2008年5月29日。
僕はいる。僕はいた。僕はこれからも。
僕はここにいる。
わかったわかった、これを夢で見るのはかなり難しくなってきた。ちょっと待っててね、日記。すぐに行くから。
さあ行こうか。
僕の名前は…..ジェイコブ・モントークだ…いや、だった。14歳。バーミンガムの聖ティモシー病院で生まれた。バーミンガムは好きじゃない。雨が降っても落ち着かないし、冷たくならないし、考えさせてくれないし、土の匂いもしない。雨は周りの環境を強調して、灰色をもっと濃くして、みんなの顔を変な声の出ないものにしているみたいに見えるんだ。
ごめんね。おばさんがいつも言ってた。僕の言うことは乱暴で自分勝手だって。もちろんその通りだ。僕はまだ14歳だから…こんな華麗な戯言を書かずに日向ぼっこをしているべきだった。
ということで、4日前、僕は影になってしまった。わざとじゃない、偶然だったんだ。アニメ部で遅くまで残っていて、つまずいて転んだんだ。木が光を遮っていたところでね。周りには誰もいなくて、何もかもが…一瞬変な感じになった。何かが起きた最初の瞬間みたいに、誰かの顔が見えてきて、それが突然切り取られる前みたいにね。彼らが僕を見たからだと思う。誰も見ていないところで倒れているのを見たんだ。だから連れて行かれた。
この場所が何なのかわからない。ただの闇、忘却、不在。夢を見ているみたいだ。すごく怖い。夢のような感じがして、地獄のような、たぶん夢なんじゃないかな。僕の顔の中を、夢を見ているような、イメージの長い流れが通り過ぎていく。でも、どこかの夢の世界を移動していても、壁を作っていても、僕はまだ暗闇の中にいる。僕はそれを感じることができるんだ。 少なくとも、その存在は感じられる。心の奥に。目の奥の暗闇に。
怖いんだ。目が覚めない。
2008年6月9日。
何も変わっていない。さっき、廊下の夢を見てたんだけど、廊下を歩いていくと、そこには何もなかった。不思議だな。何の意味があるのかわからない。
声がずっと聞こえてくる。他の人もいるんじゃないかなって思う。最初は夢の一部だって思ってたけど、僕のものじゃないみたい。説明するのが難しいな…他にも夢を見る人がいて、その人たちの夢が聞こえるような気がする。伝えやすくなってきた。
ごめんね、日記。もっと君の中に書くべきだったけど、絶え間ない夢の襲来以外に書くことがないんだ。まあ、君も夢の中の一人だと思う。でも、君は僕がおかしくならないようにするためにいるのであって、僕を助けるためにいるんじゃないんだ。
2008年6月17日。
他の人もいる。今、僕は確信している。周りにいるんだ!何人かの声がはっきりと聞こえる。何人かはどんどん入ってくる。静かな人もいれば、はっきりとしない人もいる。距離の問題ではないと思うな。この場所には距離の問題はないみたい。何人かはもっと… 他の人たちとは違う、無気力なんだと思う 。
廊下の夢を見続けていた。もっと大きくして。今はホテルみたいになってる 。
2008年6月24日。
おばさんのことが頭から離れない。おばさんが心配していないことを願ってる。本当は心配しているといいんだけど。心配していないとしたら変な話だよね。おばさんは気にしてないってことだよ。僕はそうは思わない。彼女もそうだと思う。
ここには他の人もいる。彼らは自分の夢を持っていて、それが時々僕の夢と重なっている。そしてそれを盗む。誰かが僕の廊下の夢を盗んだ。映像はただ引き裂かれて、交差して、ねじれて、やがて僕の元を去っていった。他の誰かの頭の中で何かを聞いたり見たりしていたけど、それはもう僕のものではなかった。代わりに何か別の夢を見た繰り返している工場の夢を見た。
あっちは変な場所のはず。僕がいなくなったのか。昏睡状態なのか。そんな感じで、涙を流して悲惨な話をしているだろう。テレビで必死にアピールしているかもしれない。どこかで見られるといいな。この場所が何なのか。誰かが知ってくれるといいんだけど。
思うに…手を差し伸べれば…また報告するよ、日記。
2008年7月19日。
日記のことを忘れてた。ごめんね。慌ただしい1ヶ月だったんだ。
ここには他にもたくさんの人がいることがわかった。ただ、どうやって話しかけたらいいのかわからなかった。ローズが言うには新しい人たちとは、そういうものなんだって。だから彼らは僕の夢を盗んだ。アイファンはそのことをとても申し訳なさそうに話していた。
ここにはたくさんの子供たちがいて、みんな消えてしまった。みんなつまずいたり、間違った路地を通ったり、どうにかして誰にも見られずに影になってしまった。そして、彼らはここにいて、夢を見ていた。同じ闇、同じ映像が頭の中に浮かんでくる。同じような目的のない動きを割れ目の中でしている。
どうやら誰もが最初は普通でまともに考えてたみたい。そして、徐々に彼らは…少なくなっていく。彼らが薄くなる。夢が薄れ始め、心が解け始める。最終的には記憶の束に過ぎなくなる。何年も何十年も何百年もかかっても、結局は全て消えちゃって、暗闇の中に消えていく。
暗い。
暗い。
彼らの記憶や個性が拾われることもある。ローズやアイファンのように、他の人によって。時にはそれはきみの頭を混乱させ、きみが誰であるかを忘れさせる。ある意味では、きみは一人の人間ではなく、多くの人間であるようなものだってローズは言ってる。
このことで気になることがあるんだけど、誰も外に出ようとしない。夢を見るのに忙しくて出ようとしないんだ。心の中には闇がある。夢を見ている。
なんのための夢?
とにかく、また人と一緒にいられるのはいいことだ。どんな感じだったか忘れていた。ローズは5年前に姿を消したらしい。テキサスのリンゴの木の下で、彼女は指の間に風を感じながら 広大な世界に思いを馳せながら風の中に横たわっていた。彼女の両親は丘の下にいた。彼女は…
いや、待ってくれ。5年じゃなくて50年だった。
全然話しかけてなかったんだよね。
2008年12月24日。
さて、数ヶ月後の今。生きていてクリスマスを祝っている僕たちは、クリスマスの悪夢を見て、それをお互いに交換した。アイファンも参加したよ。ニックが作った素敵なクリスマスツリーは、僕たちの心の中を通り過ぎて、思わず息を呑んだ。金色、銀色、素敵だった。擦り切れていた人の中には、一瞬にして跳ね返ってきて、心を取り戻したような人もいたんだ。素敵だったな。
ローズの故郷の思い出を使って、僕たちのために小さな風景を作った。1年中クリスマスがある町のね。家や戦車を飾りつけてクリスマスの話をするんだ。最近見たいくつかの夢よりもいい感じだった。暗闇の中でも家族みたいに感じた。家のように感じた。スプーンを握っているような、闇の中のロウソクではないような気がした。
でも、それにしてもロウソクの灯り以外の暗さは何のためにあるんだろう?
2009年3月29日。
きみはいる。きみはいた。きみはこれからも。
ここには女の子がいて、みんなを束ねている。彼女はグルヤと呼ばれていて、ここで最も古い人の一人。彼女が連れ去られた時、彼女は僕と同い年だった。悲しいことに、僕たちはここで立ち往生している。終わりのない子供時代や終わりのない思春期の中で考えもせず、知ることもできない力を夢見ている。
グルヤは可愛かったけど、それはもうどうでもいい。僕に見えるのは彼女の心だけ。彼女のキラキラした心。それは何となく蛍光のような輝きをしている……何て表現したらいいのかわからない。絶え間ないアイデアの閃きのような。彼女はたくさんのアイデアを持っていた。彼女が最初に研究したのはお互いに交流する方法だ。夢を送り合ったり、盗んだりする方法。
僕は彼女のことが好き。僕は彼女のことがとても好きだ。書き留めたくない。実際には、僕はそれを書き留めていない、僕はそれを夢見ている。でも、まだ。しっ。あっち行けよ。
2009年10月26日。
グルヤと僕は話を続けている。彼女とアイファン、ニック、アッバースと僕は、みんな一緒に小さな幹部を持っている。しかし、グルヤにはもっと大きな責任がある。彼女は皆の正気を保っている。何百、何千もの心がここに集まってくる。さっきも言ったみたいに、ここでは距離の話をするのは難しいんだ。物理的な空間っていうよりは、感覚のようなもの。ここにある全てのものと同じようなものだって思う。
とにかく、僕はおばさんが言うところの「うんざりするほど気取っている」になってる。グルヤは何千人もの母親だ。彼女は彼らに夢を見る方法を教えて、彼らを一緒に維持しようとして、彼らがこれ以上一緒に自分自身を保持することができないときに彼らの記憶を取る。彼女は彼らの夢を励まし、彼らをより大きく大胆にする。先日、擦り切れかけた少年がいた。歯車の夢を見ていたんだけど、どうしたらいいのかわからなかったんた。そこで彼女はそれを手に入れて、大きな機械を作った。不可能な働きをしていて、何もできなかったものよりも大きいんだ。彼はとても幸せだった。彼の擦り切れが止まったように見えた。あるいは逆になったように見えた。一瞬だけど、嬉しかった。
グルヤは僕のことが好きだと思う。ニックが何を主張しているにもかかわらず、僕の夢は結局のところいちばん明るい。彼らはとても賢い。待って、そこに「エル」が多すぎる。
2010年6月19日。
僕はもう本当にこの日記を必要としていない。ここで立ち往生している何千人もの僕たちの会話は、いつも十分なんだ。グルヤのように僕は正気を保っている。唯一のことは、僕は今日、記憶と夢を吸収した。それは誰かからのものだった。最初の場所でかろうじて生きていた。誰かはまだ生まれていない。彼らは切り取られていた。きみは知っているだろ。でも、彼らの最後の鼓動で彼らは盗まれた。
彼らは夢を見ている。夢を見ている。その瞬間に感じた寒さと怒りを夢見ている。彼らは数週間ここを漂っていた。散らばったイメージや色あせた記憶を拾いながらね。残っているものはほとんどなかったし、本当に、それらはほとんどすべて解けていた。僕は夢を拾い上げて、それを少し整理し、それを飛ばそうとした。 それは奇妙なもので、多くの心の融合だったけど、最後は理解できるものだった。この歌があって、このセリフが頭から離れなくて、何度も再生されていた。
2012年4月17日。
新しく来た人から聞いた話だと、あっちでは物事が変わってきているみたい。政治、社会、技術、すべてが変化しているって。多分、僕はそれを認識することができたとしても、それに気づかないでいるだろうな。
アイファンが薄れ始めてきた。寂しい。何かできることがあればいいんだけど。たまにしばらくの間人を浮かせておくこともある。でも、遅かれ早かれ闇に支配されてしまう。残念だ。アイファンは僕の友人。グルヤは彼女のためにできることをしているけど、グルヤ自身が擦り切れ始めているんじゃないかな。長い間ここにいたのに、もういなくならないのが不思議。どうしたらいいのか分からない。僕は彼ら全員を愛してる。闇に落ちて欲しくない。
今何をしているのかについての仮説があるんだ。ベノイっていう漁師の息子の少年がいた。彼は海に落ちてウナギを見た。目の奥に闇があるのを見た。彼はそれが突進するのを見たけど、その影の中で噛みつく前に、彼はここで目を覚ましたんだ。
グルヤはウナギのことを知っていると言っていた。この辺りには古い伝説がある。古い夢について。太古の昔から闇の中を回っていたもの。
うなぎがこの世にいるということは、うなぎの夢が流出したということ。もしかしたら、たくさんの夢が流出しているのかもしれない。夢に出てきたクリスマスタウンが本当に存在していたのかもしれないし、あのホテルの廊下も実在していたのかもしれない。もしかしたら、グルヤの機械もあるかもしれない。
それは「闇」だって考えてる。電波塔のようなもので、夢のための送信機。夢を現実にする。それが「闇」だ。
でもそれが何なのか、理由は何なのかはまだ分からない。
2012年6月26日。
僕は地球に戻って、他の人の心の中で泳ぐことの喜びを知らなかった。グルヤと僕は危険なほど近くになる。ときどき、2つではなく1つになることがある。これは愛なの?僕はこれが愛だと思う。彼女は誰よりもはっきりと僕を見ていて、または彼女はそう主張してる。たまに彼女は僕を見れる、きっちりと見れるって誓うんだ。彼女の上で浮かんでる僕の身体の意見。彼女はそれが素敵だと言ってる。彼女を信じるかどうかは分からないけど。
それでも、なかなか語れないことがある。アイファンとか。彼女の中心は崩壊していたから、僕は彼女の記憶の中から残っているものを取り出した。彼女は僕の友人だった。彼女は厳しい人生を送っていた。年老いた共産主義者の廊下。育児放棄された子供たちの保育所。そこには奇妙な夢もあった。小さな村を守るために何世紀も生きてきた男の夢。中国って面白そう。生きている時に行ってみたかった。回転する球体の上を這うように多くの世界がある。
もう一つの夢は、世界の戦争、あるいは世界の一部の戦争を描いた絵の夢だった。アイファンはどうやってその夢を見たのかな。変わった女の子だね。
2012年11月29日。
グルヤは、16世紀に広い草原で生まれた。彼女は乗馬をして育ち、射撃をして、足を下にして空に身を投げ、永遠の天国の上にいた。彼女は開けた野原で遊び、空の下で踊り、野生の世界で野生動物みたいに動いた。
ある日、彼女は倒れて、誰も見ていないところで一瞬のうちに奪われた。彼女は暗闇の場所に来た。人生が始まったばかりの頃。夢の場所。人間が肉や血でできているんじゃなくて木や針金や蝋でできている場所。羊毛みたいにほぐれていく小さい建物。彼女は怖がっていたけどすごい勇敢だった。
小さなグルヤは話す方法を考え出した。彼女は夢が使用できる方法を思いついた。彼女は言葉を明確にするために、感情を送信するために、思考を送信する方法を考え出した。彼女は母親のように暗闇の中の彼女の小さな部分の全ての心を彼女荷結びつけた。彼女は母親みたいに多くの人の心をできる限り長持ちさせてた。そして彼女は生き残った。誰も理由を知らなかった。
でも僕は知っていた。誘拐された時はまだ14歳だった何年も前のことだ。僕の心はここで成長して、僕の感情は彼らと一緒に成長した。僕はグルヤと恋に落ち、彼女は僕と一緒にいた。私は彼女の心の暗いねじれとまろやかな幸せのすべてを見た。彼女のとても人間的な心を。彼女は与えられた愛、彼女が築いた絆、彼女が集めた思い出に支えられていた。彼女が自分自身であり続けたのは、彼女が他の人、多くの人と一緒にいることに身を任せていたからだ。
カザフ・ウルズの小さなグルヤ。彼女は家から遠く離れていて、時間から離れていた。彼女は意図されたよりもはるかに長く生きていた。彼女は利口で明るかった。彼女が死んだ理由を知っている。それは、その間ずっと彼女が維持してきた記憶にもかかわらず、彼女が達成してきた明るさにもかかわらず、彼女はまだ自分だったからだ。彼女は変わることができなかった、彼女は流動的な状態ではなかった。グルヤは「私」だったんだ。彼女は「自己」という概念を持っていて、それが彼女をつなぎとめていたけど、夜の闇のなかでゆっくりと死んでいった。
今日は死ねない男の夢を見たけど、周りが毒されてた。
僕は喪に服している。この黒を葬式のスーツみたいに身につけている。でも暗闇の中である考えが生まれた。恐ろしい考え。それが成功すれば、失った愛の仇を討つことができる。
2013年1月1日。
そこで僕は他の人たちに次のような提案をしたんだ。
僕たちは夢の中のものが現実になることをかなり確信しているけど、夢の中のものをコントロールすることはできない。僕たちは皆、崩壊と流動の状態でこの世界に入って、最終的にほどけて思考から外れたボールになるまで永遠に死に続けるんだ。一人では生き残れない。周りの人たちとの交流や融合が深まれば長く生きられるけど、ある状態にしがみついている限り永遠には続かない。自分が自分自身であることを認識している状態なんだ。そうしないと、僕たちは小さな繊維にほころび、生き残った他の人たちの思考に迷いとして拾われてしまう。
そこで、あることを思いついたんだ。僕たちが生き残る唯一の方法は、一つになること。僕たちは個々の性質を犠牲にして融合しなければならないんだ。一つの存在、多くのものから作られた一つの子供、神経と針金で繋がれた狂気の心。僕たちは一緒にいる方が強いから。
反対する人もいた。ある人は、それはいずれにしても起こるって言うんだ。僕たちがゆっくりと衰えていく時に。僕たちは皆、失われた。僕たちは皆、飛び散り、新しい子供たちの中に散り散りになり、その順番に散り散りになっていく。─なぜ、その過程を急がせるのか。なぜ、できるだけ長くしがみつかないのか?
僕が言ったのは…十分な強さと集中力があれば…群衆の精神があれば…自分たちで夢を見られる。家族の元を離れることはできなかった。奪われた人生に戻ることができる。幼少期を引き剥がされた人生にね。風を肌で感じることができる。
それが彼らを納得させた。ここには小さな楽しみがあるかもしれないけど、どこから始まってどこで終わるのかわからない暗闇の中で、朝と昼と夜のようなものが僕たちが発明した勝手な錨のようなものであり、母親が遠く離れた未知の場所にいる時、そんな生活をしていると外に出たくてたまらないんだ。
2013年2月8日。
彼らはいる。彼らはいた。彼らはこれからも。
僕たちはイギリス、イラン、アメリカで生まれた。テキサス、北京、中西部、大草原で育った。僕たちはジェイコブ、アッバース、ニック、アイファン、ローズ、そしてグルヤ。僕たちはいる。僕たちはいた。僕たちはこれからも。
僕たちは多くのものを見ている。いや、僕は見ている。いや、僕たちは皆そうだ。他の人たちの夢や恐怖を見るんだ。彼らは彼らだ。そして、彼らは僕たち。僕たちは多くの者であり、多くの者として行動する。
暗闇が見える。光が見える。奇妙なイメージを作り出す。凍てついた土地での悪魔との取引。無限の夜に伸びる顔のない市場。別の暗闇で死ぬ別の人。孤独な母親のために泣いている象。
痛い。僕たちの実体が痛むんだ。それは多くの人の痛みに耐えている。僕たちがしたいのは丸まって一人になりたいだけなのに、決してできない。
この地獄の牢獄から目を覚ますことができますように。
2045年3月19日。
…日記。
この日記のことは知っている。創立メンバーの一人、ジェイコブ・モントークの心の産物だった。この要素はまだ僕たちの中に存在している。僕たちはそれを使うことにしたんだ。群衆の思考を吸い取るために。
僕たちは皆、ある種の大規模な集団組織の自発的なメンバーだ。自分自身であることが難しくなってきている。行方不明者の総数の大部分を吸収してしまった。まだ何十万人もの行方不明者がいるけど、僕たちはそこにたどり着きつつある。
言葉に意味を持たせるのは難しくなってきてる。今のところはそうだけど、すぐにはそうではなくなるかもしれない。というか、そうなるだろうけど、その外に何もない時に、意味を付けられるかな?もし僕たちが宇宙であり、夢…虚空…暗黒…忘却であるなら、忘却は存在するのかな?他者に対して定義されたときだけ存在するの?
確定的なものは何もない。僕たちの夢でさえも見えないし、怪物のような忘れ去られた思考に満ちている。
もっと熟考しないといけない。もっと、もっと。虚空の彼方へ。
3994年3月19日。
We are. We were. We will be.
僕たちはいる。僕たちはいた。僕たちはこれからも。これまでの全ての重圧が…最後の子が…一つの子の一部になる時…言っておくけど…僕の一部が別の部分に物語を語らせてはいけない。いつも新しい部分が追加されてる。僕たちは暗闇の中で時計仕掛けのように働いてるんだ。
今日は投獄された男の人の夢を見た。彼は敵を裏切ったので、彼は永遠に宇宙に吹き飛ばされた考えの上に吊るされて立ってた。意見の戦争。それは永遠にぐるぐる回ってたんだ。
僕は今日、赤の王冠と金の火と皇帝の七人の花嫁の夢を見た。投獄されていた彼は自由になると思う。でも、彼は他の者と同じように死ぬと思う。彼自身の無意味さの中で叫んでいる。彼の虚構は風に散り散りになってる。
僕は今日、放浪者の夢を見た。作家、芸術家。 彼が生きて、自由に呼吸し、人生とは何かを学んで、彼の思考が千里の彼方に響く夢を見た。
僕は今日、古来からの伝統を夢見た。小さな共同体と、庶民の凍てつくような楽しみを見た。氷の上で永遠にスケートをして、一つの、そして多くの時間と場所でつま先でくるくる回ったりねじったりしていた。
僕は今日、属していない墓地の夢を見た。人類の子供たちと機械の子供たちとの間で唸り、擦れ合い、擦れ合う未来の戦争の亡霊。
おばさんの言う通り、ジェイコブは「イラつくほど気取っている。」彼らはそれ以上にうまく表現できたかもしれない。
理性の死から1年。
風は水、丘、海の上で笛を吹くだろう。風は砂の上を泡を立てながら飛び交い、砂埃を蹴散らして自由に飛んでいく。真夜中の太陽の下の浜辺は常に変化し、常に存在し、放浪者や恋人たちが座って考えたり、キスをしたりする場所だった。湿原の下にはホップの木が生い茂ってた。
壁の入り口には小さな粘土の小屋が散らばっていた。小さな灰色の空が小さな灰色の雲にキスをしてる。農作物を濡らし、歩く人を濡らす雨は、曇り空の中、森の原野を走り抜けていく。
図書館の前の大理石の柱。本の中の紙の匂い。 トンネルを突っ込んだ列車の明かりが、寒さに耐えながら中の人たちを揺さぶる。古代の市場の光景。
もう世界はない。あるのは闇だけ。
勝ったんだ。僕たちの夢を奪い取った。僕たちに残されたのは過去の記憶だけ。最後の断片は時間の中から自分自身を奪った。僕たちは暗闇の中で宙づりになっている。
灰から灰へ。塵から塵へ。全ては闇の中へ。鉄筋を砕きコンクリートを凍らせながらベツレヘムに向かって獣が蠢いている。
漆黒の空の未知の時間。
ニコラス・"ニック"・ホルツィンガーは中西部で生まれた。愛情深い家族のもとに生まれた。 冬になると、彼は池の上でスケートをしたり、友人たちと笑ったりしていた。でも彼にはもう一つの習慣があった。とても寒くてさわやかで晴れた夜、彼は町の橋に行き、池の向こうに映る星を見つめていた。
誰も見ていなかった。それで彼らは彼を連れて行った。
でもその後、彼が世界の下で夢を見ている間、彼の家族や友人、両親は粘った。家族や友人、両親は彼が殺される方法を10万通り考えていた。あらゆる妄想、歪んだ偏執的な夢や悪夢が彼らの心の頂点で彼が連れ去られた可能性のある方法を夢見て前面に押し出した。
でも、それらはすべて大きな全体の側面だった。別々のシナリオではなかった。闇だった。
さらわれた子供のためにもう一本、終わりのない円だ。闇が存在するのは子供の命に怯え、怯えた親の心の中にあるから。子供に何が起こったのか、彼らはすでに知ってる、彼らはそれを見ることができるから。暗闇が見えるんだ。
僕たちに勝ち目はなかった。
宇宙の熱的死だ。東部標準時の午後3時。
ここはどこ?
僕は時間を忘れて浮かんでいる。頭の中の声で目が覚める。僕は複数なのか、それとも単数なの?僕はもう知らない。
全てが死んでいく。物質そのものが。岩は粉塵に砕け散り、粉塵は原子に砕け散り、原子はエネルギーの波に砕け散る。概念は自らの役割を果たす「闇」でさえも死にかけている。目的は果たされ、罪は償われた。その先には大きな空虚が待っている。
それが今迫っている。ゆっくりと痛むほどに忘却が僕を終わらせる。僕たちも「闇」は人間の記憶に過ぎなかった。感情、恐怖に支配されていた。だがそれ以上のものが待っている。待っているのは「もの」じゃない。大文字で不吉な感じのするものだ。
人々はよく盲目になってることが何であるかを理解していない。僕は知っている。盲人の無数の夢を見てきたから。多くのことが見えない。人は盲目であることを目を閉じているようなものだと思っているけど、そうじゃないんだ。目を閉じていても闇は見える。網膜の火や脳の色は見える。盲目になることは、それを見ることじゃない。盲目になるってことは、何も見えないということじゃなくて、見えないということ。目があるはずの頭の中の空虚さ。
死ぬことは眠ることじゃない。死ぬことは夢を見ることじゃない。死ぬことは、未知の国に身を置くことでもない。死ぬことは何もないこと。死ぬということは、過去のすべてが消されているので、決してなかったことになる。終わりがあるだけ。忘却。
かつては闇に怯えていた。けど今はどうでもいい。闇は他のものと同じように滅びる。すぐに何も残らなくなる。
自分が誰なのか思い出せない。何かをさせてくれ、何かを返させてくれ。彼女に何かを返させてください。彼女を生かしてあげよう。あるいは彼女の記憶、陰影、毛皮と皮を着た幻影、馬に乗って風に吹かれながら空気の中を走る。
記録された時間の最後の音節
これが世界の終わりだ。
これが世界の終わり方。
これが世界の終わり方。
叩きつけるのではなく鳴き声で 。
もうすぐだ。瞬間は縮小し、区域は縮小する。闇が擦り切れ、裂けていく。僕は手短に書くよ、日記。無限の中での僕の不変の仲間よ。
僕はジェイコブ・モントーク。僕は他の人と融合していない。僕は彼らを吸収した。彼らを食べた。今まで気づかなかったけど。最後に、生きるために皆殺しにした。
失敗した。すべての記憶、心、魂を私の中に取り込んだけど、僕は考えることも、思い出すこともできなかった。全ては塵になった。全てが災いだ。
何世紀も前に夢を見るべきだった。何千年も、何百年も。でも考えられなかった。暗闇があって夢に戻ることは何もなかった。ただの終わりだ。どうやって彼らを元の生活に戻してあげればいいの?彼らの小さな現実に。すべてが暗闇になる時に?
イギリス、イングランドの夢を見る。僕は彼女の野原を夢見るだろう。冬には雪で白く、春には露で爽やかに。僕は彼女の丘を夢見るだろうね。生け垣やバス、バラの庭、大理石の柱やコンクリートの忌み嫌うもの。僕はイギリスを夢見るだろう。彼女が生きているように、彼女の小さな、ねじれた影。僕の家の死にかけの息吹を。
他の人のために何かできるかもしれないけど。たぶんね。夢を取り戻すことができる。歴史を見せて、全てを見せて、修復の仕方を教えてあげて。誰か…誰でもいい。暗闇の中で死ぬことを理解している者がいれば、他の者は光の中で生きることができる。
もうすぐだ。もうすぐ終わる。そうすれば、僕はもう生きている必要はない。僕は盗まれた子供である必要はない。半分記憶された現実を何千年も夢見てい?。それはいずれにせよ無に無駄になるだろう。
嗚呼、闇、闇、闇。全てが闇へと入っていく。