
諜報報告は明らかにしている――ゼーレは人類補完計画を実行するつもりだ
畜生め
私はNERVに対する総動員を提言します。JSSDF(戦略自衛隊)は6時間以内に我々のエージェントや中国軍とともに完全に展開する事ができるでしょう
それで充分だろうか?
国連の全任務部隊は36時間以内に展開することが可能だが、それでは間に合わないかも知れない
一体何人のエージェントが日本に潜伏している?
47人、主要な任務部隊の為に突破口を開くには充分です
良い。全てこれで良い。コード:Ω-1開始
賛同
同意
認可
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O5評議会の要請による
注意
我々は現在、コード:ブラックにある
繰り返す、我々は現在、コード:ブラックにある
封印コード:Ω-1開始
全非戦闘員は直近の安全地帯へ出頭せよ
全戦闘員は配備に備えよ
繰り返す、我々は現在、コード:ブラックにある
確保し、収容し、保護せよ
—
計画は、理論上では簡単だ。日本に潜伏中のエージェントと中国のサイトからの工作員は、NERVに潜入しMAGIにハッキングを仕掛ける。この情報は第3新東京市を攻撃する追加の財団機動部隊と国連軍本隊に渡される。EVAパイロットは、碇ゲンドウ、冬月コウゾウ、赤木リツコ、その他のネルフ高官と一緒に捕獲又は抹消される。可能であれば、ゼーレの構成員達を探し出して抹消する。EVA自体は、ネルフのコントロール下にある他のSCP級アイテムと同様に、破壊される。人類補完計画の重要な構成要素を一つでも破壊できれば、この作戦は成功する。
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侵入は、最も簡単だった。覚醒した使徒達による破壊(TV1~24話の連戦のことだと思います)がネルフをボロボロにし、人手不足にしていた。医師免許を提示し、2、3質問に答えるだけで良かった。これら新任の医者達の3人がMAGIサーバーの収容所で行方不明になった事も、正規の技術者達が長すぎる休憩をとっているように見える事にも誰も気づかなかったようだ。
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シャンクは素晴らしい装置だった。バックパックくらいの大きさでありながら、MAGIの防御をバターのように切り裂くのに充分な力を持っていた。財団はMAGIの情報を得ると直ぐに開発を開始していた。ネルフは機能性AIの分野で財団を打ち負かしていたので、開発のための最も合理的な方法はそれに対するフェイルセーフを設計することだった1。これはNERVが最終的には同じ非常に両極端なナルシスト(赤木ナオコ博士?)に基づく彼らの3つのAIであるとする2と、信じられないほど難しいことではなかった。
装置から音が鳴った。MAGIの防御を打ち破ったのだ。約20分間のアクセス可能時間を得られたが、それは本隊に送る主要なデータを得るのに充分だった。MAGIが最終的にシャンクに反応して克服するのに充分に適応すると、シャンクはそれを使ってMAGIを落とすだろう。MAGIから得られたデータはオベロン(フェイルセーフは財団が作ったものだけではない)に注がれ、TACNETにコンパイル、拡散、追加されるだろう。
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一方、JSSDFと中国海軍の混成軍は、第3新東京市の港に近づいていた。
それぞれのエージェントのヘルメット内部につけられたヘッドアップディスプレイは、新しいデータで輝いていた。 田中将軍の声は、任務部隊のそれぞれのヘッドフォンとスピーカーから聞こえてきた。
「将軍の田中だ。TACNETはEVAパイロットの識別および状況を更新した。こいつらの確保が我々の最優事項だ。パイロットはEVAと接触していない。接触を防止するために、致死性兵器の使用が許可されている。 他の主要なターゲットは全て見敵必殺だ」
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「最低だ、俺って」碇シンジはやっと自分が行ってきたものを信じることができた。
彼は誰をだましていたのか? もちろん、彼はそうやってきた。それが彼のすべてだった。本当に? 気の触れた役立たずなだけだった。彼には何の価値もなかった。 何もない、何も、何も。 クソですらない。 クソにはまだ存在するだけの理由が幾つかあるのだから。
ドアが開いた。2つの輪郭が歩いてきた。手術服を着た男と女が一人ずつ。シンジはその場で身を固くした。絶対的な羞恥が沸き起こった。
男はアスカをちらっと見た後、シンジを睨みつけた。
「いいかげんにしろある。ちんこしまえある」
シンジがノックアウトされる前に、男が中国訛りで話していることに気づくだけの十分な時間があった。 彼の無意識になった体はくずおれた。
エージェントバオとミンはすぐに働いた。シンジは病院のガウンを着させられ、車椅子に座らされ、アスカはシーツで包まれ、車輪付きのストレッチャーに置かれ、廊下へと運びだされた。誰かに尋ねられたら、そいつらは外科病棟送りになるだろう。バオとミンが幸運なら、JSSDFの襲撃前に国外に行けるだろう。 これまでのところは良い。彼らはホールで誰にも遭遇していなかった。
前方のエレベータは損傷していた。いくつかの足音が追ってきた。 20代後半の女性が角を曲がるって廊下に現れ、固まった。彼女は襟に佐官のストライプと、葛城ミサトと読み取れるネームタグをつけていた。 彼女の手は素早くベルトへ伸び、財団のエージェントに向けてピストルを掲げた。
「知らない人ね……誰? あなたは何をしているの?」
エージェントは、壁の両側へ素早く移動し、それぞれの武器を葛城がやったようにドローして発砲した。ミンは弾丸を胸に受け床に倒れた。葛城は出血した腹部を抑えながら膝をついた。バオは足を踏みしめてセカンドショットを選択した。タイルに血だまりを作りながら、佐官の体は後ろへ倒れこんだ。バオはパートナーを見た。佐官と同じくらい死んでいる。今弔うための時間はない。ここに2人のパイロットがおり、彼だけが彼らをどうこうすることができた。サードチルドレンが最優先だった。セカンドは負債だった。 バオはストレッチャーを跨ぐと、ためらいなく、彼女の目に間に弾丸を撃ち込んだ。 彼はそれが慈悲の行為であるとを知っていた。そうするのに十分な量の彼女についてのファイルを見ていたのだ。
彼は車椅子からシンジを抱き上げ、肩に掛けて、走った。
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2時間後
第3新東京市外郭防衛は使徒によって既に崩壊していた。地上部隊の上陸は最小限の戦闘ですんだし、NERVの施設は、同じくらい簡単に破られていた。
そこは煙と悲鳴と銃声に満ちていた。JDSSFがNERV本部に深く分け入ると、NERVの廊下という廊下は死体で散らかされていた。
9つの大きな影が破壊された街に浮かび、それらのペイロードを落とした。
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EVA投入さる! 全艦、砲撃!
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砲弾や機関銃の火は9体の白いEVAのATフィールドに弾かれた。だらしない唇のにやけ面で、9体は艦隊を攻撃した。
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碇ゲンドウは走っていた。 彼は高校の体育の授業以来、走ったことがなかった。 彼はぜぇはぁ言っていた。
ターミナルドグマへ至る巨大な封印の扉が開かれた。 リリス―――ウボ=サスラにしてSCP-001―――の死体が、十字架に架けられていた。
彼は浅瀬にレイを置いた。 少女は空虚な顔をして、彼女の "母"である、巨大なエイリアンの死体を見た。 彼女の顔は常に空虚だった。
ゲンドウは彼の手に埋め込まれたアダムの胚を見た。 時間だ。 ユイと再会できるだろう。
「司令」赤城リツコの声が後ろから聞こえた。ゲンドウは、振り返って、そこに立つ科学者を、彼女の手にピストルが握られている事を、それが彼に狙いを定めていることを見た。「私は(MAGIの)自己破壊モードを開始しました、司令。ここで一緒に死んでちょうだい……」
碇ゲンドウは笑った。 それはユーモアを欠いて、実に乾いた笑いだったが、彼は笑う時はいつもこうだった。そうでない笑いは、もう長いことしていなかった。
「実は、赤木博士、真実は……」
彼の言葉は、彼の右テンプルをぶち抜いた50口径の弾丸によって遮られた。赤木リツコ博士は振り返り、彼女自身の頭蓋骨が吹き飛ばされる前に、何が起こったかを理解するのに十分な時間を得た。水に着色料を混ぜるが如く、血はLCLと混合した。
ファーストチルドレンがそこに立っていた、血液と脳漿でまだらになって。彼女は全く反応しなかった。 外観だけでは、彼女は10歳くらいに見えた。彼女の目は(普段の)空虚な心と生気と感情のなさを裏切っていた。彼女はゲンドウの体を跨ぎ、彼の腕を持ち上げた。 表情を変えずに、彼女は彼の手をもぎ取り、食べた。
ピカッ、バンッ、バチャッ。 彼女は倒れた。
チームはガスマスクをシュコーシュコー言わせ、(血とLCLで)ブーツをバチャバチャ言わせながら、死体をかき分けてやってきた3。チームリーダーはTACNETの回線を開いた。
「目標を3つ始末した。碇、赤木、そしてアヤナ―――」
彼の言葉は遮られた。レイの身体が名状しがたい輝きで爆発したのだ。アダムの力が顕現し、リリスへの道が開き、全ての劣った存在はその場から焼き払われた。巨人は覚醒した。生きるものはすべての母へ還るのだ。
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量産型EVAは、誰かに呼びかけられたように、艦隊の破壊を中断した。彼らはまるで一つの生き物のよう、黒い翼で飛び立ち、完璧に同期して、現実を背景に、かろうじて目に見えるATフィールドを発し、自らの槍で自らを串刺しにした。
すぐさま、第3新東京市は大地を切り裂く大爆発によって塵と化した。 艦隊は1隻残らず爆風で焼き払われた。破壊の真っ只中に、かろうじて、それ自身の輝きの中に認識できる、人間の胎児のような格好の、大きな白い姿がうずくまっていた。 ゆっくりと、滑らかな動きで巨人が立ち上がった。大きな翼は、その過酷な輝きで世界を侵し、傷ついた大地に数マイルに渡って展開した。 九つの小さなドットが巨人の頭の上できらめき、地から立ち上る蜃気楼のようにたわみ、混合し、融合し、踊り、世界を終了させる歌は見えずとも最高潮へと達していった。
大洋を挟んで、O5-1が破壊と震える配信動画を観ながら座っていた。 一つの文章が彼女の机の上のインターホンから来た。
最後の切り札の配置と発射準備完了
NERVは巨大ロボットと人智を超えた古代のエイリアンのアーティファクトを持っているかもしれない。 それは魂の機能について深く掘り下げることに成功しているかも知れない。それは一貫して、財団に掌握されていないかもしれない。 それはSCP-001を復活させられるかも知れない。しかし、それが持っていないものが一つあった。次善の策。
軌道レールガン、特に異常なし
発射
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ヒトの目に捉えられない速さで、大気が赤く焼け、オレンジ色に波打ち、白く引き裂さかれた。
ロンギヌスの槍が光速の15%の速さでリリスを貫いた。
一瞬のうちに、150マイル内のすべてが消え去った。
沈黙があった。
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オペレーション:神経圧迫4、完了
ステータス:成功
封印コードΩ-1、撤回
コード:ブラック、撤回
我々は今、コード:イエローにあります。
繰り返す、我々は今、コード:イエローにあります。
再収容手順α-δが開始しました。
確保し、収容し、保護せよ
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シンジは目が覚めた。 彼は病院の天井によって迎えられた。見知らぬ天井だった。彼はそのくらいは知っていた。 知ってる天井とは色が違っていた。
彼は長い時間そこに横たわっていた。何もせず、何も考えず。彼はただ消えたかった。ただ、消えてしまいたかった。そして、世界は彼を許さないだろう。 彼の父は彼を許さなかった。ミサトは彼を許さなかったし、NERVは彼を許さなかったし、全てが終わっても、彼はまだ行くことができなかった。 他の誰かも彼を許さないだろう。
彼はただ独りになりたかった、それがすべてだった。 それは彼が望む全てだった。 彼が何をしようとも、誰も気にしなかった。他の皆はただ死ぬことができた。
部屋は、彼が使っていたのよりも狭かった、そしてそれはNERVの治療施設の酷薄な青白色に比べて、柔らかい白色をしていた。 壁には小さいテレビがあり、ベッドサイドにはテーブルが、そして素敵な鉢植えと、プライバシーカーテン(引き戻し)と、いくつかの猫の絵があった。
しばらくすると、部屋の扉が開いた。 看護師が歩いてきて、シンジのラップボードにプラスチックトレイを置いた。 バターとジャムが乗ったトースト、スクランブルエッグ、オレンジジュースとミルクがあった。
シンジは、食品に触れなかった。トーストは冷めた。 牛乳は温くなった。 時間が経過した。
ドアが再び開いた。 今回はハゲかかった男が部屋に入ってきた。 彼は白いワイシャツとピンクのネクタイを着て、片手でクリップボードを持っていた。
「おはよう、シンジ」彼の日本語は堅苦しく、彼の発音は恐ろしい程ひどかった。ほとんどの場合、彼は機械翻訳から暗唱した。
シンジは答えなかった。
「シンジ、あなたは私を聞くことができマスカ?」
「英語で話しますよ」シンジはつぶやいた。
男は微笑んだ。 それは優しい笑顔だった。
「おお、それは良い。私の名前はグラス博士です。あなたに会えてうれしい」彼は病院のベッドの横に椅子を引っ張って、座った。