CK-クラス:再構築シナリオ
定義: 現実の再構築のシナリオです。歴史に重大な変化を引き起こす(正史を書き換える)、物理法則や宇宙の作用を変化させる、その他、現実の全てまたは一部を変化させるということを意味しています。
はてさて。君たちも財団職員なら『正史を書き換える』ということは誰しもが理解できるはずだ。アニメや映画でよく見る題材だからね。だが、必ずしもそうではないのだ。
SFにおいて二つの考えがある。簡単に言えば過去で何かをした結果、未来が書き換わるという考えと、何をしても未来は変更されないという考え。
私の言いたいことというのはつまり、この世界で適用されるのは前者なのか後者なのかわからないということだ。
しかし、我々は世界を維持するためにも発生する『事象』すらも管理していく必要がある。例えそれがどんなに愚かな行為だとしても。
エージェント██はその任務内容を見て愕然とした。指令書を渡した上司に何度もこれを本当にやるのかと問い詰める。
「正気ですか、あなたも、O5も」
「勿論だ。これが発生しなければCK-クラス再構築シナリオの可能性がある。万一に備え、君は過去のとある人格に入ってもらう」
彼は納得ができなかった。それは表情からも見て取れる。上司は大きくため息をつき、財団が導き出した可能性を話す。
「いいか。こいつが存在すれば、ある人物が生存する。彼によってSCP-███の収容違反が発生する恐れがある。もう1度言う。世界は君の手にかかっているんだ」
彼は納得できなかった。それでもこの世界を守るためにはやらなければならない。
財団の時空管理部門。その一室にその装置は存在する。それは精神を過去へと送り、今回のように歴史の改変を防ぐ手段となっていた。
彼は装置に入り、目を閉じた。しばらくすると精神が引っ張られる感覚が彼を襲う。そして、体が浮き上がる感覚。彼の意識は別の肉体に移っていった――。
「――D-█████」
当時の財団職員から名前を呼ばれる。どうやらこのD-█████が入団した時に着いたようだ。
彼はD-█████となり模範囚として財団に貢献した。そもそも目的の物は模範囚でなければ手に入らないからだ。
その日は刻一刻と近づいてくる。作戦は順調そのものだった。
彼は作戦実行の前日に仲間と酒を飲んだ。明日を考えるとやはり不安は襲ってくる。
失敗しなければいいが。
彼は不安を振り払うかのように、酒をどんどん煽るのだった。
次の日の夕方。彼は尋問室で調査官に尋問されていた。
「D-█████。君は模範囚だった。なのに何故こんなことをしたんだ」
「ふ、二日酔いの治療です」
SCP-500
補遺500-5: SCP-038の実験中、D-█████により1錠盗まれました。聞くと、"二日酔いの治療"とのこと
かくして、世界は守られた。