天眼の提言
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胸裏の炎.jpg

警告

この文書はGP-001("プロメテウスの学徒")との間で締結されたコーカサス協定のもと保存されています。この文書及び内包された情報にアクセスする職員は、財団憲章に示される理念と使命を真として支持していることが要求され、この要求に同意しない場合、最高機密保持プロトコルに準じて即座に不可逆の終端処置が実行されます。続行しますか?

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    アイテム番号: SCP-001

    オブジェクトクラス: Hod1

    特別収容プロトコル: SCP-001-αは遺物サイト-μάθηのサブレベル1主要収蔵室において、関連記録全てと共に収蔵されます。SCP-001-αの奪取及び破壊はSCP-001-βの本質的な概念確立維持に影響を与えないものであるという検証済み事実に基づき、収蔵室の警備はSafeクラス基本セキュリティプロトコルに準じて継続されます。

    SCP-001-βは、それを保有しうる全ての財団職員に精神性内包された形式で収容されます。SCP-001-βがその影響を受け得る全ての財団職員に影響を及ぼしている状態を可及的努力として維持し続けて下さい。SCP-001-βの運用プロトコルに関する是非判断は、O5評議会による定期的放棄の議論として総合的に表出されます。

    説明: SCP-001は器物的性質を示す実体であるSCP-001-αと、その被内包要素である形而上概念: SCP-001-βから構成されるオブジェクトです。

    SCP-001-αは非ユークリッド幾何学的構造特質の表出により、複雑な文様が彫り込まれた立方の箱もしくは円筒の壺に類似する様式の器物として観測されます。いずれの場合も全体の体積が0.5m3である点、そして上方部分が開放されており、内部をのぞき込むことが出来るようになっているという点で観測結果は一致します。

    SCP-001-αの内部では、SCP-001-βが非実体的幻像として可視的に観測されます。多くの場合、この幻像は揺らめく炎として視覚的に認知されますが、この炎から受ける印象を形容する方法は観測者により異なります。以下は類型化された観測結果とその比率、具体的な形容方法の一例です。

    • 観測者の90%: 肯定的反応を示す。幻像についての印象として「美しい芸術品」「重要な科学の発見」「家族、ペット」「宗教的善性」「優れた技術」といった形容を行う。抽象的表現として「全ての贈り物」「守るべき物」なども用いられ、総じて好ましく、或いは望ましく感じると回答した。
    • 観測者の9%: 否定的反応を示す。幻像についての印象として、観測者は「無秩序」「不安定」「暗澹」「陰鬱」といった抽象的表現を主に用いて「漠然とした不安感」を報告した。
    • その他: 観測者の内、現在まで2人のみが「何も無い」と回答した。

    SCP-001に付随して取得された関連記録に基づく研究は、現状SCP-001-αがSCP-001-βを収容するための最も合理化された形態であるという合意的結論を導出しています。


    SCP-001-βは、SCP-001を所有する組織/団体の構成員に対し、その組織/団体が掲げる理念及び目標への達成志向に有意な精神影響を与える形而上概念です。SCP-001-βの影響範囲は自身がその組織/団体へ所属しているという明確な自認を持つ人物全てに及びます。

    この"自認"にはその組織/団体の理念及び目標を共有していることが大きく関連しているのではないかと考えられており、例としてDクラス職員や他組織からの駐留者、財団フロント企業のレベル0職員などは組織構造の観点からは財団の構成員と見なせるものの、一部の例外を除きSCP-001-βの影響を受けていると思しき実例は確認されていません。

    SCP-001-βによる精神影響に対して被影響者は自覚的でなく、影響下における自身の思考・行動と自己防衛本能や微視的思考に基づく一般的な人間の価値判断との間に著しい差異が生まれていることに対し違和感を抱きません。被影響者に顕著な言動は以下のような形で確認されています。

    • 所属する組織/団体、もしくはその目標への献身、全体主義的自己犠牲
    • 所属する組織/団体の理念及び目標が、将来的に達成されるという盲目的信念
    • 所属する組織/団体が行う活動は巨視的に見て世界に良い結果をもたらすであろうという確信

    当ファイルには、UCCA2によって集積されたSCP-001-β被影響者の実例に対するインタビュー記録の抜粋が参照用に添付されています。これらのインタビューはSCP-001との関連性の無い複数の事例に伴い実施されたものであり、インタビュアーと被影響者はSCP-001及びその影響について認知していないことに留意して下さい。

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      Record-001

      インタビュー記録: 655

      対象: エージェント・ショー

      UCCA注記: 当該ログはSCP-3640収容違反に伴い発生したインシデントに関する記録です。対象は機動部隊の一員として3640-アルファ個体の収容事後処理に従事していた最中、潜伏していた3640-アルファ個体の攻撃から一般人を庇い負傷しました。当該インタビューはインシデントの詳細を把握することを目的として実施されたものとなります。


      [関連性の薄いログを省略]

      インタビュアー: では聞き取りは以上です、お疲れ様でした。

      エージェント・ショー: [唸り声]お疲れ様です。すみません、こちらはベッドに寝たままで。

      インタビュアー: いえ、そちらの方が楽でしょう。私としてもあなたにこれ以上無理をさせたくありません。

      エージェント・ショー: はは、名誉の負傷です。といっても寝たきりじゃ格好が付かないですがね。[唸り声]

      インタビュアー: 痛みますか?

      エージェント・ショー: [唸り声]あぁ、恥ずかしながら。[唸り声]すみません、薬を下さい。ベッドの脇のテーブルにあるそうなので。

      インタビュアー: 分かりました。口に運びますよ。

      エージェント・ショー: [嚥下音]ありがとうございます。せめて手が使えれば良かったのですが。

      インタビュアー:その体では点滴も受けづらいでしょう。とにかくこれで終わりなので、出払ってもらっていた看護スタッフを呼び戻して  

      エージェント・ショー: 少し待って下さい。[唸り声]

      インタビュアー: 落ち着いて下さい、大丈夫ですか。

      エージェント・ショー: [喘鳴]すみません。一つだけ教えてもらえますか?

      インタビュアー: なんでしょうか。

      エージェント・ショー: 私の体はどう見えますか?どのような体になっているのか、眼をやられたので見ていないのですが。

      インタビュアー: [沈黙]財団はあなたに最高の治療を施すと約束します。失った両腕両脚も、義体肢を用いて以前と変わりない生活が出来るはずです。

      エージェント・ショー: やはり子供には見せられないような状態なのですね。何となくは分かっていましたが。

      インタビュアー: 申し訳ありません。アルファ個体の巣から早く救出できなかったのはこちらの落ち度です。

      エージェント・ショー: いえ、気に病まないで下さい。奴ら……私の眼をえぐって腕と脚を食いちぎった奴らは、あそこに居た子供達に危害を加えなかったんですよね?

      インタビュアー: はい。彼らは記憶処理を受けた後、安全に解放されました。

      エージェント・ショー: なら良かったです。彼らの盾になれたなら。

      [記録終了]

    完全なファイル群の閲覧を希望する場合は適切なUCCA編纂官へとその旨を連絡して下さい。

    SCP-001取得記録: SCP-001は、財団創設期におけるGP3-001("プロメテウスの学徒")との交渉の結果収容されました。GP-001は多くの財団前身団体に先立つ超常現象研究組織として知られており、その起源は未特定なものの、地中海周辺地域での一定の影響力とグレコローマンGreco-Roman文化に由来を持つと推定される卓越した秘教技術及び科学技術を保有する超常組織でした。

    ████/██/██、財団はGP-001の主要拠点の一つが原因不明の事象に起因する爆発によって壊滅したとの報告を受けました。財団による迅速な隠蔽活動と関連オブジェクトの収容によって事態は沈静化しましたが、このインシデントによってGP-001の組織構造は事実上崩壊し、GP-001が保有していた多くの異常事物に関する研究記録とその結実としての超常技術実例の流出と散逸を招きました。

    当該事案の後日、財団はGP-001の指導者層にあったことを主張する人物、PoI-p001/051から接触を受けました。PoI-p001/051はSCP-001を含む複数の超常資産を財団に対して譲渡する意思を示し、その申し出の背後関係調査の一環として即座のインタビューが実施されました。以下はそのインタビュー記録の抜粋です。

    では、私が何を求めてここに来たのか、君達が考えていることを教えて欲しい。

    なるほど。

    ほう。

    その推測は完全に間違っているというわけでもない。もちろん全くその通りというわけでもないがね。「資産を譲渡して自分の保身を図るため」というのは確かにありふれた理由だ。だが、陳腐とも言える表面上の皮の内にこそ君達の見落とした肉という本意がある。

    これは私達の組織の敗北宣言であり、それに対する私の悪あがきだ。

    まずは匣の話をしよう。その由来はこのようにして我々の組織に伝わっている。

    かつて、神と人とは明確に区別された存在だった。神は人に対して絶対的上位の存在であり、人間は神々によって定められた運命に身を任せるだけで幸福だった。世界の全ては安定し、森羅万象を規定する不変の掟が常に効力を発していた。これを黄金時代と呼ぶ。

    しかしいつしか洞窟の中に閉じこもっていた人間の中で、知恵を持った者が現れた。薄暗い穴蔵を抜け、太陽が昇る理由の未知を解き明かそうとする者が。幸福なブタの中に不幸なソクラテスが初めて産まれたわけだな。そいつは荒れ狂う嵐を、吹き上がる火山の噴火を、鳴り響く雷鳴と稲妻を、そうした神々がもたらす全ての災いに苛まれる無辜の人々を見てこう考えた、「なぜ、自分の身を守るためにそうした災いそのものを閉じ込めてしまわないのか?」と。

    いかれたアイデアだろう? 少なくとも、神の力が絶対的で恐れられていた黄金時代においてはそうであったに違いない。遍く天災は神の御業であり、あるいは神そのものだったのだから。だがそいつは、万物を封じる匣を造りあげることでそれを成し遂げた。天才的技術によるものなのか、気まぐれな神の手助けがあったのか、はたまた死神を騙くらかしたのかは分からないが。

    あるいは匣の制作者自身が神の一柱だったのかもしれない。実際に、災いを匣の内に封印してみせたことで制作者は人々に神のように崇められるようになったと伝承は続いているほどだからな。当然、世界という自分たちの箱庭を好き勝手にいじり回す制作者に、神々は良い顔をしなかった。

    ありとあらゆる呪いと禍いが制作者に降りかかった。しかしそのために紡がれた無限の古き呪詛のうち、一言ですら制作者に届くことはなかった。天からの硫黄と火は大部分を匣に閉じ込められ、夜を照らす「焚き火」として人類の力とされた。暴虐の獣は「家畜」を、終末の軍勢は「武器」を……。あらゆる手札が制作者により人間の役に立つ概念として還元されてしまったのを見て、神々は初めて人を恐れた。そして次第に衰え、いつしか姿を消した。

    ここに、神々を排した人類文明による青銅の時代が始まる。ああ、それはまさしく人類の光明だっただろうよ。押しつけられたあらゆる軛を逃れ、幼年期を終えた人間は成長し前進し続ける! ……だが、それも長くは続かなかった。

    青銅の時代に幕を下ろしたのは、他でもない制作者その人だったという。制作者は知恵と疑問によってその後も偉大な発明を繰り返し、世界をより理に適ったものにしようと尽力し続けた。やがて計り知れない栄光と数え切れない子孫たちを得て、老年となった制作者の興味は、あるとき自身の最初であり最大の発明である匣に向けられた。「数々のものを封じ込めたこの匣の中身は、一体どうなっているだろう?」と。制作者は蓋を少し上げ、隙間から匣の内を覗いてみることにした。

    そして、この無邪気な好奇心が世界を狂わせることとなった。

    蓋は勢いよく開放し粉々となり、あらゆる災厄が内から飛び出した。神とも人とも似つかぬ怪物、神と人という世界の枠組みを外れた"異常"が。どの神話でも語られざる怪奇が。すべては大いなる原初の混沌に帰ったようだった。血と塵と骨を纏った緋き王が居た。悪徳を賛美する牡鹿が居た。狭間に叫ぶ在らずの者たちが居た。決して目を向けてはいけない青白い顔が居た。決して破壊できない邪竜が居た。決して殺し切ることが出来ない魔人が居た。決して眼を背けられない恐怖が居た。

    匣の恩恵によって築き上げられた文明は災厄達によって破壊し尽くされ、人類は1からの再出発を余儀なくされた。いや、1どころか0よりもなお悪かったかもしれない。今や世界には理外のものが跋扈していて、それを唯一封じ込めることが出来た匣はもう機能しないのだから。

    制作者は己の行動を悔いた。地団駄を踏んで頭をかきむしった。しかし老いた制作者にはもはやどうすることも出来なかった。その時、壊れた匣の中に光が見えた。制作者が覗き込むとそこに"灯"があった。

    灯を見ていると、制作者の胸裏には消えない炎が灯った。贖罪をせねばならない。制作者は自身の子供達と弟子達を集めて、匣とその中の灯を掲げ、このように語った。

    「私は過ちを犯した。私の残り少ない命では贖いきれない罪を。どうか我が子ら、我が弟子達よ、この使命を継いでくれ。人類は災いから逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。それまで人類を庇護していた神々は科学が殺した。今や他に我々を守るものはいない、我々自身が立ち上がらなければならないのだ」

    彼らは各地に散り、そしてプロメテウスの学徒が生まれた。世界の構造が滅茶苦茶になったこの暗闇の時代において、人類に再び栄光を取り戻すために。

    以上が私達の組織と匣、そして灯のあらましだ。そうして私たちは今まで長きにわたって活動を続けてきた。異常を研究し、封じ込め、無辜の人々の眼から遠ざける。それを倦まず弛まず続けてこられたのは灯あってのことだよ。何、どうせそちらの方でもいろいろと実験するんだろうから詳しい効果の説明は要らないだろう。

    なぜこれを君達に譲渡するのか。それは最初に言ったように私たちが諦めてしまったからだ。あの爆発はほんの些細なことから起きた事故だった。だがその影響はご覧の通り。今や私達の組織は死に体で、ハゲワシに内蔵をむしられるのを待つのみだ。幹部も私一人しか生き残ることができなかったのがその証明だろう。

    学徒の長い歴史の中で、挫折は何度もあった。この事態も、組織として全力を尽くせばある程度は立て直すことが出来るだろう。活動規模の縮小は避けようがないがね。

    だが、今回ばかりは心が折れたのだと思う。私達の組織は完全に変化してしまうだろう。おそらくなんの使命も受け継いでいない、超常の知識で得られる利益だけを追い求める組織へ。それはそれで幸せなのかもしれない。これまで私たちは様々なものを犠牲にしてきた。優秀な弟子や妻が死んだ時も、世界を守るために前だけを向いて歩いてきた。きっと疲れてしまったのだろう。

    私が望むのはただ残りの余生を静かに過ごせる場所だ。異常も命の危険もない場所。その代償に私の持ちうる全てをくれてやる。もし君たち財団が匣を必要としないのなら、最高指導者がその意思を持ち「手放す」とだけ言えば良い。逆を言えば、自ら手放さない限り、灯は常に君達の側にある。

    君たちならやり遂げることが出来るかもしれない。願わくば、共に踏み出してくれ。私たちの残骸と。

    人々の盾となってくれ。それは私たちには出来なかったことだ。

    SCP-001収容経過: 広範な財団内の調査及びPoI-p001/051による証言の検証によってSCP-001の特異性が判明した後、当時の財団最高意思決定者であった"管理者"はSCP-001を保持しておくことは財団にとって非常に有用であるとの判断を下しました。その後SCP-001管理権の属人化を防止することを目的としてO5評議会が設立され、管理者に代わりSCP-001放棄を判断する権限が評議会に委託されました。現在O5評議会はSCP-001放棄の是非を評価する定期的な議論を継続しているとともに、財団の運営中枢にまで権限を拡大し行使しています。

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      O5評議会決議概要

      議題:
      “定例決議: SCP-001の放棄見送りについて” (O5-12)

      評議会投票概要:

      留保
      O5-01 O5-02 O5-13
      O5-03 O5-07
      O5-04 O5-08
      O5-05 O5-09
      O5-06 O5-10
      O5-12 O5-11

      結果
      未定

      注記:
      [現在進行中]

      投票コメント:

      財団職員の規範であるべき評議会メンバーの半数がこのような敗北主義を持っていると判明し、率直に言って失望を禁じ得ない。

      我々は超常の事物が悪しき者の手に渡らないよう確保し、異常がこの世を滅ぼさないよう収容し、その性質を研究し解き明かすまで保護し続ける。そのためには、あらゆるものを犠牲としていくだろう。無知のままにいさせられる一般市民。収容と隠蔽のためにつぎ込まれる有限資源。己の意思に沿わず命を捧げられるDクラス。そして何より、それを理解していながら使命に殉じようとしている財団職員たち。

      確かに財団は冷酷であるもしれない。だがそれ以上にこの世界は残酷だ。

      この世界は狂っている。現実改変と再構築は絶えず現在を書き換え、重力は瓦解し、未知元素が蜷局を巻き上げ、物理法則はてんで動作しない。何もかも常ならず、留まり安定することはない。端から端までイカレた世界だ。

      財団は人々が安全で、安心して暮らせる未来を作るために、この世界に道理を構築しなければならない。しかし、昨日までの成果が今日の異常で消え去るような現実に再び立ち上がれる者は少数であるだろう。我々は一人残らず、無明の荒野でいつ終わるともしれない旅路を歩み続けている。

      SCP-001-βとは、灯とは、未来への希望だ。

      暗闇の中死すべき我々が唯一縋ることの出来る灯火だ。

      財団は世界の礎で在らねばならない。我々はその一欠片として、崩れ砕けることは許されない。

      財団は希望を捨てるべきではない。これまで払ってきた犠牲に、我々は不条理の闇を切り開くことを誓った。我らの命が燃え尽きても、その輝きは未来を照らす。例えこの身を薪としようとも、理不尽な世界に立ち向かう意思の炎だけは絶やしてはならないのだ。


      O5-01

      投票コメント:

      もうやめにしましょう、O5-01。あなたも最高クリアランスを持つ評議会の一員なら、いえ、長年評議会で議長を務めたあなただからこそ分かっているはずです。

      この世界には避けようのない滅びがある。それは壊れかけの鎖に繋がれた巨人であり、気まぐれに宇宙を噛み砕く猛犬であり、うしかい座に存在する破れた時空の空虚であり、やがて来たる嵐の七日間です。それらを全て把握しているからこそ、我々は目をそらすことが出来ません。

      腹の底で押さえ込まれた絶望に吐き気がします。

      SCP-001-βによって示されるのは偽りの希望です。人類の無限の可能性が与えられているというのはただの錯覚で、残酷な未来の真実を知らない無知なものにだけ許された幸福なのです。暗闇を知ってしまった我々には、それは望むべくもありません。無視しているだけなのですから。

      希望を手放すべきです。無駄にあがいてこれ以上優秀な研究者達の手を血に染める必要はない。全てを諦め、滅びの運命に身を任せれば、人類は少なくともしばしの安らぎを得ることが出来るはずです。

      我々は能くやりました。火をそっと吹き消して、新たな財団の在り方を祝いましょう。


      O5-02

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