two-egg 18/09/18 (火) 04:12:59 #15072849
スカンクエイプはヒト科の未確認生物。名前は読んで字の通り。犬の吐く息と腐ったハマグリを混ぜたような体臭がする。ビッグフットが北アメリカで一番有名な未確認生物なのは周知の事実だが、スカンクエイプはもっと知名度の低い亜種だ。最大の群れはビッグ・サイプレス国立保護区に棲んでいる。
もっと人間の傍で暮らす時、スカンクエイプはかつて人が住んでいた場所 — 例えばホームレスの野営地などをねぐらに流用することが多い。生息地の深刻な気候変動、塩水侵入、海水面の上昇などから、スカンクエイプは2030年までに絶滅するだろうと推定される。
この生物は大抵、別種のビッグフット科と同じような体格だと描写される。大きな違いとして、スカンクエイプは体付きがもっとずんぐりむっくりしているし、暗い色の長い毛皮があって、目は非常に光を反射する。もし近付けば、周りの空気は強烈に蒸し暑い湿気を帯びているはずだ。普通のフロリダの湿っぽい気候に輪を掛けて酷い。
毛皮に触ると焼けるような感覚が残る。野生のスカンクエイプに遭遇する可能性がある時は、長袖の服と目の保護具をしっかり身に着けたほうが良い。スカンクエイプの営巣地を特定する最も確実な手段は、インターネットや地元紙(まだ印刷しているなら)に目を通し、行方不明になったペットや家畜やアルコール飲料樽の急増を探すことだ。後に残された痕跡によると、彼らはほぼ常に集団で移動する。そして彼らの足跡は蛇行、引き返し、行き止まりを頻繁に繰り返すことで悪名高い。スカンクエイプの毛皮は非常に脂ぎっていて、謎めいた移動経路に足跡がくっきり残るのは非常に稀な事例だ。彼らは専ら夜行性の生物で、暗色の毛が撮影を困難にしている。
食性は判明していないが、行方不明のペットを骨だけに変えた記録がある。
スカンクエイプは人間の歴史が示す限り昔からフロリダ州に存在する。先住民部族のミッコ―スキーとセミノールはビッグフット的な生物についての記述を残した。フロリダ東海岸鉄道の労働者たちはスカンクエイプが1頭捕獲されたという噂の源だった。それによると、鉄道王ヘンリー・フラッグラーは捕獲した個体をポンセ・デ・レオン・ホテルの専用スイートルームで飼育していたらしい。
典拠は疑わしいが、フロリダ州第19代知事のナポレオン・ボナパルト・ブロワードが、1907年に浚渫工事現場の視察で未確認生物を見た経験から“スカンクエイプ”という造語を生み出した、という話もある。
1960年代のC-38運河の建設中には、多数のスカンクエイプが人間の居留地やその周囲で目撃された。これによって人間とビッグフットの間の緊張はかなり高まった。エバーグレーズ湿地帯へ人間がますます進出するのに合わせて、1970年代後半までにスカンクエイプの目撃情報はより一般的になった。
1977年、スカンクエイプの領土侵入への対応として、フロリダ州議会に“類人猿または人間型動物に危害を加え、虐待する”ことを犯罪とする法案が提出された。この法案は通過しなかったが、現在までに州が法律でビッグフット科の生物を保護しようと試みた中では最も成功に近い出来事だった。
“初めてスカンクエイプを直に見た時、私はパラトカで最初の夫と一緒に暮らしてた。新しいトレーラーハウスに引っ越したばかりだったの。古いのは床が凹んでたし、不愉快な泊り客のせいで公衆便所かって思うような臭いが染みついちゃったから。
あの頃の私は激務に追われてたし、軒下に棲み付いた野良猫一家の面倒も見なくちゃいけなかったから、あんなクソみたいな事件を我慢するのもいい加減限界だった。だから真夜中に酷い臭いで目が覚めた時、「畜生、リックが私物を取りに帰って来たな」って思った。肉切り包丁を掴んで、失せやがれって怒鳴り付けようとドアまで走っていった。
リックじゃなくて、何かデカい生き物が猫の餌皿の上に屈みこんでた。自分が何を見てるのか理解しようとして、暫くぼんやりしてた。目が合った時はお互いに凍り付いた。でもその時、あいつが抱えてるものが見えた。もしあいつが、私の赤ちゃんを連れて無事に逃げられると思ってたなら、とんだ間違いよ。
包丁はあまり役に立たなかったわ。私は世界一の運動選手じゃないけど、奴が手に何を握ってるか気付いた後は1ナノ秒で最初の一撃を食らわせてやった。でもその後、ボサボサの毛皮に絡み付いちゃってね。けれど奴はデイジーを落として、森の中に急いで逃げていった。
それが私にとって全ての始まり。奴が逃げた場所のフェンスには血が付いてた。肉切り包丁は結局戻ってこなかった。良い包丁だったから時々惜しい気持ちになる。でも今の生活を守れたと思えばそれで満足。
あれ以来、二度と同じような臭いは嗅いでないけど、いつかまたそういう日が来るのは分かってる。準備はできてるわ。”
— ダーレン・ウォーノスの音声記録
two-egg 18/09/18 (火) 04:15:35 #15072856
ある子供の誕生日パーティー記念ホームビデオの書き起こし。映像は既に失われている。
蝋燭で照らされた裏庭。幼い少女とその両親がピクニックテーブルを囲んで座っている。赤いチェッカー柄のテーブルクロス。
> 父親: お誕生日おめでとう!
>
> 母親: さぁ、蝋燭を吹き消して!
>
> 子供1: 明日から学校がずーっとお休みになりますように!
>
> 大人1:(画面外) 今回の誕生日会は随分と気合が入ってるねぇ?
>
> 大人2: 全くだよ。俺たちに恥をかかせたくて頑張ってんのさ。子供らがケーキを食べ終わったら、ウサギの着ぐるみがガレージから出て来て一緒に遊ぶ予定になってんだぜ。
>
> 子供1: ねぇママ、なんか臭い!
>
> 母親: あら、あなたったらそんな… これ何? ねぇ、何なのあれは?
>
> 大人1: ウサギじゃない。
>
> カメラが取り落とされる。以降、テープが終わるまでくぐもった声しか記録されていない。
two-egg 18/09/18 (火) 04:28:19 #15072918
1961年、セバスチャン・コロナードがデイド郡公安局に書面で提出した声明の書き起こし。
伴侶に先立たれると人生は変わります。私は妻を失いました。私は怪物ではありません。皆様はそこに怪物が潜んでいるのを信じないでしょう。
保険金を手に入れ、自由な暮らしができた私は幸運でした。妻は私の破産を望んではいなかったでしょう。いつも妻と話し合っていたように、私は昔ながらの家を新しく改装しました。まだとても寂しくて、厳しい生活でしたが、私は生きていました。一人暮らしを始めてから、私は彼らを見るようになりました。
いつも回転し、左右に動き、見開かれて私を観察する膨れ上がった赤い目。ススキやマングローブの陰から、沼地の奥から。その時にはもう既に彼らの臭いが感じられました。腐った卵と猫のトイレ砂をピザ窯で焼いたようなあの悪臭が。
私は快適なプライバシーなどありませんでした。ああ、私たちはプライバシーをごく当たり前のように考えている。どれだけ遠くへ行こうと、どれだけ長く家を離れようと、私は常に視線が待つ場所へ帰らなければいけませんでした。彼らは私を研究し、常に見つめ、ひたすら待っていました。
状況が悪くなったのは犬を喪った時からです。可哀想なリトル・ビット。柵越しに噛み付かれて、森の中に連れ去られました。懐中電灯を掴む間もありませんでした。それで良かったのだと思います。骨の砕ける音だけでもう十分です。赤い目と絡んだ毛皮が幾つも幾つも柵の亀裂越しに慌てて逃げていきました。私にできたのは、朝まで身を隠すことだけでした。
次の日、嫌な臭いがしました。最初はビットだと思って、探しに出ました。母犬と同じようにまともな埋葬をしてやらなければと感じていました。彼らが私に残したのは間接の骨だけでした。当時、私は彼らが何を望んでいるか分かりませんでした。それが何であれ、私は殺されるに違いないとばかり思っていました。
本当にそうならばどれほど良かったでしょう。
隣近所の多くは立ち退きました。ビッグ・シュガーは土地が必要だったのです。けれど彼らは私を放置しました。暫く経つと、そこに居るのは私と彼らだけのように感じられました。彼らは私を見通していました。
その後、彼らは恐ろしい生き物ではなくなりました。正直に言って、私は感謝しました。時々、私が森の中に行くと色々な物が見つかりました。小さな… 骨の彫刻、結び合わせた棒きれ、並んだ岩、何かを引きずった跡が残る土。あれを見つけたのはその時です。森の中を歩いている間、彼らは周りにいませんでした。けれど足跡の真ん中を掘り返すと、そこに彼女が居ました。少なくとも、彼女の残りが。
あれがどうやってそこまで辿り着いたのか、私は他に何も知りません。しかし、神に誓ってこれは真実です、私は彼らがあそこから掘り出した骸骨には何もしていないのです。これが私の知る全てです。
コロナードは故殺罪で起訴されたが、裁判に至る前に検察官との司法取引に応じた。彼は1976年に釈放され、1981年に死亡が確認された。