「暗闇に目が慣れるAdapting to the darkness」 (慣用表現)
「視界外のものは、意識外にあるOut of sight, out of mind」 (慣用表現)
「二人羽織症候群Helping-hands syndrome」 (オネイロイたち)3
「親に監視されてネットを好きなだけ使わせてもらえなかったあの頃、何して遊んでたか思い出せない」
(メリーメーカーたち)456
「異常な視点では一般社会を正しく理解出来ない」 (看守たち)
概観
暗順応Dark adaptation。可視光量の多い環境から少ない環境へ急激に変化したとき、視細胞の桿体細胞内のレチナールとオプシンが時間経過と共に合成されロドプシンとなり、桿体細胞の感度が上昇、弱光が認識できるようになる生理現象。⸺要は「暗闇に目が慣れる」ことをこう言うのだが、これを由来に、ここ数年「非主流技術やその関連文化に親しみすぎ、そうでなかった頃の感覚を忘れること」をこう比喩する流れがある。また、派生して「暗順応者ダークアダプター」や「薄闇主義ダスキズム」といった表現・用語も使われるようになった。
暗闇に目が慣れてから明るいところに出ると、視界は白一色に染まり、風景の一切は判然としない。同様に、いわゆる「ヴェール」の内側に住まう者にとっては、その外側を直視することは難しい。78その彼此を往復する者、薄闇の中で生きることを選んだ者ダスキスト9は、しばしばこの現象に悩まされることとなる。
知識
特徴: 稀に混同されているが、「超常社会に深く関わる者は正常な社会を正しく把握できない」は、この語の示す現象として適切ではない。 Homo sapiens sapiens たちが太陽系第三惑星に築いた文明の中に属した経験のない者や、一生涯属することのない者は、図書館には大勢いる。別の例を挙げると、ナルカの古き教義を受け継ぐ者らが、同文明に精通している道理はない。そうではなくこの語は、「一般社会から超常社会に参入した者が、超常社会的な感覚に慣れ親み、一般社会的な感覚を喪う」現象を指している。10111213
歴史と関連組織: この語にこの用法が生まれた背景には、我らがSCP財団看守たちの下部組織「一般部門」の活動がダスキストの間で知られ、注目されてきたことがある。14151617これは、かの団体が超常組織として長く在るが故に生じた、自身が守るべき「一般社会」との感覚の乖離に対策するべく創設されたもので、一般社会、とりわけ「超常存在と関わる一般人」の生活様式や思想を調査研究し、その結果を元に組織の認識をアップデート、並びにヴェールの位置の基準を見直す指標とすることを目的としている。1819
その理念の中で、ここ最近になって20一般部門の渉外課が全世界的に実施し始めたプロジェクトが、様々な事情21222324でヴェールの狭間にいる小規模なオカルティストやアナーティスト集団⸺前述した「薄闇主義者ダスキスト」というのは、こうした者たちを指す⸺への積極的接触、そして彼らの活動への指導的介入……「一般社会と超常社会の狭間で生きるためのレクチャー」だ。最新の教育心理学を取り入れているであろう彼らのセミナーは、魅力的な語り口で、わかりやすく、絡め取られるように「良き生徒たち」になってしまう団体が後を絶たない。2526272829彼らの行う指導においてよく使われるレトリックが、「あなたたちの目は超常という闇に慣れつつAdapting to the darknessあり、今のあなたたちに光に満ちた尋常な社会を見ることは難しい」そして「だから薄闇Duskで生きるあなたたちは、闇と光を同時に眼差す術を知らなければならない」だ。3031
他の詳細: この語をこの用法で使う者の認識はさまざまだ。蛇の手のメンバーがこの語を無邪気に使うようなことはないだろうが、「闇」に目が慣れたてのダスキストたちは違うようだ。
さて、では彼らに対抗せんとする我ら魔法使いに何ができる?
観察と物語

返ってきたのは音声ファイルだった。こんな内容だ。
「(息を整えるような呼吸音。)(樹脂性? の何かがマイクの近くで擦れたり叩き合わされたりするような音。これは音声中、 O が喋るたびに鳴っているように思う。)」
「 O です。…… VHS の件が気になってると思うんだけど、えっと、……これ以上調べるな。」
「(背景にノイズ音、古いテレビから聴こえるような話し声) ええと、僕は、大丈夫。に、した。 james さん、 james さんは、これ以上関わらないで欲しい。絶対。」
「(話し声が急速に大きくなる。 O が狼狽し、何故か大きな動物が身体を揺するような音がする。話し声は遠ざかっていく。) ……ビデオの件だけじゃなくてさ、僕ら知りすぎたよ。 10 年前の件のときよりも。」
「僕が james さんの分まで真実を追うからさ。だから、手を引いて欲しい。全部から。」
これを聴いて俺は最初、あ、 O は本当に変わっちゃったんだな、と思った。
それは嘴の音のことじゃない。まあでも、それも関係してる⸺なんであんた結局鳥になってんだよ。33なんでスタジオにいて、何に追われてんの。何より、「 10 年前の件」ってなんのことなのよ。34
こんな面白い謎を残されて、俺やあんたみたいなホラーオタクが、手を引くと思うのか?
間違いない。これは O からの出題だ。
あいつはもう解く側じゃない。出題する側に行ってしまった。そして、俺を試し、真実を追い求めさせようとしているんだ。35
幸い、皆さんは最初から、ご自身の異能と付き合いながら社会へ貢献することの、光と闇の境界線上を歩むことの難しさを、わかっておられた。ですから、私の伝えるべきことはたった二つだけで済みます。一つは、そのまままっすぐ! 道を誤らずに進んで欲しいということです。56そしてもう一つは、私たちはリスペクトし合い、助け合えるということです。困ったことがあれば、いつでも私たちに57ご連絡下さい。僭越ながら、私たち SCP 財団は、境界線上を歩むという分野の、無二のエキスパートです。同時に、植物学のエキスパートたる皆さんのお知恵をお借りするため、こちらからまたお伺いすることも、きっとあるでしょう。私たちと皆さんが、ともにまっすぐ歩んでいくために。58
― 関と名乗る SCP 財団一般部門渉外課エージェントによるセミナーの録音の書き起こし
疑念
我がここに呼ばれた理由はわかっている。「ヴェールは早晩破壊される。ヴェールを前提とする適応など全くの無意味だ」そう言わせたいのだろう? もちろん我が偽らざる意見だが。 ― ギャラリナ
ありがとう、ガラ。私も同意見だったが、最近考えが少し変わってね。看守たちの行いが見当違いだとも思わなくなってきた。「手」はヴェールの崩壊を目指して活動しているが、だからこそわかる。あれは強く護られている。ヴェールの狭間で不和はもうしばらく起き続けるだろう。我々の目的が達成されるのは明日明後日じゃないし、人間の一生はあなたほど長くない。今起きている不和を解消しようとするのは、間違った行いじゃないと思う。 ― Mashirito
可愛い後輩がそこまで言うなら、我が「看守の皆さまを特別に図書館にお呼びして、『手』の若い者たちにレクチャーしていただこう」と L.S. に提案してやってもいいが。 ― ギャラリナ59
用務員 (※看守 (※※財団)) の教育的指導だかなんだかで結果的に生活が楽になったって言ってる奴らがいるのは知ってる でもあいつらの言い分を飲み込んでたんじゃ結局へんてこルールの中から出られない 何も変わらないよ ― Teleko
もちろん、看守たちに任せようって話じゃない。魔法使いは古来から、若き才人の元に現れて助言を届けるものじゃあないか。606162現代の我々が、それと同じことはできないだろうか? もちろん、「手」がそれをするなら、そこが光だろうと闇だろうと進んでいけるような……ヴェールが破壊されるまでうまく潜伏しながら、絶え間なく自由な世界を願い続けられるような、そんな生き方を教え導けたらいいと思う。 ― Mashirito
⸺某の所属事務所が、スカウトに力を入れるようになりましてな。人事スタッフに調子を聞きましたが、なかなか上手くいかないそうですよ。手妻の才能のある者はスパイへの高い適正も持っているということで、しばしば「黒服」に先んじて引き抜かれてしまうとか。彼らは強大なだけでなく、システマチックで、リクルートにしたって十分な人数でアイデアを出し合い、最適なプロジェクトを組んで臨みます。アナーティストや魔法使いは、あまりそうではない。生半可な計画ではいけません。 ― A-263
……少なくとも、検討しがいがありそうだということはわかった。そして、考える頭の数が必要だということも。いいだろう、どうなるかはわからんが、我も声かけをして人を集めてみるとしよう。 ― ギャラリナ64
「暗順応」は「ヴェール間不和」とかに言い変えていけたらなって いろいろ考えてたけどこれはシンプルな方がいい ― Teleko
どうです、何かイケてるプロジェクト名でも考えてみては。 ― A-265









