SCP-RU-178 - ヴォロロフスクの英雄たち
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当ファイルはロシア地域評議会令により第3等級機密に指定されています。

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    特別収容条件: ロシア超常新生児収容プロトコルに従い、SCP-RU-178およびその両親はヴォロロフスク1ブロック-76舎宅ドーマ-47に収容されています。

    SCP-RU-178はアレス-ラング生体機能保持装置への接続を無期限に維持するものとします。2005年7月7日付で診療報告書を作成、およびロシア地域評議会に提出することになっており、これを以ってSCP-RU-178の状態を再評価するとともに最終判断が下されます。

    説明: SCP-RU-178はヴァレリヤ・ミハイロヴナ・ヴォルコヴァ (18歳、身長1.7m) であり、ロシアの地下都市・ヴォロロフスクに居住しています。SCP-RU-178はタイプ-IV操霊術 (ネクロキネシス) を行使可能で した。

    SCP-RU-178は2000年に、彼女のペット (Phodopus sungorus。ロシアンドワーフハムスターあるいはジャンガリアンハムスターとも) が死亡した際に、それまで不活性だった異常性が突発的に発現したことを受けてヴォロロフスクへの移住を求められることとなりました。

    当初SCP-RU-178の精神は衰弱していましたが、ヴォロロフスクでの生活を経て著しく回復しました。

    心療報告 [2001年4月6日]:



    音声記録の書き起こし



    参加者:

    • タイプ-IV操霊能力保持者 SCP-RU-178
    • ヴィクトール・ミハイロヴィチ・イヴァノフ

    [記録開始]

    ヴィクトール: さて…… ヴァーリャ、具合はどうかな。

    SCP-RU-178: もう全然元気。自分でも回復してるのがわかるよ。

    ヴィクトール: そうか。ご家族の皆さんはどうかな?

    SCP-RU-178: まあ少なくとも、かなり穏やかな生活にはなったかな。パパはもうブラトヴァ2とやり合う必要がなくなった。ママもいろいろ面倒ごとがなくなって気楽そうだし、ついでに禁煙始めたみたい。

    ヴィクトール: よかった、皆さん問題なくやってくれてるみたいで安心したよ! お母さんはここに来る前はヘビースモーカーだったの?

    SCP-RU-178: まあね。立てば煙突チムニー、座れば焼網グリル、走る姿は蒸気機関パラヴォース、って感じだった。

    ヴィクトール: それは職業病だな、「親」というのは何かとストレスが多いものだからね。(沈黙。) あ、ごめん。水を出してなかったね。グラスでいい? それとも君はクヴァスの方がお好みかな?

    SCP-RU-178: (歓笑。) お気遣いどうも。でも私まだ未成年だし。アルコールはNGだよ。

    ヴィクトール: おっと失敬、忘れてた。立派な遵法意識だ、やはり君の言動には確たる責任感が伴っている。そうだね、君のいう通りだ。(微笑。) ……さて、ここからの質問はちょっと答えづらいかもしれないが、何とか答えてほしい。でも無理そうならまた今度、日を改めて聞かせてもらいたい。いいかな?

    SCP-RU-178: 質問の内容は何となく予想できちゃうけどね。(沈黙。) わかった、いいよ。

    ヴィクトール: ありがとう。では、ヴァーリャがその能力に気付いた時のことを詳しく教えてくれるかな。

    SCP-RU-178: あの日家に帰ったら、私のベッドにあの子が…… 私が飼ってたハムちゃんがいたの。その時にはもう、冷たくなってた。(沈黙。) でも「騒がないようにしよう」って思ったの。だってパパもママもいつも疲れてるのは知ってたし、私が下校する時間帯は2人ともいつも寝てたから。だから私は…… кошка3を抱きながらベッドに飛び込んで枕に顔を埋めて。

    でも…… でもその時突然、金切り声みたいなのが聞こえて。

    (SCP-RU-178が苦渋を顕わにする。)

    (ヴィクトールは取調机の横の棚から水差しとプラスチックのコップを取り出す。コップに水を満たしSCP-RU-178に差し出す。SCP-RU-178は一口飲んで脇に置く。)

    SCP-RU-178: 金切り声みたいなのが聞こえて。青っぽい何かが、кошкаから湧き上がってきたの。その何かは    ハムちゃんの影みたいな形だった    ずっとき続けてた。私は怖くなって、思わず叫んじゃって、その時その何かは私の手から滑り落ちた。ああ…… あの時、私は、叫んじゃったの。ハムちゃんに向かって……「あっち行って!」だなんて…… (SCP-RU-178の声色が変わる。) ふと見回すとママが部屋の外にいて、一部始終を見られてたみたいで。(沈黙。) これがあの日起こったこと全部だよ。あの子がいなくなったことを受け容れられるまで、本当に苦しかった。

    ヴィクトール: それだけだった? 他に…… 他に何かそういう気持ちになるような出来事はなかった?

    SCP-RU-178: そうね…… (沈黙。) 叔父さんの時かな。少し前、叔父さんが殺されたの。私の大好きだった叔父さんが。

    ヴィクトール: 気持ちはわかる。悲劇は人間の人生を変えるものだが、時として良くない方向に変えてしまうこともある。母の死がきっかけとなって、僕は医学を志し、やがて心理学の道に進んだ。だが僕のきょうだいはアルコールに溺れてしまった。重要なのは、悲劇の後に続く人生をどう切り拓いていくかだ。(微笑。) その点君はよく頑張ってくれている。君は素晴らしい人間になると思う、どんな大人になるか楽しみだ。

    SCP-RU-178: 私にはそうは思えない。人並みになれればまだマシ、って程度じゃないかな。

    ヴィクトール: 君はそう卑下するけどもね、やっぱり君が悪人だとは感じないよ。じっさい君はこうして穏やかに暮らしてくれているんだから。

    (会話が止まる。)

    ヴィクトール: 話題を変えようか。ヴォロロフスクに来てからの生活はどう?

    SCP-RU-178: そうね…… まあ良くなったと思う。人生の意味が見えてきた気がする。何というか…… 私は特別なんだ、私にはやるべきことがあるんだ、っていうのがわかったの。《人類が昇るべき次なる進化の段階》ってやつ。それが私の義務、でしょ?

    ヴィクトール: (微笑。) そう。それは人類みなが取り組むべき義務だ。人は成長するに伴って、自分の言動に伴う責任を理解していかねばならない。それは君も同様だ。君は我々の種を進化させうる存在だ。その重責にどうか怯えないでいてほしい。と同時に、その能力に驕るような人間になってはならない。

    SCP-RU-178: もちろんよ! 私は、自分の在り方に責任を持てる人間になる。この能力をちゃんと善いことに使っていけるよう頑張るよ。

    ヴィクトール: (歓笑。) よく言った!

    [記録終了]


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    2001年9月4日18:22、SCP-RU-███4は第1期テストセッション中に強い不安感を覚え、アムール川にあったダムの一部を損壊させました。これは財団がヴォロロフスク一帯の生活用水をまかなうために建てたダムであり、本来なら地表に拡散する水流が、SCP-RU-███の異常性によりヴォロロフスクに直接流れ込むかたちとなりました。

    SCP-RU-███の収容違反直後、突発的な大規模停電が発生しました。ヴォロロフスクが予備発電所8基を稼働させて電源を回復するまでに数分を要しました。

    ただちに財団の地域司令部に本件が伝達されました。水流が都市に到達すれば都市崩壊や回復不能なダメージが生じ得たため、SCP-RU-███の沈静化が図られました。この間、既にヴォロロフスク東部地区の浸水が始まっていました。

    麻酔による鎮静が失敗したため、次に プロトコル-«бомбардировка5» (ヴォロロフスクから人員やオブジェクト等を至急退避させるとともに、SCP-RU-███の異常性をNeutralizeあるいは消滅させる) の実行が決定されました。

    18:46付でSCP-RU-178および彼女の舎宅があったブロックの退避が始まりました。ここで問題となったのは、ブロック-76が最初に浸水したエリアの近傍に位置しており、当ブロックから外に出るにはこの浸水エリアを通過するほかなく、退避が一層困難になっていたことです。

    この後、付近のスクラントン現実錨を起動するなどしてSCP-RU-███の異常性のNeutralizeが試みられましたが、いずれも失敗に終わりました。対応チームも彼を沈静化させようとしましたがこちらも不可能でした。19:11頃に浸水はヴォロロフスク中央地区に到達し、予備発電所8基のうち4基が危険な状態に陥りました。ブロック-76〜-83の居住者がまだ退避できていない中、19:23に外部への主要出口が水により閉塞しました。浸水エリアと繋がる強化扉を封鎖したことで、これらブロックへの浸水は一時的に停止しました。

    しかしながらこの後まもなくこれらブロックにて、別の地区からの浸水が始まりました。

    SCP-RU-███の対応チームは彼のNeutralizeを決定しました。SCP-RU-███がNeutralizeされてなお浸水は止まらず、19:48を以って予備発電所4基が機能不全に陥り、SCP-RU-178がいた地区への電力供給が断たれました。

    ここに閉じ込められた28名の異常性保持ヒト型実例 (SCP-RU-178を含む) は脱出すべく、地表面を突破することや強化扉をこじ開けることに尽力しました。しかしながらかれらの多くはこのような脱出に役立つ異常性は有しておらず、またそれを有していた者らも能力を適切なかたちで行使することができませんでした。20:20頃、当該封鎖地区は完全に水没しました。

    20:23時点で浸水が停止し、被災した世帯やアノマリーの回収作業が開始しました。しかし当該封鎖地区はその後20分、進入不能な状態にありました。

    当地区の110名の居住者のうち97名が死亡しました。しかしながら、ブロック-77の屋根裏に非浸水エリアを見つけた者が少数ながら存在しました。SCP-RU-178はこのエリアに到達していましたが、回収隊がやって来る寸前に誤って水中に落下し、そのまま戻ってくることができませんでした。

    SCP-RU-178は低酸素症により昏睡した状態で発見され、延命システムに接続すべくヴォロロフスクの総合病院に拘束されました。SCP-RU-178は今日に至るまで依然昏睡状態にあります。SCP-RU-178の両親は、2005年1月7日付で記憶処理の適用および収容の解除を申請しました。


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    2007年5月25日、ヴォロロフスクはインサージェンシーによる組織的攻撃を受けました。インサージェンシー側の戦闘員は推定で約1,200名にのぼります。その装備については報告ごとに差異があるものの、ロケットランチャー、ライフル、ショットガン、および様々な未知の異常兵器が確認されています。

    初撃を排除できなかったことで、インサージェンシー兵はヴォロロフスクの中央地区にまで浸透し、ロシア地域評議会所属職員の居住エリア、および病院や発電所などが所在する要地に到達しました。

    しかしながらインサージェンシー構成員が中央広場に侵入した際、SCP-RU-178が青みがかった発光を開始し、その後それと同じ色の霊素実体 (エクトプラズミック・エンティティ) が発現しました。これら実例は暫定的にSCP-RU-178-Aと呼称されています。

    SCP-RU-178-A実例群の発現数は237体に及びました。これらは霊素兵装 (エクトプラズミック・ウェポンリー) および軽度現実改変能力などの異常性を備えていました。

    SCP-RU-178-Aの妨害が功を奏し、インサージェンシー構成員を中央広場から排除することに成功しました。しかしながら機動部隊ѯ-23《マーチ・ラシヤ9》が到着するまで事態は収束せず、ヴォロロフスクが受けた損害は280万米ドルを計上しました。

    SCP-RU-178が呈した新たな異常性は現在研究中です。


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