SCP‐999の摂食実験(誓ってこれは科学のために)
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ログ開始

「博士、あなたには無理だと思います」ベリンスキー博士はカーペットの上で忙しなく足を動かしていた。彼は自分には何もできないことを知っていたが、少なくとも自身の評価のために、何かを記録に残す価値はあった。

「君が何を言おうと、アンドレ。ともかく」 と、部屋にいたもう一人の男はオレンジ色のつなぎの上に新品の白衣を羽織って言う。「こいつは馬鹿げた記録だな。私はブライト博士で、これから999のサンプルを摂取する。こんな実験をするのは、今”そんな気分”になっているからだ。この実験を承認した輩の名前は……」博士らが収容室に持ってきた小さな折りたたみテーブルに置いてある包みを、ブライトはちらりと見た。「無論、編集済になっている。いつだってクソみたいに編集がされてる。それが何であっても。奴が承認しようがしまいが、私はこれを実行するつもりだ。そいつは何をするつもりだ? 私を殺せるとでも?」

ベリンスキー博士は最後の二行をノートカードに走り書きし、それから再び話した。

「ではジャック、先へ行って  

「ブライト博士だ。私たちはまだそこまで親しくない」

「申し訳ありません。ブライト博士、準備をしながら話してください。記録のためです」

ブライトは非活性のオレンジ色の半球のそばに、軽くひざまずく。その手にはサイトの食堂から提供されたプラスチック製のスプーン、それからメスを持っている。

「今回の計画は、」ブライトは咳払いをした。「999の表膜を小さく切開して、オレンジ色の物質をスプーン一杯分摂食するというものだ。どういうわけか、茶番めいたこの実験をO5は承認している。だがどうも、こいつがどんな味がするかを知りたかったのは私だけじゃなかったらしい。

「この実験の目的は何ですか?」ベリンスキー博士は尋ねた。

ブライトは含み笑いをした。「私はこの小さなびちゃびちゃが本当にタンジェリンのような味がしていることを証明するつもりだ。ビリジアンとアンドレアスが信じてやまないマンダリン味ではなくね」1

「そうですね、ではそれが不可避的に貴方を殺すことになったらどうするつもりですか?」

「ネックレスを別のDクラスのお友達にでも付けろ。君たちはいつも私のことを心配してるが、正直言って理由がわからんな」

「私たちはただ前もって計画を立てたいだけです、博士」

ブライトはそれをきっかけに、SCP-999の側面を小さく切開し始めた。それはつつがなく行われた。ブライトはスプーンを切開部の下に挟み、傷口が閉じる前に出てくるぬめりを少量受け止める。それからベリンスキー博士のところに戻った。

「こちらジャック・ブライト、ふざけたゼリーを食べる準備ができた」

ブライトはスプーンを口にくわえ、舌で999の小さな塊を動かし、さまざまな味が得られるようにした。しばらくすると彼の口の動きは止まり、目が大きく見開かれた。

「ベリンスキー……」

「はい、ブライト博士?」

「これクッソ旨いぞ!」

「記録のためにもう少し具体的な説明をお聞かせ願えませんか?」

「いや、表現できないね。控えめに言ってもクッソ旨いんだよベリンスキー! これは今まで味わったことのない最高の味だ! 君も知る通り、私は今まで本当に色々食べてきたけれども  

ブライトが歩き続けると、サンプルは彼の喉を滑り落ち、喉を詰まらせた。二人の博士は黙って互いを見つめ合った。ベリンスキーが最初に話した。

「ブライト博士は、えー、サンプルを飲み込みました。彼は唖然とした様子で  

ベリンスキーの言葉はブライトの爆笑によって中断された。床の上でのたうち回る音が聞こえ、この突然の騒ぎでSCP-999が目を覚ました。

SCP-999は、ブライトの首のアミュレットを見ると嬉しそうに鳴き声をあげた。彼の手を掴むために体を伸ばし、腕の上まで動き始めた。それは古いドアの蝶番が鋭くキーキーと鳴る音のような鳴き声を発し、ブライトの笑い声を真似るように響く。

ブライトは話すのもやっとだった。

「チクショウ! もうやめ  もう  ! くすぐるなあ!」

ベリンスキーが記録を終わらせるために背を向けている間、彼は再び笑いの発作に引き戻された。「こちらはベリンスキー博士、現在動けないブライト博士の代理をしています。ブライトはSCP-999のサンプルを成功裏に消費しました。予想通り、内部からくすぐられているようです。味についての説明はいまいち精彩を欠いていて、この実験の核心については結論を得られなかったということになるでしょう。したがって、私はこの実験は失敗であるとここで断言します」

ログ終了

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