妖狐捜索:第壱次報告書
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妖狐捜索プログラムその初めの報告書

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SCP-2953(看守たち)、
新玉藻(IJAMEA)

概観

鳳翔千仞 龍飛在天
蓍鬯通神 松栢需材
比之人類 何貴何賤
夫大道之害 莫甚於矜心 
人之所以貴人而賤物
矜心之本也


鳳凰は千尋を飛び回り、竜は天に届くほど舞い上がる。
鋸草と鬱金は神を通じて、松木と栢木は柱の材になる。
人の族類に比べて、どれが貴重でどれが卑賤しいのか?
抑大道を害する原因の中、自慢より深刻なものがない。
人が人類を貴重に思って、他物を卑賤しく思うことは、
その自慢する心の根本だ。

ホン大容ダィヨン『湛軒書』ダムホンソ「医山問答」ウィサンムンダブ12

知的存在を何か他の物に作り変えることは、仮に別の知的存在に変えるとしても、同意がなければ、罪悪と見なされるのは当然だ。しかし、人間の欲望には果てがなく、有史以来同じ間違いを何度も繰り返している。これはそのような貪欲な試みの一つと、その産物の話である。

知識

特徴: 二つの理由からこの行為の詳細はここに記さない。まず、この行いをするために必須の準備物である殺生石せっしょうせきが、現在は看守達の手の中にあるため、説明しても意味がない。第二に、私たちはこの狂気の行いを断念させ、それを試みたがる者は誰であれ制圧しなければならない。

この行いの基本構想は、殺生石を使って知的存在を人工的に妖狐にしてしまうことである。殺生石とは、12世紀に日本で死んだという伝説的な妖狐、玉藻の前の死体と伝えられる石である。IJAMEAの文書によると3、この石に接触した知的存在は、身体に狐のポリモーフィズムPolymorphismが発生することになる4。そして殺生石の有効成分を血管に注入することで、誰かを完全に妖狐にしてしまうことも出来る。

性質: 歴史とは、物的土台という常数と人間の意志という変数からなる函数だ。十分に強い意志は歴史=現実を改変することができる。これを奇跡学的作用という。

最も強い意志の一つは復讐しようとする意志だ。強い怨恨を抱いた誰かが死ぬと、その意志が心霊質エクトプラズムを形成し、その心霊質は悪意のある霊へと成長するが、この霊を韓国語では冤鬼ウヮングィ、日本語では怨霊という。怨霊は復讐相手を探し求め、その目標を達成するために生きた者たちを利用する。憑依possessionが最も一般的な手段であり、最悪の場合には生きた者の肉体を侵食して自分の生前の形象で作ってしまったりもする。怨霊の復讐を助けることで、生きる者達の領域を去るよう説得させることができる。しかし、復讐の対象が怨霊と無関係に一人で死んでしまったり、殺害された場合、怨霊は自分の復讐がこれ以上不可能になったことを受け入れずに暴走する5

しかし、最も強力な復讐の意志も歳月の流れに勝てず少しずつ弱くなり色あせていくが、これを貯蔵する適切な「殻」があったら保存できる。玉藻の前の殺生石が良い例だ。

歴史と関連組織: 1936年から1945年の間にIJAMEAは玉藻の前を「召喚」するための一連の人体実験を実施した(作戦名「ダッキ」)。奴らは殺生石の成分を抽出して朝鮮人の被験者たちの体に注入した。

1939年、IJAMEAは、一人の被験者を外見上完璧な妖狐にすることに成功した。数え切れないほど多くの凶物たちを作り出した試行錯誤の結果だった。だが奴らの「新玉藻」は知性を欠いていた。彼女678は尻尾が九つの成体の妖狐の身ではあったが9、知能は生まれたばかりの赤子程度だった。その後、IJAMEAの施設から脱出した彼女は、釜山プサンの夜の街を徘徊し連続殺人を起こした。 IJAMEAはやっと彼女を回収したが、彼女の肉体的・魔術的能力と知的能力を調和させることには最後まで失敗した。奴らは彼女を戦争兵器に変えることを望んでいて、生きた人間を餌として与え、それは問題の更なる悪化を招いた。

1945年に1011看守たちはIJAMEAの施設で殺生石を発見したが、新玉藻はIJAMEAの研究員たちの血まみれになった死体だけを残して血香の滲んだ空気の中に跡形もなく消えた。

我々は1985年に日本で殺生石実験に関するIJAMEA側の文書をいくつか入手することができた。それ以来、私たちは新玉藻の跡を追ってきたものの121314、成果は芳しくなかった。長い間これといった進展がなかった中、2009年に韓国の有名な怪談ブログに2件の記事が投稿された。この二つの記事は、長い白い毛に覆われ、顔立ちがはっきりしない、奇怪な人間型の実体と遭遇したと別々に主張した。彼らの目撃談によれば、その出来事はそれぞれ10年前と25年前、すなわち1999年と1984年のことだった。

両目撃談とも目撃場所として萇山を挙げた。萇山は釜山広域市(新玉藻の最後の目撃地)の中央に位置する死火山だ。このいわゆる「萇山の虎」チャンサンボムはしばらくインターネットで未確認動物として人気を集めた。その後、多くの記事が掲載されたが、これらの記事に共通して発見された要素は次のようであった。

  • 大層長い白い毛で覆われ、まるでギリースーツのよう。
  • 幻覚能力、特に声の模倣能力。
  • 長い毛のせいで顔がよく見られず、不気味な眼光と鋭い歯だけが見える。
  • 高い機動性で山を非常に速く登ることができる。
  • 声を模倣して人を誘引して食らう。

財団やGOCのような抑圧機関たちは、これらの情報に価値を見出さなかったり、調査をしたりしたとしてもたいした別物は見つからなかったようだ。萇山の虎に関するインターネット掲示物がほとんど統制されていなかったことが、この仮説を裏付けている。さらにはこの「萇山の虎の流行」に便乗してもろもろの馬鹿げた漫画映画も作られてるけど、やつらはこれらが作られるのを全然抑制していなかった15

しかし、2020年に妖狐捜索プログラムで我々が彼女を発見した。

彼女はある岩窟の中に住んでいたが、この岩窟は火山岩屑流に覆われていたのでそれまで発見されていなかった。彼女はこの岩層流の下で70年以上も隠れ住み、時折岩の隙間から這い出て落伍した登山客や地域住民を含む動物を食いつないで生き延びてきた。

いかに彼女が白痴な人造妖狐で、慢性的な栄養失調に苦しんでいるとはいえ、尻尾が九本の妖狐を相手するのは大変難しいことだった。我々は熾烈な戦いの末、彼女を捕獲するのに成功した。ヨン印形sigilの術が制圧に大きく役立った。特殊な印形を捺した犬首輪を利用して16、我々は安全に彼女を図書館の周辺部の我々のベースに連れて帰った。

隊長は17彼女を殺さなければならないと主張した。しかし、その主張はミッドナイトMidnightの言い伝えによって阻まれた。ミッドナイトは彼女の死に反対する蛇の巣Serpent's Nestの意向を伝えてきた1819

イラストレーション

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我々が彼女を見つけた岩窟を覆っている萇山の岩屑流。

観察と物語

Hx
ではこの……存在の処理に関する議論を始めよう。我々は自由な人たちの自発的結社だから、自由に発言するように。そもそもこの隊長の座に私を再び置いたのも私の考えではないから、私の顔色を伺わないで。
M.
蛇の巣の立場をもう一度言っていいかな?
Hx
ええ。そして終わったらさっさと失せろ。
M.
蛇の巣は彼女の死に二つの理由で反対している。まず一番目に、蛇の手は看守でもないし、首斬ではなおさらではない。私たちをこの世の圧制者たちと区別させるその線を守らなければならないということだ。二番目に、巣は偉大な驚異の種族である妖狐の絶滅を阻みたがる。たとえ人工的なものではあるが、この種の絶滅の危機を防ぐのに、彼女は十分役に立つという話だよ。
S.Y.
言われた通りにしなければならないのではないですか?
Hx
蛇の巣は我々の連帯体であって上級団体ではない。助言と言うのを参考にすることはできるけど義務的に従う必要はない。我々の総意が彼方と一致しないなら、ただ「ファックユー」Fuck youと言い、我々の能事をすればそれまでだ。そう、私が先に話すべきかな?それとも先に話したい人いる?
Mrghn.
あなたが先にやって。
Hx
そう。まず最初に明らかにしたいのは、私は妖狐種族の保存という概念自体に同意できないということ。この血脈は正常世界と超常世界の両方の人々のために断絶されるべきだ。蚊を殺したり細菌を滅菌するために首斬になる必要はない。
M.
うわあ、もう分かってはいたんだけど、あなた自身の種族に対するそんな嫌悪に満ちた発言をあなた自分の口から直接聞くなんて、かなり衝撃的だね。
Hx
我々の論議が結論が出るまであの怪しからんスピーカーを消してしまえ。これからは黙って聞くだけにしろ、ミッドナイト。これは我々の問題で、これ以上割り込むのはノーNoウェルカムWelcomeだ。
Mrghn.
ミッドナイトがスピーカーをまたつけてくれと駄々をこねているが。
Hx
無視してしまえ。
Mrghn.
そうするよ。
S.Y.
えっ、この存在って本当に元々人間だったんですか?
Y.Y.
隊長。私は彼女を普通の妖狐のように扱うのが不適切だと思いますが。元々は人、正常な人間だったじゃないですか。
Hx
しかし、彼の精神はもうどこにも見当たらない。 ただ冤鬼によって変形した肉のかたまりと、その中に隠れている獣の魂があるだけ。どうしてこれとその人が同一人物と言うのが妥当できるか。
Y.Y.
確信が持てますか?もしかしたら、その意識の深層に元の精神が閉じ込められているのかもしれませんか。適切に相互作用すれば、その精神が蘇るようにする方法を見つけるかもしれません。それとも少なくとも今の彼女に人間として守るべき規範と道徳を教えることができるかもしれません。その可能性を最初から剥奪するのは不公正ではないですか。
Y.L.
僕の考えは違うよ、姉御。たとえ人間だと認めてくれたとしても、それなら1945年以降に起こしてきた犯罪は全部どうするつもり?しかも、日本軍は生きた人を餌として食べさせたそうだ。妖狐としての生は、作られた瞬間から、人道に対する罪の連続だったんだ。人間であることを認めるなら、自分の人生に刑法的に責任があり、死刑は避けられないと思う。
B.B.
一つ念頭に置かなければならない点は、彼女の知的能力と肉体・魔術能力の間の不一致が、IJAMEAの隔離と実験のせいということです。食人は生存本能の表出の結果であって、あえて人だけ食べようと意図したのではないでしょう。
Hx
それでは絞首刑になる人間と害獣駆除になる有害鳥獣の違いはなんだ?あれもこれも死ななければならないのは同じじゃないの。
H.H.
ビッグ・ボーイの言葉は、ほとんどの妖狐は経験によって作られた自由意志によって意図的に人間を殺し食うという点を指摘したいのだと思います。しかし、この場合は違うということです。私の言ったことであってる?
B.B.
そう、ありがとう、喜至フィジ
H.H.
隠れ家で見つけた証拠から推測すると、別に人間だけ食べたのではなく、全ての動物を食べるに任せたと見なければならないようです。もしかしたら、こんなに長い間大衆の関心や抑圧機関のエージェントたちの監視網に捕捉されなかった理由がそのためかもしれません。
Mrghn.
では結局、問題の核心は人間の倫理のない存在の罪をどう問うことができるかということだね。それにその倫理の不在が人間社会からの隔離のためで、その隔離は自らの意志でなかった場合にね。

疑念

我々は新玉藻を殺さず、日本列島の蛇の手を通じて遠野妖怪保護区に送ることにした。もしかすると日本の同志たちの助けを借りて人間性というのを悟るようになるかも知れない2021

にも関わらず、依然としていくつかの未解決問題が残る。彼女が自分の罪が許されないことを理解するようになれば、その時またどうすれば良いか?いくら責任を阻却するとしても、彼女に食べられた被害者たちの存在は否認できないのである。最悪のシナリオは、彼女が適切な知的水準にたちした後、脱走してしまうことだ。そんなことが起きれば、我々にその責任があることは避けられないだろう。

こんな惨事が発生するのを防ぐため、新玉藻を日本に送る前に禁制をかけておいた。これらの禁制を解呪する鍵は我々の隊長が持っている。

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