Info
タイトル: SCP-L595 - 上階の隣人
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2026
原題: SCP-L595 - Upstairs Neighbor
著作権者: PlaguePJP
作成年: 2026
初訳時参照リビジョン: 8
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-l595
by PlaguePJP
誤伝達部門より通達
以下のファイルには上階の隣人について記述されています。誤伝達部門は、この記述が不十分であり、適切な尺度を網羅していないことを認識しています。
— エリ・フォークレイ、誤伝達部門主任
SCP-L595-1。
特別収容プロトコル: SCP-L595は財団施設にのみ出現するため、現時点で自己収容しています。いかなる状況でも、SCP-L595-1に対して彼の分類、財団の存在、彼の住居の異常性を通知すべきではありません。SCP-L595またはSCP-L595-1に対する無力化試行は誤伝達部門の承認を得る必要があります。
説明: SCP-L595は、財団の高位職員の執務室の上部に出現する、床面積480平方フィートのワンルームマンションです。SCP-L595は通常、影響を受けた執務室の天井内部に埋め込まれた状態で出現し、必要に応じてその上の階の配置をずらします。SCP-L595には家具類、水道、電気設備が完備されており、居住者が存在します。
SCP-L595-1は、SCP-L595の唯一の居住者である34歳の1白人男性、ウィリアム・プレスコット・エインズリーです。SCP-L595-1は現住所で約6年2生活しており、未だ身元が判明していない家主3に家賃を支払っていると主張しています。
これまでSCP-L595-1をSCP-L595から48時間以上離脱させる試みはいずれも成功しておらず、48時間が経過すると彼は再びSCP-L595の内部に再出現します。SCP-L595及びSCP-L595-1の更なる無力化試行は全て失敗に終わっています。SCP-L595-1がそれ自体で異常な存在なのか、SCP-L595の影響を受けているだけなのかは不明です。いずれにせよ、SCP-L595-1は自らの住戸が異常であること、当該住戸にテレポート能力があること、現在の居住環境が様々な点において常軌を逸していることを認識していません。彼はまた、SCP財団についての知識や関心を全く持たず、代わりにキャンベルズ・カンパニーでの遠隔マーケティング業務に専念しています。4
補遺L595.1: 記録された交流
事件ログ L595.A
サイト: サイト-38
日付: 2021/3/22
午後11:47、SCP-L595-1はサイト副管理官 ハローランの執務室のドアをノックした。
ハローラン: 真夜中だぞ。
SCP-L595-1: ごめん。プラスドライバー持ってる?
ハローラン: 何だって?
SCP-L595-1: ネジ回し。プラスの。先が星みたいなあれ。
ハローラン: いいや。
SCP-L595-1: ほんとに?
ハローラン: ああ。
(合間。)
SCP-L595-1: 持ってる人に心当たり無い?
ハローラン: 無い。
(SCP-L595-1はSCP-L595に帰宅する。その後4時間11分にわたって、イケア製のMALMドレッサーを手作業で組み立てる物音が聞こえる。)
事件ログ L595.B
サイト: サイト-56
日付: 2021/4/30
状況: クラス-3収容違反が進行中だった。SCP-L595-1は階下に降り、サイト管理官 オカフォーの執務室のドアをノックした。
オカフォー: 今はダメだ。
SCP-L595-1: ごめん。ちょっとだけいいかな。
オカフォー: 今はダメだ。
SCP-L595-1: これって煙探知機の音?
オカフォー: 違う。
SCP-L595-1: 煙探知機みたいに聞こえるけどな。
オカフォー: 火災訓練だ。
SCP-L595-1: 火曜の朝9時に?
オカフォー: そうだ。
SCP-L595-1: 音量抑えてくれる?
オカフォー: 最善を尽くす。
SCP-L595-1: ありがと。
SCP-L595-1が通行した廊下には、心停止を起こしている収容スペシャリスト1名と、活発かつ敵対的な異常実体1体が存在した。SCP-L595-1はどちらにも反応を示さなかった。同様に、異常実体はSCP-L595-1に反応しなかった。
無力化試行 L595.A
サイト: サイト-82
日付: 2021/5/18
方法: 財団は、SCP-L595-1の解雇のみを目的に、ペーパーカンパニーを通じてSCP-L595-1の雇用主であるキャンベルズ・カンパニーを買収した。
買収は2021/4/15に完了し、同日中に解雇通知書が作成、提出された。翌朝、SCP-L595-1は定例の業績評価を受け、“期待通り”と判定された。この評価書には身元不明の人物による署名が成されていた。
買収は秘密裏に取り下げられた。
事件ログ L595.C
サイト: サイト-91
日付: 2021/6/26
午前2:15、ある商品の返品を希望するSCP-L595-1の電話内容が記録された。
SCP-L595-1: ソファと色が合わないんだ。
[…]
SCP-L595-1: うん…
[…]
SCP-L595-1: ネットにはベージュ色って書いてた。
[…]
SCP-L595-1: ベージュじゃないね。
[…]
SCP-L595-1: どっちかって言うとトープ色かな。
[…]
SCP-L595-1: うん。
[…]
SCP-L595-1: 分かった、ありがと。
後日、カーペットがSCP-L595から消失した。回収される様子は確認されず、再発見もされていない。
事件ログ L595.D
サイト: サイト-29
日付: 2021/7/17
午前6:31、SCP-L595-1宛ての小包が、サイト管理官 バログのデスクの上で発見された。小包の中身はプラスドライバーだった。追跡番号はこの小包が4ヶ月前にサイト-38に配送されたことを示した。
無力化試行 L595.B
サイト: サイト-58
日付: 2021/8/04
方法: SCP-L595は脱出経路の無い厚さ16インチの鉄筋コンクリートの中に密封された。
SCP-L595-1は隔離中、SCP-L595の内部で普段の行動パターンを示しているのが確認された。午後7:04、SCP-L595-1はコンクリート外殻の内壁をノックした。
SCP-L595-1: 誰かいる?
(沈黙。)
SCP-L595-1: オッケー。
午後7:06、収容外殻に微細なひび割れが生じ、拡大し続けた。
事件ログ L595.E
サイト: サイト-85
日付: 2021/9/29
午前10:31、SCP-L595-1はサイト副管理官 コワルスキーの執務室のドアをノックした。
コワルスキー: はい?
SCP-L595-1: 邪魔してごめん。今週末にうちの母ちゃんが遊びに来るから、駐車する場所を確保したいんだ。
コワルスキー: そうですか。
SCP-L595-1: 来客用の駐車スペースって土曜日空いてる?
コワルスキー: 分かりませんね。
SCP-L595-1: 調べてもらえない?
コワルスキー: わ - 私はこの建物の管理人じゃありませんよ。
SCP-L595-1: うん、でももしかしたら知ってるかなって。
コワルスキー: 知りません。
SCP-L595-1: もし分かったら教えてね。
公的記録上では、SCP-L595-1の母親は1994年に死亡したとされている。この週の土曜日、サイト-85駐車場の来客用スペースに、青い2011年製トヨタ・カムリが午前11:14から午後4:22まで駐車しているのが観察された。訪問者記録は作成されておらず、監視映像は当該車両に乗車・降車する人物の姿を捉えていなかった。
無力化試行 L595.C
サイト: サイト-100
日付: 2021/10/03
方法: SCP-L595-1は、同一の容姿、経歴、生い立ちを有する人間男性の複製体と置き換えられた。この主な目的は、SCP-L595が偽居住者を認識するか、情報を偽居住者に開示するか、または偽居住者を退去させるかを確認することであった。
午前6:00にSCP-L595に導入された複製体は、そこでコーヒーを淹れ、仕事の電話に応対し、ターキーサンドイッチを食べた。全体的に見て、複製体はSCP-L595-1と区別がつかなかった。
午後3:41、複製体はサイト管理官 フェレイラの執務室のドアをノックした。
複製体: ども。ちょっと騒がしいんだけど。
フェレイラ: こりゃ失礼。
複製体: よろしくね。
複製体はSCP-L595に帰宅した。その後、SCP-L595-1がサイト管理官 フェレイラの執務室のドアをノックした。
SCP-L595-1: ども。ちょっと騒がしいんだけど。
フェレイラ: こりゃ失礼。
SCP-L595-1: よろしくね。
SCP-L595-1と複製体はSCP-L595内部で共存している。どちらもお互いの存在を認識しておらず、監視映像はSCP-L595が依然として居住者1人分の家具のみを備えていることを示している。両居住者はツインベッド、1個のマグカップ、ターキーサンドイッチを争うことなく共有している。どちらが複製体かが特定できるまで回収は延期されている。
事件ログ L595.F
サイト: サイト-19
日付: 2021/10/25
午後3:02、SCP-L595-1はサイト管理官 ムースの執務室のドアをノックした。
ムース: どうしました?
SCP-L595-1: ねえ、聞こえるかい?
ムース: はい?
SCP-L595-1: ジリリリって音。
ムース: ここでは聞こえませんね。ごく静かですよ。
SCP-L595-1: そっか。
(合間。)
SCP-L595-1: ほんとに?
ムース: ええ。
SCP-L595-1: 変だなぁ。
SCP-L595-1はSCP-L595に帰宅した。ムース管理官は、この交流の約3分後から、左耳に持続的な高音域の耳鳴りがするようになったと報告した。5
補遺L595.2: 分類
以下の書き起こしは、サイト-19で2021/11/02に行われた、サイト-19管理官 ティルダ・ムースと誤伝達部門主任 エリ・フォークレイの会合の再現です。この出来事の映像記録は復元されていません。
書き起こし
«記録開始»
フォークレイ: ちゃんと声に出して言ってください。
ムース: あれは人間ではない。あれは私の隣人ではない。
フォークレイ: その調子です。こういうのは繰り返すと定着しやすいのです。
ムース: 記憶補強薬は?
フォークレイ: 効果無し。
ムース: なぜ?
フォークレイ: 分かりません。
ムース: 何かしらの推測は?
フォークレイ: できればしたくないですね。
(合間。)
ムース: 彼が出てくる夢を何度も見るんです。
フォークレイ: ティルダ。
ムース: 分かっています。
フォークレイ: いつですか?
ムース: 今週に入ってからは毎晩ですよ。お茶を飲みたいかと私に訊ねるんです。普通は答える前に目が覚めます。
フォークレイ: それだけですか?
ムース: ええ。それで全部。
(合間。)
ムース: 彼は昨日、夜中の3時まで起きていたんですよ。
フォークレイ: 何をしてたんですか?
ムース: 何かをバウンドさせていました。多分ボールでしょうね。
フォークレイ: おやおや。そりゃまた鬱陶しい。
ムース: 4時間近くその調子ですからね。一睡もできませんでした。6
フォークレイ: 私の上階に住んでいる男も、もう5回ほど家具の配置を変えたはずです。7 週に1回は必ずそうするんです。
ムース: 正直、まだマシな方です。
フォークレイ: ええ、かなりマシです。でも公平に言って、どちらの状況も散々ですね。
ムース: 彼は時々シャワーを浴びながら歌うんです。
フォークレイ: 聞こえるほど大声で?
ムース: あなたには想像もつかないでしょう。ヴァン・モリソンで、毎回全く同じ3曲です。
(フォークレイは笑う。)
フォークレイ: ひゃあ、それは酷い。こりゃあなたの勝ちですかね。
ムース: こんなことで勝ちたくありません。メモで文句を言ってやろうかと思っているんです。
フォークレイ: いや、止めた方がいい。
ムース: なぜ?
フォークレイ: あなたが書いたのがバレてしまう。
ムース: だから何ですか? 私だってここの住人です。
フォークレイ: 今後何年もの間、エレベーターで目が合った時の気まずさを想像してみなさいよ。
ムース: ドア下の隙間から差し込んでやります。バレやしません。
フォークレイ: 悪質だなぁ。
ムース: 世の中はそういうものですよ。
(合間。)
フォークレイ: ちょっと待て。
ムース: 何ですか。
フォークレイ: 私たちは何をやっている?
ムース: 分からない。
フォークレイ: ティルダ。
ムース: いつ始まったのか分からない。
フォークレイ: 私もです。
(合間。)
フォークレイ: あれは私の隣人ではない。
ムース: あれは私の隣人ではない。
(会議室のドアをノックする音がする。)
(ムースがドアを開ける。SCP-L595-1が廊下に立っている。)
SCP-L595-1: ども。
ムース: どうしました?
SCP-L595-1: 邪魔してごめん。
ムース: とんでもない。何かご用ですか?
(SCP-L595-1が入室すると、天井の蛍光灯がちらつき、やがて安定する。)
SCP-L595-1: 床が薄いんだ。
ムース: そうですか?
SCP-L595-1: 君らの声が聞こえたよ。ちょっと気が散るんでね。
ムース: どの程度ですか。
SCP-L595-1: 少し。
ムース: では声を抑えめにします。
SCP-L595-1: ありがと。ちょっと座っていい?
(SCP-L595-1が会議室に入室し、ドアに一番近い椅子に腰掛ける。彼は目元を擦る。インタビューの残り時間、彼は瞬きをしない。)
SCP-L595-1: 長い一日だったよ。
フォークレイ: そうですか。
SCP-L595-1: 7時からずっと電話対応だった。
(会議室の動体センサー式天井照明は15分間のタイムアウト設定になっている。保安ログの検証によると、4:14から4:31にかけて会議室内ではいかなる動きも検出されていない。このインタビューは4:03から4:38の間に行われたことが確認されている。)
SCP-L595-1: 君はこの辺りの人?
フォークレイ: いいえ。
SCP-L595-1: ふぅん。俺もだよ。
(合間。)
SCP-L595-1: 仕事は?
フォークレイ: 物流です。
SCP-L595-1: へえ? 何の?
フォークレイ: 出荷業務です。
SCP-L595-1: いいね。
フォークレイ: ええ。
(SCP-L595-1はマグカップを口元に近付け、一口飲む。彼は入室時にマグカップを所持していた様子が無かった。フォークレイとムースはどちらも彼に飲み物を提供しなかった。)
SCP-L595-1: お茶、好きかい?
(合間。)
フォークレイ: いいえ。
SCP-L595-1: もし飲みたくなったら、上の階に少し置いてるよ。
フォークレイ: 遠慮します。
(フォークレイとムースの腕時計はどちらも午後4:19を指している。壁時計は午後3:47を指している。)
SCP-L595-1: そっか。
(SCP-L595-1は立ち上がる。)
SCP-L595-1: 床がね、薄いから。
ムース: 声を抑えます。
SCP-L595-1: ありがと。
(SCP-L595-1はマグカップを置いたまま立ち去る。ムースが彼を送り出し、ドアを閉める。マグカップはもう会議室内に存在しない。)
(沈黙。)
フォークレイ: 変な奴ですね。
ムース: そう悪い人じゃありません。
フォークレイ: ああ、まあね。ちょっと変わってますが、人は誰しもそうです。害は無さそうですし。
ムース: 気の毒な人ですよ。
フォークレイ: きっと孤独なんでしょう。
ムース: ええ、でも人は皆、いずれは折り合いをつけるものです。
フォークレイ: 世の習いですね。きっと彼にも事情があるに違いない。
(合間。)
ムース: エリ。
フォークレイ: 何ですか?
ムース: お茶ですって。
(沈黙。)
ムース: どうします?
フォークレイ: あれは人間ではない。
ムース: エリ。
フォークレイ: あれは私の隣人ではない。
«記録終了»


