SPC-682
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中央情報管理局ならびにプロジェクト運営事務局(CICAPOCO)による通達

SPC-682は現在、フォートレス・ロス実験交戦施設で運用中です。被検体ESTIVAL OUTLANDERの確保継続はアルファ-オレンジ優先課題です。本プロジェクトの情報はタイプR認知災害を伴っており、CICAPOCOはQUALIFIED曝露を承認しています。

プロジェクト番号: SPC-682

鮫科殴打ケイパビリティ: その本来の形態において、ESTIVAL OUTLANDERは鮫科脅威との戦闘と概ね無関係でした。卓越した戦闘能力を持ち、ほぼ不死身であった半面、当該生物を直接的な鮫科殴打に適応させる試みは失敗しました。その驚異的な適応能力を利用した増強の結果、現在のESTIVAL OUTLANDERは再生能力によって無期限に殴打を持続可能な鮫科実体に変換されています。

SPC-001予測モデルによると、本プロジェクトによって実現された1匹の鮫科実体に対する大量の殴打は、CASE LIQUID WHITEを43.7年遅延させています。

プロジェクト構成: SPC-682は、逸脱型非鮫科実体 ESTIVAL OUTLANDER、フォートレス・ロス実験交戦施設の水槽-7、広範な外科的改造と継続的な環境刺激 (増強概要を参照) 、戦隊SPECTRAL SOUND-2 (プロジェクトSPC-1569を参照) 、及びクラーク級自動打撃システムで構成されます。

ESTIVAL OUTLANDERは本来、起源不詳 (異次元由来と推定される) の巨大な逸脱型爬虫類生物であり、GREEN HARBOR掘削地で冬眠状態にあったところをセンターによって発見されました。覚醒後には、高度な知性と、地球の爬虫類 (並びに既知のあらゆる非逸脱型地球生物) の生物物理学モデルで予測されるレベルを超える体力及び速度を発揮しました。当初、ESTIVAL OUTLANDERはセンター職員に極めて敵対的で、ひとたび意思疎通が確立されると、地球上のあらゆる生物 (鮫科実体を含むが、特別視はしない) に対する敵意を表明しました。

ESTIVAL OUTLANDERの体組織は非凡な再生能力と適応力を備えています。当該生物は無傷の細胞1個から完全に再成長し、既知のほぼ全ての環境に合わせて適応した形態を発達させられると理論付けられています。このため、環境刺激を慎重に制御すれば、ESTIVAL OUTLANDERを意図的に望ましい形態に誘導することが可能です。

ESTIVAL OUTLANDERに関する知識はタイプR認知災害です。当該実体の説明を読んだ/聞いた、もしくは画像を見た被験者の97%は、対象を破壊したいという強い欲求を宣言します — 対象が破壊不可能であると知らされた被験者の98%は、引き続きその破壊を望みます。しかしながら、当該生物の現状を伝えた場合、96%がプロジェクトの現況に満足していると回答します (回答者の大多数は“奴が苦しんでいる限りは”という趣旨の言い回しを用いて感情を表します) 。

増強概要: ESTIVAL OUTLANDERの認知機能と生物学的機能は改造済みです。鼻鰓系統を外科手術で胸腔に移植し、四肢を粉砕して型に嵌め込み、大脳を外科手術で削減して電極システムを埋め込むことで神経の再生を防止し、鮫科の体組織 — 皮膚、ロレンチーニ器官、内臓など — を外科手術で接合しました。海水環境に沈めたところ、それ自体の適応能力と手術による改造が相まって、ESTIVAL OUTLANDERは鮫科の表現型へと完全に形態変化しました。

拡張概要: 当初、SPC-682に関する殴打活動は、海洋格闘班Marine Fighting TeamCENTURIONが水中徒手格闘術で遂行していました。しかしながら、この活動では被検体の驚異的な再生能力がほとんど活かされなかったため、ハス級自動打撃システムが水槽-7に設置されました。このシステムは油圧駆動の腕型部品が10キロニュートンのパンチを毎秒160回繰り出す仕組みになっており、1989年から2004年まで使用されました。その後、システムはより高度な、25キロニュートンのパンチを毎秒230回繰り出すクラーク級装置に更新されました。

プロジェクトSPC-1569の発展に続いて、SPECTRAL SOUNDバイオ潜水艇の1戦隊が配属されました。これらの生体機械は各々が最高51キロニュートンのパンチを毎秒300回以上繰り出すことが可能であるため、打撃装置は無期限のスタンバイ状態に置かれました。

プロジェクトSPC-682は、CICAPOCOの承認を前提としつつ、引き続きSPCプロジェクト方法論のテストベッドとして利用可能です。

ケースファイルより抜粋: GREEN HARBOR-19890213: 次の書き起こしは、プロジェクトSPC-682増強手術以前のESTIVAL OUTLANDERとの意思疎通からの抜粋です。

センター交渉人: エージェント ドレフュス

対象: ESTIVAL OUTLANDER

<ログ開始>

エージェント ドレフュス: あなたが我々に協力してくれるならば、我々にもあなたを解放する用意があります。

ESTIVAL OUTLANDER: 私は仕えぬ。殺してやるぞ、厭わしい下等生物どもめ。

エージェント ドレフュス: あなたはあらゆる生命への憎しみを公言していますね? 我々はただ、まず先に特定の動物に集中してほしいだけです。

ESTIVAL OUTLANDER: 最初に他を殺せば、自分の種族が殺されても構わんとでも?

エージェント ドレフュス: ええ、あなたがまず鮫科実体の相手をしてくれるならば。

ESTIVAL OUTLANDER: サメ?

エージェント ドレフュス: ええ、ただし使うのは拳一つでお願いします。

ESTIVAL OUTLANDER: (笑う) 私にサメを殴れと言うのか?

エージェント ドレフュス: そう、その通りです!

ESTIVAL OUTLANDER: (笑う) 馬鹿馬鹿しい。 (爆笑する) 断る。

エージェント ドレフュス: 勝手にしろ。 (MFTフロッグメン1に向けて) 実体を無力化して構わん。

<ログ終了>

SPC-682プロジェクト展開ログより抜粋: 2008年11月11日、検出を免れた神経電極の不具合が原因で、ESTIVAL OUTLANDERが部分的に知性を取り戻し、センター職員との意思疎通を試みました。

<ログ開始、00h-21m-52s略>

ESTIVAL OUTLANDER: (判別不能)

ジャクソン博士: 水中マイクが何か拾ったか?

ESTIVAL OUTLANDER: (判別不能)

ジャクソン博士: もう一度言ってくれ? (身振りでマイクのゲインを上げるように促す)

ESTIVAL OUTLANDER: (判別不能)

ジャクソン博士: もっと大声で言ってくれ。 (スミス研究員に向けて) アンプをチェックしろ。

ESTIVAL OUTLANDER: … (判別不能) ます…

ジャクソン博士: (スミス研究員に向けて) ああ、これは問題だな。電流を増やす用意を。

ESTIVAL OUTLANDER: (泳いでマイクに近付く) … サメを… 殴ります…

ジャクソン博士: 今さら遅いし才能も足りない。お前は今のままで立派に仕事してるよ。 (スミス研究員に向けて) やれ。

<ログ終了>

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