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これは私の良き友人 🗿 stormbreath への作品交換会ギフトです!
今までこのような記事に取り組んだ経験が無かったので、執筆するのは大変でした。とは言え、crewtimeを正しく描写できていたなら幸いです! crewtimeは読む時も書く時も面白いキャラクターですし、どんな物語にしようかと考えるのも大いに愉快でした。楽しんでくださいね!
あなたの友、
youseeinthedark
タイトル: ユーコンの冷たいカルト教団
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2025
著作権者: Yossipossi
原題: The Cold Cult of The Yukon
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン:
元記事リンク: ソース
crewtime 24/12/25 (水) 14:21:28 #94926937
メリー・クリスマス & ハッピー・ホリデー、パラウォッチ。今年の冬もみんな暖かくして過ごしていることを願う、と言うのも、これから紹介するのはきつめのコールド・ケースだからだ。この未解決事件の記録はかなり少ないが、カナダ在住の友人に現地調査を手伝ってもらった。
1999年12月24日 7:56 PM、カナダの田舎町に住むローラ・チャンス夫人の自宅の前で、1人の女性がローブを着た2人組によって拉致された。捜索の結果、2時間以内に秘密のカルト教団が摘発されたが、それはユーコン準州の森林の奥深くで儀式殺人が行われた直後のことだった。容疑者は逮捕され、清掃班が呼ばれ、事件は闇に葬られ、町は根底から揺さぶられた。確かに恐るべき、身も凍るような - しかし、究極的にはありふれた事件。
この事件が未解決に終わったのは、小さな町の出来事にも拘らず、誰も拉致された女性の正体を知らなかったからだった。
crewtime 24/12/25 (水) 14:21:50 #94926938
ローラ・チャンス夫人は当時62歳、未亡人となって間もなく、カナダの町ワトソン・レイクの外れにある、寝室が3つある家で一人暮らしをしていた。彼女は専ら編み物をしたり、読書をしたり、テレビを見たり、時には近所の友人を訪ねたりして日々を送っていた。しかし、この特別な1999年のクリスマス・イブには、彼女は祝日ムードの高まりに任せて、家を忙しく掃除し、せっせと皿を並べたり、飾り付けをしたりしていた。
山岳部標準時 7:56 PM 丁度 - これが分かっているのは、チャンス夫人が直前に時計をチェックしていたからだ - 女性の悲鳴が家中に響き渡った。全てを放り出して玄関口に飛び出したチャンス夫人は、恐るべき光景を目の当たりにした。マントに身を包んだ人物が、彼女の家の前庭を横切りながら、足をばたつかせながら叫ぶ女性を、目立たない黒いバンに向かって引きずっていた。束の間のショックの後、チャンス夫人は急いで固定電話に向かい、緊急サービスに通報した。
チャンス夫人は電話口で必死に事情を説明した。彼女の説明はしどろもどろで回りくどかったが、通信指令係は彼女が言っていることを正確に捉えたようだ。数分以内にパトカー1台が用意され、すぐ出動できる態勢に入っていた。捜索が始まった。
意外にも、この地域の警察官たちはかなり対応が素早かった。大半はクリスマス休暇中だったが、まだ数人が当直中で、何かしら行動を起こそうと意気込んでいた。15分もしないうちに、2台のパトカーが追加で捜索活動に動員され、その後方でも更に数台が出動準備を整えていた。
ワトソン・レイクはユーコン準州の小さな町で、アラスカ・ハイウェイに直接面している。この時期に誰にも気づかれず出入りするのは至難の業だ。つまり、迅速に対応したおかげで、警察はこの地域を素早く封鎖し、すぐに問題のバンを捕捉できるという強い確信を持って捜索を開始できたのだ。
そう長く探す必要はなかった。通報から1時間以内に、町外れの路傍に乗り捨てられたバンが発見された。パトカーを降りて捜査を開始した警察官たちは、すぐに3組の明瞭な足跡が森の奥深くへ向かっていることに気付いた。
うち1組の足跡は、歩調が不揃いで、他の2組よりも小さかった。完璧な一致だが、もはや一刻の猶予も無い。彼らは犯人に… そして被害者に真っすぐ続く道筋を見つけたのだ。
crewtime 24/12/25 (水) 14:22:02 #94926939
現場にいた2人の警察官 - クリストファー・クーパーとグウェンダ・ダルトン - は犯人の後を追おうと躍起になり、後続部隊に計画を伝えると、増援を待たずに出発した。暗闇と凍てつく雪のせいで、足取りは遅々として進まない。しかし、風が周囲で強くなり始めても、2人は辛抱強く歩き続けた。
足跡が深く、より明確になってきた時、ダルトンは真っ直ぐ前方にかすかな光を認め、直ちに後続部隊にこれを伝えた。接近するにつれて、警察官たちはすぐに全くの無言になり、やがて歩くことさえ止めてしまった。クリストファーは後日、こう証言している。
悪夢のようだった - 陳腐なホラー映画で見るような、しかし生々しく鮮烈な光景だった。俺とグウェンダは思わず立ち止まり、1分ばかりそれを見つめながら、自分たちが一体全体何を目撃しているのかを理解しようとしていた。俺たちが見ているのが現実かどうかさえも定かでなかった。
警察官たちのボディカメラは、ローブを身に纏い、フードを被った数名の人物が輪になって立ち、吹きすさぶ風の中で両手を上げている様子を捉えていた。映像では、数匹の動物の骨が辺りに散乱し、近くの木々から多種多様な物品が輪を描くようにぶら下がっているのも分かる。言い換えるならば、それは陳腐なカルト教団の円陣そのもので、しかも指導者が死体を見下ろすように立っているというおまけ付きだった。
立ち直った瞬間、2人の警察官は銃を抜き、直ちに行動に移った。警察官を見て動揺した数人が森の中へと逃げ込み、他数人はうずくまったり頭を抱えたりしたようだ。円陣の中心にいた指導者は、儀式に夢中で気付いていなかった。
ダルトンとクーパーはすぐさま一団を取り押さえた。数分以内に、その場に残っていた容疑者はほぼ全員が自発的に降伏し、何事もなく身柄を拘束された… 勿論、ただ一人を除いては。先程述べたカルト指導者は、2人組が逮捕しようとした時点で初めて抵抗し始めた。数分後に到着した他の警察官たちが、一団の連行を支援した。しかし、それ以外のカルト信者たちはとっくに逃げ去っていた - 悪天候のため、彼らの捜索はほぼ即座に打ち切られてしまった。
拘留中の容疑者たちに関する記録は乏しい。しかし、一般に公開されている全ての記録に一貫した傾向が見られる。このカルト信者たちは、揃いも揃って健忘症を患っているか、さもなければ記憶喪失を偽装するのが非常に上手いのだ。現場で発見された全てのカルト信者は - 取り調べの書き起こしが見つからなかった指導者については断言できないが - なぜ自分が現場にいたのか、そこで自分が何をしようとしていたのかを覚えていなかった。
指導者は25歳の地元住民、キャサリン・ポリーだった。私は彼女の経歴に何ら特筆すべき点を見つけられなかったが、どうもこの事件の数週間前に、彼女は現地の観光名所、訪問者たちが世界各地の標識を持ち寄ることで知られるサインポスト・フォレストから数枚の標識を盗んで捕まっていたらしい。カルト殺人現場の近場からは、似通った - しかし、酷く損傷した - 標識が見つかっている。それ以外には、彼女が生涯を通してワトソン・レイクに住んでおり、極度に辛辣で陰険な性格だったらしいということしか分からなかった。
これらの詳細は、それだけで見ると眉をひそめざるを得ない。執念深いサイコパス、もしくは妄想にどっぷり嵌まり込んだ人々による集団ヒステリーかもしれないが、必ずしも超自然の事件とは言い難い。
私にとっての決定打はカルト信者ではない。死体だ。
crewtime 24/12/25 (水) 14:22:08 #94926940
警察はほぼ即時に女性の死亡を確認した。彼女の死体は暗くなったカルト儀式現場の中心に生気無く横たわり、手足は雪に埋もれつつあった。第一容疑者の身元が確保されたことや、悪天候が問題を引き起こす可能性に鑑みて、当直の監督者は、分析のためにこの死体を近場の遺体安置所に搬送することを承認した。
検死解剖は祝日明けの26日に行われた。現地の病理医が驚いたことに、死因は特定できなかった。負傷 (片手首の骨折は除く) 、鈍力による痣、毒物の蓄積、その他の犯罪行為を示唆する兆候は全く見られなかったのだ。最も可能性が高い死因は低体温症だったが、両腕の凍傷以外には環境曝露による死を示す痕跡は無く、カルト教団が彼女をわざわざ自然死させたとも考えられなかった。死因は結局 “不明、恐らく低体温症” とされた。
更に謎めいているのは、その後の数日間で、女性の身元が全く判明しなかったということだ。彼女のDNA、指紋、歯科記録は既知のどの記録の何者とも一致しなかった。事情聴取された地元住民は誰一人として彼女の身元を知らず、過去に見かけた覚えすらなかった。拉致現場の近くで発見された、被害者のものと思われる車両さえ、明確な所有者を特定できなかった。
まるで、彼女はどこからともなく、ただ殺されるためだけに出現したかのようだった。
この時点から、事件の記録は実質的に存在しなくなる。私の推測だが、CSIS (FBIに相当するカナダの機関) が介入し、捜査に関する厳重な情報封鎖を行ったのだろう。残念ながら、これで私たちの手掛かりはほぼ完全に失われた。彼らが私たちと同じように困惑しているにせよ、とっくに事件を解決したにせよ、私には知りようが無い。分かっているのは、1週間以内に本件を追っていた全ての報道機関が完全に沈黙したことだ。1年もしないうちに、誰もこの事件を語らなくなった。
この謎を解明しよう - 少なくともこの謎について書こうという私自身の努力は、ほとんど実を結んでいない。カナダやアメリカの行方不明者には、多少なりとも被害者と一致する容姿の人物はいない。オンラインで彼女を知っていると名乗り出た者もいない。彼女の車のナンバープレートの目撃情報や記録も無い。実録犯罪の物語を粗製乱造するコンテンツファームさえもが、この事件には言及しようともしない。行き止まりに次ぐ行き止まり。
彼女は並行世界からやって来たのか? カルト教団の仕業か? 教団の儀式がどういうわけか、彼女を部分的に召喚したのだろうか? なぜ? 政府が関与したのか? 被害者は実は他国政府のエージェントで、何の変哲もないユーコン準州の町に潜入しようとしていたのか? 彼女自身はあの町に辿り着いた経緯を知っていたのだろうか? 事件がクリスマスに起きたことには何かしらの意味があるのか?
私には分からない。正直に言うと、真相が今後明らかになるとは到底思えない。事件全体から陰謀か、超自然現象の臭いがぷんぷんする。いずれにせよ、彼女が何者であろうとも、今は安らかに眠っていることを願うしかない。
crewtime 24/12/25 (水) 14:25:29 #94926943
しかし、それは満足できる結末とは言い難いし、君たちに熟考する材料を与えないことになってしまう。
私がいったんこの投稿を棚上げにした1年後、匿名希望の友人が、ユーコン準州に旅行に行くつもりだと言ってきた。私はこの事件を思い出し、私に代わって現地調査をしてくれないかと頼み込んだ。友人は快諾してくれた。
それで事件の突破口が開けたと言いたいのは山々だが、疑問が増えただけだった。それでも、十分に違う疑問が得られたので、今ここで共有する価値はあると思うのだ。
まず、現地図書館で見つかった幾つかの新聞記事の切り抜きで、ポリー女史の最終的な運命が分かった。第一級殺人、誘拐、器物窃盗の罪で終身刑。被害者の身元や死因すら不明であることを考えると、個人的には少々オーバーキルのような気がする。しかし、私はカナダ人ではないので、なんとも言えない。
ポリー女史の現在の所在地は不明だが、恐らく塀の中だろう。
図書館の書庫深くに埋もれていたもう1つ別の切り抜きで、儀式殺人の現場についてもう少し詳しく分かったが、これがどこまで状況に光を当てるものかは分からない。すり潰された骨を詰めた数個の骨壺、カラスの羽根、その他カルトにありがちな物品。焼けたポラロイド写真も1枚あるが、損傷が酷すぎて被写体が判別できない。
しかし、恐らく最も奇妙なのは、前述のサインポスト・フォレストから盗まれた何枚ものナンバープレート、道路標識、その他の似通ったランドマークが現場一帯に散乱していることだ。どの標識も、ほとんど跡も残さずに地名が削り取られている。これをどう解釈すべきか、私個人は見当もつかない。
そこから先、友人の調査はあまり進展が無かったらしい。町民たちへの聞き込みもほぼ行き詰まりに近かった。この町で起きた事件にも拘らず、私たちが知っている以上のことは誰も知らなかった。
しかし、追いかけたい手掛かりがまだ1つ残っていた。ローラ・チャンスはまだ存命である。25年後の今も、彼女は寝室が3つある同じ家で一人暮らしをしている。彼女は現在87歳だが、私が聞いたところによると、比較的健康体とのことだ。
会った時、彼女は私の友人をお茶に招き、歓談した。私の手元には、当時の会話の録音がある。その全てに関連性があるとは思わないが - 結局のところ、チャンス夫人は一連の事件でごく些細な役割しか果たしていない - ある特定の発言に注目させられた。敢えてそのまま書き残すものとする。
ええ。事件の後… 正直、どう考えていいかまだ分かりません。だけどね、私の人生はあれ以来、かつてないほど虚しくなってしまいました。きっとクリスマスにあんな光景を見たせいで、楽天的な気持ちが全部失せてしまったんでしょう。夫が死んでほんの数年後、若い女の子が死に向かって家の前を引きずられていって… それで魂の根本的な部分が傷付いてしまったのかもしれませんね。
あの事件から数日後にね、警察が幾つか質問しに来たんです。何を言われたか全部は覚えてませんけれど - 当時はまだとてもショックを受けていましたから - でも… 警察はあの女の子の顔写真を出して、私にこう訊いたんです、「彼女に見覚えがありますか?」 そしてその写真を見た途端に、どっと涙が溢れてきて、私は抑え切れずに泣き出してしまったんです。
実を言うと… 何年も経った今でも、どうしてあの時泣いたのか分かりません。人生で一度も会ったことがない子でした。








