事例後インタビュー、████-██-██
インタビュアー:終了後インタビュー#████、インタビュアー、[データ削除]博士。インタビュー対象、エージェント・アポカリマー。あなたはSCP-269の終了任務に指名された。間違いありませんね?
アポカリマー:ああ、その通りだ。
インタビュアー:あなたが選ばれた理由は何だと思いますか?
アポカリマー:ええと、俺が生物学者であり、二次的被害を最小限に抑えられると判断されたからだと思う。表向きは。
インタビュアー:裏向きでは?
アポカリマー:「私の優れた鹿狩りの才を浪費させるのか」とアベルが言い、皆には既に先約があり、そして必要な能力があってなおかつ志願したのが俺しかいなかったからだと思うな。
[続く]
監視記録#[データ削除]
アポカリマー:私の提案をお読みいただけましたか?
O5-█:[データ削除]
アポカリマー:保証します。全身全霊をもって、リストアップしたすべてを成し遂げて見せます。
O5-█:[データ削除]
アポカリマー:私がここで標準火器訓練を行う許可が出ることはありません。銃を持たせたら成果よりも重大な被害が出るだろうと考えられているようでして。
O5-█:[データ削除]
アポカリマー:はい、えー、この件をコンドラキに任せようとした職員がいたからです。私はここでは正気な人間に見られるよう努めております。
[続き]
インタビュアー:まず最初にしたことは?
アポカリマー:ヘラジカ男が最後に目撃されたのはポートランドだったから、まずはそこで捜索を開始した。
インタビュアー:どうやってそれを見つけるつもりだったので?
アポカリマー:そう大掛かりな手を使うつもりはなかった。現地住民は他と同じく非協力的だったが、破壊の痕跡が町から南西方向に続いていた。オレゴン州の地図をざっと見て、行くべきところがわかった。
インタビュアー:それはいったいどこです?
アポカリマー:███████。12フィートの二足歩行ヘラジカを隠すのに、63万エーカーの国有林以上にふさわしい場所があるとでも?
[続く]
動体反応カメラ269-Bの映像
8:17:20 AM — カメラはオンライン状態。離れた場所に動体反応カメラ269-Aが見える。
8:35:25 AM — 馬に乗った未知の人物(いずれも女性)をフレームに捉える。
8:45:47 AM — 同じ未知の女性が反対方向から駆け込んでくる。
8:46:03 AM — SCP-269がフレームインする。未知の人物を追いかけているように見える。
8:50:00 AM — ニシハイイロリスがカメラを横切る。特に異常なし。
8:51:01 AM — カメラ269-Aが煙を上げている。
[続き]
インタビュアー:動体反応カメラが破壊されていたというのですか?
アポカリマー:念入りに隠したカメラB以外は、だな。
インタビュアー:あなたはそれを受けてどうしましたか?
アポカリマー:その時点では何も。ちょうどカメラBのライブ映像を見ていたから、他の4つが止まっていたことに気づかなかった。気がついたのはヘラジカ男の居場所についての考えがまとまったとき、そしてすぐさま行動に移さねばならなくなったときだった。
[続く]
エージェント・アポカリマーの頭に装着されていた、ヘルメットカメラ269の映像
(映像は揺れている。エージェント・アポカリマーが走っている模様。)
エージェント・アポカリマーの声:SCP-269の終了記録、█████████ ██にて、20██年、エージェント・アポカリマー記録!
(エージェント・アポカリマーがカメラ269-Bに現れる。)
アポカリマー:対象は15分前の時点でここにいた。
(カメラが森に向けられる。)
アポカリマー:仮に乗馬者たちを追っていたとするならば、対象は道に沿って移動していると考えられる。
[映像カット]
(人間2人と馬2頭、合計4体の死体が道にあるのが見える。)
アポカリマー:……なんてこった。
(カメラは死体のそばにある足跡を捉える。)
[続き]
インタビュアー:熊の足跡?
アポカリマー:その通り。
インタビュアー:しかし、あなたは彼らが熊に襲われた犠牲者だとは考えなかった?
アポカリマー:ああ。熊に襲われたような怪我じゃなかった。
インタビュアー:ちょっと待って。熊による損傷がどのようなものかをなぜ知っているのですか?
アポカリマー:俺は生物学者だからな。それに加えて、直後にSCP-269が俺を襲ったことからも熊のしわざでないことがわかった。
[続く]
(エージェント・アポカリマーは大きな木に登っている。SCP-269は前足の蹄でエージェントを打ち倒そうとしている。)
アポカリマー:こいつを食らえ。
(黒く長い筒状の物体が画面内に現れる。アポカリマーはSCP-269の肩を筒で突く。SCP-269は怯むものの、筒を咥えて放り捨てる。)
アポカリマー:はい大当たり。お次はこいつだ。
(端にカギ爪を持つ長い金属製の棒がフレームインする。カメラが右を向き、大きなスズメバチの巣を焦点に合わせる。巣はカギ爪で折り取られ、SCP-269の角に投げつけられる。SCP-269は逃げ出し、蜂を追い払おうとする。)
[続き]
インタビュアー:なぜスズメバチを使ったのですか?
アポカリマー:からかってるのか?マイクロチップのインプランターに続いて、お気に入りのヘビ捕りスティックまで壊される気はなかったんでね。
インタビュアー:わかりました。では、追跡用チップを埋め込んでから逃走させるという手段をとった理由は?
アポカリマー:あれは大都市をいくつも破壊しておきながら、自分の体にはまったく傷を負っていないようだった。奴を殺すにはかなり接近する必要があり、そしてそれを安全に実行できるのは奴が寝ているときだけだ。
インタビュアー:そして眠る場所と時間を知るために……
アポカリマー:その通り。追跡手段が必要だったというわけだ。
[続く]
(森が暗くなっている。エージェント・アポカリマーは電波式追跡機を携帯している。)
アポカリマー:近いぞ。
(銃声が響く。)
アポカリマー:なんだ?
かすかな声:(聞き取り困難)……財団……(聞き取り困難)
(エージェント・アポカリマーは木の後ろに隠れる。カメラが下がりエージェントの体を映す。)
アポカリマー:ああ、なんてこった。出番だぞ。カモフラージュ・モード。
(SCP-408が森から現れてエージェント・アポカリマーに群がり、エージェントの姿が消える。)
かすかな声:(聞き取り困難)……目覚めさせ……
[続き]
インタビュアー:あなたを狙って撃った、と?
アポカリマー:それでやっと、全ての謎のピースが揃ったんだ。隠蔽工作、カメラの破壊、バンクーバーでの封じ込め違反もだ。偶然じゃない。奴らはテストしてやがったんだ。
インタビュアー:奴ら、とは?
アポカリマー:ヘラジカが町を破壊した後、奴らが物的証拠を取り除き、精神破壊により生き残りの証言を封じ、俺たちが後を追えないようにした。さて問題だ。危険なSCPを使って理由の無い破壊を引き起こし、あらゆる手段を使って財団から逃れようとする。私はだあれ?
インタビュアー:……カオス・インサージェンシー!
アポカリマー:ビンゴ!
[続く]
(エージェント・アポカリマーがSCP-269に近づく。対象は眠っているように見える。)
アポカリマー:よーしよーし、ヘラジカ男クン。痛くしませんからねー。ちょっと鼻腔にジャブを入れて、ついでに…
(大きな笛の音が響く。SCP-269は即座に起き上がる。)
アポカリマー:クソが。
(SCP-269は近くの木を引き抜き、傍らに投げ捨てる。)
アポカリマー:よし、計画変更。戻って-
(カメラが突然上方を向く。小さな若木がエージェントに向かって飛んでくるのが見える。)
アポカリマー:この-
(若木がカメラに衝突する。カメラはヘルメットから外れて地面に落ち、レンズが落ち葉の山に埋もれる。)
アポカリマー:おい、コラ、おい!
(個々の音は聞き分けられない。エージェント・アポカリマーが絶叫している。SCP-269の吼え声が轟いている。)
[続き]
インタビュアー:そして、どうなりました?
アポカリマー:あくまで推測だが、カオスの奴らは俺の頭に木がぶつかるのを見て、そして269に俺を踏み潰させようとした。あいつがちゃんと俺のことを見ていたなら、それは成功してただろうな。
インタビュアー:あなたはどうしたのです?
アポカリマー:体を引っ込めて、臭化パンクロニウム1を全弾打ち込んだ。あとはあいつが倒れるまで森の中を追いかけて、肘を撃って死亡を確認した。あ、その前に象でも死ぬくらいの量を打ち込んだな。それが終わったら408で俺のダミーを作って、カオス・インサージェンシーがかく乱されてる間に逃げた。
インタビュアー:彼らを捕らえなかったのですか?
アポカリマー:数の上でも装備の上でも負けていた。俺が殺されなかったのはひとえにあのチョウチョのおかげだ。で、だ。奴らはもうSCP-269を使えなくなった。これは成功したってことでいいよな。
インタビュアー:最後に一つだけ。録音の最後数分間、SCP-269はより大きな傷を負っているように聞こえました。あなたがしたことは薬物の投与だけなのですか?
アポカリマー:おお、えーと、それはたぶん、俺が針を刺した場所が関係してるんじゃないかなーと、思っていたり。
インタビュアー:と言うと……
アポカリマー:そう。ヘラジカの拳2にだ!
インタビュアー:……そのジョークをインタビュー中に言いたいがために、その場所を選んだのですか?
アポカリマー:まあ一応……。
[インタビュー終了]