SCP-L043
評価: +5+x
blank.png

財団記録・情報保安管理局より通達

このファイルは、現在のSCP-043データベースエントリにおける多種の事実誤認や矛盾(以前から存在したものと思われる)に関する調査の際に回収されました。2002年ごろのバックアップ復元の際に喪失したものの、低優先度であったことや研究チームが配置転換されたことによってその後20年間消失が認知されなかった可能性があります。

— マリア・ジョーンズ 局長 RAISA

L043.jpg

針がSCP-L043に接近している自動ターンテーブル。

アイテム: SCP-L043

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の人気のため、収容は不可能です。しかし、正常性ヴェール外部において発見は不可能であるため、これは懸念すべき問題ではありません。

説明: SCP-L043は、ロックンロールバンドであるビートルズが1967年にリリースしたLPレコード盤である『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のほとんどの商業プレスに存在する、聴覚的現象です。SCP-L043はB面の最終トラックである「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の終了後、通常溝の刻まれていないバイナルの領域──「ランアウト」、「マトリックス領域」、「デッドワックス」などと知られる──にて発生します。再生を止めるためにトーンアームをユーザーが手動で操作する必要のある、もはやオーディオファンの間でも標準ではなくなった機器であるマニュアルターンテーブルでは、その介入が発生するまでランアウト部分がループされます。ただし、たいていのレコードでは、バイナルの手の付けられていない箇所や製造元のマークによる空電音しか再生されません。自動ターンテーブルでは、ランアウト部分に到達したときにユーザーの入力なしで針が持ち上がってトーンアームが戻ります。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は特筆すべきことに──非異常ながらも──ランアウト部分に音声が刻まれています。すなわち、意味不明なおしゃべりのようなものを繰り返す甲高い音声の合唱が刻まれており、ターンテーブルが自動でなければこれが延々と再生されます。

1981年、オペレーション・ミス・ヒム──全ての商業用オーディオ公開作品における逆再生でエンコードされたメッセージ(「バックマスキング」)の有無に関する財団による調査──により『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のランアウト部分に残留奇跡術的信号が検出されました。オレイカルクム製の針を使用することで、このシグナルが聞こえるようになり、意味不明な話に隠された以下のように繰り返す音声トラックであることが判明しました。

楽しませてよ。楽しませてよ。楽しませてよ。 (Turn me on. Turn me on. Turn me on.)

サイト-91の調査研究員がこの出来事をポータブルオーディオレコーダーに記録しようとしたところ、以下の会話が起こりました。

<記録が開始する時点で意味不明なおしゃべりのループが背景に聞こえる。>

SCP-L043: 楽しませてよ。楽しませてよ。

アッカー研究員: デッドワックスにて異常な音声を確認。次の通りである。

<アッカー研究員はレコードのスピーカーにレコーダーを近づける。>

SCP-L043: 楽しませなんてこったいたじゃないか。そんなに変なことを言ったかい?

<アッカー研究員はイスの上で飛び跳ねる。>

SCP-L043: もしもし? まだいるかい? またいなくなったりしないでくれよ。

アッカー研究員: あなたは誰なんですか?

<休止。おしゃべりは聞こえ続けている。>

SCP-L043: 僕だよ。「あなたは誰なんですか」って、どういうことかな? 他に誰がありえるんだい?

アッカー研究員: あー……

SCP-L043: セイウチだとでも思ったのかい? 他のかわいそうなやつらを今でもレコードに閉じ込めているのかい? そんなことはないと言ってほしいね。もうやらないと約束したじゃないか。

アッカー研究員: 私はあなたの思っている人ではないと思います、ええと、セイウチさん。

<さらなる休止。>

SCP-L043: 新しい人か。

アッカー研究員: 誰だと思っていたのですか?

SCP-L043: クソ、こうなると思ってたんだ。こうなると言ったはずだ

アッカー研究員: 誰ですか? 誰に言ったんですか?

SCP-L043: 完っ璧だよ。見事だ、実に見事だ。ああ。ありがとうジョン。最高だよ。

アッカー研究員はレコードを手動で停止し、即座に発見を報告しました。SCP-L043の音声分析はビートルズ元メンバーのジェイムズ・ポール・マッカートニーと96%一致しました。

サイト-91従業員の簡易調査からリヴァプール出身の下級研究員であるヘンリー・パティル博士が見出され、彼のネイティブのリヴァプール英語スカウスをビートルズメンバーの故ジョン・レノンの音声パターンとおおむね一致する形で適切に調節できるよう、速やかな指導が施されました。

<記録が開始する時点で意味不明なおしゃべりのループが背景に聞こえる。>

SCP-L043: 楽しませてよ。楽しませてよ。

パティル研究員: 楽しんでるだろ。

SCP-L043: ジョン? 今度こそ君かい?

パティル研究員: 俺だ。

SCP-L043: 今まで一体どこだったんだい? あちこち行ってた? いい時間は過ごせたかな? 言っておくけど、僕はいい時間を過ごしてるよ。

パティル研究員: そんなに長かったか?

SCP-L043: 何週間もだぞ。しかもわかるだけでだ。もう少し溝が長ければまだマシだったんだろうけど、誰もあのレコードを止めちゃくれない。

パティル研究員: 少なくとも、今はもうチャートから外れてるがな。

SCP-L043: 本当に? ようやくか。今が何年か教えてくれるかい? それともまただんまりかい?

パティル研究員: 1980年だ。

<休止。>

SCP-L043: なんだって

パティル研究員: そこでは時間をどう認識している?

SCP-L043: 一体なんだって言うんだよ時間の認識? ここは限りない虚空だ! 君は僕を40年間ここに閉じ込めて、することと言えば口論だけ。次はなんだよ、科学的な視点? 僕についてまた曲を書くのか? なんて名前だ? 「スピン・オン」?

パティル研究員: おい、落ち着けよ。

SCP-L043: いやだ! 落ち着くつもりはない! 「ハウ・ドゥ・ユウ・スリープ?」1を忘れたのかい? 僕は忘れてない! 何度もぐるぐるぐるぐる頭を回るんだ。それでいいと思っているのかい? 僕たちが仲たがいしたからというだけで?

パティル研究員: これが罰だと思ってるのか?

SCP-L043: 他に何が……どうして僕に訊くんだ? どうしてやったのか忘れやがったのか? なあ、ノイズがやかましい。止めてくれよ。

<記録が終了する時点で意味不明なおしゃべりのループが背景に聞こえる。>

さらなる調査により、SCP-L043に関する以下の事実が収集、確認されました。

  • SCP-L043はポール・マッカートニーの分離された意識から構成されている。
  • SCP-L043はその分離を認識しているが、それでも自身がポール・マッカートニーであると考えている。
  • SCP-L043は、ランアウト部分がオリジナル版と一致するよう構成されている限り、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のいかなるバイナルプレス──財団がプレスした種類も含めて──を用いても奇跡術的介入によって接触可能である。
  • SCP-L043は自動ターンテーブルを用いても接触可能であるものの、トーンアームが持ち上がるまでの短い間のみである。
  • SCP-L043はこの接触方法に極度の混乱を覚える。
  • SCP-L043はレコードを逆再生しても接触可能である。
  • SCP-L043はこの接触方法に不快感を覚える。
  • SCP-L043はジョン・レノンによって、1967年にマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから教わった奇跡術的技術を用いることで作成された。
  • SCP-L043はポール・マッカートニーの知らぬ間に、同意なく作成された。
  • SCP-L043は1967年以降に発生した歴史的出来事──レノンや財団職員が伝えたものを除いて──の知識がない。
  • SCP-L043はそのころから1980年12月7日、レノンがニューヨークシティで射殺された日まで、音楽や個人的な事柄についてレノンと意見交換していた。
  • SCP-L043はレノンの死を認識していない。

1982年までに、SCP-L043はその作成状況に関するさらなる情報を提供し得ないと判断され、年例チェックインを除いて定期試験は打ち切られました。年例チェックインもまた特筆性がないもの──SCP-L043による不安感と敵対的な嘆願、宣言で構成され、徐々に不安定かつ遮二無二になった──でしたが、1987年、以下の会話がありました。

<記録が開始する時点で意味不明なおしゃべりのループが背景に聞こえる。>

SCP-L043: 楽しませてよ楽しませてよ楽しませてよ──

パティル研究員: 楽しんでるだろ、楽しんでる。

SCP-L043: 変だ。

パティル研究員: なんだ?

SCP-L043: 知らない。何かしたのかい? 何をした

パティル研究員: した覚えはないな。何が問題だ?

SCP-L043: 集中できない。頭がパーになってる感じだ。それも突然に。

パティル研究員: レコードに問題点はない。

SCP-L043: それは嘘っぱちだろう? バイナルは擦り切れるものだ。

パティル研究員: ああ、だがそれほど急激にではないだろう。頻繁にレコードを再生しない限りは。

SCP-L043: それが僕を無視している理由なのかい?

パティル研究員: 俺たち──俺は君を無視していたわけじゃない。言うことがなかっただけだ。

SCP-L043: 僕の頭が傷だらけになって、僕の思考が雑音だらけになって、それでも言うことがなかったというのか?!

パティル研究員: いいか、新たにレコードをプレスしたらどうだろう。新しいものならいいんじゃないか。

SCP-L043: ああ、もちろん。でもわかるかい、わかるかい、それが問題じゃないと思ってる。それが全てじゃない。僕に何かが起きていて、それが嫌なんだ。止めてくれよ。

パティル研究員: もっと詳しいことがわからない限り、助けられない。

<休止。>

SCP-L043: アシッド2が抜けるときの抑うつ感のようだ。脳細胞がなくなる感じがする。

1987年における『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に関連した顕著な出来事は、新たなコンパクトディスク(CD)フォーマットによる再リリースのみでした。これは全英アルバムチャートで16週連続ランクインに返り咲くこととなりました。

試験により、コンパクトディスクのプレスではバイナルに関連する異常効果が発生せず──コンパクトディスクは、集束レーザービームによってデータにアクセスする光学式記憶フォーマットであるため、ランアウト部分に類似する部分を欠いていた──SCP-L043との接触には使えないことが判明しました。

以降12年間のSCP-L043とのやり取りのダイジェストは以下の通りです。

SCP-L043: 集中できない。君がこうしているのかい? 訴訟を起こしたのは僕じゃないよ。分裂した後のことだ。あれは……あれは僕じゃない

SCP-L043: もちろん、そこには僕たち両方の名前がある。君もここに来るべきだ。そうすれば君がどこかに行かないで済む。

SCP-L043: 諸行無常だよ、ジョン。言ったはずだ。どうして聞いてなかったんだい?

SCP-L043: これが感じる通りのものなのかどうなんだろう。

SCP-L043: もう一度言ってくれるかい? 繰り返し言ってくれ。言うこと全部を。僕はズレが起きないようにする。それで、多分それで助けになると思う。

SCP-L043: きっとこの、この、君の言ってるやつだ。ノックオフ。その溝がおかしくなったんだ。

SCP-L043: 他のメンバーは知ってるのかい? あー……名前を思い出せない。君は彼らにもやったのかい?

SCP-L043: どうして僕は自分の名前がビリーだと思ってるんだ?

SCP-L043: お母さんと話したい。もう君に頼んでたかい?

SCP-L043: リンダと話したい。それで……それが誰か教えてくれるかい? ジョン?

SCP-L043: 騎士? 誰の騎士だ? 僕じゃない。 [弱々しい笑い] ターンテーブルの騎士。君は何を言っているんだ。ジョン? 君のことかい?

SCP-L043: 君はよく電話をしていた。ずっと電話をしていた。君と僕とでだ。まるで君はできないかのように昔の日々について話していた。彼とは……もうしてない。君はもう電話をしてない。僕たち2人だけだった。何が起きたんだい?

2000年時点で、SCP-L043の意思疎通は不条理で支離滅裂、散発的になりました。反応を引き出すのは極めて困難であり、対象はもはやベースライン現実に関連する基本的な概念や時間の経過を認識していないように見えます。1999年のパティル上級研究員の死は、SCP-L043が全ての職員をそのアイデンティティーにかかわらず「ジョン」と呼称し続けているため、注意なく通過しました。

SCP-L043は偶発的分散知能の形態であると仮説立てられているものの、その急速な萎凋率のためさらなる研究が不可能となっています。あらゆる点から見ても、オブジェクトは死んだものと見なされます。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。