オートマトンの物語: ザ・ビッグ・バードカリプス
オートマトンの物語: ザ・ビッグ・バードカリプス
By: kagayohkagayoh
Published on 30 Nov 2023 14:26

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サイト-17は廃墟になっていた。かつて手入れの行き届いていたサイトの庭には、今では瓦礫と灰が散乱していた。サイトの中では机がひっくり返され、割れたガラスが散らばり、収容室は空っぽだった。かつて収容されていた恐怖は、今や大地を歩き回る人間の群れに屈服してしまったか、今の地球のようすを一目見てさっさと去ることに決めたかのどちらかだった。いまだに稼働している収容チャンバーは、ひどく損傷した非常用発電機や生き残ったサイト-17の電力供給のおかげで動いていた。

SCP-2785は、非常用発電機の鳴らすハム音のなかで、サイト-17の玄関を歩いていた。ミツバチを思い出させるような音だった。彼は、ミツバチがハチミツを盗もうとした自分のことを刺そうとして、けれども自分が鉄でできていたせいで刺せなかったときのことを思い出した。SCP-2785はミツバチを傷つけるのは好きではなかったから、これは悲しいことだった。彼はもうハチミツを盗んだりはしない。泥棒することは間違ったことだからだ。

彼はサイトの入口を見つけた。入口は今は開いていて、ロックは他のアノマリーに力ずくで壊されていた。SCP-2785は新しい友人を探しに、ドアを通りぬけて開けた砂漠へと足を踏み出した。


SCP-2785は、精一杯に、そしてでたらめに砂漠を歩いた末に、ついに町に出くわした。町はまるで砂漠の中のオアシスのようだった。SCP-2785の目には建物が、道路が、そして一番大事な、友人になってくれそうなあらゆるタイプの知らない人達が写っていたのだ!

さびついた町の門を通り抜け、ほこりっぽくてゴミだらけの通りに入ると、SCP-2785は人を探してあたりを見回した。何人かが昼寝をしているようだった  その中のいくらかは変な、赤い、ねばねばした液体の中で寝ていた  けれど、SCP-2785は起きている人間を一人だけ見つけた。

SCP-2885はその男に近づくにつれてわくわくしてくるのを感じた。最初から良い関係を築きたくて、彼は存在しないのどで咳ばらいをし、落ち着いた声で話そうとした。「こんにちは、知らない人!」続いて彼は、「友人になりませんか?」と言った。

男は無表情で振り向き、小さく金切り声をあげた。SCP-2785は、最初はひどく困惑したが、金切り声が「はい」と言っているように聞こえたことに気が付くと、その困惑はすぐに大きな興奮に変わった。永遠のように思えた時の中で初めて、SCP-2785に友人が出来たのだ!

「万歳!」SCP-2785は大喜びで叫んだ。「まずはどこに出かけたいですか、新しい友人様!」

新しい友人は大きなゴミ山をよけながらゆっくりと走り出した。SCP-2785は大喜びでついていった。


乾いて砂っぽい町を新しい友人としばらくさまよった後(SCP-2785は彼が運動しているのだと考えた  数ポンド体重が減っても構わないと思って、SCP-2785は一緒にジョギングをした)、彼は宝石店に入った。店の窓は壊れて開いていて、中には何の明かりもなかった。「宝石を買いに来たのですか?」SCP-2785は尋ねた。新しい友人は何も言わないまま店に入っていった。

彼が店に入ると、SCP-2785は周囲にずらりと並んだ宝石や高級品に魅了されてしまった。SCP-2785はそれらを身につけたくてたまらなくなったのだ!品物の魅力は店に散らばったガラスやゴミのせいで薄まっていたけれど、SCP-2785にとっては気にならなかった。

新しい友人を見ると、にもかかわらず、彼が一つも宝石を身につけていないということにSCP-2785は気が付いた。SCP-2785の身体は金属でできているから、何があろうと輝いている。けれども、新しい友人には少しの輝きも余っていなかったのだ!こんなことは犯罪だ  いや、基本的な良識に対する侮辱だ!  SCP-2785が新しい友人に宝石のひとかけらすらあげないなんてことをしてはいけない!

SCP-2785は割れたショーケースのほうへ歩いていって、新しい友人のおしゃれな破れたシャツに似合いそうに見えた、グレーと白の指輪を取り出した。そして、新しい友人のほうへ歩いていき、指輪を彼の指にはめた。SCP-2785は「気に入りましたか?」と尋ねた。

新しい友人は小さく金切り声を返して、おもらしをした。SCP-2785はこれをイエスという意味だと解釈した。もし彼に顔を赤らめる機能があったなら、彼はそうしただろう。彼はようやく新しい友人の助けになったのだ!

SCP-2785は作業にとりかかった。


一時間経って、彼の新しい友人(SCP-2785は彼のことを、金切り声からとってクラールと呼んでいる)は今までにないほど輝いた外見になっていた!彼は十個の光り輝く指輪、五本のダイヤのネックレス、彼を王様のような見た目にする王冠、宝石の散りばめられたサングラス、そして金の、すばらしい見た目の首のチェーンを身につけていた!「とても素敵です!」とSCP-2785は言った。

クラールは金切り声で同意し、店から出ていきだした。

突然、SCP-2785は何かが間違っているように感じた。彼は記憶を探した、家政婦が懸命に家を捜索するように、そして探していたものを見つけた  サイト管理官にルールを教わった記憶だ。SCP-2785は思い出した……

「いいですか、2785。ここにはいくつかのルールがあります。争わないこと、逃げ出さないこと、そして泥棒をしないこと。もしどれか一つでも破ったら、我々はあなたの特権の一部を取り上げないといけなくなります」

……泥棒をしない……

……特権の一部を取り上げないといけなくなります……

この気づきはSCP-2785を野球バットのように打ちのめした。彼は泥棒をしていたのだ!もし彼が泥棒で捕まってしまったら、サイト管理官は彼の特権を取り上げてしまうだろう!何とかしなければいけない!

「戻ってきてください、クラール!」SCP-2785はクラールのもとへ走りながら叫んだ。クラールは、自分めがけて走ってくるロボットを見て、金切り声をあげて逃げ出した。SCP-2785は彼を追いかけて走って行った。


結局、SCP-2785はクラールを追いかけて街の外へ飛び出し、灼熱の砂漠のなかへ入って行った。幸運なことに、SCP-2785にとって暑さは問題にならなかった。追跡はさらに別の、もっと荒廃した街を通り過ぎ、一枚岩のような山々のあたりを抜け、静かな樺の木の森へと続いていった。動物の鳴き声はなく、その代わりに平穏な静寂と、騒々しく金切り声をあげるクラールを追いかけて走るSCP-2785の機械的な息切れ音があった。

クラールにとって宝石はいくらか重荷になっていたものの、SCP-2785は前回の変容で走ることを優先順位においていなかったので、二人の速度はおおよそ同じだった。数時間の間砂漠と荒野をジグザグに進んでいくと、クラールが疲れて速度を落とし始めたので、SCP-2785は彼を守るように抱きしめて捕まえた。クラールは小さく金切り声をあげて気絶した。

SCP-2785がファイヤーマンズキャリーの体勢でクラールを持ち上げると、彼は自分がどこにいるのかわからないということに気が付いた。彼はさっきまで砂漠に居て、今は森の中にいる。樺の木の森は故郷の森を思い起こさせたが、今はそんなことを気にしたくはなかった。心配ありません!と、彼は自分に言い聞かせた。ただ周りを見回して、見覚えのあるものを見つければいいんです!

SCP-2785は上を見上げ、空に浮かぶ永遠の太陽を見た。よし、とても見覚えがある。目線を下げると、雪に覆われた山が見えた。雪に覆われた山を町で見た覚えはSCP-2785にはなかった。遠くにはさらに超高層ビルが見えた。世界一豪華な高層ビルというわけではなかった  遠くからでもSCP-2785には割れた窓や汚れたバルコニー、建物全体に染み付いた暗褐色の廃墟の滲みが見えた。しかし、超高層ビルを見てSCP-2785はあることを思いついた。

頂上に上って、そこから町を探したらどうでしょうか?なんて天才的なアイデアなのだろう!

SCP-2785はクラールを抱え、タワーへ向かって出発した。


しばらくすると、クラールが目を覚まし、SCP-2785から逃れようともがき始めた。しかし、さっきの出来事を繰り返さないために、SCP-2785は彼をファイヤーマンズキャリーで抱え上げてしまった。最終的にSCP-2785はリードとして使えそうな麻ひもを見つけ、クラールの腰を縛り上げた。この様子はSCP-2785に、ジョナス博士が時々サイトに連れてきていた犬のことを思い出させた。SCP-2785は、あの犬は今どこにいるのだろうと考えた。クラールは、どこに行けば種が見つかるだろうと考えた。

クラールは、抵抗の後、ついにリードに負けてSCP-2785について歩くようになった。しかし、太陽が沈み始めるとクラールの動きが鈍くなったので、SCP-2785は彼には眠る必要があるのだろうと考えた。

SCP-2785は、クラールのリードに重しをするのに使えるような重たい岩を見つけた。毛布は見つからなかったので、その場で作ることにした。彼は寝る場所として決めた平地を一周し、落ち葉を集めて積み上げた。次に、クラールを落ち葉の山で覆い、別の落ち葉の山を枕がわりに頭の下に忍ばせた。それでもまだ暖かさを心配して、SCP-2785はコアの熱でクラールを暖めるために、彼の隣で丸くなった。

「おやすみなさい、クラール」と言って、SCP-2785はおやすみのキスに限りなく近い行為をしてから眠りにつくふりをした。


何もない森を歩いてさらに一日が経つと、朽ち果てたタワーが少し近づいてきた。SCP-2785はもう一度クラールのリードに重しをのせ、いつか信号から読み取ったことを思い出しながら、あたりに落ちていた小枝をいくつか積み上げてそのうち二本をこすり合わせることで火をつけた。新しい友人と一緒に小さなキャンプファイヤーの前で座っていると、SCP-2785は夜でもある種の平穏を感じられた。

「調子はどうですか、ミスター・クラール?」SCP-2785は尋ねた。

クラールは小さく悲鳴をあげて返事をした。SCP-2785は、彼は口数が少ない男なのだと考えた。彼はまだ宝石を身につけていて、宝石はキャンプファイヤーの炎にきらめき、クラールをミラーボールのように見せていた。気まずい沈黙が続いた。

「皆さんがどこかに行ってしまったらしいと気が付きましたか?」SCP-2785が沈黙を破って問いかけた。「私はあなた以外の誰も見かけませんでした、それに、私がサイト-17から出たとき、私の古い友人も誰も見かけなかったのです!」

クラールはビーズのような目で彼を見つめた。SCP-2785はそれを話を続けろという合図だと受け取った。

「私はただ……私はもっとたくさんの人々に会いたいのです。私は人を助けるために作られました!私の気持ちは、もし私が一人でも人を幸せに出来たなら、私は幸せなのです。私は皆さんが笑顔でいるのを見るのが好きです。でも、ここにはあなたしかいなくて、私はまだあなたの笑顔を見ていません」

クラールは、いつも彼の顔を見ているときと同じように口を固く引き結んだ表情をして、あのビーズのような目でまだ凝視のようなことを続けながら彼を見つめていた。

「私の頼みを聞いてくれませんか、そして笑ってくれませんか?どうですか?」

クラールは何もせずに、ただ小さく金切り声をあげた。

「そうですね、あなたが正しいです。不満を言いすぎました。おやすみなさい。」

SCP-2785は、松ぼっくりや雑草に構わずにクラールの横に寝転がり、眠りに落ちるふりをした。


「ちょっと、誰か来ましたよ」

エージェント・ガリーはエージェント・ガリソンを翼でつついて起こした。彼はセキュリティモニターに映った、宝石まみれの酔っぱらいを運ぶロボットらしきものを指した。

「待ってくれ、こいつには見覚えがある」エージェント・ガリソンはラップトップでメインリストを立ち上げながら言った。検索エンジンにいくつかのキーワードを打ち込んだ後、彼はあるSCPファイルを読み込んだ。「アイテム番号: SCP-2785」ガリソンは読み上げた。「オブジェクトクラス: Euclid」

「ホイガル博士に連絡しよう」とガリーが言った。


SCP-2785が気に入っていた森の穏やかな静寂は、落ち葉をかさかさと鳴らす柔らかい足跡によって突然破られた。彼は、森の中からカモメの群れが、鳥の顔面にとても厳しげな鳥の表情を浮かべながら歩いて来るのを見た。皆カモメにピッタリの大きさの白衣を着ていて、まるで小さな研究者のように見えた。

「こんにちは!」とSCP-2785は言った。

目の前のカモメがペンと紙を取り出し、ペンを咥えて紙に何かを書き始めた。

「ううん……読めないです」とSCP-2785は言った。

カモメは落胆して羽で頭を抱えた。

「でも……ええ……読めないのです……英語は!」SCP-2785は言葉に苦しみながら返事をした。「読めます……ええと……他の言葉なら!」

他のカモメの中から一羽が歩み出て、紙をとり、SCP-2785の読める言葉で書き始めた  ロシア語で。

「こんにちは!」カモメは書いた。「これが読めますか?」

「あなたの書いていることが分かります!」SCP-2785は返事をした。「友人になりませんか?」

「はい」カモメが返答した。「ただ、あなたの助けをお借りしたいのです」

「わあ!」SCP-2785は、興奮が忍び寄るのを感じながら言った。「どのような助けが必要ですか?」

「あなたはたくさんの人々を長期間目にしていないことと思います。我々も人間を探しているのです。もし可能で  

「はい、はい、はい!」SCP-2785は彼らが言い終わる前に答えた。

一羽のカモメが別のカモメのほうを見て、よくわからない言葉で何かをつぶやいた後うなずいた。

「良いでしょう」と正面のカモメが記述した。「我々と共にタワーまで来てください」

「でも、クラールはどうするのですか?」SCP-2785は、まだリードに従ってついてきている彼を指さして言った。

正面のカモメは神経質な面持ちで別のカモメのほうを見た。「彼はここに置いていかなければなりません」と彼は記述した。「申し訳ないのですが、彼をサイトに連れていくことはできません。あなたには理解できないでしょうが  あなたに説明しなければならないことは大量にあります  もし彼をサイトに連れ込んだなら、我々の努力が全て台無しになってしまいます。我々を選ぶか彼を選ぶかのどちらかです」

SCP-2785はカモメを眺めた。カモメたちはきちんとした白衣を着ていて、彼のことをまっすぐに見ていて、口の代わりにくちばしをもっていた。彼はカモメたちのうちの一羽が笑っているところを思い浮かべようとしたが、想像力が足りなくて思い浮かべることが出来なかった。彼はクラールのほうを振り返った。クラールはぼさぼさの茶髪、ビーズのような目、固く閉じた口をしていた。彼はクラールの笑顔を見たことが無かったけれど、いつか見ることができるのだろうか?

彼はカモメたちのほうを見て、そしてクラールのほうを振り返った。SCP-2785はカモメたちと約束をしてしまったが、本当にクラールを置いていってしまえるのだろうか?彼らの過ごしたあらゆる出来事の後でそんなことをできるのか?

少し考えてから、彼は選択をすることに決めた。

「私は皆さんについていきます」クラールのリードを切り離しながら、彼はカモメたちに言った。SCP-2785はまるで自分をつなぐ綱を切り離しているかのように感じた。クラールは立ち上がり、最後に一声金切り声をあげて、森の中に入っていった。

「良いでしょう」正面のカモメが記述した。「我々と一緒に来てください。あそこのタワーの中です」

カモメたちと一緒に立ち去りながら、SCP-2785はクラールのほうを振り返った。クラールは彼にできた最後の友人だった。彼は旅の中で眠っていない人間を他に見たことが無かった。クラールのことを胸の奥深くに押し込めようとして、SCP-2785は振り返って尖塔へ向かい続けた。


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