた。

パラシオス: (叫び声) これはどういうことなんだ?!

[パラシオスが支離滅裂に叫ぶ声が聞こえる。]

サントス: 理論はこうだ。アメリカ国籍。あっちに住む代わりにこっから情報を流す。そう頼み込んだんだろ? きっと奴らはもうお前にアメリカ国籍を与えたんだな。認めるよ、俺だってまさかこんな結果になるとは考えもしなかった。お前の言う通り、こいつの威力は素晴らしい。結論を言おうか。お前は裏切り者だ。いや、俺は何を言ってんだ、お前は俺たちをヤンキーに売り飛ばして、その代わりに自分はヤンキーになろうとしたんだから、裏切り者よりタチが悪い。お前はクソ忌々しい蛆虫グサーノだ。1

[パラシオスの叫び声は次第にかすかになり、やがて聞こえなくなる。椅子を後ろに引く音に続いて、足音が近づいてくる。]

サントス: そして、お前は蛆虫でしかねぇんだから、それ以上相応しい姿もあるめぇよ。

[何かが床の上でのたうつ音に続いて、大きく足を踏み鳴らす音が聞こえ、音声通信が途絶する。]

<記録終了>

注記: これはパラシオスからの最後の通信である。彼との連絡を取る、または居場所を特定する試みは今日まで成功していない。パラシオスは作戦行動中行方不明と見做されている。

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