アイテム番号: SCP-PL-048
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-PL-048の境界周辺には100mごとに財団の監視所が存在し、そのうち一つの駐屯所を司令部としています。以上の監視所網を収容領域-5と総称します。各監視所には最低でも二名の衛兵が駐在しており、司令部には三名の衛兵ならびにフィールド研究ユニット ゼータ3のメンバーが駐在しています。プロジェクトマネージャーは総司令部8からの遠隔指示により任務を行います。対象のテリトリーを侵さない調査方法が確立するまで、研究プロジェクトを立案した際には、プロジェクトマネージャー助手に提出してください(ただしそのような調査法が確立した場合、以降は収容領域-5 現地司令官に提出するものとします)。研究プロジェクト始動への承認の際はプロジェクトマネージャー助手が単独で立案者と連絡を行います。こうした連絡なき場合、当該案が否決された事を意味します。
一般人のSCP-PL-048への立ち入りの阻止は能動的および受動的に行われます。オブジェクトのテリトリーに侵入した人物は、領域外まで護衛の上で送還を行います。SCP-PL-048-1により捕捉された人物は行方不明者として認定します。SCP-PL-048上空域は軍の区域として区分されており、いかなる航空機による侵犯も禁止されています。
権限1: 収容領域-5の職員は非関係者の記憶からSCP-PL-048に関する情報を除去するため、クラスB記憶処理ならびにクラスC記憶処理を利用する事が可能です。
権限2: SCP-PL-048-1により招待された人物は、実体群との面会のためにSCP-PL-048を訪問する事は可能です。ただし、自身の観察内容を慎重に記録する義務があります。
SCP-PL-048-1がSCP-PL-048を出境する事が懸念された場合、以下のように対応してください。
- 三度、大声で引き返すよう勧告を行う
- 武器の再装填および大声での警告を行う
- 射撃準備を行い、闖入者に対して武器の照準を定める
- 空中へ威嚇射撃を行う
- 闖入者の頭部を狙い、射殺する
要求されるセキュリティクリアランスレベルは、
- 研究員: 2
- 保安職員: 2
- 主任研究員: 3
- 主任保安職員: 3
です。
説明: SCP-PL-048は████████の東方24kmの小規模(2km2)な村落です。地域には8軒の増築された木製の小屋、小規模な市場ならびに不明な素材の鉱坑(SCP-PL-048-2)が存在します。村落はポーランドの他の領土からは、20mの帯状の平原の境界により隔てられています。SCP-PL-048にはヒトとは類似しない体長5-6m、体幅2~2.5mの人型実体群が居住しており、その構成物質は視覚上は樹木に類似します。SCP-PL-048-1群の一体を基とした死後診察の研究成果は、█████████博士の病理形態経過報告に記述されています。
SCP-PL-048-1の人間に関する態度は中立的であり、実体群はSCP-PL-048の境界を侵犯しない限りは人間を無視します。実体群のテリトリーに立ち入り、領域外に帰還する事が適わない人物はSCP-PL-048-1により捕捉の後SCP-PL-048-2へと連行され、そこで一生労働者として搾取されて、服従を拒否した場合は串刺し刑により処刑されます。
████年█月█日、村落に棲息する実体群がその境界を出る事はあり得るかの研究実験の最中、SCP財団エージェントの一人が実体群から村落のトーテム上に彫刻された肖像という形の贈り物を入手しました。ボディーランゲージの駆使により、SCP-PL-048-1群はエージェントに村落中およびSCP-PL-048-2を見学させました(詳細は████=██████小隊長の諜報経過報告)。
財団の社会学者である█████博士および██████博士は遠隔的な研究手段の利用や████=████████小隊長の意見を参照の上で、SCP-PL-048-1個体群を地位により以下のように区別する事に成功しました。
- ヒエラルキーの頂点に君臨するのはリーダーであり、その活動は昼間はもっぱら市場の中央に立つ事と、視覚器官により太陽を追跡する事に限られる。夜間にリーダーは食事を行い、自らの小屋で眠りにつく。他の実体群はリーダーの前を通過する折りに両手を上にあげ、この方法で彼のポジションに敬意を表す。リーダーの機能や動機はいずれも依然判明していない。リーダーはヒトには理解不能ないしは体系的に知覚不可能な方法で集団全体の保護・養育を行っているという仮説が立てられている。
- 八人の女性が家屋内に見られ、子供たちの世話を行っている。身体的に見ると5mと高い。女性たちは必要がない限り家屋からは出ない。屋外では必ず彼女たちに割り当てられた男性による特徴的な付き添いの上で見られ、他の屋根付きの場所を目指す。邸宅で過ごす事は彼らの健康にとって害である可能性が存在する。(リーダーを除く)男性たちは余所の女性のサインにはわずかに手を上にあげ、自らの女性のサインに対してはリーダーの通過時と類似した手のあげ方をする。女性間のやりとりは友愛的なものではあるが、敬意を表す性格は欠落している。
- 七人の戦士たち。このうち三人は村落境界の異変を他の戦士たちと共に見張っており、二人が鉱坑で労働を行い、一人が鉱坑で奴隷たちの監視に当たり、一人がリーダーの付き添いを行っている。戦士間のやりとりもまた敬意を表す性格が欠落している。
- 十五人の子供たち(身長1~5m)は母親の庇護を受けている。子供たちは自身らを除く村落の住民全員に敬意を表す。女性たちの受精は恐らく6月23日に、子孫たちの誕生は9月14日に起こる。
子供たちは6月10日に、身体的に5mないしは6mにまで及ぶほど成熟します(性別に依存)。女性はそれぞれ男子と同様に女子も育成し、リーダーの女性はもっぱら女子の育成を行います。子供たちは6月19日に小屋を出てそれぞれ伴侶を得ますがリーダーの実子である女性は例外であり、昼間に太陽を追跡する父親に6月23日まで母親と共に付き添います。6月23日正午に、前世代は市場において円状に集合し、自身たちの中からリーダーではない男性を一人選出します。選出された男性は円の中心へと入ります。残りの老いた個体群はこの際に、跪いてこの男性に敬意を払います。数分から数十分の時、次いで目が眩むほどの陽光が突然射し、その後、選出された男性を除く旧世代はもはや二度と鉱坑からは姿を現さなくなるよう、最後となる入坑を行います。残った男性は次いで独身の女性の伴侶となり、新たなリーダーとなります。旧世代の個体群がどのような行く末を辿るのかは明らかになっていません。
早期に死亡した(例: 殺害された)個体群は研究用に回収する事が認められています。
████年██月██日、SCP-PL-048-1個体群の一体が越境を試みるに至りました。インシデントを観測した保安職員複数名はこれを脅威となると適切に評価し、当時有効であった特別収容プロトコルに含まれる手続きに則り、当インシデントへ対処を行いました。結果、個体は射殺されるに至りました。12時間後、SCP-PL-048-1の遺体は財団の医師・病理形態学者である█████████博士による研究的死後診断の実施を可能とするため、同博士の許へ提供されました。
拡張版病理形態経過報告はデジタル化された状態で収容領域-5データベースに存在します。医学文書の膨大さを理由とし、文書へのアクセスは収容領域-5の内部ネットワークコンピューターならびにO5司令部データベースにおいてのみ可能です。リモートアクセスの提供はありません。
日付: ████年██月██日。
場所: █████████。
監督者: ██████・█████████博士。
助手: 解剖技術者██████・█████氏。
05:00 … 頭部に9mm口径の銃弾が四発; 一発目は旋毛の基部において頭蓋骨の破片を剝落させ、二発目は左眼窩を抉り、三発目は五センチメートル下方、四発目は恐らくそれを左頬全体で掠めた。もしこれがヒトであったならば死因の特定はお役所仕事でも良かったのかもしれないが、本個体の死を決定づけた生物学的要因が不明である以上、必要となり得るのは別の検体の回収、生体解剖、ゆくゆくは次なる早期の死後診断の実施であると査定しておく事とする。死亡時刻は個体の無力化を行ったエージェントの申告と符合する16:52。5:00となったので、我々は規定の十二時間にわたって解剖を行う。次の遺体の切開がより早急に行われれば、期待される答えをもたらしてくれるという事もあり得る。
05:12 … 技術者と共に[編集済]のノコギリを使用して頭蓋腔を切開せねばならなくなった。これで確認されるのは、皮膚が驚くべき事に木質ではないという事実である。研究所による検体分析に期待し、これは驚異的な耐久性を誇る類まれな生物学的物質を形成し、自然な手段で骨と接合した皮膚のように見えると認める事とする。占拠していた骨皮質の除去後、我々は同様の耐久性を有する硬質の髄膜を発見した。髄膜の究明も矢状静脈洞への到達も不可能であろう。何も、対象生物の恒常性の条件が不明である以上、死因の探求が我々には不可能という訳ではない。我々は切開を続行し、脳髄の摘出を試行する事としよう。
05:19 … 述べた事を撤回する。脳髄が「存在しない」。繰り返すが、脳髄が存在しない。個体の神経系がいかなる方法で機能しているか特定する事は不可能である。これを我々が確認すべきとなれば、生体解剖が唯一の現実的な可能性となる。他の腔から脳髄を発見できるかは疑わしいが、これは斯様な代替器官がこの肉体には存在しないという事を意味する訳ではない。これは霊体ではない; これは生きていた、運動していた、生殖を行っていた実体なのである。
05:23 … 注意。腔の接着(縫合では丸一ヶ月かかると思われる)中ならびに銃弾により溶解した眼球の除去・摘出の後、動物のものに類似した神経を発見した。細胞はアポトーシスに陥っていき、検体の殺菌目的で紫外線照射を神経に対して行った際、神経は白熱を始め、着用していたゴム手袋が焼かれた。紫外線放射の結果による異常なまでに激烈なアポトーシス。太陽光に対する内部細胞の光感受性の可能性。死は飛来した銃弾の弾道により露わとなった細胞の、太陽光への曝露に続いて起こり得た。潜在的な死因。非常に興味深い。
05:40 … 我々は心腔と腹腔の切開を行った。いかなる筋肉組織も欠如。腹膜切開後――続いての難題: 個体はどこに加工された物質を貯蔵している?肛門や腸の欠如は、栄養分が全面的にこの手の生物により分解されているという可能性を指し示している。心臓は樹脂を彷彿とさせる物質由来で、内容物の失われた臓器である。これは血液たり得るのか?何らかの原因により脳領域にも何の領域にも及ばなかった血液?心囊を彷彿とさせるものの、空洞である。まさか、これが行方不明の肺であるのか?しかしながら横隔膜の欠如は呼吸の必要性を同じ土俵に立たせるものである。ああ、大丈夫、それで今この時には説明できる状態ではないので。臓器は研究所へと旅立った。きっと、時間がより良い解を与えてくれる。
05:46 … 腔はテープで接着された。まず我々で生体解剖の実施を行わない限り、事例48-1における遺体の解剖は無意味である――既に述べた通り。所定の死後診断手順はこのような個体の場合には合理性を欠いており、まず第一に手順の修正が必要である。必ずしも死後のものにこだわらない研究が――私個人の客観的な意見では――生物学領域における人類智のリソースの広範の発展に資し得る事であろう。経過報告了。██████・█████████博士、解剖技術者██████・█████。
要セキュリティクリアランスレベル3以上ならびにNeed-to-Knowタイプの閲覧権限。利用者認証が適切に完了しました。アクセス許可。
████年██月██日 18:50、第3監視所に戦士たちの内の一体が、 ████=████████小隊長の肖像が彫刻された木製のトーテム(高さ2m、直径0.5m)を携えて接近しました。実体はトーテムを境界地帯に打ち込み、ジェスチャーを交えつつエージェントを自らの許へ招きました。小隊長は電話回線により主任研究員から権限を取得の後、武装解除の上で境界地帯へと赴きました。実体はこの際エージェントをさらに自らの近くに招き、最終的にエージェントがSCP-PL-048へ侵入する事を許可しました。実体はこの際に両手を上にあげて小隊長に敬意を示し、その後一方の手を小隊長の腕の上に置き、もう一方の手でエージェントを村落へと招待するジェスチャーを行いました。小隊長はこの際、上官に書面での権限要求を行い、権限取得の後、SCP-PL-048-1と共に徒歩の速度で実体のテリトリーの深部を目指しました。
日付: ████年██月██~██日。
場所: SCP-PL-048/-2。
著者: ████=██████小隊長。
19:06 … 我々は村落に到達致しました。ここにはこの実体が数体いて、どの実体も私の事を何かの神のように眺めてきます。実体の一体はまるで広場のようなところの中心に常時立っていて、太陽をまばたきすらせず眺めています。他の面々は彼の前を通る時、両手を上にあげます――トーテムを持ってきたこの実体が私を呼んだ時のように。客……これは当実体が何にも反応しないものの、私が近づいた時は数秒の間太陽から視線を離して私の目を、身の毛がよだつ思いがするほどまで深くちら見してきましたが、それは敵対的なものではありませんでした、といったところです。分かっています。常時、私を招待した実体が付き添ってきています。つい先ほどは、麻縄で巻かれた藁の玉を持ってきてくれました。それをこちらへと手渡し、寝る時の仕草をしました。おお!私を何かの小屋みたいなところに招いてくれています。
21:15 … [囁き] 私は先ほど太陽を眺めていた個体の家におります。私に用意された場所はそば……窓のそばです。畜生、ここの建造物群は巨大で、きっと奴らにしてみれば普通の小屋で眠っているつもりなのでしょうが、私からすればマンモス用の納屋か何かで寝る破目になっているように思えます。快適ではありますが、問題はそこではありません。私やあの実体のそば、ここにもう二体実体がいるんです。片方は残りのものにとても似ているのですが分かりやすいほど背が低めで、もう一方は私の身長ぐらいです。なぜ自分たちの一員を殺したような人を招待したのかも、私に関してここまで歓迎する態度が取られているのかも、見当がつきません。私には正直良くもてなされて、不釣り合いなまでの敬意を払われているように思われます。実体群は抱き合って、近くの藁山で寝入りました。私にも選択肢はありません。ですが眠たくはありませんが、不利益な状況変化のリスクは冒さない方が良いです。寝ます。
07:00 … 一番小さな実体がこちらをつい先ほど起こしました。私を竜巻の如く揺らしたんです。もしかして私の事を笑っていました……私の怯えた間抜けヅラを。一番背の高い実体は、こちらの両手に鶏を手渡してきました。生きている、コッココッコ鳴いているのを……で、彼は待っていました。しばらくしてからやっと理解しました、これが私のためのごはんであるという事を。私はきちんと感謝の言葉を伝えて実体に飛ばない鳥をお返しし、ポケットから自分用の保存食のレーションを取り出しました。ところがこれは拒絶するような指さばきで振り払われ、その後実体は鳥の頭を数本の骨みたいなもので引き裂いて、鳥の頭を自分の喉に差し込みました。実体はこちらの両手に、血の流れ出ている死骸を手渡してきました。食事の詳細は割愛致しますが、もしかするとこれが私にとって当分の間最後の食事であったのかもしれません。
12:18 … 朝食後ほどなくして実体群の一体が私を、へりの上にある急ごしらえで整備された鉱坑へと連行しました。奥深くへと木製の階段が続いていました。分かりません……多分、百メートルくらいは下に降りました。しまいには不気味な歩道に我々はおりました。巨大トンネル、完全なまでの真円でした。壁からは銀色の、白く光る水が流れ出ていました。実体数体が私には判別不可能な素材を採取しながら、手作業でセクションを掘り進めていました。木製の箱に投げ込まれて行った、私のこぶし大の青・白・紫の結晶。我々がトンネルの終点まで到達した時、下に千メートルほどは続いているんじゃないかという次の階段が目に入りました。そう、何もかもがこの奇妙な水によって照らされていました。私は意を決して二つ目の階段の一段に歩を進めようとしましたがその時、付き添ってきていた実体がこちらの両腕を乱暴に掴み、引き返し出したのです。拒絶するように手を振られ、そこに私が行ってはならないと理解させられました。なぜなのかは見当もつきません。
13:22 … 地上へと引き返していた最中、行方不明となっていたエージェント・██████████████の姿が目に入りました。 私を一目見てショックを受けていましたがこれは無理もないです、続いて駆け寄ってきて、俺を連れて行ってくれと叫びました。エージェントは、我々は化け物共と仲良しこよしできるようになったのかと訊いてきました。私は実験に参加していて、我々と奴らとはいがみ合い続けていると言う嘘を吐いてしまいました。エージェントは私を反感のこもった眼で睨み、「裏切り者、裏切り者、アバズレじみた裏切り者が、地獄で灼かれちまえばいいのに!」と喚き始めました。とその時、その辺にいた鉱夫たちの一人がエージェントを捕まえ、たったの一動作だけでエージェントを労働現場とされていた壁に押し付けたんです。それでもエージェントは静止せず、私めがけて突進してきて、拳でこちらの顎を殴ったんです。その時、こちらに付き添ってきていた実体がエージェントの脚を掴んで、地上まで何百段分もある木製の段へ引きずったんです。我々は市場へと行きました。個体は杭数本のうち一本分を掴んで地面へと打ち込み、エージェントをその上に投げ込んで、喉責めから始めました。杭はすぐにエージェントの███████を突き出ました。エージェントは、長くは耐えられませんでした。
18:35 … 奴らから結晶の一つを入手致しました。太陽に見とれていて鶏の死骸を食べるようせがんできた実体が、私を別の小屋に案内しました。最悪なのは、数時間前までこんな小屋などはなかったという事実です。私のために小屋を建てたんだと結論づけます。はっきり言って私には実体群と暮らす事なんてできないという意識が奴らにはあるのか、私には分かりません。私には仕事、家族、自分の人生というものがあります。なぜこの私がなのかは分かりませんが、それに意味などありませんね、私がそうと決めた訳では決してございませんので。それは私のためではないですし、話題にもならないんですね。おお、どうも何かの儀式の準備が進められているようです。
[編集済]
12:42 … 幸い、奴らは理解してくれました。私が結晶を所持しても良いという事になりましたし、こちらを境界まで案内してくれています。私が良く知る限り、待ちに待ったこれを遂に申し上げる事ができます、「録音終了」。