lonesome-wanderer 15/04/23 (木) 20:53:32 #73839164
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俺が見たガソリンスタンド。
俺はカリフォルニアで宅配業者をやっている。その一環で道路を頻繁に上ったり下ったりするし、高速道路網から遠く離れた田舎道を運転することも多い。殆どの場合、道路上には俺一人しかいない。特に俺は夜の運転が好きだからな。いつも夜更かしばかりだ。
そんな訳で先週、いつものように真夜中のドライブから帰る途中で、俺は遠くに灯りを見た。近付いてみると、通りの脇にコンビニやら何やら完備したガソリンスタンドがある。夜中の2時だぞ — 誰も運転してる奴なんかいない、しかも深夜だ。灯りが点いてるのはどうも腑に落ちなかった。
ガソリンが必要だったから、俺は本能的に妙だと思いながらも路肩に車を寄せた。多分次のスタンドまでは大丈夫だったかもしれないが、文明社会からあんなに(どんなに?)離れた場所でガス欠のリスクは冒したくなかった。ガソリンスタンドは必要以上に広くて、幾つか屋外席のあるらしい雑貨屋が付属してた。まるでそうすれば客が増えると思ってるみたいにな。
写真を載せておく。スレッドが伸びそうな気がするんで、指摘される前に証拠を出しておきたい。
ポンプのカードリーダーが動かなかったから現金で払うことにした。フロントドアに向かって歩き始めると、背中に寒気が走った。上手く説明できないが、気温がいきなり10度下がったような感じがしたんだ。雑貨屋の中は凍えるような寒さだった。
カウンターの男は入場した時もしっかり目を覚ましてた。俺が入るなり大声でガソリン何リットル欲しいのかと訊ねてきた。俺はガソリン代を払ってから、ちょっぴり店の中を見てみるつもりだと伝えた。道中につまむ食い物が欲しくてな — 数時間食べてなかったし、ガソリンスタンドのホットドッグが普通のよりずっと美味そうに思えてきてたんだ。
どのポテチにしようか選ぼうとした時、叫び声が始まった。ガソリンスタンドの裏手からだったと思う。何の声かは分からなかった。キツネやコヨーテの鳴き声が人の叫びみたいに聞こえるのはいつも耳にしてて慣れっこだが、あれはそんなもんじゃなかった。甲高い金切声、完全に非人間のそれだった。
スタンド店員は立ち上がって、その場を動かないよう俺に伝えた。俺は恐怖で麻痺してたから、きっと言われなくたって何もしなかったろう。店員は背を向け、俺を店内に取り残して裏口から出て行った。咆哮は大体2分ぐらい続いて、その後間もなく店員が戻って来た。
出来る限り早くここを離れなきゃ、と感じたのがその時だ。ここは何かおかしい、そう思うともう安心してられない。俺は一番近場のポテチを掴んだ — 叫び声に気を取られっぱなしだったから、選んでなんかいない。店員は会計中も一言ぐらいしか口を利かなかったし、俺は俺でさっさとガソリンを詰めに向かった。
スタンドの外の空気は、俺が雑貨屋に入った時よりもなお冷えてた。でも、俺が外に踏み出した時、また例の遠吠えが聞こえた。店の中に居た時よりも幽かな響き。俺が後ろを軽く振り返ると、スタンドの裏手に小さな小屋があって、ドアが鎖で施錠されてた。
そのドアが叩かれてたんだ。何かが小屋の中に居て、壁に体当たりしていた。
必要以上にその場でぐずぐずしたくなかった。もう支払いは済ませたから、車に駆け戻ってガソリンを(ずっと片目で肩越しに様子を伺いながら)詰め、その後はもう可能な限りぶっ飛ばしてスタンドから走り去った。
ガソリンスタンドがあったのは、395号線を少し逸れた道の何処かだったと思う。正確な場所は覚えてないし、名前も思い出せない — もしかしたら店名は無かったかもしれない。
limpfirebird 15/04/23 (木) 21:05:56 #87301432
私には特に騒ぐほどの事件とは思えない。君の話では超常現象など殆ど起きていない、幾つかの奇妙な出来事が一度に発生しただけだ。全て論理的に説明付けられる。
ガソリンスタンドは多分、営業を続けるのに十分な深夜帯の交通量を確保しているんだろう。人通りが全く無い所のようでも、近場には君の知らないコミュニティか何かがあるのかもしれない。もしくはその道路が君の予想以上に利用されているか、ただ単に客が少ない夜だった可能性もあり得る。
寒さは恐らく錯覚だろう。君は車の中で温まっていたし、話を聞く限りではその時点で既に神経過敏だったらしい。だから君は知らず知らず、もっと他に怪しい現象は無いかと探してしまった。退店した時、店内の寒さが外に流れ出したから、君は空気が一層寒くなっていると考えた。これら全てが一緒になって、気温関係の不気味な現象が起きていると君に思い込ませたんだ。
小屋と叫び声に関して言えば、君の説明の中では一番恐ろしいものだった。しかし、それはただの勘違いじゃないかと思う — 小屋の中には機械か何かが設置されていて、君はドアが叩かれていると想像しただけかもしれない。犬を飼っていたという考え方もできるね。
lonesome-wanderer 15/04/23 (木) 22:48:09 #73806555
そうかもしれない。俺は暫く前からこのサイトのフォーラムに顔を出してるし、自分で何かを発見したいとも感じていた。きっと何も無い所に予兆とかを見てしまったんだろう。多分あのガソリンスタンドには奇妙な点なんて全く無い。あなたの説明は筋が通ってる。
叫び声は未だに俺を悩ませてる。ここ数日ずっとそれを忘れることができない。間違いなく犬じゃあり得ない。それに大きな鳴き声だった — デカい生き物に違いないんだ。
実は人間だったんじゃないかと心配してる。そんな風には聞こえなかったけれど…
分かりっこないよな?
ellie4 15/04/24 (金) 12:36:44 #91938461
lonesome-wandererが訪れたガソリンスタンドを見つけようと調べてみたら、彼がポストした写真と一致する場所がニュースになっていました。詳細は曖昧ですが、数日前にスタンドで殺人と自殺が起きたそうです。仮にlonesomeが超常現象に遭遇しなかったとしても、彼は間一髪で死を免れたらしいですね。
被害者は事件当時911に通報しています。書き起こしは短いですが、かなり不審です。
通信係: 911です、緊急事態ですか?
被害者: 今395号線のガソリンスタンドだ、51番出口から30分の場所。車の外に何かいる! その、えー、そいつが何なのか私は分からないが、大きい。大きいし怒ってる。
通信係: それはあなたに威嚇していますか?
被害者: 車に押し入ろうとしてる。頼む、頼むから誰か送ってくれ。
通信係: その動物の種は分かりますか?
被害者: いいや、これまで — これまでに見たどんな生き物にも似ていないし、窓一面に何か液体を塗りたくってる、どうすればいいんだ!
通信係: あなたの居場所を特定しました、救助隊を派遣します。
被害者: ああ、スタンドの店員が出て来た! ライフルを持ってる、構えてる…
通信係: 警察がそちらに向かっています。
銃声。
通信係: 店員は生き物を殺しましたか?
通信係: もしもし?通報から警察が到着するまでの間に、店員はどうやら裏手の小屋に放火し、ガソリンスタンドの正面ドアの外で自分を撃ったようです。警察は、彼が突然豹変して客を殺害し、小屋に火を放った理由を突き止められませんでした。スタンドのオーナーもそれは同じで、ニュースによると店員が銃を持っていたことすら知らなかったとか。
その日の終わりには、唐突に不可解な精神崩壊を起こした人間の凶行として片付けられています。
ただ、警察の調書で見つけた一つの詳細事項だけは、他の何処でも触れられていません — 蹄が歩いた跡と、石油の滴った形跡が、小屋の残骸から延びて車の周囲や屋根に残され、その後は道路上を遠ざかっている、と。