雪のふる森のなか、ソレとアレはさむさにふるえておりました。
空白
「ああ、さむい。どこかあたたまれる場所はないだろうか」
アレはくちびるをあおにそめて、さむさをしのげる場所を探しておりました。
「ねえ、なんだろうあれは」
ソレは雪になかばうもれた、はだ色のものを見つけました。それは、雪のなかにしずんでいたのにほんのりとあたたかく、なんだかここちのよいにおいがしました。
「なんだかわからないが、今日はここで眠らせてもらおう」
ふたりはそれを掘り出してみました。掘り出されたものは、近くで見るとなかなかに大きなもので、春のうちにソレとアレがよく投げ合ってあそんだ、びんびんからすのたまごのような形をしているのでした。そして、それの横には穴があいていて、ふたりはその中に入ることができたのでした。
中に入ると、そこにはまあるいたまごのようなものが入っていました。うすく白い色の入った、まっかなたまごでした。たまごからはなんだかいいにおいがして、その表面からは、おいしそうな蜜があふれだしているのでした。
「ねえ、ソレ。あれをなめてみたい」
「だめだよ、アレ。ここは、きっとだれかのおうちにちがいない」
ソレはそうは言ってはみたものの、自分ももう、たおれそうなぐらいにおなかがすいていたことを思い出しました。
「でも、持ちぬしはいないようじゃあないか。ね、すこしだけ」
「じゃあ、こうしよう。外もさむいし、今日はここでやっかいになることにしようじゃないか。でもね。もしも、持ちぬしがやってきたら、あやまって、よそへいくんだ。分かったね」
「もちろんだよ。ソレ」
ふたりはそうして、目の前のまあるいたまごにちかよりました。ふたりがたまごをきゅっと抱きしめると、それはぶるり、ぶるぶるとふるえて、たくさんの蜜をあふれさせました。
ふたりはそれを、もういっしょうけんめいになめたのです。
「なかなか、持ちぬしはあらわれないね」
「やっぱり、だれのものでもなかったのかなあ」
「ねえ、ソレ。きっとこれは、かみさまがぼくたちにくれた、たからものだと思うんだ」
「そうかもしれない。こんなにあたたかくて、おいしいごはんがでてくるようなおうち、ぐうぜんに落ちているはずがないものね、アレ」
「ねえ、どうだろう。ここで暮らすというのは。きっとぼくたち、うまくやっていけると思うんだけれど」
「そうだね。でも、いつかほんとうの持ちぬしがやってきたら、きっとここから出ていこうね。アレ」
「もちろんだとも、ソレ」
すると、ソレとアレがこの冬のあいだにとりつけたとびらを、とんとんとたたく音がしました。
「すみません、さむくてこごえそうなのです。ひとばん、わたしをとめてはくれませんか」
ソレとアレはかおをみあわせてうなずき、そうして、
「もちろんだとも。よかったら、ここでずっとくらすがいい。ぼくたちはきっと、いいお友だちになれるはずさ」
と言って、笑いあったのでした。