RAISAファイル: 要注意団体 [消滅済]
GOI-001: シカゴ・スピリットファイル作成日時: 1931年頃
GOIによる最後のファイル改訂: 1932年11月
ファイル回収日時: 1933年7月
[文章を以下に再現]1
Carroll 332: The Snitch Dungeons
キャロル2#332: 密告者の獄
Where It Is
何処にあるか
マンハッタン、17丁目。昔は病院として使われていたが、大戦の後に、俺たちがニューヨークでの活動に備えて買い取った。5階建て、両隣は下宿と銀行になっている。見落とすことは無いだろう。
何があっても、絶対に病室のドアを開けるな。
Who Knows About It
誰が知っているか
こいつは営業機密で、俺たちの知る限り、他の商売敵や財団の奴らにはまだ掴まれていない。シークレット・スピリットの閉鎖騒動で多くの者が緊張しているのは分かっているが、同じ失敗は二度と犯さない。ここの警備と密告者どもの監視を務めてる連中は全員チャペルに忠実で、身代わりに撃たれるぐらいのことはするだろう。
これについて話しても構わない連中に関しては、そう、いわゆる“噂の武器”が必要になる。俺たちに背を向けた奴らのための場所があると誰彼構わず打ち明けるのは止せ。だが、もし俺たちのバーで、リチャードが裏切り者をどういう目に会わせるか話し合ってる連中がいたなら、そいつらが行く恐ろしい場所の話を聞いたことがあると添えてやってもいい。殺されはしないが、死ぬことさえできればと願う場所。俺たちに背いたがためにそういう目に会わされる場所。
あくまでも曖昧にしておけ。知られていない事柄には、それが実際持っているのと同じぐらい強い力がある。
How We Made It
どうやって作ったか
1930年、俺たちは密告という問題を抱えていた。
この稼業には2種類の人間がいる。俺たちの友人と、他人様の友人だ。最初のうち、俺たちは友人を地元に留めようと努力し、俺たちの翼の下に入念にかくまっていた。かつてのスピリットは簡単に厳しい見張りの目を光らせておけた — 昔は身内付き合いしかなかったし、十分に提供できるネタが無かったから、最底辺のスパイでもシカゴ市警にタレこんだりしなかった。
ところが修正第18条のお出ましで、何もかも変わった。2年もしないうちに、専ら地元で動いていた俺たちは、全国的な密造酒帝国に成長した。金回りは良くなったが、同じく出費も嵩むようになった。警察やカナダ国境警備隊の買収、キャロルを注意深く監視し続けるための警備… そして勿論、雇い人だ。
俺たちは雇用を増やした。必要とあらば地元の商売敵とも手を組んだ。本当に信用できるか明確にしておけるほど、身内にしっかりと目を光らせてはいなかった。そしてシークレット・スピリットを開店した時、そのツケはとうとう俺たちを脅かしに帰ってきた。
法律から尻尾を掴まれるのを逃れる最良の手段は何か? 自分の存在さえも思い出させないことだ。どうやってかは分からないが、ボスは合言葉が無ければ頭の中からすり抜けていく闇酒場を作り上げた。“ジョーが俺を送った”という感じだ。しかし、ジョーが実際にはお前を送らなかった場合、お前はその晩自分が何処にいたか思い出そうとする度に困惑するだけになる。
アルコールはそれほど重要じゃなかった。本当に重要だったのは2階の取引部屋だ。厳選した客たちのための、不思議の国の最果てから届いた最高級の魔法の玩具。10年近く、シークレット・スピリットほど酒を飲みながら神と戯れるのに相応しい場所も無かった。
やがて、誰かが密告した。
1930年のクリスマス。財団はシークレット・スピリットを閉鎖し、常連を攫い、最高のキャロルを幾つか盗んだ。ボスはどうしてこの事件が起きたか知ることを求め、原因発覚まではそう長くはかからなかった。クイーンズ区のアルベルト・ジョーンズ、最初のマンハッタンでの商売を切り回すために、1921年にスピリットに雇われた男だ。地元のギャングに所属歴があり、能率的で無慈悲だという評判だった。
そして臆病者でもあった。このチビ助はある晩、へべれけに酔った挙句に別れた女房のアパートへ押し入り、俺たちの内情を何もかもゲロって減刑された。その瞬間その場で、ボスは二度と対価を払わずしてスピリットを裏切らせまいと決めた。伝言を送る必要がある — 獄がその手段だった。
シークレット・スピリットの閉鎖から大体2ヶ月後、リチャード・チャペルは1人の不浄な司祭3を連れて廃病院に入り、そこを悪夢の館に変えた。ボスはどうやったのか誰にも明かさないだろうから、訊ねるな。
最高だったのは、アルベルトを見つけて自分自身の獄に閉じ込めた日だ。奴は慈悲を求めた。俺たちは与えなかった。
What We Use It For
何のために使うか
お前らは皆、リチャードの常套句を聞いているはずだ。 「我々を詮索するのも、我々と張り合うのも、もしその気があるなら我々を攻撃するのも君の自由だ。しかし、仮に君が我々に背を向けたなら、我々は決して許さないし、忘れることも無い」
その通り、俺たちは忘れない。
キャロル332は“密告者の獄” — 密告者を閉じ込める牢獄として使う建物だ。外見は平凡だし、中に入っても最初のうちは普通でない物に気付かないだろう。俺たちがいちいち回収していない、放棄された病院の設備が山ほど転がっている。だが、病室として使われていた部屋のドアは全て閉じていて、それぞれの奥には地獄がある。
まぁ、本物の地獄じゃないが、密告者どもに違いが分からない程度には近い。
俺たちを裏切った奴を見つけた時は、そいつの名前を声に出して言い、この写真の前で指を弾けばいい。
そうすれば、相手はすぐさま玄関口に現れ、反応する間も与えず俺たちが押さえつける。俺たちはそいつを引っ掴んで空き間の一つに放り込み、その後ろでドアを閉める。
そして地獄が始まる。壁は溶け始めて、部屋はニューヨークよりも広くなる。だが、何処へ行こうとも、奴らは決して出られない。いつも自分だけの獄の中にいる。
俺たちはそこで奴らの身に具体的に何が起きているか知らないが、奴らが脱出できないのは分かっている。奴らが大声で叫ぶから建物を防音しなきゃならなかったのも分かっている。確かな事を知っているのはボスと司祭だけだし、彼らは何も言わない。
リチャード・チャペルのデスクからの覚え書き4
密告者の獄で何が起きているか、多くの者が訊ねてくる。率直に言うと、君たちが仕事をこなして口を閉ざし続けている限り、知る必要も心配する必要も無い。しかし、君たちを発奮させ続けるために、軽くその好奇心を満たしてやろう。
あの写真に写っていた盲目の男を覚えているか? もし彼に実際には視力があり、君には無かったらと想像してほしい。もし君がこの男を信用し、誘導を任せ、家や職場への行き来を助けさせていたらと想像してほしい。そして、ある日、彼は楽しみのために君を車道に押し出そうと決める。
獄で起きているのはそういう事だ。背信。密告者たちは自分が何をしたか知っていて、そこで教え込まれる教訓を分かっている。彼らが叫ぶのは、悪夢が終わったように見えるや否や、また始まるからだ。
覚えておくがいい。この組織に参入した時、君は命以上のものを我々に預けた。もう何もかもうんざりだと思い切った時、君は死こそ最上の解放だと考えるかもしれない。そして、もし我々が許せば、実際にそうだろう。しかし、君のせいで何かを仕損じるようであれば、我々にはその特権を取り下げることが出来る。
獄は君への警告だ。心に留めておくよう奨める。