こんなものは全部まやかしだ。
財団はすでにあるべき姿は失ってしまっている。
SCP-001-JPが発生して、日本中が未曾有の事態に陥った。
財団はその原因を突き止め、そして社会の保護に尽力した。
ここまでは報告書の通り、嘘偽りは無い。
しかし、財団はこれを成し遂げられなかった。
不安定な天候、物資不足、外界との隔絶、日本に残された財団の資産だけでは到底補填しきれるようなものではない。
社会が疲弊すればそこで生きる人達も同じように衰弱していく。
そしてそれは財団職員も同様だった。
何もかも足りない。
正常性の維持もあったものではない。
SCP-001-JPは想像を遥かに超えた脅威だ。
そして、財団はついに現状に追いつけなくなった。
そして、要注意団体はそこに付け込んできた。
始まりはMC&Dの社員とか言う人物からだ。
あなた達はもう風前の灯火と、組織として体を成すのもままならないだろうと。
まったくもって事実だが、それを殊更言われる筋合いは無い。
しかしそいつは話を続けた。
これからは我々にお任せください。
そこからはあっという間だった。
すでに国内の要注意団体との連携はとっていたのだろう。
一斉に日本中でより社会に密接な活動を始めてしまったのだ。
無論そのような事はあってはならないが、今の財団にはそれを完全に阻止し、そして隠蔽するほどの力はなかった。
しかしその中で不可解な行動があった。
要注意団体は決して表立った活動はしないのである。
私が言うのも何だが、上の通りに財団にはそれを阻止する力は無い。
言ってしまえば今は彼らにとっても千載一遇のチャンスであるはずである。
ある意味、それよりを恐ろしい事態になるのに時間はかからなかった。
どんな手段を使ったのかは分からない。
おそらくこれもまた、隙をつかれてしまったのだと思う。
財団という組織自体に要注意団体の人員が干渉するようになっていった。
始めは財団との連絡が多くなる程度だった。
しかしすぐにそれは大きくなり、いつしか財団そのものを動かす立場までになってしまった。
日本支部という計画を立てたのも彼らだ。
日本支部理事会も各要注意団体の重役が自らなったものだ。
何故こんな回りくどい真似をするのか、それは彼らも現状を良しとしていないことであるらしい。
要注意団体にとっても今は決して望ましい状況ではなく、可能な限り打破したいと考えているようだ。
そして財団の乗っ取りはSCP-001-JPが無力化した後を見越したものだと言う。
財団を隠れ蓑にして安定した日本国内での活動、それが彼らの目論見である。
そんな蛮行を見過ごすだけの我々ではない。
しかし現状で財団の支配権をほぼ奪われた我々に出来ることが少ないのも事実である。
今はGOC極東支部と合流してこの状況を何とかしようと計画している。
しかしGOCも残された資産は少ない。
確実に厳しいものになるのは目に見えている。
しかしそれでも進み続けるだけである。
世界の守護は我々にしか成しえないものだからだ。
これに気づいたということは、君は"財団職員"なのだろう。
今君がどうなっているかは分からないが、あまりいいものではないだろう。
ひとまず君を我々と合流するようにさせる。
安心できる程の状況ではないが、我々は君を歓迎する。
共に戦う仲間として、そして財団職員として。