標準収容ロッカー規格の提案
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物品収容規格の提案

工学技術部門より、収容規格の提案です。近年オブジェクトの収容数は加速度的に増加しており、限りある時間と人的・物的資源を用いてこれらを収容するためには、1つあたりの収容コストを削減する事が求められています。

しかしながら、コストカットのみに拘泥し確保・収容・保護の理念に疎かにする事は、財団のみならず人類全体に大きな災厄を振り撒きかねません。そうならないために我々から提案するのが、収容に必要な物品の標準化です。

物品の標準化は設計図面を減らし、調達する物を絞り、製造ラインを統一し、輸送と保守点検を画一化して、安全性を保ったままコストを抑えてくれるでしょう。それだけでなく、研究員の皆様におかれましてもより具体的な特別収容プロトコルの策定に役立つはずです。「何故」を考えることができるからです。

何故標準品を使ってはいけないのか。材質が適合しないのか、収まらないサイズなのか、標準品を破壊する危険があるのか、標準品から抜け出してしまうのか、他のオブジェクトと干渉するのか。それらを1つ1つ考えて収容に何を用いるか選択する一連の流れは、オブジェクトの性質を見直すのにうってつけでしょう。

そして、考えた上で特注が必要と判断した場合は遠慮なくオーダーをください。節約していたコストの使い道こそ、本当に必要な「特別」収容プロトコルなのですから。

私は以下に、標準品の規格を提案いたします。



標準収容ロッカー(低危険度物品収容ロッカー)

標準収容ロッカーは、箱に入れて鍵を掛ければ収容できると判定されたオブジェクトの管理にあたって、第一選択肢となり得るよう設計されました。以下に要求の洗い出しと、それに基づいたデザインを記します。

要求仕様の想定

  • 低危険度物品を問題なく確保、収容、保護できる箱であること(安全性)
  • 1つの収容違反を連鎖的な収容違反に繋げない、最低限の破壊耐性を有すること(障害許容)
  • より多くのオブジェクトを画一的に収容できる規格であること(汎用性)
  • 製造および保守管理のコストを低減できる構造・材質であること(経済性)

これら4つの要求は上に行くほど優先されますが、下を疎かにすると標準化の意義が薄れます。すなわち標準収容ロッカーはこの4要件全てを満たす必要があり、満たせなくなる物品の収容には用いられるべきではありません。

共通要素

4要件を満たすべく、標準収容ロッカーは以下の要素で構成しました。

材質 電気亜鉛メッキ鋼板・気泡コンクリート 障害許容
経済性
セキュリティ ダイヤル・シリンダのダブルロック 安全性
障害許容
耐火性能 一般型:1200±10℃の加熱に対し、4時間以上庫内の温度を177℃1以下に保つ
機器型:1200±10℃の加熱に対し、4時間以上庫内の温度を52℃以下に保つ
障害許容
耐水性能 距離3mから100kPaにて100±5L/minの放水を全方位より3分以上続け、浸水なし 障害許容
標準付属品 鍵、銘板、庫内トレイ(プラスチック、木材、スチール、特殊材質から選択) 汎用性
オプション 各種材質の内壁(発注前に指定のこと、材質によっては有効寸法の減少に留意) 安全性
設置 縦に連結可(連結用突起長/穴深さ:15mm)、最下段の穴はアンカーボルトに接続 汎用性
経済性
耐用年数 20年をめやすに更新のこと 安全性
経済性


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標準収容ロッカーの模式図


サイズと設置方法の補足

標準収容ロッカーは、境を互い違いにした上での縦重ねを想定して寸法が定められています。小形ロッカーを2つ隣合せた寸法と等しい横型、2つ重ねて連結した寸法と一致する縦型、2×2で置いた場合の寸法に合致した中型といった具合です。大型は奥行きも2倍となっており、壁際以外の2列並べる場へ埋め込むことを想定しています。

なお縦重ねは高さ1.5m未満、標準小型収容ロッカーならば6段以下とするべきです。オブジェクトに限らず目線の高さより上に物を収容ないし収納してしまうと、取り出しの際の事故を誘発するからです。

サイズ名称 寸法 収容物品例
小型 外寸:W310×D470×H250
内寸:W230×D330×H140
A4以下のドキュメント、本、13~14インチまでのノートPC、小物、靴
横型 外寸:W620×D470×H250
内寸:W540×D330×H140
A3ドキュメント、本、14~15インチ以上のノートPC
縦型 外寸:W310×D470×H485
内寸:W230×D330×H375
長靴、大瓶・大型薬瓶(縦置き) ※単体での温調機能はありません
中型 外寸:W620×D470×H485
内寸:W540×D330×H375
バスケットボールなどの球状物体
横四型 外寸:W1240×D470×H250
内寸:W1160×D330×H140
傘、その他1メートル程度の棒状オブジェクト
大型 外寸:W1240×D940×H955
内寸:W1160×D800×H845
小型家電など


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標準収容ロッカーの設置例


鍵の管理と総合的なセキュリティ

鍵の管理はカント計数機の接続されたキーボックスによって行われます。現実改変能力などにより異常なヒューム値が計測されると、キーボックスはロックされます。正常なヒューム値の中でオブジェクトナンバー、セキュリティクリアランスを付与された職員ID、パスワードの3つが正しく入力された時のみ、該当するキーを取り出せます。

一度に取り出せるキーはボックスの中から1つだけで、戻すまではロックが継続します。クロステストを行う場合でも1つずつ取り出して移送してください。これは、実験環境が整う以前の不用意なクロスの予防措置も兼ねています。

標準収容ロッカー自体の構造とこうした鍵の管理方法を組み合わせると、内部の物品は下記の要素により確保・収容・保護されることになります。

  • 標準収容ロッカー室とキーボックス室の警備
  • カント計数機によるヒューム値の監視
  • 財団データベースとキーボックスによるデジタルID・パスワード管理
  • ダイヤルキーによるアナログパスワード管理
  • 防火金庫以上の耐火性とIPX6相当の耐水性


管理ガイド

標準収容ロッカーは、鍵を掛ける事で様々な物品を収容できます。同時に、4要件のバランスを崩してまで鍵を掛ける以上の機能を付ける事はありません。そのような機能を必要とするオブジェクトは別の機器や環境と組み合わせるか、従来通りオーダーメイドの箱で収容する必要があります。

  • 安全性 — 安全性について研究員の皆様に考えていただきたいのは、2点です。ここまでで一通り記述した標準収容ロッカーの構造と材質と照らし合わせ、内側から収容が破られないかと、内側の物体を保護できるかです。
・光に反応して移動しようとするオブジェクト(扉を閉め、鍵を掛ければ確保可能)
・金属に触れると爆発するオブジェクト(非金属製の内張と庫内トレイで収容可能)
・ガラス製のオブジェクト(庫内に緩衝材を敷けば保護可能)
不可 ・光に向かって物体を透過して移動するオブジェクト(物理的な壁でしかないため確保不可)
・金属を腐食させる液体を垂れ流すオブジェクト(庫内トレイの容積分しか収容を保てない)
・合金製だが自己崩壊するオブジェクト(崩壊を防ぐ機構ごと庫内へ入れられないと保護不可)


  • 障害許容 — 標準収容ロッカーは、全てのオブジェクトのあらゆる攻撃を受け付けない完璧な防護を求めてデザインされたものではありません。物品の保護は施設のセキュリティや機能と組み合わせて達成してください。
・収容違反の結果発生した火災に4時間耐える
・火山から噴出したマグマ(最大1200℃を想定)に4時間耐える
・水道管の破断やオブジェクトからの攻撃による100kPa以下の放水に耐える
不可 ・サイトの放棄などにより4時間以上火災の中に放置される
・火口に投入されるなど1200℃を超える高温または高圧に晒される
・完全な水没や腐食性の液体の放出に晒される


  • 汎用性 — 安全性を保って、許容できない範囲の障害から遠ざけられたとしても、標準収容ロッカーは全ての物品を収容できるわけではありません。わかりやすい例を挙げると、知的生命体の収容には不向きです。しかし生命とは、知能とは、あるいは感情とは、という議論はガイドラインとして不適切です。そこで、この提案を読んでくださっているあなたがサイズに問題ないロッカーに入れられたと仮定し、倫理以外に発生する問題を分析してみましょう。
機能の維持 あなたは食事を必要とするし、排せつ物を出します。標準品はこれらを安全にサポートできません。
同様に生命維持、ないし機能の維持に何かの供給や排出が必要なオブジェクトを収容してはいけません。
それが光合成に必要な光や、コンセントから取る電源であってもです。
応答の変化 あなたは10分程度なら狭苦しく感じつつも耐えられるでしょう。
しかし30分、1時間……まして1日、2日と時間が経過するとどうでしょう?
あなたは怒りに任せて壁を叩くか、恐怖に負けて泣き叫ぶはずです。
同様に時間の経過で応答が変化するオブジェクトを収容してはいけません。
ここで言う変化は、感情やストレス反応に限定されない事に留意してください。
学習能力 あなたはロッカー内部にうんざりすると、箱から出ようとするはずです。
そして職員が扉を開けに来る頻度を記憶したり、ダイヤルを回す音を聞いたりするでしょう。
あるいは"持ち出される"際にこっそりと内側から解錠するための道具を仕入れるかもしれない。
それらを可能とするレベルで知能を有するオブジェクトを収容してはいけません。
庫内環境 あなたが自分の命という機能を保持するためには一定の環境下に置かれる必要があります。
温度、酸素濃度、あるいは圧力といったパラメーターが範囲内に収まっていないといけません。
これがオブジェクトならば、あなたとは違った温度や酸素濃度を求める場合もあります。
標準収容ロッカーにそれらを調節する機能はないため、設置する部屋ごと環境を保つ必要があります。
もしくは維持する機能を有する、冷蔵庫などの別の箱を用いて収容してください。


  • 経済性 — 4要件の中で最も優先度が低いとはいえ、コストダウンは標準品を用いる上で欠かせない動機です。標準収容ロッカーを無理に改造すると却ってコストが増加すると考えられる場合は、特注品を検討してください。
金箔による内張(どうして必要なのか、説明を求められるでしょうが)
不可 純金製の標準収容ロッカー(それは標準ではあり得ません)


まとめ

工学技術部門はこれらの複合的なセキュリティと対象の限定をもって、安全で、障害を許容し、汎用性を有し経済的な収容手段として、標準収容ロッカーを推薦します。

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